上 下
2 / 2

第2話

しおりを挟む
門番は少女が武器を持っていないことを確認すると、簡単に宮殿に通した。


「こんな簡単に通してしまうんですね。もし私が強くて、王子様に危害を加えたらどうするんですか?」


「お嬢ちゃんが?いやいや、そんなか弱い体で強いわけないだろう。それに……どんなに強くても、あの方には指一本触れられないよ。」


門番は引きつった笑みを浮かべた。


「触れようとすると怒るんですか?怒りはあるんですか?」


「俺も詳しいことは分からないけど…少しでも悪意を持った者が触れようとすると腕ごと切られるって噂だよ。まあ悪意には敏感なんだろうな…。」


「……」


「さあ、俺がいけるのはここまでだ。まあ少しは怪我するだろうけど…殺されないように頑張れよ。」


少女は門番にお礼を言うと、宮殿の扉をノックした。ドアは執事によってすぐに開かれ、あっという間に少女は応接間に通された。


―――――


(この宮殿…こんなに広いのに会ったのはさっきの執事のみ…まあ信じられない人を沢山そばに置くより信じられる人が一人いた方がいいよね。わかるその気持ち。でもあのおじいちゃんがこの広い宮殿のこと一人で全部こなしてるとこ想像すると泣けてきちゃうわ)


少女は王子が来るまでおとなしくひれ伏して待つことにした。


――「面を上げよ」


王子は気配もなくいつの間に王座に座っていた。氷のように透き通った冷たい声。少女は顔を上げ、王子を見て驚いた。完璧な見た目だった。かっこいいとか、そんなレベルではない。美しい。中世的な美しさは、この世のものとは思えなかった。


(王様も整っていないわけではないけど…うーん。突然変異?それともお母さんがよっぽど美しかったのかな?)


――「名はなんと申す」


「ポポでございます。おかしな名前ですがお気になさらず。」


「…ではポポ。これから僕になにをするんだ」


「魔法をかけさせていただきたいのです。」


「感情を操る魔法か?何度もかけられたことがあるが、一度も何かを感じたことはないぞ。」


「まさか。そんなつまらないことはしません。私がかけるのは癒しの魔法です。今日はそうですね…私の名前にちなんでタンポポにしましょう。さあ、さっそく準備はよろしいですか?」


「…ああ。そのかわり、僕がすこしでも不快だと感じたらすぐにでもお前の首を切るぞ」


「はい。その時は迷わずにどうぞ」


少女は自分と王子を魔法で包み込んだ。





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...