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28 一ノ瀬視点 その4
「やっぱ取りきた。」
「っ!?」
真っ暗闇の中、俺はゴミ箱をガサゴソ漁っている不審者に声をかける。
ここは沖くんのマンションのゴミ捨て場だ。
昼間の俺と沖くんの会話を聞いていたであろうこいつが、このゴミをとりに来ることは容易に想像がついた。
携帯のライトで照らすと、以前一度だけ見たことのある顔が眩しそうにこちらを見ている。
「4番目の元カレくんだよな?」
「・・・・・・・・。」
前、沖くんにちょっかいを出していた沖くんの元カレ。
俺と沖くんが仲良くなったきっかけでもある。
男の手には沖くんが渡せなかったというプレゼントの箱が握られていた。
多分だけど、差出人不明の手紙もこいつだ。
勇士が犯人だったら、数ヶ月前じゃなくて数年前から送ってるはずだし。
男は、俯きながらプレゼントの箱を抱えてブツブツ何かを言っていた。
「なに?言いたいことあんならはっきり言えよ。」
「・・・・かれろ。」「は?」
「蘭丸と別れろ!!」
男は突然大声を上げたかと思うと、フーフーと噛み締めた歯の隙間から獣のような息を漏らす。
めっちゃ引いた。
こいつ、勇士よりヤバいな。
手遅れになる前に沖くんを保護できてよかったかもしれない。
「お前のやってることはストーカーだって分かってる?」
「違うっ!!俺は!!俺は蘭丸のこと愛してるだけだ!蘭丸だって本当はまだ俺のこと愛してるんだ!」
そう言うと、男は縋るように箱を抱きしめる。
「沖くんは今、俺と付き合ってる。お前のことはもう好きじゃない。」
「ハッ!形式上の恋人だろ。」
「今はな。もうすぐ本当の恋人になれる。」
そう言って威圧フェロモンを出すと、男はその場でへなへなとへたり込んだ。
勇士より楽でいい。
あいつにはこう簡単に威圧は効かないから。
それに勇士はこいつと違って沖くんの幸せを一番に考えてる。
勇士は俺が形式上の恋人なんて言ってしまったから出てきただけで、そうじゃなければ沖くんをこっそり見守り続けたんだろう。
それはそれで十分狂気だけどな。
ガクガク震え続ける男に一歩一歩近づいていく。
近づくほどに男は苦しそうに息を乱した。
「金輪際、沖くんに関わるな。次に見つけたら今度は殺す。」
「ハッ、ハッ、で、でも、蘭丸の、ことっ、好きなんだっ、、、ハッ、好きっだからぁ」
汚い顔で涙と鼻水をボロボロ流すこいつは以前見たお綺麗な顔とは程遠い。
俺は長く深ーいため息を一つ吐くと、こう言った。
「じゃあ、一つ約束してやる。俺がもし、沖くんを裏切るようなことがあれば、お前は好きに沖くんにアタックすればいい。俺は止めねーし、潔く手を引くよ。その代わり、そうじゃない場合はお前は沖くんに近づくな。ストーカーもやめろ。」
「・・・・・わ、分かった。それでいい。」
・・・・全く。沖くんの元カレは癖の強い奴が多すぎる。
まぁ、俺が言えたことではないけど。
「グスッ、本当は分かってたんだ・・・・こんなことやっちゃいけないって。でも、どうしても抑えきれなくてっ・・・・。」
プレゼントを抱き締めて年甲斐もなく泣きじゃくる男。
前の恋人たちにそこまでさせる沖くんは単純に凄いと思う。
でも、付き合えば分かる。
それだけの魅力が彼にはあるのだから。
だって彼といるとひどく落ち着く。
美味しいご飯を作ってくれて、いつも朗らかに微笑んでくれる。
口数の多い方ではないけれど、一緒にいると楽しくて、いつの間にか自然と笑ってしまう。
だから、俺はいつでも彼に会いたくなる。
あと、彼は気にしてるようだが、あの大きな体もいい。
包容力があって時たま無性に甘えたくなる。
それに、まぁ、抱きがいもある。
付き合ってみて、元カレたちがおかしくなるほど、彼にハマる理由がよく分かった。
最初は好きになるつもりなんてなかったのに、俺も早々にノックアウトされてしまった。
きっと俺も捨てられたら彼に狂う一人になるだろう。
いや、、、もうだいぶ手遅れかもしれない。
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