【短編集】ゆめ

ちゃっぷ

文字の大きさ
14 / 23

青空に消えた君

しおりを挟む
 ある日、リアルでは女の子とまともに目すら合わせたことのないこの俺が、ネットで知り合った女の子とリアルで会うことになった。

 緊張して不安だったけれど、待ち合わせ場所にきたその子は優しい笑顔を浮かべてくれて……公園を歩いている最中も、ずっと笑顔でいてくれた。

 た、楽しい……これって……で、デート……なのかな……?

 キレイな青空のもと微笑んでいるその子は、あまりにも美しくて……空に溶け込んで消えてしまいそうなほどだった。

 そんなことを思っていたら、トイレ休憩の時に彼女は本当に消えてしまった。

 やり取りをしていたSNSに連絡を入れても返事がない。

 どこに消えてしまったんだ……?

 ――その日から、俺は毎日公園に通って彼女を探した。

 再会したら、きっとあの日みたいに優しい笑顔を見せてくれるだろうと、困ったように笑いながら事情を説明してくれるだろうと信じて。

 でも、彼女と再会できる日はいっこうに来ない。

 ――あれから1年くらい経ったかな。

 俺はまだ彼女を諦めず、毎日のように公園に通っていた。

 でもその日は暑さに負けて、近くにある喫茶店に入ったんだ。

 そこで……俺は席に座っている彼女を見つけた……あの青空に溶け込むように美しい笑顔を浮かべている彼女を。

 どうやら友人と一緒にいるらしい。

 もしかしたら俺に謝りに公園に来たけど、勇気が出なくて友達について来てもらって、それでもまだ勇気が出なくて喫茶店で心の準備をしてるのかな?

 じゃあ、俺から声をかけよう。

 そう思って近づくと、彼女の声が先に聞こえてきた。

「ほんっと最悪だったわ。暑い中、なんにもない公園をただ歩かされてさ。そいつ、話しかけてもどもるばっかりだし。初デートが公園って小学生かよって感じ。あんまりにもつまんないから、最後はバックレたわ。やっぱりネットの男はダメね。リアルがさいこ――」

 俺は気がついたら近くのテーブルからナイフを取り、彼女の顔にそれを突き立てていた。

 何度も、何度も、何度も。

 記憶にある彼女のあの美しい笑顔が汚される前に、この汚らわしい女を彼女だと脳みそが認識する前に、消さなきゃ。

 そして、俺はまたいつものように公園を歩く。

 青空に消えてしまった彼女を探して。

 ふっと自分の手を見ると真っ赤で、思わず笑みがこぼれる。

「あぁ……君は青だったけど、俺は赤だったんだね」

 真っ赤な俺は、きっと青空のような笑顔を浮かべる君と相性バッチリだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...