僕のフェロモンでアルファが和んでしまいます

さねうずる

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オリバーのお話 その四


「お前は余計なことしやがって!!オメガなんだから一晩くらい我慢しろ!何のためにお前みたいな出来損ない雇ってると思ってんだ!!」


オリバーが酒場に戻った時、ちょうど中年の男が彼に怒鳴りつけているところだった。
二人とも音もなく戻ってきたオリバーには気付いていない。


オリバーは特に何も言わずに、冷めた目でその様子を見守った。


「すみません。次はちゃんとやりますんで、クビにしないでほしいっす。」

相変わらず口元にはヘラヘラした笑みを浮かべているが、目は今にも泣き出しそうだ。

「次はちゃんと客をとれよ。」

「・・・・はい。」


まぁ、ここまでだな。
胸糞悪い会話を聞き終わると、オリバーはわざと足音を立てて二人に近づいた。

中年の男性は一瞬恐怖に顔を強ばらせ、彼の方は・・・・よく分からない。驚いているようにも怖がっているようにも悲しんでいるようにも見える。

「先程、売娼強要は犯罪だと申し上げましたが?学習能力がないのでしょうか?嘆かわしい。」

「あっ、あんたに関係ないでしょう。
大体誰なんだ!!早く金払って出て行ってくれ。」

オリバーが近づく度に一歩・・・・また一歩と後ずさる中年の男性は額に大量の汗をかいている。
恐らくアルファの威圧に充てられているのだろう。
体をガタガタ震わせていた。

「関係ないわけないしょう。その法律はこの私が制定したのですから。
現国王は番である王妃を大変愛してらっしゃいます。
オメガが暮らしやすいよう精力的にオメガの社会進出政策に取り組んでいらっしゃる。

あなたみたいな輩がいると邪魔なんですよ。
オメガはあなたみたいなバカどもが好き勝手に蹂躙していい存在じゃないんです。
その矮小な頭にしっかり叩き込んでください。」

オリバーは言いたいことを言い終わると、また警ら隊の詰所に飛ぶ。

全く面倒臭い。
バカが多くて本当に困る。

再び騎士たちに突き出すと酒場へと飛んだ。

彼は先ほどと同じ位置でポカンと突っ立っていた。

「さて、あなたにも言わないといけないことがありますね。」

「・・・・はい。変なことに巻き込んで申し訳ないっす。」


「そんなことではありません。
なぜ尻を触られたときに抵抗しなかったんですか?」

「・・・・だって俺、オメガっすから。こんなの日常茶飯事だし、元々こういうの込みで雇われてるっつーか・・・・」 

後ろめたいのか彼は目を泳がせてこちらを見ようとしない。

「オメガだからなんです?オメガだろうがアルファだろうが知らないおっさんに尻を触られたら不快に思うのは同じです。
大体なんであんな奴のやってる店で働こうと思ったんですか?王宮の掃除係だけじゃダメなんですか?」


「それは・・・・しゃ、借金があって。」

気まずそうに言う彼を見て、オリバーは思わずため息を吐く。
すると、彼の肩が大げさに揺れた。

「いくらです?」
「・・・・えっ?」

「だから、借金。いくらです?」
「ご、500万銀」

「随分高いですね。一体なぜ?」
「が、ガキの頃、貴族に売られたんすけど、すぐ特殊オメガだって分かって・・・・金返せって言われて・・・・。
でも、親父がもう使っちまってて返せなくて・・・・それで・・・・」

恥じるように俯いた彼を見て、オリバーは再びため息を洩らす。

「あぁ、そういうことですか。分かりました。お金貸しますよ。」

「ちがっ・・・・そういうつもりじゃ・・・・」

「別に気にしなくていいです。」

「違うっ!!いりません!!そ、そんなつもりで宰相様に声掛けた訳じゃないっす。
僕・・・・本当にそんなつもりじゃなくて・・・・」


「分かってますよ、そんなこと。」

オリバーが何でもないことのように言うと、彼は「・・・・へ?」とマヌケな声を出す。
その拍子にオリバーと同じヘーゼル色の瞳からポロリと涙が一粒零れた。

「あなたがお金のために私に近づいてきたなんて思ってないですよ。」

「ほ、ほんとに・・・・?信じてくれるんすか?」

一粒溢れると決壊したように次々と涙が溢れ出す。
オリバーはハンカチを出すと彼に手渡した。

「私は宰相ですよ。物事を見定める目には自信があります。」

不敵な笑みを浮かべてそう言うと、彼はポカンとした顔から次第に笑みを浮かべた。

「さすがっす。ありがとうございます。」

彼は、「何とか自分で返しますから。」と言うが、彼に任せていたらこの先何十年かかるか分からない。

というか、そもそもそんな金を返す義務はない。
金を返すという名目で現場を押さえ、その貴族を人身売買でしょっぴく。

どいつもこいつも人身売買は犯罪だと言っているのに。
一度大々的に取り締まりをしたほうがよさそうだ。


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