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一章
死の予兆
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晴南達を乗せた車は明井田商店街を抜けて45号線へと入っていた。
車を運転している二実が柚羽(ゆずは)に尋ねた。
「このまま45号線を道なりに進めばいいんだよね?」
柚羽が二実に言った。
「はい、このまままっすぐ進んでください。この先にある明井田橋を渡って川原(かわはら)地区を抜ければ私達の家がある美並里(びなり)地区です。明井田橋を渡って美並里3丁目の交差点を左に曲がってください。その先に我が家があります。」
二実が柚羽に言った。
「分かった。ありがとう柚羽ちゃん。」
すると三緒が二実に言った。
「この辺りは照明がつきまくってたりはしてないんだね。」
二実が三緒に言った。
「そうね、この辺りは普通の夜ね。所々家の照明はついてるけど、ついてない家の方が多そう。」
優斗が二実に言った。
「川原(かわはら)地区は特に異常がなそうですね。」
拓也が優斗に言った。
「ついてる明かりは街灯や玄関前の照明ぐらいですしね。」
三緒が拓也に言った。
「川原(かわはら)地区に入ってから、何台か車ともすれ違ってるしね。川原地区は普通の状態って感じだね。」
すると二実が柚羽に尋ねた。
「柚羽ちゃん??この先の秋崎(あきざき)神社はどう??」
柚羽が二実に言った。
「大丈夫です。やっぱり神域を感じられません。このまま進んで明井田橋を渡って大丈夫だと思います。」
健太が二実に言った。
「明井田橋を渡れば美並里(びなり)地区です。」
すると二実の横に座っている晴南が言った。
「ちょっと柚羽??柚羽が通れる道をホイホイ教えるから私のやる事がなくなっちゃったんだけど?」
柚羽が晴南に聞き返す。
「えっ??」
晴南が柚羽に言った。
「せっかく前の席に座ってこの面白いカメラで見て回ってたのに、柚羽が二実さんにルートを教えちゃうから私のやる事がなくなちゃったんだけど?」
柚羽が晴南に言った。
「そんな事私に言われても困るんだけど?」
晃太が晴南に言った。
「晴南??たぶん柚羽にルートを教えてもらった方がいいと思うぞ。確認する方法がなかったから目視で確認してたが柚羽が神域を感じ取れるというのなら柚羽にルートを聞いて進んだ方が恐らく安全だし確実だ。」
晴南が晃太に言った。
「安全とか確実とかそういう問題じゃないわ。」
晃太が晴南に言った。
「じゃあどういう問題なんだ?」
晴南が晃太に言った。
「だって今日は前の席にいてもつまらないだもん。」
晃太が晴南に言った。
「つまらないとか今はそんな事言ってる場合じゃないだろう?」
晃太が晴南に言った。
「私はいついかなる時も楽しく過ごしたいの。」
二実の運転する車は明井田橋を渡ろうとしていた。
すると晴南が二実に大きな声で言った。
「二実さん!!この先に大きなトラックが止まってます!!」
二実が晴南に尋ねた。
「あれトッラクなんだ??橋の出た所に何か止まってるみたいだけど??」
二実がみんなに言った。
「とりあえず明井田橋の出口付近まで進んでみましょう。」
二実は車を明井田橋の出口付近まで進めて、そして橋の出口の手前で停車をしたのだった。
晃太が晴南に言った。
「よくあんな場所からトラックが止まってるって分かったな。」
晴南が晃太に言った。
「当然でしょ、私の視力は2.0なんだから。」
晃太が晴南に言った。
「動体視力もピカイチだもんな。」
晴南が晃太に言った。
「そういう事よ。」
拓也が言った。
「しかしなんでこんな交差点のど真ん中に大型トラックが止まってるんだ??」
晴南が拓也に言った。
「このトラックの運転手さんがトラックを止めて休憩してるだけじゃないの?」
晃太が晴南に言った。
「大型トラックを交差点のど真ん中に止めて休憩する運転手さんがいるわけないだろう。休憩するなら道の端に停車させるに決まってるだろう。」
すると二実がみんなに言った。
「うーん?交差点の右側が少し空いてるから通ろうと思えば通れない事はないんだけど。一応確認しに行きましょうか?」
三緒が二実に言った。
「そうだね。」
すぐに二実は車を端に止めると、晴南達は車を降りて前方にある交差点の中央に止められている大型トラックへと確認に向かうのだった。
外観を見た優斗が言った。
「明井田運輸の配送トラックみたいだけど??」
二実が優斗に言った。
「そうだね。」
すると三緒の大きな声が聞こえてきた。
「二実!!すぐに来て!!」
すぐに晴南達はトラックの運転席を確認に行っていた三緒のもとに向かった。
駆けつけた二実が三緒に尋ねた。
「三緒??運転手さんが見当たらないの??」
三緒が二実に言った。
「いや運転手さんはいるんだけど。」
三緒はそういうと運転席を指さした。
二実は運転席を確認した。
運転席には作業着姿の中年の男性がいた。
運転席の窓は空いていたので、二実は作業着姿の男性に呼びかけたのだった。
「あのう、すいません!!!どうかされたんですか??」
だがその作業着姿の男性は二実の言葉には振り向きもせずにひたすら何かを書いていた。
二実がよく見ると配送員姿の男性が運転席前方の窓ガラスにペンで何かをひたすら書き込んでいた。
運転席前方の窓ガラスが真っ黒になっていた。
二実が再び作業着姿の男性に大きな声で尋ねた。
「大丈夫ですか??体の調子でも悪いんですか??救急車を呼びましょうか??」
だがやはり配送員姿の男性は何も答えずにひたすら何かを書き込み続けていた。
二実がトラックの窓ガラスに何が書かれているかを確認した。
作業着姿の男性は2019年7月17日午前11時20分、2019年7月17日午前11時20分と何度も何度も書き込んでいるのだった。
何度も何度もその文字が書き込まれて窓ガラスが真っ黒になっているのだった。
すると晴南が大きな声を出した。
「ちょっとあれを見てよ!!!」
拓也が晴南に尋ねた。
「どうかしたか晴南??」
拓也と晃太は晴南が指さした方向を確認したのだった。
晴南が指さした方向を見た晃太と拓也は言葉を失うのだった。
晴南が指さした先には青色の自転車が一台走ってきたのだった。
ただ自転車での通行人がやってきただけだったら拓也も晃太も驚かなかっただろう。
言葉を失った理由は自転車に誰も乗っていないからであった。
本来であれば自転車の上に人間の姿がなければおかしいのだが、その自転車の上には人間の姿が一切なかったのだった。
運転する人がいないのに、自転車だけが勝手に動いて走っていたからであった。
二実が言った。
「じ、自転車が一人でに動いてる???」
晴南が言った。
「なにあれ??」
すると柚羽が晴南に言った。
「ねえ??晴南??」
柚羽が晴南に言った。
「なに?柚羽??」
柚羽が晴南に言った。
「カメラで私が画面のどこかに映るようにしながらあの自転車を覗いてみてくれない?」
晴南はすぐに柚羽の言う通りにしたのだった。
「このカメラで覗けばいいのね??分かった。」
そしてその誰も乗っていない自転車は晴南達にどんどん近づいてきて、そして晴南達の横を通り過ぎていった。
晃太が驚いた様子で言った。
「なんだったんだ??あの自転車は??」
晴南と柚羽以外のメンバーはみな驚いている様子だった。
すると柚羽が晴南に尋ねた。
「どう晴南??そのカメラの中の自転車も無人で走ってた??」
晴南が柚羽に言った。
「ううん??サラリーマン姿のおじさんが乗ってただけだったわ。」
二実が驚いた様子で言った。
「ええ??どういう事??」
晃太が晴南に尋ねた。
「晴南のカメラにはちゃんと人が乗ってたのか??」
晴南が晃太に言った。
「このカメラで覗いてた時はちゃんと人が乗ってたわ。」
二実が柚羽に尋ねた。
「柚羽ちゃん??何をしたの?」
柚羽が二実に言った。
「私が映るようにしながらカメラでさっきの自転車を覗き込むように晴南に言ったんです。神通力は霊力で相殺できるって聞いたから。映像の中に私が映れば霊力で影響を相殺できるんじゃないかって思ったんです。」
優斗が柚羽に言った。
「そうか!!さっきの自転車がひとりでに動いてたように見えたのは天の導きによる反効果って事なんだね!!」
晃太が柚羽に言った。
「なるほど、それで自転車がひとりでに動いているように見えたわけか。生きてる人間が消えて見えなくなってしまうのは、俺たちが封木神社で体験してるからな。あれと同じ事が起こってたって訳だな。」
柚羽が晃太に言った。
「うん、たぶんそうだと思う。晴南にはちゃんと乗ってる人が見えたみたいだから。」
二実がみんなに言った。
「つまり心霊写真や心霊映像なら真実が写し出せるって事か。」
拓也がみんなに言った。
「だがそうすると晴南が見たおじさんはもうすぐ死ぬって事じゃないのか??」
晃太が拓也に言った。
「そうなってしまうだろうな。自転車が一人でに動いてるように見えたって事は、天の導きによる反効果が大きく出てたって事だろうからな。」
三緒が二実に尋ねた。
「ねえ二実??トラックの方に気を取られてたけどこの辺りも異様に明るいわよね?」
二実が三緒に言った。
「うん明井田橋を渡ってから急に明るくなったわよね。川原(かわはら)地区から美並里(びなり)地区に入った途端この明るさだもんね。」
二実はそういうと周りを見渡すのだった。
明井田橋を渡った美並里(びなり)地区側にはあちらこちらに強力な光を放つ事ができる工事用の投光器(とうこうき)や携行ライトが多数設置されていた。
しかもそれらのすべてが明るい光を放っており、晴南達の周囲は異様な明るさとなっていた。
晴南が晃太に尋ねた。
「ねえ晃太??この辺りもなんでこんなに明るいの??」
晃太が晴南に言った。
「明るいのは投光器(とうこうき)があちこちに設置されているからだ。ただなんで投光器がこれだけ置かれているのかが分からない。」
優斗が晃太に言った。
「これはかなりまずい状況だね。」
晃太が優斗に言った。
「ああ。」
拓也が晃太に尋ねた。
「どういう事だ??」
晃太が拓也に言った。
「この美並里(びなり)地区はとても危険な場所になってるようだ。」
拓也が晃太に言った。
「危険な場所??晃太もっと詳しく説明してくれ。」
晃太が拓也に言った。
「この配送員さんの自分が死ぬ時間をひたすら書き続ける行動は、三象(さんしょう)の首を吊らせる前に発生する前兆シグナルのようなものだと俺は思ってる。明洋(あきひろ)さんや敏子(としこ)さんを含めてこれまでの明井田での首を吊らされた人々はなぜか首を吊る前に自分が死ぬ時間をひたすら書きこんで、そしてその時間になったら例外なく首を吊って死んでいったからな。」
優斗が拓也に言った。
「それにこの辺りも投光器(とうこうき)がたくさん置かれてて異様に明るいよね。」
二実や三緒も晃太の言いたい事が分かっているようだった。
二実が晃太に言った。
「さっき通ってきた明井田商店街と同様にね。」
晃太が拓也に言った。
「きわめつけはさっきの自転車だ。俺達には自転車が一人でに走っているように見えて、俺達には乗っている人を全然に認識できなかった。これらのことから導き出せる結論は一つだ。」
だが晃太はその後の言葉を続けずに急に黙り込んでしまった。
少しの間だれも喋らずに沈黙となったのだった。
すると晴南が晃太に尋ねた。
「ちょっと晃太??もったいぶらないではやく言ってよ。」
すると柚羽が晴南に言った。
「つまり美並里(みなり)地区ではもう三象(さんしょう)による殺戮が始まってる可能性が高いって事よ。」
晴南が柚羽に聞き返した。
「何ですって??」
健太が困惑した様子で言った。
「そんな?それじゃあ父さんと母さんは??」
健太が困惑している様子を見た柚羽はやさしく健太に言った。
「健太!!落ち着いて、お父さんとお母さんはきっと大丈夫よ。それにそうならないようにこうして私たちが来てるんでしょ??」
柚羽の言葉に健太は落ち着きを取り戻したのだった。
「そうですね。姉さん、取り乱してすいません。」
柚羽が健太に言った。
「いいよ、健太そんな事でいちいち謝らなくても。」
すると晃太も柚羽に言ったのだった。
「すまない柚羽。辛いことを言わせてしまって柚羽が一番辛い立場なのに。」
柚羽が晃太に言った。
「いいよ気にしないで、晃太君。それよりも先を急ぎましょう。」
晃太が柚羽に言った。
「ああ。」
晴南達はその後すぐに二実の車に戻るとすぐに出発したのだった。
しかし車で進んでいくと晃太の判断を裏付けるかのように美並里(びなり)地区のあちこちの家の前で首を吊って死んでいる人がいたのだった。
そして健太の家の前に到着したのだった。
「ここです。」
晴南達は車を降りて、健太の家の敷地の中に入っていた。
健太が玄関前のインターホンを鳴らしたのだった。
健太がインターホンに向けて言った。
「父さん??母さん??健太だよ。夜遅くに帰ってきてごめん!」
拓也がみんなに言った。
「おい!!健太の家の中や庭の照明が全開だぞ??」
すると晃太が健太に尋ねた。
「今は午後11時半だけど、誠二郎(せいじろう)さんと満子(みつこ)さんって何時ぐらいに寝るんだ?」
健太が晃太に言った。
「母さんはいつも午後9時くらいには寝てます。父さんも仕事で遅い日以外は午後10時くらいには寝てるって前に言ってました。」
晴南が健太に言った。
「大柳(おおやなぎ)家はみんな早寝早起きね。」
二実が健太に言った。
「だとすると家の電気がついてるのはおかしいわね。誠二郎(せいじろう)さんが仕事で遅くなったとしても寝ている満子(みつこ)さんがいるのに照明を全開にするのも変だしね。」
三緒が周囲を見渡しながら二実に言った。
「ねえ二実??この周辺も異様に明るいわよね?」
二実が三緒に言った。
「うん、この周囲の家もみんな照明全開になってるみたいだね。健太君の家は高台にあるから、周囲の様子が一目で分かるわね。」
拓也が健太に尋ねた。
「どうだ健太??」
健太が玄関のドアノブを握りながら拓也に言った。
「ダメです??父さんも母さんも玄関を開けてくれません。」
健太がインターホンでもう一度呼びかける。
「父さん??母さん??僕だよ、こんな夜中に帰ってきたのは本当にごめん!!お願いだから玄関を開けてよ!!」
だがいっこうに玄関が開けられる様子はなかった。
すると優斗が健太に尋ねた。
「ねえ健太??最後に誠二郎さんか満子さんに連絡が取れたのはいつ??」
健太が優斗に言った。
「7月12日です。」
健太が優斗に言った。
「先輩たちに九木礼に残った方がいいと言われたんで、あの後すぐに父さんに連絡したんです。まだしばらく九木礼にいたいって、そしたら父さんは心よく許してくれました。7月12日も姉さんを弔ってくれる葬儀社がなかなか見つからないから、まだ九木礼にいて構わないぞ。って父さんが言ってくれました。」
優斗が健太に尋ねた。
「それって何時頃かわかるかな?」
健太がスマホを履歴を確認しながら優斗に言った。
「7月12日の日の午後2時10分です。」
柚羽が優斗に言った。
「それ以降はお父さんからもお母さんからも一回も連絡はなかったわ。」
晴南が柚羽に言った。
「それで健太達が心配してたのね。」
晴南が健太に尋ねた。
「もしかして誠二郎さんと満子さん出かけてるんじゃない?」
晃太が晴南に言った。
「家の照明を全部つけっぱなしで出かけるわけないだろう。普通電気を消していくはずだ。」
柚羽が晴南に言った。
「うん、それにさっき健太にスマホを開いてもらったんだけど、お父さんとお母さんは位置情報では家の中にいるみたいなのよ。」
全員が言葉を詰まらせて、顔を見合わせるのだった。
晴南が大きな声で言った。
「まだ決まった訳じゃないでしょ??とにかく中に入ってみましょう??」
晴南が健太に尋ねた。
「健太??家の鍵は持ってる??」
健太が晴南に頷いた。
「はい。」
健太はそう言うとカバンから鍵を取り出したのだった。
そして健太が玄関の扉の鍵穴に取り出した鍵を差し込んだ。
健太がみんなに言った。
「開けますね。」
晴南が健太に言った。
「ええ、お願い。」
健太がゆっくりと玄関の扉を開けたのだった。
車を運転している二実が柚羽(ゆずは)に尋ねた。
「このまま45号線を道なりに進めばいいんだよね?」
柚羽が二実に言った。
「はい、このまままっすぐ進んでください。この先にある明井田橋を渡って川原(かわはら)地区を抜ければ私達の家がある美並里(びなり)地区です。明井田橋を渡って美並里3丁目の交差点を左に曲がってください。その先に我が家があります。」
二実が柚羽に言った。
「分かった。ありがとう柚羽ちゃん。」
すると三緒が二実に言った。
「この辺りは照明がつきまくってたりはしてないんだね。」
二実が三緒に言った。
「そうね、この辺りは普通の夜ね。所々家の照明はついてるけど、ついてない家の方が多そう。」
優斗が二実に言った。
「川原(かわはら)地区は特に異常がなそうですね。」
拓也が優斗に言った。
「ついてる明かりは街灯や玄関前の照明ぐらいですしね。」
三緒が拓也に言った。
「川原(かわはら)地区に入ってから、何台か車ともすれ違ってるしね。川原地区は普通の状態って感じだね。」
すると二実が柚羽に尋ねた。
「柚羽ちゃん??この先の秋崎(あきざき)神社はどう??」
柚羽が二実に言った。
「大丈夫です。やっぱり神域を感じられません。このまま進んで明井田橋を渡って大丈夫だと思います。」
健太が二実に言った。
「明井田橋を渡れば美並里(びなり)地区です。」
すると二実の横に座っている晴南が言った。
「ちょっと柚羽??柚羽が通れる道をホイホイ教えるから私のやる事がなくなっちゃったんだけど?」
柚羽が晴南に聞き返す。
「えっ??」
晴南が柚羽に言った。
「せっかく前の席に座ってこの面白いカメラで見て回ってたのに、柚羽が二実さんにルートを教えちゃうから私のやる事がなくなちゃったんだけど?」
柚羽が晴南に言った。
「そんな事私に言われても困るんだけど?」
晃太が晴南に言った。
「晴南??たぶん柚羽にルートを教えてもらった方がいいと思うぞ。確認する方法がなかったから目視で確認してたが柚羽が神域を感じ取れるというのなら柚羽にルートを聞いて進んだ方が恐らく安全だし確実だ。」
晴南が晃太に言った。
「安全とか確実とかそういう問題じゃないわ。」
晃太が晴南に言った。
「じゃあどういう問題なんだ?」
晴南が晃太に言った。
「だって今日は前の席にいてもつまらないだもん。」
晃太が晴南に言った。
「つまらないとか今はそんな事言ってる場合じゃないだろう?」
晃太が晴南に言った。
「私はいついかなる時も楽しく過ごしたいの。」
二実の運転する車は明井田橋を渡ろうとしていた。
すると晴南が二実に大きな声で言った。
「二実さん!!この先に大きなトラックが止まってます!!」
二実が晴南に尋ねた。
「あれトッラクなんだ??橋の出た所に何か止まってるみたいだけど??」
二実がみんなに言った。
「とりあえず明井田橋の出口付近まで進んでみましょう。」
二実は車を明井田橋の出口付近まで進めて、そして橋の出口の手前で停車をしたのだった。
晃太が晴南に言った。
「よくあんな場所からトラックが止まってるって分かったな。」
晴南が晃太に言った。
「当然でしょ、私の視力は2.0なんだから。」
晃太が晴南に言った。
「動体視力もピカイチだもんな。」
晴南が晃太に言った。
「そういう事よ。」
拓也が言った。
「しかしなんでこんな交差点のど真ん中に大型トラックが止まってるんだ??」
晴南が拓也に言った。
「このトラックの運転手さんがトラックを止めて休憩してるだけじゃないの?」
晃太が晴南に言った。
「大型トラックを交差点のど真ん中に止めて休憩する運転手さんがいるわけないだろう。休憩するなら道の端に停車させるに決まってるだろう。」
すると二実がみんなに言った。
「うーん?交差点の右側が少し空いてるから通ろうと思えば通れない事はないんだけど。一応確認しに行きましょうか?」
三緒が二実に言った。
「そうだね。」
すぐに二実は車を端に止めると、晴南達は車を降りて前方にある交差点の中央に止められている大型トラックへと確認に向かうのだった。
外観を見た優斗が言った。
「明井田運輸の配送トラックみたいだけど??」
二実が優斗に言った。
「そうだね。」
すると三緒の大きな声が聞こえてきた。
「二実!!すぐに来て!!」
すぐに晴南達はトラックの運転席を確認に行っていた三緒のもとに向かった。
駆けつけた二実が三緒に尋ねた。
「三緒??運転手さんが見当たらないの??」
三緒が二実に言った。
「いや運転手さんはいるんだけど。」
三緒はそういうと運転席を指さした。
二実は運転席を確認した。
運転席には作業着姿の中年の男性がいた。
運転席の窓は空いていたので、二実は作業着姿の男性に呼びかけたのだった。
「あのう、すいません!!!どうかされたんですか??」
だがその作業着姿の男性は二実の言葉には振り向きもせずにひたすら何かを書いていた。
二実がよく見ると配送員姿の男性が運転席前方の窓ガラスにペンで何かをひたすら書き込んでいた。
運転席前方の窓ガラスが真っ黒になっていた。
二実が再び作業着姿の男性に大きな声で尋ねた。
「大丈夫ですか??体の調子でも悪いんですか??救急車を呼びましょうか??」
だがやはり配送員姿の男性は何も答えずにひたすら何かを書き込み続けていた。
二実がトラックの窓ガラスに何が書かれているかを確認した。
作業着姿の男性は2019年7月17日午前11時20分、2019年7月17日午前11時20分と何度も何度も書き込んでいるのだった。
何度も何度もその文字が書き込まれて窓ガラスが真っ黒になっているのだった。
すると晴南が大きな声を出した。
「ちょっとあれを見てよ!!!」
拓也が晴南に尋ねた。
「どうかしたか晴南??」
拓也と晃太は晴南が指さした方向を確認したのだった。
晴南が指さした方向を見た晃太と拓也は言葉を失うのだった。
晴南が指さした先には青色の自転車が一台走ってきたのだった。
ただ自転車での通行人がやってきただけだったら拓也も晃太も驚かなかっただろう。
言葉を失った理由は自転車に誰も乗っていないからであった。
本来であれば自転車の上に人間の姿がなければおかしいのだが、その自転車の上には人間の姿が一切なかったのだった。
運転する人がいないのに、自転車だけが勝手に動いて走っていたからであった。
二実が言った。
「じ、自転車が一人でに動いてる???」
晴南が言った。
「なにあれ??」
すると柚羽が晴南に言った。
「ねえ??晴南??」
柚羽が晴南に言った。
「なに?柚羽??」
柚羽が晴南に言った。
「カメラで私が画面のどこかに映るようにしながらあの自転車を覗いてみてくれない?」
晴南はすぐに柚羽の言う通りにしたのだった。
「このカメラで覗けばいいのね??分かった。」
そしてその誰も乗っていない自転車は晴南達にどんどん近づいてきて、そして晴南達の横を通り過ぎていった。
晃太が驚いた様子で言った。
「なんだったんだ??あの自転車は??」
晴南と柚羽以外のメンバーはみな驚いている様子だった。
すると柚羽が晴南に尋ねた。
「どう晴南??そのカメラの中の自転車も無人で走ってた??」
晴南が柚羽に言った。
「ううん??サラリーマン姿のおじさんが乗ってただけだったわ。」
二実が驚いた様子で言った。
「ええ??どういう事??」
晃太が晴南に尋ねた。
「晴南のカメラにはちゃんと人が乗ってたのか??」
晴南が晃太に言った。
「このカメラで覗いてた時はちゃんと人が乗ってたわ。」
二実が柚羽に尋ねた。
「柚羽ちゃん??何をしたの?」
柚羽が二実に言った。
「私が映るようにしながらカメラでさっきの自転車を覗き込むように晴南に言ったんです。神通力は霊力で相殺できるって聞いたから。映像の中に私が映れば霊力で影響を相殺できるんじゃないかって思ったんです。」
優斗が柚羽に言った。
「そうか!!さっきの自転車がひとりでに動いてたように見えたのは天の導きによる反効果って事なんだね!!」
晃太が柚羽に言った。
「なるほど、それで自転車がひとりでに動いているように見えたわけか。生きてる人間が消えて見えなくなってしまうのは、俺たちが封木神社で体験してるからな。あれと同じ事が起こってたって訳だな。」
柚羽が晃太に言った。
「うん、たぶんそうだと思う。晴南にはちゃんと乗ってる人が見えたみたいだから。」
二実がみんなに言った。
「つまり心霊写真や心霊映像なら真実が写し出せるって事か。」
拓也がみんなに言った。
「だがそうすると晴南が見たおじさんはもうすぐ死ぬって事じゃないのか??」
晃太が拓也に言った。
「そうなってしまうだろうな。自転車が一人でに動いてるように見えたって事は、天の導きによる反効果が大きく出てたって事だろうからな。」
三緒が二実に尋ねた。
「ねえ二実??トラックの方に気を取られてたけどこの辺りも異様に明るいわよね?」
二実が三緒に言った。
「うん明井田橋を渡ってから急に明るくなったわよね。川原(かわはら)地区から美並里(びなり)地区に入った途端この明るさだもんね。」
二実はそういうと周りを見渡すのだった。
明井田橋を渡った美並里(びなり)地区側にはあちらこちらに強力な光を放つ事ができる工事用の投光器(とうこうき)や携行ライトが多数設置されていた。
しかもそれらのすべてが明るい光を放っており、晴南達の周囲は異様な明るさとなっていた。
晴南が晃太に尋ねた。
「ねえ晃太??この辺りもなんでこんなに明るいの??」
晃太が晴南に言った。
「明るいのは投光器(とうこうき)があちこちに設置されているからだ。ただなんで投光器がこれだけ置かれているのかが分からない。」
優斗が晃太に言った。
「これはかなりまずい状況だね。」
晃太が優斗に言った。
「ああ。」
拓也が晃太に尋ねた。
「どういう事だ??」
晃太が拓也に言った。
「この美並里(びなり)地区はとても危険な場所になってるようだ。」
拓也が晃太に言った。
「危険な場所??晃太もっと詳しく説明してくれ。」
晃太が拓也に言った。
「この配送員さんの自分が死ぬ時間をひたすら書き続ける行動は、三象(さんしょう)の首を吊らせる前に発生する前兆シグナルのようなものだと俺は思ってる。明洋(あきひろ)さんや敏子(としこ)さんを含めてこれまでの明井田での首を吊らされた人々はなぜか首を吊る前に自分が死ぬ時間をひたすら書きこんで、そしてその時間になったら例外なく首を吊って死んでいったからな。」
優斗が拓也に言った。
「それにこの辺りも投光器(とうこうき)がたくさん置かれてて異様に明るいよね。」
二実や三緒も晃太の言いたい事が分かっているようだった。
二実が晃太に言った。
「さっき通ってきた明井田商店街と同様にね。」
晃太が拓也に言った。
「きわめつけはさっきの自転車だ。俺達には自転車が一人でに走っているように見えて、俺達には乗っている人を全然に認識できなかった。これらのことから導き出せる結論は一つだ。」
だが晃太はその後の言葉を続けずに急に黙り込んでしまった。
少しの間だれも喋らずに沈黙となったのだった。
すると晴南が晃太に尋ねた。
「ちょっと晃太??もったいぶらないではやく言ってよ。」
すると柚羽が晴南に言った。
「つまり美並里(みなり)地区ではもう三象(さんしょう)による殺戮が始まってる可能性が高いって事よ。」
晴南が柚羽に聞き返した。
「何ですって??」
健太が困惑した様子で言った。
「そんな?それじゃあ父さんと母さんは??」
健太が困惑している様子を見た柚羽はやさしく健太に言った。
「健太!!落ち着いて、お父さんとお母さんはきっと大丈夫よ。それにそうならないようにこうして私たちが来てるんでしょ??」
柚羽の言葉に健太は落ち着きを取り戻したのだった。
「そうですね。姉さん、取り乱してすいません。」
柚羽が健太に言った。
「いいよ、健太そんな事でいちいち謝らなくても。」
すると晃太も柚羽に言ったのだった。
「すまない柚羽。辛いことを言わせてしまって柚羽が一番辛い立場なのに。」
柚羽が晃太に言った。
「いいよ気にしないで、晃太君。それよりも先を急ぎましょう。」
晃太が柚羽に言った。
「ああ。」
晴南達はその後すぐに二実の車に戻るとすぐに出発したのだった。
しかし車で進んでいくと晃太の判断を裏付けるかのように美並里(びなり)地区のあちこちの家の前で首を吊って死んでいる人がいたのだった。
そして健太の家の前に到着したのだった。
「ここです。」
晴南達は車を降りて、健太の家の敷地の中に入っていた。
健太が玄関前のインターホンを鳴らしたのだった。
健太がインターホンに向けて言った。
「父さん??母さん??健太だよ。夜遅くに帰ってきてごめん!」
拓也がみんなに言った。
「おい!!健太の家の中や庭の照明が全開だぞ??」
すると晃太が健太に尋ねた。
「今は午後11時半だけど、誠二郎(せいじろう)さんと満子(みつこ)さんって何時ぐらいに寝るんだ?」
健太が晃太に言った。
「母さんはいつも午後9時くらいには寝てます。父さんも仕事で遅い日以外は午後10時くらいには寝てるって前に言ってました。」
晴南が健太に言った。
「大柳(おおやなぎ)家はみんな早寝早起きね。」
二実が健太に言った。
「だとすると家の電気がついてるのはおかしいわね。誠二郎(せいじろう)さんが仕事で遅くなったとしても寝ている満子(みつこ)さんがいるのに照明を全開にするのも変だしね。」
三緒が周囲を見渡しながら二実に言った。
「ねえ二実??この周辺も異様に明るいわよね?」
二実が三緒に言った。
「うん、この周囲の家もみんな照明全開になってるみたいだね。健太君の家は高台にあるから、周囲の様子が一目で分かるわね。」
拓也が健太に尋ねた。
「どうだ健太??」
健太が玄関のドアノブを握りながら拓也に言った。
「ダメです??父さんも母さんも玄関を開けてくれません。」
健太がインターホンでもう一度呼びかける。
「父さん??母さん??僕だよ、こんな夜中に帰ってきたのは本当にごめん!!お願いだから玄関を開けてよ!!」
だがいっこうに玄関が開けられる様子はなかった。
すると優斗が健太に尋ねた。
「ねえ健太??最後に誠二郎さんか満子さんに連絡が取れたのはいつ??」
健太が優斗に言った。
「7月12日です。」
健太が優斗に言った。
「先輩たちに九木礼に残った方がいいと言われたんで、あの後すぐに父さんに連絡したんです。まだしばらく九木礼にいたいって、そしたら父さんは心よく許してくれました。7月12日も姉さんを弔ってくれる葬儀社がなかなか見つからないから、まだ九木礼にいて構わないぞ。って父さんが言ってくれました。」
優斗が健太に尋ねた。
「それって何時頃かわかるかな?」
健太がスマホを履歴を確認しながら優斗に言った。
「7月12日の日の午後2時10分です。」
柚羽が優斗に言った。
「それ以降はお父さんからもお母さんからも一回も連絡はなかったわ。」
晴南が柚羽に言った。
「それで健太達が心配してたのね。」
晴南が健太に尋ねた。
「もしかして誠二郎さんと満子さん出かけてるんじゃない?」
晃太が晴南に言った。
「家の照明を全部つけっぱなしで出かけるわけないだろう。普通電気を消していくはずだ。」
柚羽が晴南に言った。
「うん、それにさっき健太にスマホを開いてもらったんだけど、お父さんとお母さんは位置情報では家の中にいるみたいなのよ。」
全員が言葉を詰まらせて、顔を見合わせるのだった。
晴南が大きな声で言った。
「まだ決まった訳じゃないでしょ??とにかく中に入ってみましょう??」
晴南が健太に尋ねた。
「健太??家の鍵は持ってる??」
健太が晴南に頷いた。
「はい。」
健太はそう言うとカバンから鍵を取り出したのだった。
そして健太が玄関の扉の鍵穴に取り出した鍵を差し込んだ。
健太がみんなに言った。
「開けますね。」
晴南が健太に言った。
「ええ、お願い。」
健太がゆっくりと玄関の扉を開けたのだった。
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