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ご説明しましょうか?
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「ザウジ様。お2人のお幸せそうな光景は実に微笑ましいですが、彼女……二プリ嬢を新しい婚約者になさることは、サーダ王国1国民として祝福致しかねます」
わたくしはあくまでも冷静に、真実のみをお伝えする。
「俺の新しい婚約者に……彼女に何の問題があるというのだ!?」
そんなわたくしの発言を受け、気を悪くしたらしいザウジ様が、二プリ嬢を守るように力強く抱きしめながら荒々しく言葉を返す。
赤い瞳がわたくしをギッと睨みつけている。
わたくしはそれを受けてニッコリと微笑んで見せた。
「では、ご説明させていただきます。まず、未来の国王陛下となられるザウジ王太子殿下の配偶者となる者には、それなりの血筋・教養・愛国心・責任感が求められますが、二プリ男爵令嬢がその条件を満たしているとお考えですか?」
「そのようなもの……愛さえあれば」
「愛だけではどうにもならないのが社会というものです。男爵令嬢と王太子殿下とでは身分に差がありますし、妃教育を受けていない二プリ嬢がこれから王太子妃・王妃を目指すのには大変な苦労が伴います。そして清廉王と名高い国王陛下が、仮にも婚約者のいる殿方を奪い取ろうとなさる彼女との婚姻を祝福なさるとお思いですか? 貴族は、国民は、その婚姻を祝福して支持すると思われますか?」
「ぐっ……」
わたくしが懇々と、淡々と説明するとザウジ様は明らかに返答に困っていらっしゃる様子だった。
「……二プリ嬢はどう思われますか?」
チラリと二プリ嬢の方にも目を向けて問いかけてみると、彼女は「えっ……わたしは……」と最初こそ言い淀んでいたけれど、すぐに決意に満ちた瞳をこちらに返す。
「わたしは、ザウジ殿下と一緒に努力して……幸せになってみせます!」
「二プリ……」
二プリ嬢の言葉に、ザウジ様は感動している様子。
あらまぁ、微笑ましい光景ですね。
「まぁ、素敵。その心意気があれば、きっと平民になってもお2人で幸せに暮らしていくこともできるでしょうね」
わたくしがにっこりと微笑んでそう言うと、温かな空気に包まれていた2人の様子が一気に戸惑い1色に染まる。
「な、何を言って……?」
「あら、だってお2人が婚約なさるということは、このわたくしに公衆の面前で婚約破棄を突きつけたということは、4大公爵家の一人であるわたくしの父から不興を買うことは間違いないでしょう。さらに先程は二プリ嬢だけを例に挙げましたが、清廉王と名高い国王陛下は婚約者がいる身でありながら他の女性と親しくなり、婚約破棄を公衆の面前で突きつけるような真似をなさったザウジ様のこともきっとお許しにはならないでしょう。廃太子され、最悪の場合は国外追放もありえると思います」
わたくしが再び説明すると、そこまでは考えていなかったらしいザウジ様は愕然として青ざめていらっしゃる。
そんな彼とは無関係と言わんばかりに、二プリ嬢が慌てて彼から離れた。
「もちろん、二プリ嬢も今更逃げることなどできませんよ? 一国の王太子に婚約破棄とまで言わせたのですから、この問題は個人では済まなくなるでしょう。二プリ嬢の生家であるワガノワ男爵家にも何かしらの責任が問われることになるでしょう。最悪の場合、お家取り潰し……なんてこともあるかもしれませんね」
そう言うと、二プリ嬢は真っ青な顔をして力なくぺたんっと床にへたり込んでしまった。
幸せなお2人には、少し刺激が強かったかしら? 可哀想に。
「……わたくしからは以上です」
くすりと笑みをこぼし、優雅にカーテシーをしてみせた。
青ざめるばかりで言葉を失っているお2人から返ってくるものはなかったけれどね。
わたくしはあくまでも冷静に、真実のみをお伝えする。
「俺の新しい婚約者に……彼女に何の問題があるというのだ!?」
そんなわたくしの発言を受け、気を悪くしたらしいザウジ様が、二プリ嬢を守るように力強く抱きしめながら荒々しく言葉を返す。
赤い瞳がわたくしをギッと睨みつけている。
わたくしはそれを受けてニッコリと微笑んで見せた。
「では、ご説明させていただきます。まず、未来の国王陛下となられるザウジ王太子殿下の配偶者となる者には、それなりの血筋・教養・愛国心・責任感が求められますが、二プリ男爵令嬢がその条件を満たしているとお考えですか?」
「そのようなもの……愛さえあれば」
「愛だけではどうにもならないのが社会というものです。男爵令嬢と王太子殿下とでは身分に差がありますし、妃教育を受けていない二プリ嬢がこれから王太子妃・王妃を目指すのには大変な苦労が伴います。そして清廉王と名高い国王陛下が、仮にも婚約者のいる殿方を奪い取ろうとなさる彼女との婚姻を祝福なさるとお思いですか? 貴族は、国民は、その婚姻を祝福して支持すると思われますか?」
「ぐっ……」
わたくしが懇々と、淡々と説明するとザウジ様は明らかに返答に困っていらっしゃる様子だった。
「……二プリ嬢はどう思われますか?」
チラリと二プリ嬢の方にも目を向けて問いかけてみると、彼女は「えっ……わたしは……」と最初こそ言い淀んでいたけれど、すぐに決意に満ちた瞳をこちらに返す。
「わたしは、ザウジ殿下と一緒に努力して……幸せになってみせます!」
「二プリ……」
二プリ嬢の言葉に、ザウジ様は感動している様子。
あらまぁ、微笑ましい光景ですね。
「まぁ、素敵。その心意気があれば、きっと平民になってもお2人で幸せに暮らしていくこともできるでしょうね」
わたくしがにっこりと微笑んでそう言うと、温かな空気に包まれていた2人の様子が一気に戸惑い1色に染まる。
「な、何を言って……?」
「あら、だってお2人が婚約なさるということは、このわたくしに公衆の面前で婚約破棄を突きつけたということは、4大公爵家の一人であるわたくしの父から不興を買うことは間違いないでしょう。さらに先程は二プリ嬢だけを例に挙げましたが、清廉王と名高い国王陛下は婚約者がいる身でありながら他の女性と親しくなり、婚約破棄を公衆の面前で突きつけるような真似をなさったザウジ様のこともきっとお許しにはならないでしょう。廃太子され、最悪の場合は国外追放もありえると思います」
わたくしが再び説明すると、そこまでは考えていなかったらしいザウジ様は愕然として青ざめていらっしゃる。
そんな彼とは無関係と言わんばかりに、二プリ嬢が慌てて彼から離れた。
「もちろん、二プリ嬢も今更逃げることなどできませんよ? 一国の王太子に婚約破棄とまで言わせたのですから、この問題は個人では済まなくなるでしょう。二プリ嬢の生家であるワガノワ男爵家にも何かしらの責任が問われることになるでしょう。最悪の場合、お家取り潰し……なんてこともあるかもしれませんね」
そう言うと、二プリ嬢は真っ青な顔をして力なくぺたんっと床にへたり込んでしまった。
幸せなお2人には、少し刺激が強かったかしら? 可哀想に。
「……わたくしからは以上です」
くすりと笑みをこぼし、優雅にカーテシーをしてみせた。
青ざめるばかりで言葉を失っているお2人から返ってくるものはなかったけれどね。
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