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聞きたくなかった事実
「ハルちゃん聞いたかい?王太子様がとうとう他国から嫁を貰うらしいな。」
施術中の雑談でそう言ったのは常連のキリじいさん。
キリじいさんは貴族ではないが、有名な製紙会社の会長だ。新聞も作って売ってるためこうして雑談で話してくれる内容はまだ世に出回らない最新の情報ばかりだ。
いつもなら勉強になるなーなんて呑気に聞いていた。
だが、今回はそんな心持ちではいられない。
「……えっ?」
「やっぱ王宮に出入りしてるハルちゃんでも知らないか。リリアナ国王の三番目の息子がな、リンダン様って言うんだが知ってるか?」
知ってる……。庶民のハルでも知ってるくらい有名人だ。なんせ世界で一番美しいオメガと評されているのだから。よく新聞でも目にする名前である。
「国内じゃうちんとこの王子様の御眼鏡に適うオメガがいないってんで国王も困ってたんだが、なんとリンダン様本人から婚約の打診が来たんだと。
レオハルト殿下もさすがにあんな美しい方の申し出は断らんだろうし、そのまま結婚って流れになるだろうな。」
いつかは来るだろうと思ってたけど、存外早かったな。
それともハルとの件で、望まぬ番契約の危機を感じて急いだのかな。。。
どちらにしても……胸が痛い。
あのヒート以降も王宮に通っていたが、王太子様は前よりだいぶ口数が減ったし、そんな話をハルにしてくれる訳もない。
それに施術中に眠ることもなくなった。
彼がハルの前で警戒心を解いていたのは、特殊オメガでアルファを誘惑することがないからだ。
何故だかは分からないけどハルのヒートはアルファである彼のラットを誘発した。
つまり、王太子様にとってハルはもう、ヒートを利用して無理やり番になろうとした裸男と同じ、気の抜けない相手になったということだ。
ジワリと涙が浮かぶ。
キリじいさんにバレないようにこっそり袖で目元を拭った。
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