「完結」ゾンビと片腕少女はどのように死んだのか特殊部隊員は語る

第二章 生存者たち

第十一話 生きている部隊

スーパーの朝は静かだ。保護地区から持ち帰った装備と物資、そして合流した自衛隊員の中村と佐々木、6人の生存者で賑わう。俺はM9を手に弾倉を点検し、次の一手を考える。美奈子が短髪を整えながら乾パンを並べ、詩織が子供たちに水を配る。そんな中、新たな情報が飛び込む。

中村が89式を手に近づく。「お前、保護地区での動き、見事だったな。」俺は黙ってナイフを鞘に収め、鋭い視線で返す。

佐々木がM24を手に持つ。「実は、まだ活動中の部隊がいるらしい。北西に拠点があるって話だよ。」彼女が地図を広げる。

「部隊が？」俺が地図に目を落とし、北西を指でなぞる。頭の中で距離と地形を瞬時に計算する。

「その通り。」中村が頷く。「ゾンビが広がった時、自衛隊は各地で持ちこたえようとした。俺たちの部隊は撤退したけど、北西に集まった連中がいる。通信が途絶えて場所は曖昧だが、生き残りがそこに集まってる可能性が高い。」

「俺たちは遅れた人を守ってた時に部隊を見失ったんだ。」佐々木が続ける。「保護地区が崩壊した後は、生存者を匿ってたけど、お前のおかげでここまで来れた。」

「北西なら山間部だ。距離は？」俺が地図の端を軽く叩く。

「多摩川から20キロくらい。山がちで道は悪いが、そこに拠点があるなら見逃せない。」中村が地図を指す。

美奈子がショットガンを手に近づく。「まだ部隊が残ってるなんて驚きだ。もし本当なら、心強いね。」短髪が朝陽に映える。

詩織が子供たちを落ち着かせ、言う。「おじさん、それって探しに行くつもり？」健太と彩花が彼女のそばで耳を傾ける。

「そうだ。部隊が生きてれば、物資や情報が手に入る。多摩川沿いのスーパーより強固な拠点になるかもしれない。」俺が詩織に目をやり、決意を込める。「俺が確認に行く。」

「また一人で行くの？」詩織が金属棒を手に、少し眉を寄せる。

「一人なら動きやすい。危険を減らせる。」俺が彼女の肩に手を置き、安心させる。「お前は子供たちとここにいてくれ。」

中村が言う。「俺たちも行きたいが、この人たちを守るのが先だ。お前なら大丈夫そうだ。」佐々木が頷く。「頼んだよ。」

昼前、俺は装備を整える。89式小銃1丁、M9ピストル1丁、弾薬を腰に固定。ナイフを手に持つ。素早く点検し、動きを妨げない軽装に仕上げる。美奈子が近づく。「山間部は道が荒れてるよ。気をつけて。」彼女が乾パンと水の入った袋を渡す。「食い物がないと厳しいからね。」

「分かった。」俺が袋を受け取り、背に担ぐ。

詩織が子供たちを連れて来る。「おじさん、これ持ってって。」健太が木の枝で作った小さな輪を差し出し、「元気でいてね！」と言う。彩花が「早く戻ってきて」と呟く。俺が輪を受け取り、詩織に渡す。「お前が持っててくれ。すぐ戻る。」彼女が頷く。「うん。私、信じてるよ。」

佐藤がナイフを手に言う。「部隊が残ってれば、俺たちにとっても良い知らせだ。」田中が鉄パイプを握る。「山に隠れてるなんて、面白そうだな。」由美が微笑む。「他の生き残りと繋がれたら、嬉しいね。」

中村が地図を指す。「山間部はゾンビが少ないかもしれないが、油断しないでくれ。」佐々木がM24を手に持つ。「何かあったら、ここに急いで戻ってきて。」

「北西へ向かい、部隊の拠点を特定する。状況を見て戻る。敵とは極力戦わない。」俺が全員に視線を向け、出発を告げる。スーパーを出る。詩織が入口で小さく手を振る。俺は振り返らず、北西へ進む。

山間部へ向かう道は荒れ、木々が道を塞ぐ。2時間歩くと、ゾンビ5体が茂みから現れる。通常種だ。俺は89式を構え、距離15メートルで引き金を引く。頭に命中し、1体が倒れる。残り4体が近づく。俺がナイフを抜き、1体が飛びかかった瞬間、横に飛び、首に刃を突き立てる。血が飛び、倒れる。2体目が腕を振り下ろし、俺が屈んで避け、膝を斬る。倒れた頭を刺す。3体目が背後から迫り、俺が肩をぶつけ、喉を切り裂く。4体目が突っ込んでくるが、俺が足を払い、首を刺す。息を整え、先へ進む。

さらに3時間後、山の斜面を登る。視界が開け、遠くの谷間を見下ろす。すると、ゾンビの群れが目に入る。50体以上、変異種が10体ほど混じる。動きはバラバラだが、北西方向へ向かっている。キャンプの位置はまだ不明だが、その方角に部隊がある可能性が高い。俺は茂みに身を隠し、双眼鏡で確認する。通常種がうめき、変異種が素早く動く。群れの規模と速度から、数日で北西のどこかに到達するだろう。

「厄介なタイミングだ…」俺は内心で呟く。この群れが部隊のキャンプに近づけば、見つける前に潰されるかもしれない。スーパーは今のところ安全だが、北西の部隊が生き残るかどうかが鍵だ。警告すれば、対処の時間が稼げる。俺は決意を固め、山間部へ急ぐ。

夕暮れ、山間部に近づく。木々が密集し、道が狭まる。遠くに煙が上がる。俺は茂みに身を隠し、静かに近づく。キャンプが見える。自衛隊の車両とテント。約30名の自衛隊員と生存者がゾンビ10体と戦っている。自衛隊員が銃を撃ち、生存者が棒で応戦する。

俺が89式を構え、変異種1体の頭を正確に撃つ。銃声が響き、自衛隊員がこちらに気づく。「何者だ！？」声が飛ぶ。

「生存者だ。敵じゃない。多摩川沿いのスーパーから来た。」俺が茂みから出て、両手を軽く上げる。冷静な動作で意図を伝える。

リーダーらしき男が近づく。40代、迷彩服が擦り切れている。「多摩川沿いのスーパーか。一人でここまで来たのか？動きが鋭いな。」

「部隊の噂を聞いて調べに来た。」俺が短く答える。ナイフを腰に収め、姿勢を正す。

「俺たちは撤退した部隊の生き残りだ。ここに集まって拠点を作ってる。お前、助かるよ。」男が言う。「俺は田島だ。中に入れ。」

ゾンビの群れの警告と新たな示唆

夜、キャンプで話を聞く。田島が言う。「山間部に拠点を移した。物資は2ヶ月分あるが、変異種がじわじわ増えてる。スーパーがあるなら、一緒にやっていけるかもしれない。」

「その前に伝えたいことがある。」俺が田島に目を向ける。「ここへ向かう途中、ゾンビの群れを見た。50体以上、変異種も10体ほど混じってる。北西方向へ向かってる。数日でこの辺りに来るかもしれない。」

田島が顔を曇らせる。「50体以上か…それはまずいな。こっちでも変異種の動きが活発になってる。このキャンプがやられると、スーパーとの連携も遠のく。」

「まだスーパーに戻らない。」俺が地図を広げる。「群れの動きを確認し、ここで情報を集める。キャンプを守る準備が必要だ。」

田島が頷く。「分かった。お前がいるなら、こっちも助かる。少し装備を渡すよ。連絡用の道具もな。」89式の弾薬200発と無線機を受け取る。

田島が続ける。「実は、俺たちとは別の部隊の噂もある。もっと精鋭の連中だ。北東の方で動いてるらしい。

俺は無線機を手に持つ。北東は、俺がかつて戦った領域だ。あの部隊が生きていれば、大きな力になる。だが、今はキャンプの危機が先だ。俺はキャンプに留まり、夜の警戒に立つ。ゾンビの群れが北西へ向かう中、この部隊との繋がりを深め、スーパーとの未来を繋ぐ準備を始める。