僕が曖昧な桔梗になりたい理由

暁夜 曖生

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唯一無二の

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僕には唯一無二の妹がいる。
たった一人の。
小さい頃からそいつは僕の味方だった。
一緒にゲームしたり、人形遊びもしてくれたし、一緒に叱られてくれた。いつでも何処でも一緒だった。


そいつが生まれたのは僕が生まれた2年後だった。

機能不全家族の間で生まれたもう一人の女の子。
僕を僕の人生の主人公にしてくれたのはきっとあいつだと僕は確信している。

逆に言ってしまえばあいつはあいつにとっても自分自身の事をモブに仕立て上げて僕を主人公として見ているのではないのだろうかと心配している。
僕らはお互いを心配しながら生きてきた。

幼いながら必死に互いを支えていた。
母親から虐待を受けようが何だろうが。
押し入れに閉じ込められたときも家から閉め出し食らったときもいつも一緒に泣いていたのを僕はよく覚えている。


母親は今になって僕が救急車を呼ぶと近所の目がとか言うが家から閉め出して子供を泣かせるほうが余程近所の目が怖くなるんじゃないの?なんて思うのは僕だけなのだろうか。
まぁそのことは後の楽しみにとっておくとして。
とにかく妹は僕と一緒だった。

異変に気づき始めたのは僕がまだ小学生か?それとももう中学に上がったときか?あいつの中身がどうも男っぽい。
あいつ自身もそう感じていた。『性同一性障害』かもしれない、なんて。

『性同一性障害』とは?と思う人が多いと思うから説明させていただくと、『体』と『心』の性別がバラバラなのだ。レズとかバイとかとはまた別だ。あの人たちはしっかり体と性別は『一致』している。恋愛対象の問題だ。

あいつの場合1人称は俺(僕も僕なんだけどさ)、髪の毛もある日いきなり短くした。そして男っぽい口調。男と付き合って失敗する。等々、どうも男にしか見えない。

そして昨日の事だ、あいつから電話がくる。
「診断書が欲しい。けど近くに病院がない。」
お前やっと精神科行く気になったか。
お前さん、今年で中3だろう?高校受験も控えてるし不登校の原因取り除くためにまず行けよ。というのが本音だが高校に上がる前に診断を貰ったほうが吉(というのが僕の経験談である)。その本音は流石に隠した。

だが前述した通りどうやら性同一性障害専門の精神科は少ないらしく僕は頭を悩ませた。
だって、あの親だもの。


僕は高校に入ってから父方の祖父母の協力の元、電車で県内のなるべく近くて評判のよかったクリニックに通っていた。そこから段々親の理解が深まってきた(正確には薬を飲んてる僕を見て認めざるを得なかった)。
が、妹の場合そうはいかない。

しかも問題が更に重なる。
妹はどうやら対人関係により『不登校』になってしまった事から通信に行きたいと言い出したらしいのだ。親たちは猛反対。母親が反対する中、志望校に行かせてくれた父親ですらだ。
おいお前ら、どんだけ通信制高校に偏見があるんだよ。母親は自分が志望校行かせてもらえなかったからって押し付けるな。父親、お前に関しては自分の行きたいところ行かせてもらえただろうが。
全く理解の無い二人には呆れる。
また僕みたいに妹まで中退したらどうするんだよ。

「親失格だぞ。」

見ていて泣きたくなるのだ。
今は僕は家族と別居して父方の祖父母と愛犬1匹と仲良く暮らしているが、妹の事は心配である。
一時期反抗期が来て(今もだけど)殻に閉じこもっていた。そしてとうとう昨日、僕に悩みを打ち明けたのだ。僕は信頼されていたという安心感と妹をどう助ければという不安感に襲われた。

僕と親とのバトルは続きそうだ。親に歯向かう事が子供にとってどれくらいの勇気が必要か、どれくらいの覚悟が必要か、どれだけ怖いか。大人たちには想像できるのだろうか。僕は大人じゃないし永遠と大人にはなれない気がするからきっと分からないまま人生を迎えるだろう。
僕は勿論それを歓迎する。逆に大人になって勇気、覚悟、怖さを忘れる事を恐れるだろう。
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