ヤンデレ美少女は最強だけど、ダンジョン攻略するには向いていない

はな

文字の大きさ
4 / 7

第4話 出発

しおりを挟む
「あ、あぶねえ……ルナ、ありがとうな」

 回避に成功したというのに、ルナは俺に覆いかぶさったまま動こうとしない。
 そのままルナは「ハァハァ」と息を荒くしている。その吐息は病的なものではなく、気分が高揚しているときのものだと俺はすぐに気が付いた。

「わたしがカケルくんを守ってあげる……絶対にカケルくんを死なせたりしないから」

 俺の耳元でルナが囁くように呟いた。
ルナの柔らかい胸が俺の胸に当たり、意外すぎる彼女の行動に俺は頭が真っ白になってしまった。……彼女に恥じらいはないのだろうか。俺はこんなに恥ずかしいというのに!

「カケルくんが見落としていたこともルナがしっかりと見てあげる。カケルがルナの目で、ルナのがカケルくんの武器になってあげる。カケルくんとルナがいれば死角なんてない。わたしたちは最強だよ」

 ルナの声には溢れんばかりの自信に満ちていた。まるで俺とルナがいれば敵はいない、誇るような表情で俺を見つめていた。

「カケルくんは、ルナの前で無理して強がったりしなくてもいいんだよ? カッコ悪いカケルくんでも、弱っちいカケルくんでも、ルナは絶対に嫌いになったりしないんだから。……だからね、カケルくんはいっぱいルナに甘えて欲しいの」

 ルナの表情はまるで愛する我が子に向けるように慈愛に満ちていた。
 ……言われて嫌な気分はしないが、女の子にそう言われるのは男の俺からすれば複雑な気持ちだった。

 蕩けるような声で囁くもんだから、頭がクラクラとしてしまう。

 彼女は一体、なんなんだ……。
 まるで俺の心を惑わせようとする悪魔のようだ……。

 そんな彼女に対し、俺の心は警鐘を鳴らしている。
 彼女はどこかヤバいと俺の本能が告げているのだ。

「ちょ、抱き着くなって! どうしたんだよ急に!」
「カケルくんが好きなの!」
「は、はあ!? 突然お前は何を言ってるんだ?」
「カケルくんはずっと目が見えなかったルナの光になってくれた。ルナに世界を見せてくれた。だから好きなの!」
「俺は別になりたくてルナと視界を共有しているわけじゃない」

 親切心でやったわけじゃないのに、感謝されたりするのは好きじゃなかった。

「カケルくんはルナのこと好き?」
「助けてくれたことには感謝しているけど、会って少ししか経っていないし、お前ストーカーだし……」

 俺がそう言うと、ルナはゆっくりと立ち上がり、地面に転がっている棍棒を手にする。

 もしかして、選択肢をミスったか?
 頭のぶっ飛んでるルナのことだ。何をしてくるか分からない。
俺は腰を落とし、いつ襲いかかってきても対応出来るよう気を集中させる。

「カケルくんがわたしのことを嫌いになったなら……もう生きている意味なんてない。このまま死んじゃおうかなぁ……」

 次にとった彼女の驚愕の行動に俺はしばらく反応が出来なかった。
 なんということか、ルナは不気味な笑みを浮かべながら棍棒を激しく自分の顔に打ちつけ始めたのだ。額からは血が噴き出している。

「ま、待て待て! 俺はルナのこと嫌いになったわけじゃないぞ!!」

 慌てて俺がそう叫ぶとルナの手の動きはピタリと止まった。

「ほんと?」
「……ああ、本当だ」

 好きになったわけでもないがな、と心の中で付け加える。

 野生動物をなだめるように慎重に答えると、ルナは棍棒を片手で持ったまま子供のように無邪気な笑顔を作ってみせた。額からは血がたらりと垂れてきている。

「とにかく、ここが危ないということだけは分かった。一刻も早くここから抜け出そう」
「抜け出すって、どうやって?」
「分からない……でも、ここがダンジョン第一層っていうことは上の階層を目指していけばいつかゴールに辿り着けるんじゃないか?」
「ふうん」

 ルナはどうでも良さそうに返事をする。

「カケルくんがそうしたいならルナはそれに従うよ」

 危険なモンスターが出現するうえに、トラップもあるのは確認済みだ。彼女がどんな人物であれ、別行動するよりは良い。

「ルナが協力してくれるなら心強いぜ。さっさとこのワケの分からないダンジョンを攻略しちまおう」

 俺がそう意気込むと、ルナは「おー」と可愛い声で拳を上に伸ばした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...