強面騎士団長、異世界ギャルを嫁にもらう

さねうずる

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熱に浮かされて

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「ん?アッくん?アッくんどこ……?」

「椿っ、目ぇ覚めたか‼︎」


ソファの近くまで引き摺ってきた椅子に座っていたら、俺はうっかり寝てしまっていた。
すっかり辺りは暗くなっていて、急いで電気をつける。

「具合はどうだ?寒気はあるか?」

「だいじょぶ。アッくん帰ってきてくれたの?」

虚な目で視線が合わない。
心配になって頬に手を添えると燃えるように熱かった。

「……熱があるな。何か食べれそうなら粥を作ってくる。」

「どこにもいかないで……お願い。
あの子のところ……いかないで。」

椅子から立ち上がりかけた俺の服を弱い力で握りしめ、熱に浮かされた口で脈絡のない言葉を吐く。


多分あの子っていうのは聖女のことだ……。
一昨日、護衛の件を話した時も気にしてる素振りだった。
昨日は夜勤の部下が見覚えのある籠から焼き菓子を取っているのを見て、菓子の入手先を聞いたらやはり椿からの差し入れだった。
訓練で一日詰所にいると言ったから、持ってきたんだろう。
誰かから俺が聖女の警護に呼び出されたことを聞いたに違いない……。



「行くわけねえだろ。ずっとそばにいる……。」

汗ばんだ額にキスを落とすと、安心したようにふにゃりと微笑んだ。


「……そろそろ潮時か。」

椿が元気になったら言わなくてはならない。
他の奴らにもバレる頃だろう。

汗で張り付いた髪を優しくすいて、キッチンへと向かう。
下手くそな粥を作りに。





*+*+*+*+*+*+*+

夢を見た――――、


目の前には3つ上の姉。
あたしがど田舎でギャルを目指したのも上京したのも全部この3つ上の姉、蓮華(れんげ)の影響だ。
いつも己の個性的なファッションを貫き、誰に何を言われても曲げない姉の不屈の精神をあたしは尊敬してる。


「お姉‼︎隣の部屋の女があたしのアッくんにちょっかい掛けるの……。
でも向こうは聖女で、この国を救う大切な存在らしくてあたしはただのオマケだし……ねぇ、どうしたらいい?
お姉ならどうする?」


「はぁ!?あんたそれまじに言ってんの?」

出た……。お姉の口ぐせ。
お姉は口は悪いけど、いつもあたしの世話を焼いてくれる。
あたしの世話好きもお姉に似たのかもしれない。

「聖女とかオマケとか関係ねーし。
自分の男盗られてピーピー泣いて引き下がるなんざギャルの風上にもおけねーから。
そんなんここであたしにグチってる暇あるなら、ワンパン入れて『あたしの男にちょっかいかけんじゃねーよ。』ぐらい言ってきな‼︎」


「……ワンパンはさすがに入れないけど、元カレもあいつに盗られたんだよ?
王宮でイケメンはべらして贅沢してるって言うのにいちいちあたしのアッくんにまで手出すとか信じられなくない⁉︎ 

なんかお姉に話してたらめっちゃイラついてきたっ。
今度あったらガツンと言ってやる。」

「そういう女は人のもん盗るのが好きなだけ‼︎
性癖歪んでんだよ‼︎
人のもん盗ったらどうなるか……あんたが分からせてきなっ」


「分かった‼︎お姉‼︎あたし頑張るっ」




チュンチュン――――――


「はっ!!夢か……。」

雪に埋もれてから4日間熱を出し、今日は5日目の朝だ。
病み上がりだというのにあたしは闘志に溢れていた。

「行かなきゃっ‼︎あたしからアッくん奪おうなんて甘いんだよ‼︎絶対渡さん‼︎見てろよー聖女めっ‼︎」


「誰が誰に奪われるって?」


ベッドから飛び起きようとしたら、ちょうどアッくんがお盆を持って部屋に入ってくる。

ほかほか湯気の立つそれはアッくん特製激味濃お粥だ。


「アッくんが‼︎あの聖女に‼︎」

「そんなことあるわけねーだろ。」

「ある‼︎あたし見たんだからね‼︎

アッくんが‼︎……あ、あ、アッくんがあの子と腕組んで歩いて、しかも……じ、自分の瞳と同じ色の宝石までプレゼントしてっ‼︎しかもしかも……帰ってきてくれなかったし……。」

あの時のことを思い出して、また涙が出そうになる。風邪ひくと心まで弱っていけない。

泣いてるとバレるのが悔しくて、下を向いて唇を噛んだ。
痛みで涙なんか吹っ飛べばいい。


「椿、こっち見ろ。顔上げろって、な?お前が心配することなんて一つもないから。」

こんな時だけ優しい声で囁いたりなんかして……手なんか優しく握って……

弱った心に優しい対応は沁みるんだ……絶対狙ってやってる‼︎
けどまんまとそれにハマって涙がポロポロシーツに溢れた。


「だって……あ、アッくんはあたしのなのにっ
ベタベタ触って……せいじょだからっ……て、アッくんにま、守っ……てもらって、ヒック
あ、あたしのアッくんだもん、ぜったい……あげないもん。」

「俺はお前のもんだし、お前だって俺だけのもんだろ?俺が愛してるのはお前だけだ、椿。」


柔らかな声でそんなこと言いながら抱きしめるもんだから涙腺が決壊した。
アッくんにしがみ付きながら暫く泣いて、目元を腫らしながら顔を上げる。
我ながらチョロいな、自分。


「ははっ、ひでえ顔。
まぁ、雪の中から見つけた時より全然マシだけどな。

お前は俺のなんだから今度勝手に死にそうになったら承知しねえ。
雪の中からお前見つけた時俺がどんな気持ちだったか分かるか?」


「うん。ごめん……。今度からはもっと気をつける。」

「俺も帰ってこれなくて悪かった。詰所で仕事してたら雪がすごくて帰れなくなった。
今度からは気をつける。」

あなた誰?ってぐらいアッくんが甘い。
目元にキスしてくれるし、ヨシヨシしてくれるし、なんか誤魔化された感はちょっとあるけど分かってても完全に絆されてしまった。

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