運命の番はこの世に3人いるらしい

さねうずる

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29 一ノ瀬視点 その5

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「あっ、一ノ瀬さんおかえりなさい。」

「ただいま。」

家に帰ると、寝間着姿の沖くんがわざわざ玄関で迎えてくれる。

いつ来るか分からない相手を待っていたため、家に着く頃にはすっかり日付も変わっていた。


「寝ててよかったのに。」

「見たいテレビがあってたまたま起きてたんです。」

多分だけど、気遣い屋の彼は家主の俺より先に寝るのがバツが悪かったんだろう。

いじらしい嘘に思わず笑みが溢れた。

「服、、、似合ってる。」

「っ・・・・//ありがとうございます。」

恥ずかしそうに俺の貸したTシャツ裾をイジる沖くん。
沖くんもオメガにしたらかなり長身だが、それでも俺よりも10センチ以上小さい。

少しだけ大きめの服に照れている姿が可愛くて思わず抱き締めたくなる。
まぁ、万が一彼が俺越しに4番目の元カレくんの匂いに気付いたら嫌なので、実際に抱き締めたりはしないが。。。

「風呂入ってくるから、先寝てていいよ。」

「分かりました。お休みなさい。」



シャワーで体を流す間、これからのことについて考える。

まず、形式上の恋人を卒業しなければならない。
自分の気持ちをごまかしごまかし来たが、もう限界だ。
ライバルが多いし、一刻も早く彼を手に入れたい。


そして呼び方もできれば自然にシフトしたい。
俺は未だに沖くんと呼んでいるし、彼は俺を一ノ瀬さんと呼んで敬語を使っている。

俺以外の、例えば勇士とかさっきのストーカーの彼が、沖くんを「蘭丸」と呼ぶ度に腹の中にドス黒いものが渦巻く。
俺のオメガだという独占欲みたいなものだろうか。

経験したことはなかったが、あまりいい気持ちではない感情だ。



そして、形式上の恋人を止めるためには沖くんにも俺を好きになってもらう必要がある。

もっと時間をかけてゆっくり落としていけばあるいは可能性もあるかもしれない。

でも、沖くんは魔性だ。
ライバルは多い。
それに本人に自覚がないため、隙だらけなのもいただけない。
俺の目の届かないうちに誰かの番にでもされたら、、、

考えただけで悍(おぞ)ましい感情が膨れあがり、ついつい威嚇フェロモンが噴き出してくる。

悠長に構えている時間はない。

「・・・・準備するか。」

まだあと1週間ある。
時間は十分だ。



シャワーから上がると脱衣所に沖くんが着ていた服が綺麗に畳まれて置いてあった。
シャツを手に取り、顔を寄せる。


スッとする爽やかな甘い匂い。
他のオメガみたいな砂糖菓子のような甘ったるさはない。


「いい匂い。」


ずっと嗅いでいたくなる匂いだ。

あぁ、、、可愛い沖くん。俺の・・・・愛しいオメガ。
過去付き合った恋人たちは、みんなおかしくなってしまったんだと思ってた。

でも、今ならはっきり分かる。
それが恋だ。


早く沖くんも俺みたいになればいい。
俺に狂えばいいーーーー。












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