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#10 レベル上げ
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≪プーリア平原≫
村の周辺には、雑魚モンスター“スライム”がプルプルと揺れながらゆっくりと地面を這っている。そのモンスターを狩ろうと、追いかけるプレイヤー達。どのプレイヤーもレベルを上げたいと思っているのだから当然、狩場は混雑している。
他のプレイヤーが戦っているモンスターとは戦うことが出来ない。一緒に戦おうとすればパーティを組む必要が出てくるのだが、このシステムのせいでモンスターの取り合いなんてものが起こってしまう。面倒なシステムだなって思う。
「まだ俺たちはレベル1だからあのスライムっていうモンスターをターゲットにしよう」
「スライムちゃん!」
「いいか? プレイヤーと戦っていないスライムを探すんだ。NPCやプレイヤーと違って頭の上に名前が表示されないから気をつけろ。リポップしたらすぐに攻撃を仕掛けて、俺たちのモンスターにする。椅子取りゲームの要領だ。分かるな?」
「リポ払い! 椅子取りゲーム! 楽しそう!」
「ホントに分かってんのかな……」
少々心配だが、こういう取り合いの時は分散して探すことが出来るので、一人で探すよりもパーティ組んでいた方が圧倒的に有利だ。
「あっ! スライム発見!」
モフモフが指差した先に目をやる。スライムがちょうど空から降ってきた(リポップした)ところだった。距離としてはこちらの方が近い。俺が先制攻撃を仕掛けよう。
「モフモフ、ついて来い!」
「スライムまてー!」
背中にかけてある木の杖を手に持ちかえ、スライムに殴りかかる。攻撃力が低いので大してダメージは与えられていないが、これでこのスライムは俺たちの物になったわけだ。
戦闘開始――。
さて、ここで俺が魔法を使ってサクッと倒してしまうのは簡単だが、一応わたあめに戦闘のレクチャーをしてやった方がいいだろう。いちいち宿に戻って回復するのも面倒だし、MPも温存しておきたいので戦えるようになってもらわないと困るしね。
「モフモフ。モンスターとの戦い方を教えてやる。まずは武器を取り出すんだ」
「武器ってこの棍棒でいいんだよね?」
「ああ、それだ。その武器を使ってスライムを殴ってみるんだ。動きが遅いし簡単に当てられるだろ?」
「えー、スライムが可哀そうだよぉ」
「ここはゲームの中だから、スライムなんてただのデータだよ。倒してもすぐ新しいやつが出てくるから心配するな」
「う、うん。わかった……」
モフモフはトコトコとスライムに駆け寄り、スイカを割るようにして棍棒を思い切り叩きつけた。スライムの体がプルンと揺れる。
「わわっ、なんか攻撃の途中で体が自動で動いたよ!」
「モーションシステムって言うんだ。例えば剣なら縦斬り、薙ぎ払い、袈裟斬り、突き、どのモーションで攻撃するか確定されたら自動で体が動いてくれる。便利だろ?」
「うんっ、なんだか不思議な感じ」
DOMはリアルの身体能力によって差が出ないよう、こうしたモーションシステムを取り入れているらしい。そのお陰でアバターが女なら自動的に女っぽい動きになるのでネカマプレイが横行している。
「ちなみに使うモーションによって新たにスキルを獲得することがあるから、色々試してみるといい」
「わかった!」
モフモフは突きや、薙ぎ払いなど、様々な技をスライムに試していた。大してダメージは入っていないようだが。まあ、最初はこんなもんでいいか。
俺は杖を構えて、スライムに狙いを定める。魔法使いが最初に覚えている魔法はファイアボールのみ。こちらも魔法の使い方次第でこれから覚える魔法は人とは異なってくる。弱さをカバーするためにも役立つ魔法をさっさと覚えてしまった方がいいだろう。
「モフモフ、ちょっと下がっていろ!」
「えっ、なになに!?」
「食らえッ!」
【ファイアボール】
杖から飛び出した小さな火の玉は、スライムに向かって一直線に飛んで行く。間髪入れずにもう一回!
【ファイアボール】
スライムに火の玉が2回ヒットする。スライムは黒い煙を上げると、ドロドロと溶けていった。
【4の経験値 3ヴィルを獲得しました】
「勝てたぁ! 魔法ってすごいんだねー!」
「まあな。吟遊詩人もレベルを上げれば自動的に魔法を覚えるようになるぞ」
「おおっ!」
案の定、経験値と手に入るお金は少ないな。これでも経験値は元の2倍になっているから幾分か楽になっているはずなんだが。
『新たな専用スキル【ダブルファイア】を習得しました』
お、習得出来た。ファイアボールを2回連続でヒットさせれば習得出来るって聞いていたが、本当にそれだけで習得出来てしまうとはな。
【ダブルファイア】はファイアボール2つ分の威力だが、消費するMPは2回ファイアボールを使うよりも少ないので、序盤にはとても重宝する。
「モフモフは何か新しいスキルを覚えたか?」
「だめ……。なにも覚えられなかった」
「1回しか戦闘していないしな……。でも、戦闘をしなくても覚えられるスキルもあるんだぜ?」
「ホント!?」
俺は地面に転がっている石を拾って、遠くへ投げる。そして、また石を探し、思い切り投げる!
「これを10回くらい繰り返してみるといい。投石スキルってのを覚えて、モンスターに石を当てたときにダメージを与えられるようになるから」
「おおっ! 早速やってみるね」
二人で一緒に石を探して遠くに投げる。周りのプレイヤー達は何をしているんだ? という変な目でこちらを見てくる。
『新たなスキル【投石】を獲得しました』
「どうだ? モフモフも覚えたか?」
「覚えた! 目の前にメッセージが出て教えてくれるんだね」
「そうじゃないと不親切過ぎるからな。そしてもう一つ、取っておくと便利なスキルがあるぞ」
「なになに?」
「鑑定ってスキルだ。便利っていうか必須レベルだな。あそこに生えている草を手に取ってじっくり見てみるといい」
「この草だね! じーー」
「わざわざ声に出す必要はないけどね」
俺もモフモフの隣に座り、草を引き抜いてじっくりと観察してみる。すると……。
『新たなスキル【鑑定】を獲得しました』
――――――――――――――――――――
【アイテム名】解毒草
【レア度】D
●消費アイテム……使うと毒状態を治すことが出来る。
――――――――――――――――――――
こんな簡単に覚えることが出来るのだから、最初から覚えていても良いような気がする。きっと、自分が行動してスキルを覚えるっていう快感をプレイヤーに知って欲しかったんだろうな。
「鑑定スキル覚えたよ。次は? 次は?」
「バトル外で覚えるスキルはこんなところでいいだろう。そろそろレベル上げを再開しようか」
「はーい!」
相変わらず村の周辺の狩場は混雑している。モフモフと2人、虎視眈々とスライムを狙い続けた。
村の周辺には、雑魚モンスター“スライム”がプルプルと揺れながらゆっくりと地面を這っている。そのモンスターを狩ろうと、追いかけるプレイヤー達。どのプレイヤーもレベルを上げたいと思っているのだから当然、狩場は混雑している。
他のプレイヤーが戦っているモンスターとは戦うことが出来ない。一緒に戦おうとすればパーティを組む必要が出てくるのだが、このシステムのせいでモンスターの取り合いなんてものが起こってしまう。面倒なシステムだなって思う。
「まだ俺たちはレベル1だからあのスライムっていうモンスターをターゲットにしよう」
「スライムちゃん!」
「いいか? プレイヤーと戦っていないスライムを探すんだ。NPCやプレイヤーと違って頭の上に名前が表示されないから気をつけろ。リポップしたらすぐに攻撃を仕掛けて、俺たちのモンスターにする。椅子取りゲームの要領だ。分かるな?」
「リポ払い! 椅子取りゲーム! 楽しそう!」
「ホントに分かってんのかな……」
少々心配だが、こういう取り合いの時は分散して探すことが出来るので、一人で探すよりもパーティ組んでいた方が圧倒的に有利だ。
「あっ! スライム発見!」
モフモフが指差した先に目をやる。スライムがちょうど空から降ってきた(リポップした)ところだった。距離としてはこちらの方が近い。俺が先制攻撃を仕掛けよう。
「モフモフ、ついて来い!」
「スライムまてー!」
背中にかけてある木の杖を手に持ちかえ、スライムに殴りかかる。攻撃力が低いので大してダメージは与えられていないが、これでこのスライムは俺たちの物になったわけだ。
戦闘開始――。
さて、ここで俺が魔法を使ってサクッと倒してしまうのは簡単だが、一応わたあめに戦闘のレクチャーをしてやった方がいいだろう。いちいち宿に戻って回復するのも面倒だし、MPも温存しておきたいので戦えるようになってもらわないと困るしね。
「モフモフ。モンスターとの戦い方を教えてやる。まずは武器を取り出すんだ」
「武器ってこの棍棒でいいんだよね?」
「ああ、それだ。その武器を使ってスライムを殴ってみるんだ。動きが遅いし簡単に当てられるだろ?」
「えー、スライムが可哀そうだよぉ」
「ここはゲームの中だから、スライムなんてただのデータだよ。倒してもすぐ新しいやつが出てくるから心配するな」
「う、うん。わかった……」
モフモフはトコトコとスライムに駆け寄り、スイカを割るようにして棍棒を思い切り叩きつけた。スライムの体がプルンと揺れる。
「わわっ、なんか攻撃の途中で体が自動で動いたよ!」
「モーションシステムって言うんだ。例えば剣なら縦斬り、薙ぎ払い、袈裟斬り、突き、どのモーションで攻撃するか確定されたら自動で体が動いてくれる。便利だろ?」
「うんっ、なんだか不思議な感じ」
DOMはリアルの身体能力によって差が出ないよう、こうしたモーションシステムを取り入れているらしい。そのお陰でアバターが女なら自動的に女っぽい動きになるのでネカマプレイが横行している。
「ちなみに使うモーションによって新たにスキルを獲得することがあるから、色々試してみるといい」
「わかった!」
モフモフは突きや、薙ぎ払いなど、様々な技をスライムに試していた。大してダメージは入っていないようだが。まあ、最初はこんなもんでいいか。
俺は杖を構えて、スライムに狙いを定める。魔法使いが最初に覚えている魔法はファイアボールのみ。こちらも魔法の使い方次第でこれから覚える魔法は人とは異なってくる。弱さをカバーするためにも役立つ魔法をさっさと覚えてしまった方がいいだろう。
「モフモフ、ちょっと下がっていろ!」
「えっ、なになに!?」
「食らえッ!」
【ファイアボール】
杖から飛び出した小さな火の玉は、スライムに向かって一直線に飛んで行く。間髪入れずにもう一回!
【ファイアボール】
スライムに火の玉が2回ヒットする。スライムは黒い煙を上げると、ドロドロと溶けていった。
【4の経験値 3ヴィルを獲得しました】
「勝てたぁ! 魔法ってすごいんだねー!」
「まあな。吟遊詩人もレベルを上げれば自動的に魔法を覚えるようになるぞ」
「おおっ!」
案の定、経験値と手に入るお金は少ないな。これでも経験値は元の2倍になっているから幾分か楽になっているはずなんだが。
『新たな専用スキル【ダブルファイア】を習得しました』
お、習得出来た。ファイアボールを2回連続でヒットさせれば習得出来るって聞いていたが、本当にそれだけで習得出来てしまうとはな。
【ダブルファイア】はファイアボール2つ分の威力だが、消費するMPは2回ファイアボールを使うよりも少ないので、序盤にはとても重宝する。
「モフモフは何か新しいスキルを覚えたか?」
「だめ……。なにも覚えられなかった」
「1回しか戦闘していないしな……。でも、戦闘をしなくても覚えられるスキルもあるんだぜ?」
「ホント!?」
俺は地面に転がっている石を拾って、遠くへ投げる。そして、また石を探し、思い切り投げる!
「これを10回くらい繰り返してみるといい。投石スキルってのを覚えて、モンスターに石を当てたときにダメージを与えられるようになるから」
「おおっ! 早速やってみるね」
二人で一緒に石を探して遠くに投げる。周りのプレイヤー達は何をしているんだ? という変な目でこちらを見てくる。
『新たなスキル【投石】を獲得しました』
「どうだ? モフモフも覚えたか?」
「覚えた! 目の前にメッセージが出て教えてくれるんだね」
「そうじゃないと不親切過ぎるからな。そしてもう一つ、取っておくと便利なスキルがあるぞ」
「なになに?」
「鑑定ってスキルだ。便利っていうか必須レベルだな。あそこに生えている草を手に取ってじっくり見てみるといい」
「この草だね! じーー」
「わざわざ声に出す必要はないけどね」
俺もモフモフの隣に座り、草を引き抜いてじっくりと観察してみる。すると……。
『新たなスキル【鑑定】を獲得しました』
――――――――――――――――――――
【アイテム名】解毒草
【レア度】D
●消費アイテム……使うと毒状態を治すことが出来る。
――――――――――――――――――――
こんな簡単に覚えることが出来るのだから、最初から覚えていても良いような気がする。きっと、自分が行動してスキルを覚えるっていう快感をプレイヤーに知って欲しかったんだろうな。
「鑑定スキル覚えたよ。次は? 次は?」
「バトル外で覚えるスキルはこんなところでいいだろう。そろそろレベル上げを再開しようか」
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