運命の番はこの世に3人いるらしい

さねうずる

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4 四人目の元カレ現る(回想)

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今日は、曜日ごと変わる日替わり定食をリニューアルする、ということで講習を受けていた。
いつもなら片付けを終えて3時には会社を出られるが、今日は商社の社員さんたちと帰宅時間帯が被ってしまう。
定時退社推奨日のため、ビルの正面口は帰宅する人たちで混み合っていた。

大抵の人はビルから程近い大きな駅を利用するが、僕はそれとは逆方向の歩いて20分の駅を利用している。
大きい駅からだと乗り換えが複雑なのだ。

いつもより少し陽の落ちた空のもと、駅に向かってすたこら歩いていると、「蘭丸」っと後ろから声を掛けられる。

振り向くと、約三ヶ月ぶりの登場、元カレの飛鳥くん。
僕があげようとしていたパーカーとおんなじのを着ていて少しドキッとした。


「飛鳥くん。久しぶり。」

極力冷静に努めてそう聞くと、飛鳥くんの顔が苦しそうに歪む。

「えっ?大丈夫?どうしたの?具合悪い?」
「・・・・いや、なんでもない。元気にしてるか?」
「えっ、うん・・・・元気だよ。」

僕に元気か?なんて飛鳥くんが言えたことじゃないと思うが、飛鳥くんが凄く苦しそうな顔をするから何でもないように無難に返事をした。


「今日はどうしたの?仕事?」

飛鳥くんの勤め先も大手だけど、こことは別の場所にある。
だからまさかこんなところで偶然出会うとは思わなかった。


「・・・・まぁ、そんなとこ。
それより蘭丸、もうすぐヒートじゃなかったっけ?」

だからそんなこと飛鳥くんに気にされる筋合いないんだけど。。。
言えたらいいけどチキンな僕にはやっぱり難しい。

「あー、まぁ、そうだけど、、、、でも、大丈夫。」

本当はストレスで飛鳥くんと別れたすぐ後にヒートが来て、その次のヒートもついこの間終わったところだ。
いつも三ヶ月に一度乱れることなく来ていたヒートが今は周期が乱れまくってる。
飛鳥くんのせいでヒート周期が乱れるほどストレス感じてたなんて、悔しいから絶対教えたくない。

それにしても、、、別れた相手のヒートまで気にするなんて、飛鳥くんってそんなマメな性格してたっけ?
というか今まで一緒にヒートを過ごしたことないのに、なぜ今さら気にする?

そんなことを思っていたら飛鳥くんが急に爆弾を投下してきた。

「よければ俺、相手しようか?」


・・・・・・・・はい?
彼は何を言ってるんだろう?
じゃあ、お願い。って僕が言うと思ったのかな?
運命の番だけじゃなくて僕のことキープしたくなったとか?
僕ってそんなに都合よく使えるオメガだと思われてたの?

流石に僕が険しい顔で黙り込むと、焦ったように畳み掛けてくる。

「いやっ、蘭丸あんまり薬効かない体質だって言ってたじゃん。一人だと大変かなって思って!ほらっ、俺の都合でこうなったわけだし、罪悪感とかあるしっ。」

僕がますます険しい顔をすると、余計に焦ったようで飛鳥くんは墓穴を掘った。

「俺、蘭丸のこと今でも好きだし!」

「・・・・・・・・は?」

すごくすごーく低い声が出た。
僕が好きなら僕の前で他の人とエッチするわけないでしょ。あのとき僕のことなんてこれっぽちも頭になかったくせに。
僕がどんな気持ちであの光景見て、どんな顔してたかだって覚えてもないくせに。

自分勝手なことをいう飛鳥くんに沸々と怒りが湧いてくる。

「二股かける気?悪いけど僕はそういう趣味ないから。せっかく運命の番に会えたんだからあの子のこと大切にしてあげてください。
それじゃあ、僕急ぐから。」

言うだけ言って飛鳥くんに背を向ける。
肩を怒らせながら、再び駅へ向かって歩き出そうとしたら、腕を引かれてなんとそのまま抱きしめられた。

まるで恋愛ドラマのワンシーンのようだ。

でももちろんこれはドラマではない。
一瞬驚きすぎて固まってしまったが、すぐに身を捩って抵抗する。
これはドラマの胸キュンシーンなんかじゃない!
どちらかというとサスペンスの犯人と揉み合うシーンだ。

「やめてっ!離して!」
「蘭丸っ、聞いてくれっ!!俺はっ・・・・!!」
「嫌だ!聞きたくない!!離せってば!」

アルファだけあって細身ながら力が強くなかなか振り解けない。
「離せ」「嫌だ」の攻防を繰り広げていると、飛鳥くんの首根っこを後ろからグイッと引っ張る人が現れた。

そう、、、アジフライの人である。

急に後ろに引っ張られた飛鳥くんは尻餅をついて、怒ったように顔を上げた。
だがそこには細身の飛鳥くんでは太刀打ちできないような、ガタイのいいアジフライの人が上から彼を見下ろしている。

飛鳥くんはなにやら悔しそうに舌打ちをすると、やけにあっさり帰っていった。
アルファ同士は序列が顕著というから、野生の勘的にアジフライの人に勝てないのと思ったのかな?
アルファの世界はよく分からない。


「あの、ありがとうございました。」

お礼を言って再び駅に向かって歩きだそうとすると、今度は僕の首根っこが掴まれる。
苦しくて「ぐえっ」というなんとも品のない声がでた。


それからなぜかカフェに連れて行かれたわけである。
早く帰って見たいテレビがあるのに。

回想終わり。
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