25 / 30
聖女パニック
暫くアッくんにギュッとしてもらって落ち着いた頃に体を離す。
「……それで椿に大事な話がある。」
「ん。なに?」
「お前は聖女だ。」
「……ん?なに?もっかい言って?」
「お前が本当の聖女だ。」
「ん?ん?何言ってるかちょっと分からない。」
アッくんあたしの心配しすぎて頭イカれたかな?
「聖女の特徴は黒髪黒目だ。
お前は最初目の色が灰色がかっていたし、髪色も違う。だから、もう一人が聖女だと俺たちは勘違いした。」
自分の髪を触って確かめるとピンクの毛先が視界に入る。
「お前……地毛は黒だろ。上の方は暗めの茶色だから分かり辛いが。」
確かにここに来てから3ヶ月経ち、染め直していないため根本に黒色が出てきている。
確かにあたしは黒髪黒目の純日本人で間違いない。
最近アッくんがやたらと出掛ける時、フードか帽子を被れとしつこかったのは髪色を隠すためだったのだと漸く気づく。
「まじ……?もしあたしが聖女だったらどうなるの?てか聖女ってそもそも何するの?王宮住まないといけないの?あたしアッくんとここにいたい。」
色々な想像が頭を駆け巡る。
一番最悪なのは、アッくんと離されるやつだ。
「……お前はここでいいのか?王宮に行けば今より贅沢できるし、望めば次の王妃にもなれると思う。
俺は……ほんとはもっと早くに椿が聖女だと気付いていた。
気付いたうえで黙っていたんだ……。」
少しだけ顔を歪ませたアッくん……それでもあたしから目は離さない。
何を言われても受け止めるという信念を感じる強い眼差しだった。
「別に貧乏でもあばら屋暮らしでもアッくんと一緒ならなんでもいいよ。
王妃になんかなりたくないし、宝石も綺麗なドレスも欲しくない。
ここでアッくんと一緒に暮らして行きたいよ。」
あたしがそう言い切ると、アッくんは「はぁー」と溜息を吐き、頭をガシガシと掻きむしった。
「……お前はバカだな。…………でもバカでよかった。王太子より俺がいいなんて言うのお前くらいだしな。」
「みんな見る目ないからね。」
アッくんは少し笑うと、愛おしそうに抱きしめてくれる。
あたしも大きな体に腕を回してぎゅーって力一杯抱きしめ返した。
あー幸せ……。
聖女とかよく分からないけど、このままずっとずっとこうしていたい……。
なんて思ってたら、背中を撫でていたアッくんの手が怪しい動きを始めた……ので体を離す。
いつものニヒルな笑みを浮かべたアッくんに顎を掬われて、濃厚なキスが降ってくる。
「んっ……もう。せっかくいい雰囲気だったのに‼︎」
「いい雰囲気だからだろ?口で愛を確かめあったあとは体でも確かめないと……な?」
「もうっ、あたしはもっとギュッて……ちょっ、服の中に手入れちゃダメっ。
ん……//もうまだ話のとちゅ……あっ、だってば//」
「いいぜ?話せよ。」
キスが段々下へと降りてきて、体をベッドに押し倒される。
話させる気ないじゃん‼︎
「んっ。もう手止めて……くれないとっ……話せないってばぁ」
「それじゃ、話は後な。お前はこっちに集中してろ。」
「あっ、アッくん……そこダメっ」
いつものごとくまんまと美味しく食べられてしまった…………。
けど、あたしもなんか盛り上がっていつもより感じちゃったし、文句言えないのが悔しい……。
アッくんの野獣め。
あなたにおすすめの小説
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
「妾の子だから」と呑気に構えていたら、次期公爵に選ばれました
木山楽斗
恋愛
父親であるオルガント公爵が大病を患った、その知らせを聞いた妾の子のヘレーナは、いい気味であるとさえ思っていた。
自分と母を捨てた父のことなど、彼女にとっては忌むべき存在でしかなかったのだ。ただ同時にヘレーナは、多くの子がいるオルガント公爵家で後継者争いが起こることを予感していた。
ただヘレーナは、それは自分には関係がないことだと思っていた。
そもそも興味もなかったし、妾の子の中でも特に存在感もない自分にはそんな話も回ってこないだろうと考えていたのだ。
他の兄弟達も、わざわざ自分に声をかけることもない。そう考えていたヘレーナは、後継者争いを気にせず暮らすことにした。
しかしヘレーナは、オルガント公爵家の次期当主として据えられることになった。
彼の兄姉、その他兄弟達が彼女を祭り上げたのだ。
ヘレーナはそれに困惑していた。何故自分が、そう思いながらも彼女は次期当主として務めることになったのだった。
※タイトルを変更しました(旧題:「どうせ私は妾の子だから」と呑気にしていたら、何故か公爵家次期当主として据えられることになりました。)
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。