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第九章 愛する人
第四十二話
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――わたくしがミン様に想いを告げてから、随分と月日が流れた。
後宮では人の入れ替わりはあるものの、相変わらず十五人の妃がいる。
見知った顔は、随分といなくなっていた。
フォンス様やその取り巻きの方々は、王宮の役人たちに下賜されたり実家に帰ったりしていて、すでに後宮を去っていた。
あのフォンス様が後宮を大人しく去るはずがなく、かなり抵抗して抗議したりお父様に嘆願されたりなさったそうだけれど……。
娘からの手紙の内容があまりに自分勝手だったために、父親の『花嫁修業からやり直しだ。実家に帰ってくるように』との返事を受け取って、落胆して後宮を去ったそうだ。
ファン様もまた、子を成せないままだったため、後宮から出されていた。
そうして出て行っては補充され、補充されては皇帝陛下が通われて……。
結局、妊娠している妃は今のところ三人いる。
そんな妃たちの中で、わたくしは一足先に出産を済ませていた。
――わたくしがミン様に想いを伝えた直後、皇帝として他の妃の元へ通うのは一旦中止して、わたくしの元だけに通われるようになった。
そして妊娠が分かると、すぐにわたくしは皇后の席に座った。
さらに念の為と言って、ミン様は子どもが無事に生まれるまではと、他の妃のところへ通うことはしなかった。
それが今から数年前のこと。
今では子どもも無事に生まれ、ポウザンと名付けた息子は元気に歩きはじめている。
「ポウザン様は本当に可愛らしいですね」
わたくしと共にお茶を飲んでいたファン様が、ぽてぽてと歩くポウザンを見やり温かな笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。ファン様はお子様は考えていらっしゃるのですか?」
「えぇ、その内に……とは思っております」
少し照れながらそう告げるファン様は、相変わらず儚げだけれど……口元は幸せそうに微笑まれていた。
後宮を出された後、ファン様は彼女の父の意向で貴族の息子と結婚した。
父親からすれば皇后にする計画が失敗に終わり、それならばと用意した新たな政略結婚だったようだが、思いの外、ファン様とその夫との関係性は良好らしい。
そして後宮には定期的にわたくしの友人として、こうしてお茶をしにきてくださっている。
わたくしは、この幸せそうなファン様の微笑みがいつまでも続くことを願っている。
「そういえば、ガルシア様のところもお子様はまだでしたよね?」
するとファン様から、また懐かしい名前を聞く。
「そうでしたわね。けれどハディ国で信頼できるお相手と結婚したと手紙を頂いたので、きっと大丈夫でしょう」
愛だの恋だのはないけれどと付け加えられていたことは、ファン様には伏せる。
そうこうしていると、あっという間に日が暮れて、また会おうと約束してファン様は笑顔で自分の家へと帰っていった。
「メイリン様、お客人が帰られたと皇帝陛下にご報告してまいります」
「えぇ、お願いします」
ファン様が帰られると、イェン兄様がそう告げてきた。
……イェン兄様は妃を下賜された後、無事に結婚したけれど、変わらずわたくしの担当宦官として働いてくださっている。
結婚生活を語るような方ではないけれど、最近では養子をもらったという話を聞いた。
ミン様曰く、前まで夜遅くまで仕事をしていたイェン兄様が、早く帰宅するようになったとのことだったので……家庭はうまく言っているのだろうと思われる。
表面上は何の変わりもないけれど、イェン兄様が幸せなのであれば嬉しいと……心からそう思える。
――そして夜になると、彼がわたくしの宮にいらっしゃった。
「ただいま、メイリン」
皇帝の顔をやめて、わたくしに優しげな笑みを向けてくださる彼に告げる。
「おかえりなさいませ、ミン様」
わたくしの想い人は皇帝陛下ではないけれど、皇帝陛下の妃になる決断をして本当に良かったと、わたくしは幸せな笑みを浮かべた。
後宮では人の入れ替わりはあるものの、相変わらず十五人の妃がいる。
見知った顔は、随分といなくなっていた。
フォンス様やその取り巻きの方々は、王宮の役人たちに下賜されたり実家に帰ったりしていて、すでに後宮を去っていた。
あのフォンス様が後宮を大人しく去るはずがなく、かなり抵抗して抗議したりお父様に嘆願されたりなさったそうだけれど……。
娘からの手紙の内容があまりに自分勝手だったために、父親の『花嫁修業からやり直しだ。実家に帰ってくるように』との返事を受け取って、落胆して後宮を去ったそうだ。
ファン様もまた、子を成せないままだったため、後宮から出されていた。
そうして出て行っては補充され、補充されては皇帝陛下が通われて……。
結局、妊娠している妃は今のところ三人いる。
そんな妃たちの中で、わたくしは一足先に出産を済ませていた。
――わたくしがミン様に想いを伝えた直後、皇帝として他の妃の元へ通うのは一旦中止して、わたくしの元だけに通われるようになった。
そして妊娠が分かると、すぐにわたくしは皇后の席に座った。
さらに念の為と言って、ミン様は子どもが無事に生まれるまではと、他の妃のところへ通うことはしなかった。
それが今から数年前のこと。
今では子どもも無事に生まれ、ポウザンと名付けた息子は元気に歩きはじめている。
「ポウザン様は本当に可愛らしいですね」
わたくしと共にお茶を飲んでいたファン様が、ぽてぽてと歩くポウザンを見やり温かな笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。ファン様はお子様は考えていらっしゃるのですか?」
「えぇ、その内に……とは思っております」
少し照れながらそう告げるファン様は、相変わらず儚げだけれど……口元は幸せそうに微笑まれていた。
後宮を出された後、ファン様は彼女の父の意向で貴族の息子と結婚した。
父親からすれば皇后にする計画が失敗に終わり、それならばと用意した新たな政略結婚だったようだが、思いの外、ファン様とその夫との関係性は良好らしい。
そして後宮には定期的にわたくしの友人として、こうしてお茶をしにきてくださっている。
わたくしは、この幸せそうなファン様の微笑みがいつまでも続くことを願っている。
「そういえば、ガルシア様のところもお子様はまだでしたよね?」
するとファン様から、また懐かしい名前を聞く。
「そうでしたわね。けれどハディ国で信頼できるお相手と結婚したと手紙を頂いたので、きっと大丈夫でしょう」
愛だの恋だのはないけれどと付け加えられていたことは、ファン様には伏せる。
そうこうしていると、あっという間に日が暮れて、また会おうと約束してファン様は笑顔で自分の家へと帰っていった。
「メイリン様、お客人が帰られたと皇帝陛下にご報告してまいります」
「えぇ、お願いします」
ファン様が帰られると、イェン兄様がそう告げてきた。
……イェン兄様は妃を下賜された後、無事に結婚したけれど、変わらずわたくしの担当宦官として働いてくださっている。
結婚生活を語るような方ではないけれど、最近では養子をもらったという話を聞いた。
ミン様曰く、前まで夜遅くまで仕事をしていたイェン兄様が、早く帰宅するようになったとのことだったので……家庭はうまく言っているのだろうと思われる。
表面上は何の変わりもないけれど、イェン兄様が幸せなのであれば嬉しいと……心からそう思える。
――そして夜になると、彼がわたくしの宮にいらっしゃった。
「ただいま、メイリン」
皇帝の顔をやめて、わたくしに優しげな笑みを向けてくださる彼に告げる。
「おかえりなさいませ、ミン様」
わたくしの想い人は皇帝陛下ではないけれど、皇帝陛下の妃になる決断をして本当に良かったと、わたくしは幸せな笑みを浮かべた。
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