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38 避妊は100%ではない
しおりを挟む次の日、無理を押して出勤するとそこら中から漂う食べ物の匂いで吐き気がした。
ティッシュで鼻栓をして何とか凌ぐ。
マスクをしているためバレはしないが息が苦しい。
しかも今日に限って、やけに唐揚げ定食が売れるので、追加で揚げることになって、グロッキーに拍車がかかった。
15:00になり素早く退勤すると、一番近いオメガ科のある病院に駆け込む。
待っている間、気のせいであってくれー!と何度も祈りを捧げたけど、その願いは天に届かなかった。
「妊娠8週目ですね。」
想像してたけど、想像してなかった・・・・。
「で、で、でも、ちゃんとコンドームしてましたし、アフターピルも飲みました。そんな、、、そんなことあります⁉︎」
「まぁ、避妊は100%じゃないので。0.01%が大当たりしたんでしょうね。」
あー、どうしよう。どうしよう、どうしよう。
コンドームしてアフターピルを準備しておくほどには一ノ瀬さんは子供を望んでいない。
つまり子供つくる気は0だったということだ。
『子供できたよ‼︎』なんて言ったらどうなる⁇
堕ろせ、、、はさすがにない、と信じたい。
複雑な心境のまま家に帰ると、珍しく一ノ瀬さんが早くに帰宅していた。
「おかえり、蘭丸。遅かったな?」
「あっ、、その、びょ、病院行ってて。」
「ふーん。なんで?」
こういう時の一ノ瀬さんはなんかいつも怖い。目の奥が笑ってないし、嘘ついてないか尋問されてるみたいで息苦しくなる。
「抑制剤が、、、切れそう、だったから。」
嘘、ついちゃった・・・・。
だって、なんか怖かった。
今みたいなトーンで、
「ふーん。じゃあ、堕ろして。」
なんて冷めた声で言われたら、と想像してしまい、恐怖に駆られて咄嗟に出まかせを言ってしまった。
探るような目でジロリと僕の目を見つめる一ノ瀬さん、、、暫くしてフッと笑みを浮かべる。
「そっか。あっ、今日の夕飯は出前でも取る?」
少し張り詰めた糸をプツリと切るような明るい笑顔に僕もホッと頬を緩ませた。
「何頼む?」
「ピザ以外ならなんでも。」
「ははっ、蘭丸はそこはいつも徹底してるなw」
だって、一ノ瀬さんを盗られたくないから。
子供までできちゃって、今、一ノ瀬さんに捨てられたら、、、僕は、どうなっちゃうのかな。
一ノ瀬さんは僕のこと番にしてくれる気はあるのかな?
僕のこと、運命の番より好きになってくれるかな?
ねぇ、、、一ノ瀬さん。
僕、子供ができたよ。
一ノ瀬さんと僕の子だよ。
きっと産まれたらすごく可愛いと思うんだ。
一ノ瀬さんと一緒に育てたいな。
だから、これからも僕とずっと一緒にいてくれますか?
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