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そろそろお仕置きをはじめようかしら?
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ソフィア様とパーティー会場へと戻ると、サフィロン国王はまだザウジ様に熱く自分の娘を売り込んでいる様子だった。
まぁ、熱心ね。
国王ではなく、商売人の方が向いているのではないかしら。
姉姫のオフティ様は父親を諌め、やめさせようとなさっているけれど、サフィロン国王は意に介さない。
ザウジ様はと言えば……困惑するばかりという地獄絵図。
全く持って、殿方の情けなさに涙が出そうですわ。
そんな地獄へと足を踏み入れると、ザウジ様は助けを求めるような視線をこちらに向けて、サフィロン国王は表情こそ笑っているけれど『もう戻ってきたか』と言わんばかりのオーラを醸し出していた。
そんな彼らに向けて優雅に微笑みながら、片手でさらりと髪をなびかせる。
さぁ、ここからがわたくしの腕の見せ所ね。
「何やら殿方だけで楽しくお話されているようですが、そのおかげでわたくしもソフィア様と楽しい時間を過ごすことができましたわ」
「それは良うございました」
わたくしの言葉に、サフィロン国王が即座に反応する。
どうせわたくしに気に入られたソフィア様を側妃にした方が、後宮の平和を保ちながら側妃を迎えられる……とでもセールスの方向性を変えようとなさっているのでしょう。
そんなサフィロン国王に向けてにっこりと微笑み、言葉を続ける。
「長期滞在を見据えて、ソフィア様をわたくしの友人として我がサーダ王国に改めて招待させていただきたいと考えているのですが、よろしいでしょうか?」
わたくしの突然の提案にソフィア様自身もザウジ様も驚きの表情を浮かべていたけれど、サフィロン国王は側妃になる足掛かりになるかもしれないと考えたのか、一瞬だけいやらしい笑みを浮かべたかと思うと、二つ返事でOKした。
「まぁ、嬉しい。ソフィア様、これからよろしくお願い致しますね」
「へ、あ、は、はい……」
喜んでいるわたくしとは対照的に、ソフィア様は戸惑うばかりといった様子。
そんな彼女を安心させるように力強い笑みを向けてから、わたくしはサフィロン国王に向けて言葉を続ける。
「サフィロン国には小麦の輸入をお願いしていますし、今後も良い関係を築いていきたいですわね」
「えぇ、えぇ、もちろんです」
気を良くしているサフィロン国王。
サフィロン国とはそこまで深い付き合いのある国ではないけれど、最近になって小麦を我が国へと輸出してもらっている。
わたくしが提案した『平民への教育機関整備』のため、子どもたちを集めるために給食としてパンとスープを提供するために安価な小麦を輸入しているのだけれど、サフィロン国にとっては大きな収入アップとなっていることでしょう。
けれど別に、絶対にサフィロン国産の小麦でなくてはいけないという理由はないのよ。
くすりと笑みをこぼし、わがままを言うように、思いついたままを口にする少女のように、わたくしは口を開く。
「けれどわたくし、最近はパンに飽きてきておりますの。だから海を渡った東の島国にあるという『コメ』という食材を輸入して、それを主食に変えようかと考えているのですよ」
わたくしの発言に、先程まで上機嫌だったサフィロン国王の顔から一気に血の気が引き、「……え?」と言葉にならない声を漏らしていた。
向こうとしては理由も分からず、戸惑うばかりでしょうね。
女を見下しているサフィロン国王には、わたくしの気分を害したからこんなことを言われているなんて、全く想像もつかないでしょう。
あぁ、情けない顔がよく似合っていますよ、サフィロン国王。
わたくしはそんな彼を無視して、「後日、本格的に話を進めてまいりましょうね」とザウジ様に話を振る。
とある方が声を挙げてくれるのを笑顔で待ちながら。
まぁ、熱心ね。
国王ではなく、商売人の方が向いているのではないかしら。
姉姫のオフティ様は父親を諌め、やめさせようとなさっているけれど、サフィロン国王は意に介さない。
ザウジ様はと言えば……困惑するばかりという地獄絵図。
全く持って、殿方の情けなさに涙が出そうですわ。
そんな地獄へと足を踏み入れると、ザウジ様は助けを求めるような視線をこちらに向けて、サフィロン国王は表情こそ笑っているけれど『もう戻ってきたか』と言わんばかりのオーラを醸し出していた。
そんな彼らに向けて優雅に微笑みながら、片手でさらりと髪をなびかせる。
さぁ、ここからがわたくしの腕の見せ所ね。
「何やら殿方だけで楽しくお話されているようですが、そのおかげでわたくしもソフィア様と楽しい時間を過ごすことができましたわ」
「それは良うございました」
わたくしの言葉に、サフィロン国王が即座に反応する。
どうせわたくしに気に入られたソフィア様を側妃にした方が、後宮の平和を保ちながら側妃を迎えられる……とでもセールスの方向性を変えようとなさっているのでしょう。
そんなサフィロン国王に向けてにっこりと微笑み、言葉を続ける。
「長期滞在を見据えて、ソフィア様をわたくしの友人として我がサーダ王国に改めて招待させていただきたいと考えているのですが、よろしいでしょうか?」
わたくしの突然の提案にソフィア様自身もザウジ様も驚きの表情を浮かべていたけれど、サフィロン国王は側妃になる足掛かりになるかもしれないと考えたのか、一瞬だけいやらしい笑みを浮かべたかと思うと、二つ返事でOKした。
「まぁ、嬉しい。ソフィア様、これからよろしくお願い致しますね」
「へ、あ、は、はい……」
喜んでいるわたくしとは対照的に、ソフィア様は戸惑うばかりといった様子。
そんな彼女を安心させるように力強い笑みを向けてから、わたくしはサフィロン国王に向けて言葉を続ける。
「サフィロン国には小麦の輸入をお願いしていますし、今後も良い関係を築いていきたいですわね」
「えぇ、えぇ、もちろんです」
気を良くしているサフィロン国王。
サフィロン国とはそこまで深い付き合いのある国ではないけれど、最近になって小麦を我が国へと輸出してもらっている。
わたくしが提案した『平民への教育機関整備』のため、子どもたちを集めるために給食としてパンとスープを提供するために安価な小麦を輸入しているのだけれど、サフィロン国にとっては大きな収入アップとなっていることでしょう。
けれど別に、絶対にサフィロン国産の小麦でなくてはいけないという理由はないのよ。
くすりと笑みをこぼし、わがままを言うように、思いついたままを口にする少女のように、わたくしは口を開く。
「けれどわたくし、最近はパンに飽きてきておりますの。だから海を渡った東の島国にあるという『コメ』という食材を輸入して、それを主食に変えようかと考えているのですよ」
わたくしの発言に、先程まで上機嫌だったサフィロン国王の顔から一気に血の気が引き、「……え?」と言葉にならない声を漏らしていた。
向こうとしては理由も分からず、戸惑うばかりでしょうね。
女を見下しているサフィロン国王には、わたくしの気分を害したからこんなことを言われているなんて、全く想像もつかないでしょう。
あぁ、情けない顔がよく似合っていますよ、サフィロン国王。
わたくしはそんな彼を無視して、「後日、本格的に話を進めてまいりましょうね」とザウジ様に話を振る。
とある方が声を挙げてくれるのを笑顔で待ちながら。
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