上 下
53 / 93
幕末妖怪の章

鴨鍋④

しおりを挟む
 


 真っ青になる一同、土方は苦虫をい噛みまた芹沢は豪快に笑い始めた。

「ひいちゃん?芹沢さんに何かしたら私は今後食事は絶対に作らないわ。」
雛妃に言葉に更に一同は顔色を悪くさせた。

「雛妃待って!それは困る!俺もう島田さんの飯にはもどれねぇ!」
平助は雛妃に鳴きついた。
雛妃はこの短期で屯所全員の胃をガッチリと掴んでいた、誰もが今更前の様な食事には戻れないだろう。

「雛妃!勘弁してくれ!もう俺の舌はあの頃には戻れねぇんだ!」
永倉は叫びながら頭を抱えた。

「はぁ…俺達はすっかり雛妃に胃を握られているな。」
近藤はしみじみと言うと眉を下げた。

「これは参ったね、うちのお姫様はやんちゃでいけない。」
原田は両手を上げて降参の姿勢をとった。

「……。」
斉藤は無言で雛妃を見ているが何処か悲しそうだ、斉藤も雛妃のご飯が食べられないのは嫌なのだ。
其々を見回して雛妃はもう一度土方を睨む。

「ひいちゃん、どうしてこんな事すの?芹沢さんが何かしたの?」

「雛妃落ち着けよ。」

「平ちゃん、落ち着いてなんて居られないわよ!芹沢さんは優しい人だよ?私のこっちでのお父さんみたいな存在なの!」

「局中法度だ!」
土方が言った。
局中法度?何それ誰がハッとしてんのよ?

局中法度

一、士道ニ背キ間敷事
(武士道に背く行為をしてはならない)
一、局ヲ脱スルヲ不許
(新撰組からの脱退は許されない)
一、勝手ニ金策致不可
(無断で借金をしてはならない)
一、勝手ニ訴訟取扱不可
(無断で訴訟に関係してはならない)
一、私ノ闘争ヲ不許
(個人的な争いをしてはならない)
右条々相背候者切腹申付ベク候也
(以上いずれかに違反した者には切腹を申し渡す)
と言う事らいし。

「はぁ?何よそれ…。誰がそんな事決めたのよ?」

「土方さんだよ。」
平助君が教えてくれた。

「馬鹿じゃないの?ひいちゃん…武士道に背いてはならないとか大体はわかるわ、でもね背いたからって切腹はないわ。どうしても武士道に背いた事をしなきゃならない時もあるじゃない?どれも家族を盾にされたら私なら背いてるわ。現に今芹沢さんを助けたいから皆を敵にしてるわ。」

「待て、俺達は雛妃や知世を敵にする気は無いぞ。」
近藤は慌てて両手を前に突き出して振った。

「いいえ、芹沢さんに危害を加えるなら…っ!えいっ!」

「わわわわわわっ!」
私は近藤さんに接近して素早く回し蹴りを繰り出した。
更に拳を近藤さんが握っていた刀に当てると、刀は半分から折れてしまった。

「雛妃…止せ。」
暴れる私を斉藤さんが後ろから抑えたけど私は斉藤さんに裏拳を放った。

「離して!皆ちゃんと芹沢さんの話を聞いたの?話し合ったの?話し合いも芹沢さんの言い分も聞かないでこんな事をしてるなら…私は皆を許さない!」

「おい…誰か雛妃を止めろよ。」

「新八、無理だ。俺達は雛妃に攻撃なんて出来ないし、あれじゃ逆に俺達がやられる。」

「どうすんだよ?左之さんが無理なら…斉藤さん行けよぉ。」

「平助、俺は雛妃に危害は加えない。」

「これだもんな…。」
近藤に攻撃を続ける雛妃を見て溜息をついた。
近藤は必死に雛妃の攻撃を交わしていた。

「雛妃!そんなに足を上げてはいかん!嫁入り前の娘がそんなっ…うわっ!はしたないぞ。」

「足見せたくらいで嫁に行けないなら、行けなくて結構よ!」

「なんて事を言うんだ!嫁に行けないと困る…うおっ!」

「良いわよ!その時は芹沢さんに嫁に貰ってもらうわ!」
売り言葉に買い言葉…これに盛大に反応したのは斉藤だった。

「おわぁ!斉藤さん冷気が!止めてよ!」
平助が冷気に震えながら斉藤に叫んだが斉藤の耳には全く入らなかった。

「それは駄目だ…」

「えっ?ちょっと斉藤さん何処行くの!」
斉藤は目にも止まらぬ速さで雛妃に向かって行き、雛妃を捕まえた。

「はぁちゃん?離して!」

「駄目だ。」

「良し!斉藤そのまま雛妃を押えておけ!」
斉藤は暴れる雛妃の腕を交わしながら何とか押えていた。

「なんだこりゃ…ぐだぐだじゃねぇか。近藤さん止めだ、興が冷めた。」

「良いのか歳?」

「あぁ…仕方ねぇだろ?うちの姫様がご乱心だ。芹沢は死んだ事にすりゃあ良い。それで良いか芹沢?」

「ふん…良いのかこのままワシを生かして置いて。」

「あんたを殺したら雛妃がご乱心するからな、大人しくしてりゃあ殺さねぇよ。」

「雛妃の気遣いは嬉しいが…これでは龍に怒られてしまうわい。」

「龍?」

「何だ?聞いておらんのか?先見の龍だ。」

「何だと?聞いてるか近藤さん?」

「いや、聞いていない。」
まだ遠くで斉藤に拘束された雛妃が何か喚いているのが聞こえるが、土方と近藤は芹沢から先見の龍の名が出た事に驚きを隠せない。

「どう言う事だ?」

「もう離しても良いだろう、雛妃の此処に来なさい。」
散々喚いて疲れた私を芹沢さんが呼んだ。
どうしたんだろう?もう粛清の件は終わったのだろうか?
言われた通り芹沢さん達の所に斉藤さんに連れて行かれた、まだ私が暴れると思ってるんだろか?

「お主等に話がある、後は龍にでも聞くと良い。ワシは…」









しおりを挟む

処理中です...