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殿方とは情けない生き物なのかしら?
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ザウジ様と正式に結婚し、王太子妃としての仕事をこなす日々の中、開かれた建国パーティー。
わたくしとザウジ様はパーティーに参加してくださった皆さんに挨拶をして回ったり、少し談笑したりと、王太子・王太子妃として微笑みを絶やさずに過ごしていた。
「やや、これは王太子殿下、王太子妃殿下! ご機嫌麗しゅう!」
そんな中、手をすり合わせてこれ見よがしにごまをする男……おっと失礼。
サーダ王国と隣接する小国/サフィロン国の国王が挨拶をしにきてくださいました。
それを邪険にしてはいけませんよね。
分かってはいるのだけれど、サフィロン国王という殿方は、どうにも小物というか……考えなしな割には、大物になろうとしている節があって、わたくしはあまり好ましく思っていない。
まぁ、そんなことを顔に出すほど、わたくしは小物ではないけれど。
微笑みを絶やさず、それなりの挨拶や世間話をしていると、唐突にサフィロン国王が背後に控えていた2人の娘をずいっと前面へと押し出すように紹介してくる。
ベージュの長髪に、グリーンの瞳、そして額と腕に特徴的な紋様のタトゥーを入れている、よく似た2人の女性だ。
「これは私の娘でして……髪を結んでいる方が姉のオフティ、その後ろにいるのが妹のソフィアです。ほれ、2人ともご挨拶を!」
サフィロン国王に促され、姉姫のオフティ様が凛と背筋を伸ばして挨拶をする。
「この度は、建国パーティーにご招待いただき、誠にありがとうございます。サフィロン国王が娘、オフティと申します。王太子様と王太子妃様は最近ご成婚されたとか。心より祝福申し上げます」
「こちらこそ、此度の建国パーティーにご参加いただきありがとうございます、オフティ様。結婚のお祝いも、ありがたく頂戴いたしますわ」
わたくしが感謝を伝えると、オフティ様は凛々しい表情で口元に微笑みをたたえていた。
あら、小物……いえ、サフィロン国王の娘さんとは思えないほど、しっかりとしたお嬢さんですね。
彼女とは仲良くなれそうですわ。
そんな彼女に促されるように、背後に隠れていた妹姫のソフィア様もおずおずと口を開く。
「そ、ソフィア・サフィロンと申します。どうか以後お見知り置きを……」
「ソフィア様。わたくしはメリカ・サーダと申します。こちらこそ、これから仲良くしてくださいね」
一国の姫君の挨拶としては簡素すぎるけれど、小動物のような可愛らしさがあって憎めない方ですね。
本当にあの小物の血縁者とは思えない。
わたくしとオフティ様、ソフィア様が少しばかり談笑していると、わたくしたちから隠れるようにしながら、サフィロン国王がザウジ様にとある提案を持ちかける。
コソコソしているつもりでしょうけれど、わたくしほどの人間であれば、視界の端にしっかりと2人の姿を捉えることができるし、談笑しながら2人の話し声を聞き分けることなど造作もないことですわ。
「どうでしょうか、王太子殿下。私の娘2人は我が国でも美しいと評判の娘でして……いや、親の私としては実に鼻が高い。ただ縁談話には2人とも疎くて……どうでしょうか、殿下のような地位も凛々しさも持ち合わせておられる方にならば、娘たちも喜んで嫁ぐと思うのですが。いや、なにも王太子妃殿下を退けようなどとは思ってはおりません! 側妃にでもしていただければと思っているのです」
へりくだりながらも、まくしたてるようにしてサフィロン国王がそうセールスを始める。
サフィロン国王としては、この話をするために今日の建国パーティーに参加したのでしょうね。
娘を使って我がサーダ王国に取り入ろうなんて……実に情けない小物。
さらに情けないことに、そのセールスを受けたザウジ様は返答に困ってワタワタとしている。
耳を塞ぎたくなるような下品な話には、顔を赤くして目を白黒なさっていて……実に情けない。
殿方というのは、情けない生き物なのかしら。
2人の会話に心の内で呆れながらも、わたくしは笑みを絶やさずにオフティ様とソフィア様との会話を楽しんだ。
これはお仕置きが必要ですわね、と思いながら。
わたくしとザウジ様はパーティーに参加してくださった皆さんに挨拶をして回ったり、少し談笑したりと、王太子・王太子妃として微笑みを絶やさずに過ごしていた。
「やや、これは王太子殿下、王太子妃殿下! ご機嫌麗しゅう!」
そんな中、手をすり合わせてこれ見よがしにごまをする男……おっと失礼。
サーダ王国と隣接する小国/サフィロン国の国王が挨拶をしにきてくださいました。
それを邪険にしてはいけませんよね。
分かってはいるのだけれど、サフィロン国王という殿方は、どうにも小物というか……考えなしな割には、大物になろうとしている節があって、わたくしはあまり好ましく思っていない。
まぁ、そんなことを顔に出すほど、わたくしは小物ではないけれど。
微笑みを絶やさず、それなりの挨拶や世間話をしていると、唐突にサフィロン国王が背後に控えていた2人の娘をずいっと前面へと押し出すように紹介してくる。
ベージュの長髪に、グリーンの瞳、そして額と腕に特徴的な紋様のタトゥーを入れている、よく似た2人の女性だ。
「これは私の娘でして……髪を結んでいる方が姉のオフティ、その後ろにいるのが妹のソフィアです。ほれ、2人ともご挨拶を!」
サフィロン国王に促され、姉姫のオフティ様が凛と背筋を伸ばして挨拶をする。
「この度は、建国パーティーにご招待いただき、誠にありがとうございます。サフィロン国王が娘、オフティと申します。王太子様と王太子妃様は最近ご成婚されたとか。心より祝福申し上げます」
「こちらこそ、此度の建国パーティーにご参加いただきありがとうございます、オフティ様。結婚のお祝いも、ありがたく頂戴いたしますわ」
わたくしが感謝を伝えると、オフティ様は凛々しい表情で口元に微笑みをたたえていた。
あら、小物……いえ、サフィロン国王の娘さんとは思えないほど、しっかりとしたお嬢さんですね。
彼女とは仲良くなれそうですわ。
そんな彼女に促されるように、背後に隠れていた妹姫のソフィア様もおずおずと口を開く。
「そ、ソフィア・サフィロンと申します。どうか以後お見知り置きを……」
「ソフィア様。わたくしはメリカ・サーダと申します。こちらこそ、これから仲良くしてくださいね」
一国の姫君の挨拶としては簡素すぎるけれど、小動物のような可愛らしさがあって憎めない方ですね。
本当にあの小物の血縁者とは思えない。
わたくしとオフティ様、ソフィア様が少しばかり談笑していると、わたくしたちから隠れるようにしながら、サフィロン国王がザウジ様にとある提案を持ちかける。
コソコソしているつもりでしょうけれど、わたくしほどの人間であれば、視界の端にしっかりと2人の姿を捉えることができるし、談笑しながら2人の話し声を聞き分けることなど造作もないことですわ。
「どうでしょうか、王太子殿下。私の娘2人は我が国でも美しいと評判の娘でして……いや、親の私としては実に鼻が高い。ただ縁談話には2人とも疎くて……どうでしょうか、殿下のような地位も凛々しさも持ち合わせておられる方にならば、娘たちも喜んで嫁ぐと思うのですが。いや、なにも王太子妃殿下を退けようなどとは思ってはおりません! 側妃にでもしていただければと思っているのです」
へりくだりながらも、まくしたてるようにしてサフィロン国王がそうセールスを始める。
サフィロン国王としては、この話をするために今日の建国パーティーに参加したのでしょうね。
娘を使って我がサーダ王国に取り入ろうなんて……実に情けない小物。
さらに情けないことに、そのセールスを受けたザウジ様は返答に困ってワタワタとしている。
耳を塞ぎたくなるような下品な話には、顔を赤くして目を白黒なさっていて……実に情けない。
殿方というのは、情けない生き物なのかしら。
2人の会話に心の内で呆れながらも、わたくしは笑みを絶やさずにオフティ様とソフィア様との会話を楽しんだ。
これはお仕置きが必要ですわね、と思いながら。
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