運命の番はこの世に3人いるらしい

さねうずる

文字の大きさ
39 / 48

38 避妊は100%ではない

しおりを挟む
 
次の日、無理を押して出勤するとそこら中から漂う食べ物の匂いで吐き気がした。

ティッシュで鼻栓をして何とか凌ぐ。
マスクをしているためバレはしないが息が苦しい。

しかも今日に限って、やけに唐揚げ定食が売れるので、追加で揚げることになって、グロッキーに拍車がかかった。

15:00になり素早く退勤すると、一番近いオメガ科のある病院に駆け込む。

待っている間、気のせいであってくれー!と何度も祈りを捧げたけど、その願いは天に届かなかった。


「妊娠8週目ですね。」

想像してたけど、想像してなかった・・・・。

「で、で、でも、ちゃんとコンドームしてましたし、アフターピルも飲みました。そんな、、、そんなことあります⁉︎」

「まぁ、避妊は100%じゃないので。0.01%が大当たりしたんでしょうね。」


あー、どうしよう。どうしよう、どうしよう。
コンドームしてアフターピルを準備しておくほどには一ノ瀬さんは子供を望んでいない。
つまり子供つくる気は0だったということだ。


『子供できたよ‼︎』なんて言ったらどうなる⁇
堕ろせ、、、はさすがにない、と信じたい。

複雑な心境のまま家に帰ると、珍しく一ノ瀬さんが早くに帰宅していた。


「おかえり、蘭丸。遅かったな?」

「あっ、、その、びょ、病院行ってて。」

「ふーん。なんで?」

こういう時の一ノ瀬さんはなんかいつも怖い。目の奥が笑ってないし、嘘ついてないか尋問されてるみたいで息苦しくなる。


「抑制剤が、、、切れそう、だったから。」


嘘、ついちゃった・・・・。
だって、なんか怖かった。
今みたいなトーンで、
「ふーん。じゃあ、堕ろして。」
なんて冷めた声で言われたら、と想像してしまい、恐怖に駆られて咄嗟に出まかせを言ってしまった。


探るような目でジロリと僕の目を見つめる一ノ瀬さん、、、暫くしてフッと笑みを浮かべる。

「そっか。あっ、今日の夕飯は出前でも取る?」

少し張り詰めた糸をプツリと切るような明るい笑顔に僕もホッと頬を緩ませた。


「何頼む?」
「ピザ以外ならなんでも。」
「ははっ、蘭丸はそこはいつも徹底してるなw」


だって、一ノ瀬さんを盗られたくないから。
子供までできちゃって、今、一ノ瀬さんに捨てられたら、、、僕は、どうなっちゃうのかな。


一ノ瀬さんは僕のこと番にしてくれる気はあるのかな?
僕のこと、運命の番より好きになってくれるかな?

ねぇ、、、一ノ瀬さん。
僕、子供ができたよ。
一ノ瀬さんと僕の子だよ。
きっと産まれたらすごく可愛いと思うんだ。
一ノ瀬さんと一緒に育てたいな。

だから、これからも僕とずっと一緒にいてくれますか?






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結済】どんな姿でも、あなたを愛している。

キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。 声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。 「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」 ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。 失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。 全8話

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

婚約破棄を望みます

みけねこ
BL
幼い頃出会った彼の『婚約者』には姉上がなるはずだったのに。もう諸々と隠せません。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。

みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。 愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。 「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。 あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。 最後のエンドロールまで見た後に 「裏乙女ゲームを開始しますか?」 という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。  あ。俺3日寝てなかったんだ… そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。 次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。 「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」 何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。 え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね? これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

処理中です...