8 / 48
8 一人目の元カレ、イヤな思い出
しおりを挟む「もう!!なんだよ~~~!!」
家に帰ってからソファのクッションに八つ当たりする。
ボカスカ殴った後、顔を埋(うず)めて「あーーー!!」と叫んだ。
クソッ、クソクソクソクソッ!
みんな僕のことなんだと思ってるんだよ!
マッチングアプリじゃないんだぞ!
僕は誰かと結ばれちゃいけないの・・・・?
踏み台にしかなれないの?
そう思うと、悲しくて泣けてくる。
居酒屋で些か飲みすぎたせいか涙腺がバカになってる。
そして、クッションに顔を埋めたままグズグズと鼻を啜った。
思えば、一人目の彼氏、勇士(ゆうし)くんと別れた時から僕はいつ現れるともしれない運命の番に怯えていた。
勇士くんは高校のときに付き合った初めての彼氏だ。
生徒会長とサッカー部のキャプテンをやっていて全校生徒の憧れ。
一年生のときから目立っていて、恋人が途切れたことがないプレイボーイとしても有名だった。
僕は体だけ無駄に大きいけど球技はてんでダメ。脚だけはなぞに速かったけど、それだけ。
家庭科部の地味な生徒だった。
3年の冬、なぜか勇士くんに告白された。
本当に謎だ。
もちろん僕は勇士くんの存在を知っていたけど、彼が僕を知っているとは露ほど思わなかったから、きっと罰ゲームだと思った。
「罰ゲームに面白味を持たせられなくてごめん。」
と告白を断ったら勇士くんは凄く怒って、僕はその場に引き倒されて、馬乗りですっごい濃厚なキスをされた。
あれは衝撃的なファーストキスだったな。
「罰ゲームでこんなことすると思うか?」って。
押しに弱い僕はそのままなし崩し的に勇士くんと付き合うことになったっけ。
それから、短大に入って一年目の夏。
友達とみんなでBBQすることになったんだけど、あれが運の尽き。
彼氏とか友達とか連れてきていいよー、って言われたので勇士くんを連れて行ったんだ。
最初は凄く楽しかった。
みんな、勇士くんのこと「素敵な彼氏だね。」って褒めてくれて、僕も嬉しかった。
でも、、、僕の当時一番仲良かった恵(めぐむ)くんが遅れて登場した途端、勇士くんの目の色が変わった。
手に持っていた紙皿を僕に押し付けると、一目散に恵くんのところに駆けて行く。
まるで長い間離れていた恋人同士みたいに。
二人はきつく抱きしめ合ったあと、ひと時も離れたくないって感じでお互い貪(むさぼ)るようにキスしていた。
残された僕は、無理やり押し付けられた紙皿のタレが服について酷い有様になっていたけど、、、でも、そんなことよりさっきまで僕に優しく笑いかけてくれていた勇士くんが他の人とキスしてる姿が信じられなかった。
あれからだ。僕の『運命の番の呪い』が始まったのは・・・・。
その時はまだ運命の番がなんなのかよく分かってなかったから、みっともなく「別れたくない。大好きだから一緒に居て」って泣いて縋りついたのを覚えている。
だけど、「運命の番なんだから恵とは離れられない。俺のことが本当に好きなら祝えるはずだろ?」って。
友達も「運命の番ならしょうがない」「運がなかったね。」って慰めてくれたけど、恵くんには「運命の番に出会えるなんてすごいね。」「おめでとう。」
って言ってた。
運命の番に出会うことは、とてもめでたいことで、、、その陰で泣く人がいたとしても、それでも運命の番同士が結ばれることのほうが世間的には肯定されることなんだ。
納得なんてしたくなかったけど、皆んなが「仕方ない。仕方ない。」って言うから、仕方ないものなんだと無理やり自分を納得させた。
きっと今回は運が悪かっただけ。
だって運命の番はこの世に三人しかいないんだから・・・・。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
748
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる