10 / 30
オスみが強い
しおりを挟む「1.2.3……1.2.3……そこのステップ違うっ」
「あうーー」
「あうーではく、『失礼致しました。』」
「……シツレーイタシマシタ」
あたしは今、超厳しい先生のもと人生初のダンスレッスンを受けております。
ダンスなんて体でリズム感じる系のしか踊ったことないし。
ちゃんと型に嵌ったダンスってめっちゃ難しい……。
あと同時に話し方とか所作のマナーまで習ってる。
このままだと母親のこと「お母様」とか呼ぶようなお嬢様になってしまうぅぅう。
「……ぴえん。」
「ぴえんじゃねぇ。全然上達してねえじゃねえか。」
最近昼間はアッくんが仕事に行ってる間に、ダンス兼マナーの先生のおうちに行って踊り狂ってる。
今は、夕飯食べ終わってアッくんに練習の成果を見せてたんだけど、ステップ間違えまくって最終的にボックスステップになった。まじ謎。
「なんか肩下げないようにとか姿勢とか意識してると足が疎かになるんだもん~~。」
足を意識しすぎると目線が下がったり、背中丸まったりするし全身に全集中するの至難の技。
「なんかさぁー、ダンスってこの形じゃなきゃだめなの?
洋画のラブコメみたいに、あたしがアッくんの首に両手回して、アッくんがあたしの腰掴むみたいなのはダメ?
あれだったら手下がんないし、アッくんが腰支えてる手であたしの動き操れるし、よくない?」
アッくんの目線が鋭くなるが、あたしには分かる。
この顔は……『意味わかってません』て顔だ。
「ちょっと一回だけやってみよ!ヒール持ってくる。」
アッくんとは身長差があるので、ダンスの時は10センチもあるヒールを履いてる。
それ履くと178センチになるけど、アッくんは190センチ超えてるからそれでも全然見上げなきゃならない。
「よしっ、じゃあアッくんそこ立っててね」
ばっちりヒール履いて、訝しげにこちらを見てるアッくんに近づく。
多分、またアホなことしようとしてんな。……みたいなことを思われてる気がする。
アッくんすぐ顔に出るから。
手の届く距離まで近づくとアッくんの両手をあたしの腰に誘導して、あたしはアッくんの首に両手を回す。
洋画の見よう見まねだけど、確かクライマックスのプロムでのダンスシーンでこんな感じに踊ってたはず……
やばー、憧れのダンスシーン再現できるっ!
そう思って見上げるとすぐそこにアッくんの顔があった……。
…………近い。ヤバい。
若葉色の綺麗な目がまっすぐあたしのこと見てる。
急にドキドキしてきて、顔に熱が集まってきた。
ヤバいヤバい。絶対顔紅いし……。
恥ずかしくなって顔を下げると今度はアッくんの逞しい首筋がすぐ目の前にくる。
筋肉が盛り上がってて、筋が妙に色っぽく感じてしまう。
どうしよ……どうしよ……
想像してた倍くらい距離近いんだけど……
胸とか当たっちゃってるし、ドキドキしてるのバレる、ヤバい……。
「…………」
「…………」
初日に一緒のベッドで寝たのに、なんかその時とは全然違う……。
アッくんの体がすぐ近くにあって、あったかくて、逞しくって、ドキドキして……それで、なんか……なんか…………
「あの……あのさ、アッくん。」
「なんだよ…………。」
恥ずかしくて顔見れないからアッくんの鎖骨に向かって話しかけると、上から返事が返ってきた。
暖炉の薪がパチパチっ小気味いい音を奏でる音だけが静かな部屋に広がってく。
いつもはせっかちなくせに、今のアッくんはあたしが話し出すのをジッと待ってる。
パキンっと薪が大きく割れた音を合図に、ゆっくりと顔を上げた。
やっぱり……アッくんは真っ直ぐあたしの目を見つめていた。
アッくんは人と話す時はしっかり目を合わせる人だから……
そういうとことかどうしようもなく……
「だいすき。」
一度出てしまえば栓が外れたかのように気持ちが言葉となって溢れ出す。
「あたしアッくんのこと大好き。
アッくんとご飯たべてるとき、最高に幸せだなっていつも胸がギュッてする。
たまに笑ってくれたら、嬉しくて泣きたくなる。
こ、こうやって触れ合ったらドキドキして……もっと……もっとアッくんに…………っん//」
言い終わらないうちに、アッくんの口づけが落ちてくる。
おっきな体で力も強いのに、触れるだけの優しい口づけ。
ふにふにすっごく柔らかくてあったかい。
何度も角度を変えては、時折いたずらっぽく下唇をついばんでくる。
答えるようにあたしもアッくんの唇をはんでみると、さっきより少しだけ強く押し付けられて、舌で唇を割開かれた。
舌を絡め取られて、くちゅくちゅといやらしい音がする。
ぬるぬるした熱くて大きな舌が口の中を掻き回していく。
上から覆いかぶさるような余裕のない口づけ……
アッくんの唾液が舌を伝い口の中に流し込まれて、飲み込むとき「んっ」と甘い声が漏れた。
「んっ、あっ……」
口の中も脳みそもトロトロに溶かされたころ、ようやく唇が離される。
恐らく今のあたしの顔はさぞやみっともないことになっているだろう。
熱に浮かされたままアッくんを見ると、切れ長の鋭い目がいつも以上にギラギラしていた。
ヤバい……アッくんオスみが強い。
自分に向けられる獲物を狩るような獰猛な目に、今にも腰砕けにされそうになっていると、アッくんの口が動いた。
「ベッド行くぞ。」
「はひ……//」
34
あなたにおすすめの小説
義姉の身代わりで変態侯爵に嫁ぐはずが囚われました〜助けた人は騎士団長で溺愛してきます〜
涙乃(るの)
恋愛
「お姉さまが死んだ……?」
「なくなったというのがきこえなかったのか!お前は耳までグズだな!」
母が亡くなり、後妻としてやってきたメアリー夫人と連れ子のステラによって、執拗に嫌がらせをされて育ったルーナ。
ある日ハワード伯爵は、もうすぐ50になる嗜虐趣味のあるイエール侯爵にステラの身代わりにルーナを嫁がせようとしていた。
結婚が嫌で逃亡したステラのことを誤魔化すように、なくなったと伝えるようにと強要して。
足枷をされていて逃げることのできないルーナは、嫁ぐことを決意する。
最後の日に行き倒れている老人を助けたのだが、その人物はじつは……。
不遇なルーナが溺愛さるまで
ゆるっとサクッとショートストーリー
ムーンライトノベルズ様にも投稿しています
『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。
カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」
なんで?!
家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。
自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。
黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。
しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。
10人に1人いるかないかの貴重な女性。
小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。
それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。
独特な美醜。
やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。
じれったい恋物語。
登場人物、割と少なめ(作者比)
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました
えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。
同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。
聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。
ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。
相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。
けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。
女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。
いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。
――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。
彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。
元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる