バッティングハンター

いんじんリュウキ

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第1章 卒業後の進路

手がかりを探して

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「これがそうなのか」

 倉庫にはマレッドが生前使っていた道具類と、それ以外の遺品がまとめられた大きな木箱が置かれていた。

「とりあえず全部外に出しちゃおう。ここじゃ暗くって調べらんないから」

 カリンが指摘したように、倉庫には窓がなく、ドアから入ってくる日の光によってなんとか中が見えるような状況であった。

「じゃ、これを……重っ。ボイヤー」

 タフィは木箱を運び出そうとしたが、持った瞬間に諦めた。

「わかったよ兄やん」

 ボイヤーは軽々と木箱を外へ運び出し、タフィとカリンは残った道具類を外へ運び出した。

「どう見たって、手がかりはこっちの箱の中だよな」

 タフィは道具類にほとんど関心を示すことなく、木箱の蓋を開けた。

 中には、様々な書物や小物、衣類などが入っている。

「……おっ、これ怪しいんじゃないかぁ」

 タフィが発見したのは革表紙の日記帳で、全部で10冊あった。

「日記には絶対なんかしら書いてあるだろ。よぉーし、じゃあ、3、3、4で手分けして……」

 何か気にかかる点があったのか、すべてを言い終える前にカリンが口を開く。

「ちょい待ち。日記を調べるのはいいけどさ、あんたあの包丁がいつ作られたか知ってるの?」

「え……」

「包丁が作られる前の日記を読んだって意味ないんだからね。わからないんだったら、さっさと聞いてきな」

「……ボイヤー!」

 注意されたタフィは、八つ当たりするかのように強めの口調でボイヤーに命令した。

「はい、聞いてきます」

 ボイヤーは小走りで家の中へ入っていった。

「……ったく、いつまでもガキなんだから」

 タフィの態度を見て、カリンは呆れ気味につぶやいた。

「聞いてきました。亡くなる3年位前に作ったそうです」

 ボイヤーは30秒ほどで戻って来た。

「あんたは良い子だねぇ」

 ボイヤーの頭をわしゃわしゃっとなでるカリン。タフィとは逆に、嫌な顔ひとつせず従順に従っている姿を見て、褒めずにはいられなかったのだ。

「ちょ、ちょっと、くすぐったいですよ」

「いいから、おとなしくなでられてなさい。タフィ、あんた今の話聞いてたでしょ。日記の日付確認して、読むやつと読まないやつ、ちゃんと分けときな」

「へーい」

 タフィはしかめっ面で返事をすると、言われたとおり日記をめくって日付を確認し、該当する3冊をより分けた。

「終わったよ」

「ごくろうさーん。あんたもなでてあげよっか」

 カリンはいたずらっぽく笑いながら、タフィの頭に手を伸ばした。

「触んなよ。ほら、これはカリンが読んで」

 タフィは日記でなでようとする手を払いのけると、そのままそれをカリンに手渡した。

「はいはい」

「ボイヤーはこれな」

「はい」

 それぞれ日記を手にするや、真剣な眼差しで中身を読み始めた。

 日記の長さは日によってまちまちで、1ページ以上書かれている日もあれば、1行で終わっている日もある。

「あっ、これそうじゃないですか」

 半分以上読み進めたところで、ボイヤーがそれっぽい記述を発見した。

「ほんとか?」

「やるじゃーん」

 タフィとカリンは後ろから日記を覗き込んだ。

「ここです」

 ボイヤーが指差したところには、「ようやくあの馬鹿どもが姿を見せなくなった。俺があんな連中に大切なお宝を売るわけがないことぐらい、すぐにわかるだろうが。馬鹿だから理解できないんだな。まぁ、とりあえずこれで静かになる。しかし、馬鹿は何をしでかすかわからない。俺が生きてるうちはいいが、死んだら墓をあばいてでもお宝を奪っていくかもしれない。いや、必ずする。お宝を馬鹿から守るにはどうしたらいいか。そうだ、ヴァーベン・ダンジョンに隠そう。あのダンジョンはまだ若いから成長が見込めるし、今なら俺の力でもギリギリ入れる。よし、早速行動だ」という文章が書かれていた。

「よっぽどイライラしてたんだろうね。内容もそうだけど、字が暴れてる」

 書きなぐった字で荒々しく書かれた文章を見て、カリンは思わず苦笑した。

「そんなことより、ヴァーベン・ダンジョンだよヴァーベン・ダンジョン。カリンはこのダンジョンに入ったことある?」

「中に入ったことはない」

「ないのかぁ……」

「けど、どんなダンジョンかは知ってるよ」

「なら問題ない。じゃあ、早速このダンジョンに行こう」

 善は急げとばかりに、タフィは道具類を片付け始めた。

「いいんですかカリン姉さん? 僕はもっと調べた方がいいと思うんですけど……」

 ボイヤーはタフィに聞こえないよう、小声で不安を口にした。

「確かにもうちょっと調べた方がいい気もするけどさ。言ったところであいつちゃんと調べないでしょ。だったらあいつのやりたいようにやらせた方がいいよ。その方があいつも学ぶだろうしさ」

「ですね」

 納得したところで、ボイヤーとカリンも一緒に片付けを行い、ケーシーにあいさつをして出発した。
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