47 / 48
第2章 卒業試験
喜ぶか否か
しおりを挟む
「あらぁ、随分と変わっちゃったわねぇ……」
サマンサは思い出の地の変わり果てた姿を見て、悲しげな表情を浮かべる。
「話には聞いていたが、これはひでぇな」
コーツもショックを隠せない。
「大丈夫大丈夫、ニジイロソウはちゃんとこっちに咲いてるから」
2人の反応を見て、タフィは急いでマレッドのところへと案内する。
「ほら、あそこ見て、ちゃんと咲いてるだろ」
タフィが指差す先を見ると、虹と同じ配色で7本のニジイロソウが美しく咲き誇っていた。
「おぉ、数は少ねぇが、きれいに咲いてるじゃねぇか」
「ええ。それに、あの上に咲いてるピンクの花もきれいね」
先ほどとは打って変わって、2人の顔には笑みがこぼれる。
「で、そのピンクの花がジェイコブセンさん」
(ドウモ)
「おぉっ!」
「ひゃっ!」
マレッドとの初接触で、コーツとサマンサは当然のように驚いた。
「やっぱ最初はびっくりするよな」
2人のリアクションを見てタフィは笑っている。
コーツはタフィに向かって軽く咳払いをすると、何事もなかったかのようにあいさつし始めた。
「……はじめまして、コーツ・ゴッチです。こっちは、妻のサマンサです」
「どうも。ちょっとびっくりしちゃったわよぉ、いきなり声が聞こえてくるんだもの。あのね、あたしあなたの包丁ずっと使ってるの。あれ、切れ味が全然落ちないわね。しかも、もう何十年も使ってるんだけど、砥石で研いだのなんて数えるくらいだから、刃もそんなに減ってないのよ。本当に良くできてるわねあの包丁」
(……ア、ソレハドウモ)
マレッドはサマンサの間欠泉のようなおしゃべりに圧倒されている。
「あとね……」
「おばあちゃん、ちょっとしゃべりすぎ」
見かねたカリンが止めに入る。
「あらそお?」
サマンサにその自覚はなかった。
(……タフィタチカラ話ハ聞イテルト思ウガ、ササノハアワダチソウニヨッテ、ココニ咲イテイタニジイロソウハ、ソノホトンドガ失ワレテシマッタ。ダガ、見テノトオリアワダチソウハ皆排除シタ。時間ハカカルガ、イズレ元ノヨウニニジイロソウガ咲キ誇ルヨウニナル)
「そうですか……それは楽しみですな」
コーツは改めてゆっくりと周囲を見回し、最後にタフィへ顔を向けた。
「タフィ……儂は喜んだぞ」
「え?」
タフィはその言葉の意味をすぐに理解することができなかった。
「……わかんねぇのか? 儂は、“喜んだんだ”ぞ」
コーツはわかりやすく強調して言い直し、タフィもようやくその意味に気づく。
「あ、もしかして試験合格ってこと?」
コーツはうなずきつつ文句を言う。
「スッと気づけ」
「わりぃわりぃ、ただの感想かと思ってさ」
「儂はそんなバカみたいな感想は言わんぞ。……まぁいい、これでお前とボイヤーは晴れて卒業決定だ」
「おっし、やったぞボイヤー」
「はい」
「おめでとう、タフィ、ボイヤー」
「おめでとう。2人ともよく頑張ったわね。あたしも最初にここの光景を見た時は言葉を失っちゃったけど、いずれ元に戻るって聞いて、本当に嬉しかったわ。ありがとうね」
(無事卒業デキテ良カッタナ)
カリンが2人に向かってお祝いの拍手を送ると、サマンサも続いて拍手を始め、マレッドも祝意を述べた。
「戻ったらすぐに卒業式をやるからな」
「すぐって、まさか明日ってことはないよな?」
タフィは念のために確認する。
「さすがにそれはねぇよ。まぁ、準備等々を考えて3日後ってとこかな」
こうして、タフィとボイヤーの卒業試験は無事終了したのであった。
サマンサは思い出の地の変わり果てた姿を見て、悲しげな表情を浮かべる。
「話には聞いていたが、これはひでぇな」
コーツもショックを隠せない。
「大丈夫大丈夫、ニジイロソウはちゃんとこっちに咲いてるから」
2人の反応を見て、タフィは急いでマレッドのところへと案内する。
「ほら、あそこ見て、ちゃんと咲いてるだろ」
タフィが指差す先を見ると、虹と同じ配色で7本のニジイロソウが美しく咲き誇っていた。
「おぉ、数は少ねぇが、きれいに咲いてるじゃねぇか」
「ええ。それに、あの上に咲いてるピンクの花もきれいね」
先ほどとは打って変わって、2人の顔には笑みがこぼれる。
「で、そのピンクの花がジェイコブセンさん」
(ドウモ)
「おぉっ!」
「ひゃっ!」
マレッドとの初接触で、コーツとサマンサは当然のように驚いた。
「やっぱ最初はびっくりするよな」
2人のリアクションを見てタフィは笑っている。
コーツはタフィに向かって軽く咳払いをすると、何事もなかったかのようにあいさつし始めた。
「……はじめまして、コーツ・ゴッチです。こっちは、妻のサマンサです」
「どうも。ちょっとびっくりしちゃったわよぉ、いきなり声が聞こえてくるんだもの。あのね、あたしあなたの包丁ずっと使ってるの。あれ、切れ味が全然落ちないわね。しかも、もう何十年も使ってるんだけど、砥石で研いだのなんて数えるくらいだから、刃もそんなに減ってないのよ。本当に良くできてるわねあの包丁」
(……ア、ソレハドウモ)
マレッドはサマンサの間欠泉のようなおしゃべりに圧倒されている。
「あとね……」
「おばあちゃん、ちょっとしゃべりすぎ」
見かねたカリンが止めに入る。
「あらそお?」
サマンサにその自覚はなかった。
(……タフィタチカラ話ハ聞イテルト思ウガ、ササノハアワダチソウニヨッテ、ココニ咲イテイタニジイロソウハ、ソノホトンドガ失ワレテシマッタ。ダガ、見テノトオリアワダチソウハ皆排除シタ。時間ハカカルガ、イズレ元ノヨウニニジイロソウガ咲キ誇ルヨウニナル)
「そうですか……それは楽しみですな」
コーツは改めてゆっくりと周囲を見回し、最後にタフィへ顔を向けた。
「タフィ……儂は喜んだぞ」
「え?」
タフィはその言葉の意味をすぐに理解することができなかった。
「……わかんねぇのか? 儂は、“喜んだんだ”ぞ」
コーツはわかりやすく強調して言い直し、タフィもようやくその意味に気づく。
「あ、もしかして試験合格ってこと?」
コーツはうなずきつつ文句を言う。
「スッと気づけ」
「わりぃわりぃ、ただの感想かと思ってさ」
「儂はそんなバカみたいな感想は言わんぞ。……まぁいい、これでお前とボイヤーは晴れて卒業決定だ」
「おっし、やったぞボイヤー」
「はい」
「おめでとう、タフィ、ボイヤー」
「おめでとう。2人ともよく頑張ったわね。あたしも最初にここの光景を見た時は言葉を失っちゃったけど、いずれ元に戻るって聞いて、本当に嬉しかったわ。ありがとうね」
(無事卒業デキテ良カッタナ)
カリンが2人に向かってお祝いの拍手を送ると、サマンサも続いて拍手を始め、マレッドも祝意を述べた。
「戻ったらすぐに卒業式をやるからな」
「すぐって、まさか明日ってことはないよな?」
タフィは念のために確認する。
「さすがにそれはねぇよ。まぁ、準備等々を考えて3日後ってとこかな」
こうして、タフィとボイヤーの卒業試験は無事終了したのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる