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12 告白
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『外ではキスをしない』
どうしてそういう発想になるのかが逆に気になったが、この際それは今はいい。問題は、「外では」というところだ。
「あのお……『外では』?」
私が聞くと、セイはまたちゅ、と軽く唇に触れてから笑顔で答えた。照れた様な顔をしている割には、遠慮がない。
「うん。なら見られないところでしようと思って、あの頃はまだお母さんが家にいて、朝早くに家を出ると怪しまれたから、週末限定で起こしに行く時に」
来ていた。休みになると、朝も早よから私を起こしに来ていた。
まさか、キスが目的だったのか。
愕然とした。
私の受けたショックなど気付いていないのか、セイはにこにこと続ける。
「母さんたちが離婚した時はどっちについて行くかさすがに迷ったけど、朝のチューがない生活なんてもう考えられなかったし」
「そこ? 基準そこ?」
思わずそう返すと、セイがちょっといじけた様ななんとも可愛い表情を惜しげもなく見せた。
「だって、キョウの唇ふわふわだし」
「え、いや、ちょっと」
「離婚した後は毎日行ける様になっただろ?」
「……はい」
毎日来ていた。懲りもせず。
「いつも口が少し開いてるから起きないか心配だったんだけど、中学入ってからは疲れてるのか眠りが深くなってたから、思い切って。へへ」
入れたのか。そうやって人の初ディープキスを人の知らない間に奪っていたのか。
だが話はまだ終わってない。ちゃんと確認しておかないと、こんなこと後になって聞くなんて恥ずかし過ぎて絶対出来ないから。
「す、好きな人がいるって女の子たちの告白を断ってたって……!」
「好きな人はキョウのことに決まってんじゃん」
相変わらずの照れ顔で、サラリとそんな台詞をのたまった。
ポリ、とこめかみを指で掻く仕草が、――可愛い。
「でも、キョウはいまいち何考えてるか分かんないし、鈍感そうだし、俺の気持ちにもちーっとも気付いてなさそうだし、他の奴が好意を持って近付いても気付いてないからさ、俺結構ガードするの大変だったんだぜ?」
「は? ガード?」
「ほらな?」
「……」
何も知らない。その時点で、確かに私は色恋沙汰に疎いのかもしれない。
「だから、なかなかその……断られたら嫌だから、言えなくて」
「セイ……」
セイも、ずっと私と同じ想いを抱えていたのだ。言いたいけど言えない、今の心地よい関係が崩れたら隣に居られなくなる、そう思って。
うなじに触れるセイの手に、ぐっと力が籠る。
「……キョウ、好きだ。キョウは? 俺のこと好きか?」
とうとう来た。もうこれはどんなに恥ずかしかろうが、ちゃんと言わないと絶対ダメなやつだ。そして未だに付いている尻尾が、高速パタパタを繰り返している。
セイの視線が、捲れ上がるスカートへと注がれた。口角が微妙に上がっている。こういうところはこいつもしっかり男なんだなあと思う。鼻血は、丸見えにならなければ出ないのだろうか。今のところ大丈夫そうだ。
と思ったら、見ていたのは考えていたのとは違う部分だった。
「……嬉しそうな尻尾だな」
「あっこれはそのっ」
「教えて、キョウ」
赤い光が、セイの横顔を眩しく照らす。至近距離だと確認出来るセイの可愛いそばかすがある頬が、柔らかく上がるのを眺めた。
「――き」
セイの口が、ぴくっと引き締まる。
「――好き、ずっと好き、これからも好き!」
その途端に見せた、花が咲いた様なセイの笑顔は、きっと一生私の宝物になるだろう。
「キョウ! 俺も大好きだ!」
「わっ」
ガバッと私に抱きついたセイが、顔を斜めにしてもう何度目になるか分からないキスをしてきた。今度は私もそれに応える。
「キョウ、キョウ……! 夢みたいだ……!」
「セイ……」
セイの手が、私の頭に伸びてきた。そのまま愛おしそうに撫でまくる。――あれ。
無理矢理セイの顔を引き剥がすと、まだキスしようとするセイの攻撃を掻い潜って聞いた。
「セイ、耳は!?」
「うん、ないよ、もうない」
「尻尾は!?」
「キョウ、黙って」
「大事なことでしょ! ……ぶっ」
セイのキス欲の前には、無駄だった。身体を密着させる様に抱きすくめられた私は、その後空が見事な赤焼けを見せて段々と暗くなっていくその時まで、ひたすらチュッチュチュッチュとキスをされ続けたのだった。
どうしてそういう発想になるのかが逆に気になったが、この際それは今はいい。問題は、「外では」というところだ。
「あのお……『外では』?」
私が聞くと、セイはまたちゅ、と軽く唇に触れてから笑顔で答えた。照れた様な顔をしている割には、遠慮がない。
「うん。なら見られないところでしようと思って、あの頃はまだお母さんが家にいて、朝早くに家を出ると怪しまれたから、週末限定で起こしに行く時に」
来ていた。休みになると、朝も早よから私を起こしに来ていた。
まさか、キスが目的だったのか。
愕然とした。
私の受けたショックなど気付いていないのか、セイはにこにこと続ける。
「母さんたちが離婚した時はどっちについて行くかさすがに迷ったけど、朝のチューがない生活なんてもう考えられなかったし」
「そこ? 基準そこ?」
思わずそう返すと、セイがちょっといじけた様ななんとも可愛い表情を惜しげもなく見せた。
「だって、キョウの唇ふわふわだし」
「え、いや、ちょっと」
「離婚した後は毎日行ける様になっただろ?」
「……はい」
毎日来ていた。懲りもせず。
「いつも口が少し開いてるから起きないか心配だったんだけど、中学入ってからは疲れてるのか眠りが深くなってたから、思い切って。へへ」
入れたのか。そうやって人の初ディープキスを人の知らない間に奪っていたのか。
だが話はまだ終わってない。ちゃんと確認しておかないと、こんなこと後になって聞くなんて恥ずかし過ぎて絶対出来ないから。
「す、好きな人がいるって女の子たちの告白を断ってたって……!」
「好きな人はキョウのことに決まってんじゃん」
相変わらずの照れ顔で、サラリとそんな台詞をのたまった。
ポリ、とこめかみを指で掻く仕草が、――可愛い。
「でも、キョウはいまいち何考えてるか分かんないし、鈍感そうだし、俺の気持ちにもちーっとも気付いてなさそうだし、他の奴が好意を持って近付いても気付いてないからさ、俺結構ガードするの大変だったんだぜ?」
「は? ガード?」
「ほらな?」
「……」
何も知らない。その時点で、確かに私は色恋沙汰に疎いのかもしれない。
「だから、なかなかその……断られたら嫌だから、言えなくて」
「セイ……」
セイも、ずっと私と同じ想いを抱えていたのだ。言いたいけど言えない、今の心地よい関係が崩れたら隣に居られなくなる、そう思って。
うなじに触れるセイの手に、ぐっと力が籠る。
「……キョウ、好きだ。キョウは? 俺のこと好きか?」
とうとう来た。もうこれはどんなに恥ずかしかろうが、ちゃんと言わないと絶対ダメなやつだ。そして未だに付いている尻尾が、高速パタパタを繰り返している。
セイの視線が、捲れ上がるスカートへと注がれた。口角が微妙に上がっている。こういうところはこいつもしっかり男なんだなあと思う。鼻血は、丸見えにならなければ出ないのだろうか。今のところ大丈夫そうだ。
と思ったら、見ていたのは考えていたのとは違う部分だった。
「……嬉しそうな尻尾だな」
「あっこれはそのっ」
「教えて、キョウ」
赤い光が、セイの横顔を眩しく照らす。至近距離だと確認出来るセイの可愛いそばかすがある頬が、柔らかく上がるのを眺めた。
「――き」
セイの口が、ぴくっと引き締まる。
「――好き、ずっと好き、これからも好き!」
その途端に見せた、花が咲いた様なセイの笑顔は、きっと一生私の宝物になるだろう。
「キョウ! 俺も大好きだ!」
「わっ」
ガバッと私に抱きついたセイが、顔を斜めにしてもう何度目になるか分からないキスをしてきた。今度は私もそれに応える。
「キョウ、キョウ……! 夢みたいだ……!」
「セイ……」
セイの手が、私の頭に伸びてきた。そのまま愛おしそうに撫でまくる。――あれ。
無理矢理セイの顔を引き剥がすと、まだキスしようとするセイの攻撃を掻い潜って聞いた。
「セイ、耳は!?」
「うん、ないよ、もうない」
「尻尾は!?」
「キョウ、黙って」
「大事なことでしょ! ……ぶっ」
セイのキス欲の前には、無駄だった。身体を密着させる様に抱きすくめられた私は、その後空が見事な赤焼けを見せて段々と暗くなっていくその時まで、ひたすらチュッチュチュッチュとキスをされ続けたのだった。
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