87 / 154
冬磨編
15 色が消える瞬間 ※
しおりを挟む
「天音……目開けろって。お前の顔が見たくて前からやってんのに……」
お前の瞳が見たいんだよ……。
「ぁぁ……っ、…………っ」
耐えきれずに漏れたというような喘ぎ声と大きな震え。
きっともうすぐ絶頂を迎える。
「天音、ちゃんとイきそうじゃん」
今日はもう天音の瞳は無理かな。前からできただけでも良しってところか。
天音の頬を手のひらで包み、痛々しくぎゅっと閉じてるまぶたに指でふれる。
「そんなぎゅってしてたらつらいだろ。大丈夫だから開けろって」
俺のその言葉で、天音は閉じているまぶたにさらにぎゅっと力を入れた。
どうしてここまでかたくなに……。
そこで、嫌な考えが頭に浮かんだ。
もしかして、俺の顔を見るのが嫌なのか……?
セフレみんな? それとも俺だけ?
そういえば、ほかのセフレとはどうやって関係が始まったんだろう。
俺との始まりは、思い返せば最悪なスタートだった。唖然としてる天音を無理やりのようにホテルに連れてきて始まった関係。天音のセフレの中で、俺の立ち位置ってもしかして最下位か……?
ドクドクと心臓が鳴る。いやまさか。最下位はねぇよな?
誘えば必ず会ってくれる。最近は少しだけ穏やかな雰囲気を見せてくれる。抱くときはうわ言のように可愛く俺の名前を……。
違う。これはきっと全部、俺だけじゃないんだ。
考えれば考えるほど俺が最下位な気がしてくる。
大切な存在はいらない作らない。そう思ってるはずなのに、俺はどこかでずっと期待していた。天音がいつか俺に興味を持ってくれる日を。俺に気がある素振りを見せてくれる日を……。
これじゃ、そんな日なんて来るわけねぇな。
そう思ったら無性にイライラした。
思い通りにならない天音に、俺の顔も見たくないというように目を閉じ続ける天音にイライラしてる自分自身にイライラした。
ほんと俺……自分勝手で最低だ。
今まで一番嫌いだった執着してくる男。今の俺がまさにそれだろ。
「あ……っ、と……ま……っ!」
いつになく控えめに声を上げて天音が果てる。
それに合わせて俺も無理やり出した。天音相手にそんなことをしたのは初めてだった。
イライラがおさまらない。
早くタバコを吸いたい。
余韻にひたることもせず、すぐに天音から離れてベッドの背にもたれ、タバコに火を付けた。
タバコを吸ってもなにも落ち着かない。それどころかイライラが増していく。
こんなに感情が爆発するのはいつぶりだろう。
「……お前さ。なんでずっと目つぶってんの?」
八つ当たりだとわかっていて俺は聞いた。
自分自身にイラついてるのに天音に当たってどうする……。
もし「お前の顔なんて見たくねぇんだよ」とでも言われたら、逆に諦めがついてスッキリすんのかな……。
「……最中のことなんて知らねぇよ」
「はぁ? それはないだろ。目開けろって何回言ったと思ってんだ」
言うたびに力を込めて閉じてただろ、とますます苛立った。
だから……天音にイラつくのは違うだろ……。
「前からは……慣れてないんだ。マジで最中のことは知らねぇ……」
前からは慣れてない、という言葉に少しだけイライラが減った。
そうか。本当に慣れてないのか。いつも後ろからにこだわるのは俺にだけじゃないんだな。
でも、だからといって俺の顔を見たくないのかもって疑いがそれで晴れるわけじゃない。
なんで目を開けない?
なんでだよ。
「しらけるんだよ。ちゃんと目開けろよ」
おさまらないイライラのせいで、天音を攻撃する口を止められない。
俺は、俺に抱かれてるときのお前の瞳が見たいんだ。
わかった、次からは開ける、そんな答えを期待したのに、天音の発した言葉は俺の心臓を潰した。
「……しらけるなら……俺なんて切ればいいじゃん。セフレなんて他にいっぱいいるだろ」
そう言われるのは自業自得なのに、絶望感と同時に苛立ちが爆発した。
お前にとってはそんな簡単な話なのかよ。そうかよ。
「ふぅん」
売り言葉に買い言葉。
もう止まらなかった。
「じゃあ、切るかな」
タバコの煙と一緒に吐き出したその言葉は、もう取り返しがつかなかった。言ってしまってから自分で動揺した。
でも『切る』と断言したわけじゃない。大丈夫だろ。
『何言ってんの? 本気?』
そんなふうに返されたら、冗談だと言えばいい。
そう考えてからハッとした。そうだ。さすがの天音も動揺してくれたかも。
動揺しただろ?
動揺したよな?
「……あっそ。じゃ、今日で終わりな」
重そうな身体を起こしながら、天音は淡々とそう口にして俺に背を向けた。
『は?』
『何言ってんの?』
『マジ?』
『本気?』
そんな言葉もなく、天音は簡単に受け入れた。
お前はそんな簡単に……この関係を終わらせられるんだな……。
その瞬間に、俺の世界から色がふたたび消え去った。
お前の瞳が見たいんだよ……。
「ぁぁ……っ、…………っ」
耐えきれずに漏れたというような喘ぎ声と大きな震え。
きっともうすぐ絶頂を迎える。
「天音、ちゃんとイきそうじゃん」
今日はもう天音の瞳は無理かな。前からできただけでも良しってところか。
天音の頬を手のひらで包み、痛々しくぎゅっと閉じてるまぶたに指でふれる。
「そんなぎゅってしてたらつらいだろ。大丈夫だから開けろって」
俺のその言葉で、天音は閉じているまぶたにさらにぎゅっと力を入れた。
どうしてここまでかたくなに……。
そこで、嫌な考えが頭に浮かんだ。
もしかして、俺の顔を見るのが嫌なのか……?
セフレみんな? それとも俺だけ?
そういえば、ほかのセフレとはどうやって関係が始まったんだろう。
俺との始まりは、思い返せば最悪なスタートだった。唖然としてる天音を無理やりのようにホテルに連れてきて始まった関係。天音のセフレの中で、俺の立ち位置ってもしかして最下位か……?
ドクドクと心臓が鳴る。いやまさか。最下位はねぇよな?
誘えば必ず会ってくれる。最近は少しだけ穏やかな雰囲気を見せてくれる。抱くときはうわ言のように可愛く俺の名前を……。
違う。これはきっと全部、俺だけじゃないんだ。
考えれば考えるほど俺が最下位な気がしてくる。
大切な存在はいらない作らない。そう思ってるはずなのに、俺はどこかでずっと期待していた。天音がいつか俺に興味を持ってくれる日を。俺に気がある素振りを見せてくれる日を……。
これじゃ、そんな日なんて来るわけねぇな。
そう思ったら無性にイライラした。
思い通りにならない天音に、俺の顔も見たくないというように目を閉じ続ける天音にイライラしてる自分自身にイライラした。
ほんと俺……自分勝手で最低だ。
今まで一番嫌いだった執着してくる男。今の俺がまさにそれだろ。
「あ……っ、と……ま……っ!」
いつになく控えめに声を上げて天音が果てる。
それに合わせて俺も無理やり出した。天音相手にそんなことをしたのは初めてだった。
イライラがおさまらない。
早くタバコを吸いたい。
余韻にひたることもせず、すぐに天音から離れてベッドの背にもたれ、タバコに火を付けた。
タバコを吸ってもなにも落ち着かない。それどころかイライラが増していく。
こんなに感情が爆発するのはいつぶりだろう。
「……お前さ。なんでずっと目つぶってんの?」
八つ当たりだとわかっていて俺は聞いた。
自分自身にイラついてるのに天音に当たってどうする……。
もし「お前の顔なんて見たくねぇんだよ」とでも言われたら、逆に諦めがついてスッキリすんのかな……。
「……最中のことなんて知らねぇよ」
「はぁ? それはないだろ。目開けろって何回言ったと思ってんだ」
言うたびに力を込めて閉じてただろ、とますます苛立った。
だから……天音にイラつくのは違うだろ……。
「前からは……慣れてないんだ。マジで最中のことは知らねぇ……」
前からは慣れてない、という言葉に少しだけイライラが減った。
そうか。本当に慣れてないのか。いつも後ろからにこだわるのは俺にだけじゃないんだな。
でも、だからといって俺の顔を見たくないのかもって疑いがそれで晴れるわけじゃない。
なんで目を開けない?
なんでだよ。
「しらけるんだよ。ちゃんと目開けろよ」
おさまらないイライラのせいで、天音を攻撃する口を止められない。
俺は、俺に抱かれてるときのお前の瞳が見たいんだ。
わかった、次からは開ける、そんな答えを期待したのに、天音の発した言葉は俺の心臓を潰した。
「……しらけるなら……俺なんて切ればいいじゃん。セフレなんて他にいっぱいいるだろ」
そう言われるのは自業自得なのに、絶望感と同時に苛立ちが爆発した。
お前にとってはそんな簡単な話なのかよ。そうかよ。
「ふぅん」
売り言葉に買い言葉。
もう止まらなかった。
「じゃあ、切るかな」
タバコの煙と一緒に吐き出したその言葉は、もう取り返しがつかなかった。言ってしまってから自分で動揺した。
でも『切る』と断言したわけじゃない。大丈夫だろ。
『何言ってんの? 本気?』
そんなふうに返されたら、冗談だと言えばいい。
そう考えてからハッとした。そうだ。さすがの天音も動揺してくれたかも。
動揺しただろ?
動揺したよな?
「……あっそ。じゃ、今日で終わりな」
重そうな身体を起こしながら、天音は淡々とそう口にして俺に背を向けた。
『は?』
『何言ってんの?』
『マジ?』
『本気?』
そんな言葉もなく、天音は簡単に受け入れた。
お前はそんな簡単に……この関係を終わらせられるんだな……。
その瞬間に、俺の世界から色がふたたび消え去った。
158
あなたにおすすめの小説
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる