僕のフェロモンでアルファが和んでしまいます

さねうずる

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ザックのお話


「おはようございます。」

「・・・・ん?おはよっす」

ザックは目覚めると自身にかけられた挨拶に反射的に言葉を返す。

ガラガラとした掠れた声しか出なかったことに自分でも驚いた。

いつもの藁半紙みたいなペラペラの布団ではなく、ふかふかで目がチカチカするほど真っ白なシーツにも驚いたが。

ただ最もザックを驚かせたのは、肩肘付いた手に頭を乗せてこちらを見ているオリバー様の存在だ。
いつもの理知的なメガネはかけておらず、前髪が下ろされていて雰囲気がまるで違う。

普段はカチッとした印象だったが、今は清々しさとちょっとのヤンチャさがプラスされていて、それはそれでオリバー様にとても似合っていた。

そっか・・・・、僕昨日オリバー様にだ、抱いてもらったんだった。

自分のことでいっぱいいっぱいだったが、オリバー様もちゃんと気持ちよくなれたのだろうか。
心配だ・・・・。


「あっ、あの・・・・昨日は、我儘言ってす、すみませんっす。」

恥ずかしさで火照る顔を掌で冷やしながら聞く。

オリバー様は目を細めると、ザックの髪に指を絡ませながら言葉を返した。

「いえいえ、こちらこそ無理をさせてしまいました。あんまり可愛いものですから、私も我慢がきかなくて。」

一房掬った髪の先に「チュッ」とキスが落とされる。
その色香漂う仕草に、朝から目に悪すぎる。とザックは目元を赤らめた。

「そう言えば気になってたんですが、ザックと私が会ったのはこの間が初めてではないのですか?
『ずっと好きだった』とおっしゃってましたが。」

「あっ、えーと・・・・実は子供の頃、宰相様に助けてもらったことがあって、それからずっと好きで・・・・気持ち悪くてすみません。」


重いと言われるかも・・・・。
言うつもりなんてなかったのに昨日のザックはオリバーのアルファフェロモン当てられてどうかしていた。
今更言っても遅いが。



ザックの親父はろくでなしでザックはまともに面倒を見てもらった記憶が一切ない。
国で義務とされている検査なんか受けさせてもらえるわけもなく、14歳のときに初めてヒートを経験するまで自分がオメガだと知らなかった。

親父は特殊オメガという存在を知らなかったので、オメガならなんでも売れると思ったらしい。
貴族に売り飛ばされたが、すぐに特殊オメガだとバレた上、突き返されて借金まで背負った。
親父は貴族がダメなら別のところにと、今度は人攫いの悪い連中にザックを二束三文で売りつけた。

そいつらに縄で括られて、引きずられてるところを助けてくれたのがオリバー様だ。
周りの人たちはみんな見て見ぬふりだったのに。
小汚いガキが一人どうなろうが、日々の生活で精一杯だった貧民街の人間には関係ないから仕方のないことだけど。

オリバー様はその日たまたま視察に来ていて、塵でも払うかの如く人攫いを地面に叩きのめすとザックにオメガ用のシェルターを紹介してくれた。
王太子様が最近作ったばかりで、職業斡旋もしてくれると。

それからあくせく働いて、勉強して、何度も何度も王宮の登用試験を受けて、6年目にしてやっと掃除係として雇ってもらうことができたのだ。


「そうだったんですか。」

「キモいっすよね。自分でもそう思うんすけど、どうしても諦めきれなくて。すみません・・・・。」

どんどん言葉が尻窄みになっていく・・・・。
自分で言っておきながら嫌悪の眼を向けられていたら立ち直れないと、ザックは真っ白なシーツを必死に睨んでいた。


「私はあまり人に執着したこともないですし、されたこともないんですが。
うん、なかなか悪くないものですね。私に執着するあなたを見ていると気分がいいです。」

眼を細めて口元にうっすら笑みを浮かべるオリバー様はやっぱり美しい。
顔は中性的な美しさなのに、体はアルファらしく逞しい。

自分より遥かに神秘的なヘーゼルの瞳が愛おしげに自分を見つめている。
ザックは今死んだら、きっと世界で一番幸せなのは自分なのだと・・・・大満足で天に召されることができるだろうな、なんて碌でもないことを考えていた。




■◇ ■◇
小話


「ハ、ハル、俺たちの施術してくれてた時って給金どれくらいもらってたの?」

「?月に1200銅ですけど。」

「~~っ!?月1200!?」

レオは悲鳴にならない悲鳴をあげた。
オリバーに自身の元侍従長であるアーカイルの話を聞き、レオは嫌な予感がした。
もしやハルも・・・・と思い、話を聞いたのだ。


「俺を助けてくれたときの報奨金は!?もらってるよね??」

「・・・・・・・・報奨金??」

眼を丸くして首を捻るハルを見て、レオは絶望する。
毎日のように王宮に呼び付けて、そんな安月給でこき使っていたなんて・・・・。

しかも、オメガに襲われたところを助けてくれた時のお礼は、よかれと思ってロマンもへったくれもない金銭という形にしたのに・・・・まさかまるまるアーカイルに横領されていたなんて。

ハルがフェロモンを売らなければならないほど貯金がなかったのは、レオの管理不行き届きのせいだ。

その事実にレオは床に膝をついた。

「ハル・・・・ごめん。ハルが無欲な子じゃなかったら、俺なんかとっくに捨てられていたかもしれない。
甲斐性なしだとハルに見限られなくてよかった。」


「!?!?」

よく分からない質問をしてきたと思ったら、急に一人で絶望し始めたレオを見てハルは混乱した。

このあと落ち込むレオを慰めるために、一晩中よしよしセックスを強いられるのだが、この時のハルはまだ知らない・・・・。


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