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オリバーのお話 その六
「とにかく水を・・・・」
家に飛び、彼をソファに座らせると水を取りに行こうと背中を向ける。
その背中に衝撃を受けたかと思うと、腹に腕が回ってくる。
「どうしました?座って待っていてください。」
努めて冷静を装うが、その実オリバーは焦っていた。
本能に飲まれそうだ。
こんな感覚は初めてで自分でも戸惑っていた。
「僕ばっか・・・・」「えっ?」
「僕ばっか発情して・・・・あなたは、ヒック、平気な顔して。なんでっ!?なんで僕はっ、あなたを誘惑できないんすかっ!?
欲しがってよっ!!僕だってオメガなのにっ!!一晩だけでもいいからっ!!これ以上我儘言わないっすから!!
ヒック、お願い・・・・っすからぁ。」
背中が熱い。
燃えるように熱い体温が背中越しに伝わってくる。
もう夜中の零時を越えようかという時刻・・・・
時計の音が「ボーン ボーン」と響く中、オムライスの匂いが薄くなり、だんだんと東洋の酒のようなフルーティーなアルコールの香りに変わる。
飲んでもいないのに酔いそうだ。頭がくらくらする。度数の高い酒に似た魅惑的なフェロモンの香りにオリバーの体はカッと熱くなった。
「私は一夜の遊びを好みません。」
オリバーが言った瞬間、腹に回された彼の腕が少し強張る。
まるで離さないとでも言うように、しっかりシャツを握っている。
「私が誰かを抱くとしたら、それは恋人かそれ以上の関係の人だけです。」
「う゛っ、ぅわぁぁぁーん。やだ!!好きなんすもん!!僕、宰相様のことずっとずっと好きだった。一回くらい思い出くれたっていいじゃないすかっ!!ふぇえぇん」
子供みたいに泣きじゃくる彼の涙で背中の一部が冷んやりとする。
イヤ!イヤ!と顔を背中に擦り付ける彼の腕を取り、何とか引き剥がす。
細い体で意外と力が強くて苦労した。
「一回でいいんですか?」
「はい。ヒック、それでちゃんと諦めますからぁ、うっ、ヒック」
「ふーん。せっかくなら恋人になって欲しいと言おうと思ったんですが、あなたが一回で満足と言うならそうしましょうか。」
オリバーが意地の悪い顔でそう言うと、彼は驚いたように目を見開いた。
一瞬間を置き、首を横に振る。
「や、ヤダっす。こい、恋人がいい!!」
「ハハッ、すみません。意地悪しちゃいました。じゃあ、私の恋人になってください。」
オリバーはこの時、レオやゼノウが言っていたことが少し分かったような気がした。
そう、彼に初めて会った時から気付かぬうちにビビッと来ていたのだ。
彼の発情した顔を見て、なぜか自分のモノだという独占欲が湧いた。
「なる。なるっす。宰相様の恋人にしてください。」
先ほどの涙はどこへやら、キラキラと瞳を輝かせ、見えない尻尾を振りまくる彼の頭を優しく撫でる。
「それじゃあ、やるべきことは一つですね。」
オリバーは目を細めて、口元をニッと引き上げた。
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