僕のフェロモンでアルファが和んでしまいます

さねうずる

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ヒート到来


その日、ハルは朝から火照る体の異変に気付いていた。


今日からヒートが始まる。
あぁ、また1ヶ月もあれに耐えなくちゃいけないのか。

食料は保存食を大量に用意してある。
治療院も2,3日前から休業にしている。
王太子様たちにはこの間伝えたのでそちらも問題ない。

あとはハルの気力と体力が保つかどうかだけの問題だ。

必要なものを持って家の裏手にある納屋に移動した。
中はベッドが一つ置いてあるだけで他にはなにもない。
師匠がいたときからヒートはここで過ごしていたため独り住まいになった今でもそうしている。
ここのが狭くて落ち着くのだ。


あぁ……嫌だ。最悪だ。


ベッドに横たわると徐々に徐々に息が乱れてきた。
体の熱も増し、下腹部がジンジンともどかしくなってくる。

下履きの中に手を忍ばすとすでに下着が少し濡れてしまっていた。
後ろの穴から愛液が溢れだす。

無駄な機能すぎる……。
こんなに濡れてアルファを受け入れる準備をしたところで、ハルに情欲を感じるアルファなどこの世に存在しないのだから。

今だって体が熱く発汗してるためフェロモンがたくさん出ているのだろうが、出したところでアルファはまったり落ち着くだけだ。

このようなはしたない格好をしたハルを見ても、情欲とは程遠い感情を持つのだろう。

なんて不毛なんだ。
痛いほど立ち上がった自身の陰茎を握り締め、ハルは歯を食いしばった。





ヒートが始まってから1週間――――――

ツラい……しんどい……。
ケチらないで抑制剤買ってみればよかった。
ちんちんもお尻も痛いのに弄らずにはいられない。

やっと波が収まり、今は束の間の休憩だった。
水を一杯飲んで、体を浄める。
またすぐぐずぐずになるのだが、頭が正気のときにやっておかないと……なんせ1ヶ月も続くのだ。

今回のヒートは一年前よりもヒドい。
理由は完全に分かっていた。
ヒートの波がMAXのときに頭に思い浮かぶ人物がいるからだ。

普段、アルファの匂いにはさほど敏感じゃないハルだが、ヒートになった今……なぜだか凄くあの匂いが恋しい。

あぁ、近くにいてほしいのに……。
絶対に敵わないと分かりきっているその願いは、あと3週間もヒートが残っているハルにとって絶望と同じだった。




それから何日か経ち、少し落ち着いていられる時間が長くなってくる。
長いヒート期間、波があって最初の1週間がやはり一番辛いのだ。
1週間ちょいぶりに納屋から出ると朝日が眩しい。
寝てばかりですっかり鈍ってしまった体は怠く、歩くと重く感じる。
風呂まで行き、久しぶりに湯船に浸かった。

「はぁー、気持ちいい。」

体がさっぱりすると心も多少軽くなる。
まだ後半戦が残っているが、戦う気力も出てくるというものだ。

新しいシーツと服、タオルなんかを持って納屋に戻ると、鬱々とした空気が充満していた室内も、少し風の通りがあったせいかましになったなように感じた。


その日の夜、再び熱いヒートの波がくる。


夜は長く、一人は寂しい。
目を瞑り彼の顔を思い浮かべる。
彼の匂いや、笑った顔。
上から僕を組み敷く彼を想像する。

自分の手じゃ物足りない……。

そう熱い息を吐いた時、恋焦がれていた芳しいアルファの匂いがして、脳が痺れた。


「……ウソ。なんで、、、」


匂いは段々強くなって、この納屋の方へ近づいてくる。
思わず扉の側に駆け寄ると耳をそば立てた。


「ハル……。ここを開けて。」


声を聞いた瞬間、体がじんと熱くなる。
思わず、足を擦り寄せた。

「ハル、いい子だからここを開けて。」

穏やかに聴こえて強制力のあるその声に扉を開けてしまいたくなる。
だが、それは叶わない。


「……無理です。僕、ヒートなんです。辛いんです。
あなたの顔を見たら僕は抑えられないんです。
……でも、あなたはきっと平気でしょ?いつもみたいに『落ち着くなぁ』って笑うんでしょ?だって僕のフェロモンじゃ……あなたを誘惑することなんてできないんだから。その気にならないあなたにバカみたいに縋りつくなんて耐えられないんですよ。」

扉に額をつけながら、ボロボロ涙が出てくる。

なんで、僕のフェロモンはこんな欠陥品なんだろう。
みんないい匂いだと褒めてくれても本当の意味で僕を欲しがってくれる人なんていないのだから……。


嗚咽を我慢できなくなり、少しだけ扉から離れた。
僕みたいなデカいオメガが泣いたところで可愛くない。
低くて可愛くない泣き声を聞かれたくなかった。


その時、ガタガタ扉が軋んで、バキリとすごい音がする。木屑がパラパラと床に落ちていった。

鍵を掛けてたはずの扉が無理やり開かれ、空いた扉の向こうには丸くて黄色いお月様……それとそっくりなアンバーの一対の瞳がギラギラとこちらを見つめていた――――――。

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