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第66話 獣人たちの救出

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豚獣人が一転して黒豹の里に向かったその頃。

輸送用大型飛行艦(クジラノセナカ)は黒豹の里の郊外に密かに降り立った。時刻は午前二時過ぎ、丑三つ時である。里の獣人はほぼ寝静まっている。

「ペリドットー。無煙タイプのー眠り薬玉をちょうだいー。」
「これをどうぞです、オパール。」
「ありがとー。じゃあいってくるーねー。」
「気を付けてくださいね。怪我人が居た場合に備えて私はクジラノセナカで準備しておきますからね。」

オパールは変身が得意だ、人や獣にも化けれるしカメレオンのように景色にも同化できる。里の風上に向かい無煙の眠り薬玉を使う。地下牢の場所はあらかじめパールが突き止めてある。見張り数人は直ぐに眠りに就いた。よし行ける。

景色に同化し音も立てずにオパールは地下へと侵入し、地下牢の前まで来て姿を戻し声をかける。

「獣人さんたちー助けに来たーよー。」
「えっ?あなたは誰ですか?」
「虎獣人のティガーさんの代理でー助けに来たの―。ここからでてーついてきてねー。」
「は、はい。ですが足が鎖につながれていて動けません。」
「じゃあー私が切るーねー。じっとしててー。」

オパールが二刀のダガーを振り回して目にも止まらぬ速さで獣人たちの間を抜けると、あっという間に鎖が切断され獣人たちは自由に動けるようになった。

「あ、あれ!?」
「こっちだよー。しずかにーしてねー。」
「はい、ヒソヒソ。」



輸送用大型飛行艦(クジラノセナカ)に全員収容しすぐに飛び立つ。獣人は若い女性と一人で歩けるくらいまで成長した子供しかいない。売れない年寄りや赤ん坊、男は殺されたのだろう。人でなしの仕業である。

「この建物空を飛んでるんですか?あ、助けてくれてありがとうございました。」
「これは建物ではなくエリス神殿街のソウシ様のお創りになった飛行艦でございます。虎獣人のティガーさんに頼まれてやってまいりました。もう安心でございますよ皆さん。怪我や病気の方、衰弱の激しい方はおりませんか?」
「はい、はーい!この子の意識がありません!」
「こちらの女性は鎖の傷から血が止まりません。」
「鞭で打たれたところが膿んで腫れてます。うぅ。」
「こっちです!焼き鏝を当てられたこの子痙攣してる!」
「おなかが減って目の前が暗い、死にそう・・。」

ペリドットは獣人たちをテキパキと症状に合わせた薬を与え世話して回った。オパールは比較的軽症の獣人たちを集めておにぎりと温かい味噌汁を配っていた。飛行艦は朝方にはエリス神殿街に到着した。

指示通りクロサメ病院前の残してあった野戦病院のテントを難民キャンプ代わりに一旦収容し、病院から看護師が世話をしに出てきた。重傷者はクロサメ病院に運び入れた。


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