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6 アジフライの人、飲みに行く
「よう!今日早く上がれそうだから飯でも行かない?」
「あっ、はい。いいですよ。」
あれから約三ヶ月・・・・
いつものように一ノ瀬さんにアジフライ定食を渡すと、そう誘われた。
僕が了承すると、「よし!じゃあ、ここ集合な。」って小さく折り畳んだ紙を渡される。
連絡先なんか交換してないから仕方ないんだけど、なんだか凄くドキドキした。
「響、なにナンパしてんの?」
僕が顔を紅くしてしまったせいか、後ろに並んでいた同僚の人から一ノ瀬さんが揶揄われている。
「そんなんじゃねーよ。」
一ノ瀬さんは爽やかな笑顔で同僚の人を上手く躱(かわ)すと、「じゃあ、また後でな。」と僕に手を振ってくれた。
「なになに?えーと、、沖くん?一ノ瀬と仲いいんだ?」
同僚の人は僕の胸元の名札を見ると、興味深そうに聞いてくる。
「あっ、仲良いと言いますか、、、以前プライベートで偶然お会いしたことがあって。それで・・・・。」
「へー、いいなぁ。じゃあさ、俺とも仲良くしてよ。俺、竹之丞 雅士(たけのじょう まさし)。ね?沖くん、いいよね?」
「はい。僕でよければ。」
竹之丞さんは、ちょうどおばちゃんが持ってきた唐揚げ定食を人懐っこい笑顔で「ありがとう。」と受け取ると、僕にウインクを一つ残して、席の方へと行ってしまった。
おばちゃんなんか「カッコいい子ねぇ~」なんて言いながら横でポッと頬を染めてる。
竹之丞さん、なかなか濃いキャラの人だ。
一ノ瀬さんがスポーツマンタイプのイケメンだとすると、竹之丞さんは王子様系?とかになるのかな?
この大きな商社にはアルファがかなり多いので、二人の他にも食堂を見渡す限りかっこいい人が犇(ひしめ)いてるが、その中でも二人は埋もれてない感じがして凄い。
特に一ノ瀬さん・・・・。
いや、完全に僕の欲目なんだけど。
この三ヶ月で僕は一ノ瀬さんを見る自分の眼が180度変わってることに気付いてた。
というか、先月のヒート時はずっと一ノ瀬さんで頭がいっぱいだったから嫌でも気づく。
最初はただのアジフライの人。
今は、、、僕の好きな人。
人はよく会う人に無意識に好意を抱くというけれど、最近声を掛けてもらう度にドキドキするし、お昼の時間になると姿を探してしまう自分がいる。
まぁ、告白なんかできないけど。
数ヶ月前あんなことがあったのに本当に僕って懲りない奴だ。
食堂で一言、二言言葉を交わして、ちょっと笑いかけられるだけで好きになっちゃうなんてチョロすぎる。
まぁ、告白する気もないし、見てるだけならそこまで迷惑になることもないだろう。
どうせ可愛くもないオメガの僕をスーパーアルファの一ノ瀬さんが好きになってくれるわけもないし。
そもそも億が一付き合えたとしても、一ノ瀬さんに運命の相手が現れたら、、、、想像するだけで恐ろしい。
きっと飛鳥くんの時みたいに冷静に別れ話なんて無理だ。
イヤイヤ期の子供みたいに地べたに転げ回って泣き喚く自分を想像して思わず身震いする。
今ぐらいのお友達が一番ちょうどいい。
毎日、一言、二言言葉を交わして、仕事中にちょっと盗み見る。
うん。それがいい。
と、思ってたのに、
「付き合ってほしい。」
なんでこうなった?
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