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一章
回避不可能
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晴南達は午前8時頃にまた起きだしてきたのだった。
晴南達は再び第二倉庫へとやってきた。
晴南(はるな)が二実に尋ねた。
「二実(つぐみ)さん、どうですか?」
二実が晴南に言った。
「うん、誠二郎(せいじろう)さんも満子(みつこ)さんも相変わらずよ。」
晴南が二人に呼びかけてみた。
「誠二郎さん??満子さん??」
晴南の呼び掛けにもやはり誠二郎と満子は反応しなかった。
手足をぐるぐる巻きにされている誠二郎と満子はただムカデのようにムクムクと動こうとしているだけであった。
そして誠二郎と満子が首を吊るであろう午前9時20分が徐々に近づいてくるのだった。
拓也が二実に尋ねた。
「そういえば二実さん?荷物が外に出してありましたけど?」
二実が拓也に言った。
「倉庫の中の物で首を吊られたら困るから、倉庫の中の物はいったん倉庫の外に出したのよ。ここには大して物も置いてなかったしね。」
拓也が二実に言った。
「なるほど。」
拓也はそういうと倉庫の中を見渡したのだった。
10畳ほどの広さの第二倉庫の中には荷物が全て外に出されていて、何一つ物が残っていない状態だった。
そして午前9時20分にどんどん近づいてくるのだった。
晃太が時計を見ながらみんなに言った。
「あと1分で9時20分だ。」
三緒が二実に言った。
「誠二郎さんの手足は大丈夫。ぐるぐる巻きの状態よ。」
晃太が二実に言った。
「満子さんの手足も大丈夫です。ぐるぐる巻きの状態です。」
二実は倉庫の中を見渡しながら言った。
「倉庫の中には何も物がないし、手足を縛られた状態では、首を吊るのは不可能なはず。」
晃太が時計を見ながらみんなに言った。
「9時20分になりました。」
二実達は誠二郎と満子を凝視した。
三緒が言った。
「特に変化ないわね。」
二実が三緒に言った。
「安心してはダメ、まだ9時20分になったばかりよ。」
すると誠二郎が満子のいる場所に向かって体をクネクネさせながら少しずつ移動を始めたのだった。
三緒が二実に言った。
「誠二郎さん、首を吊るつもりじゃ??」
二実が三緒に言った。
「手足を拘束してあるから、首は吊れないはず。首を吊れる物もここにはないし。」
三緒が二実に尋ねた。
「どうする??二実??」
二実が三緒に言った。
「とりあえず様子をみましょう。」
二実がみんなに言った。
「みんな??誠二郎さんが首をつる素振りを見せたら、全員で抑え込んでね。」
晴南が二実に言った。
「分かりました。」
すると満子も誠二郎と同じように体をクネクネと動かして誠二郎のいる場所へとゆっくり移動を始めたのだった。
二実が晃太に尋ねた。
「晃太君??今の時間は??」
晃太が二実に言った。
「午前9時32分です。」
晴南が言った。
「とりあえず大丈夫だったんですか?」
二実が晴南に言った。
「うーん??どうだろう??大丈夫だったのかな??」
すると二実は誠二郎に声をかけたのだった。
「誠二郎さん??気がつかれましたか??もし意識が戻っていたら何か返事をしてくれませんか??」
健太が満子に声をかけた。
「母さん??僕だよ??返事をしてよ!!」
だが誠二郎も満子も二実と健太の呼び掛けに対して何の反応も示さなかった。
二実が晃太に尋ねた。
「晃太君?今の時間は??」
晃太が二実に言った。
「午前9時45分です。」
二実がみんなに言った。
「どうやら大丈夫だったぽいね。もう予定の時間を20分も過ぎてるけど、誠二郎さんも満子さんも首も吊らずに生きてるし。」
二実はそう言いながら誠二郎と満子の方を見た。
ちょうど誠二郎と満子がとても近い距離まで体を動かして近づいていたのだった。
すると誠二郎は満子の顔に自分の顔を近づけていった。
二実は少し顔を赤くしながら言った。
「うあ、誠二郎さん、大胆だね。でも満子さんとキスをしようとしてるって事はしゃべれないだけで意識自体はあるのかな??」
三緒が二実に言った。
「ちょっと二実??じっと見つめてたら悪いでしょ。」
二実が三緒に言った。
「ああ、ゴメンゴメン。」
二実達は誠二郎達から目をそらしたのだった。
少しして健太の悲鳴が響いたのだった。
「うあああ!!!父さん!!!母さん!!!」
二実が慌てて誠二郎と満子の方を見たのだった。
「えっ???」
だが二実は誠二郎の方を見て言葉を失った。
誠二郎と満子の二人の首元からすごい勢いの血しぶきが上がっていたからであった。
誠二郎は満子とキスをしようとしていたのではなかった。
誠二郎は満子の首元に勢いよく嚙みついたのである。
一方の満子も誠二郎の首元に勢いよく噛みついたのである。
二人がすさまじい力で噛みつきあい二人の首元からはすさまじい量の血しぶきが出ていたのである。
誠二郎も満子も首元に大きな傷を負ってすさまじい量の血が流れだしていた。
二実達は慌てて誠二郎と満子に駆け寄ると誠二郎と満子の体を抑えたが、二人のすさまじい出血を止める事はできなかった。
二実達に体を抑えられた誠二郎であったが首からすさまじい血しぶきをあげながら、それでも満子に嚙みつこうとするのだった。
満子もまた首から大きな血しぶきをあげながら、誠二郎の首に嚙みつこうとするのだった。
二実達はなんとか止血しようと試みたが、誠二郎と満子の出血量はすさまじく、止血自体があまり意味がなかったのだった。
二実達は誠二郎と満子をなんとか止血しようと試みている間に誠二郎と満子の体は動かなくなってしまった。
倉庫内にすごい量の血だまりができていた。
二実も三緒も晴南もみんなが誠二郎と満子の返り血を浴びていた。
返り血で汚れた服で唖然とした様子で二実が言った。
「そんな??」
健太が大きな声で泣き叫んでいた。
「父さん!!!母さん!!うああああ!!!!!」
健太に満子の亡骸をゆらしながら、大声で泣いていた。
「母さん!!!母さん!!!」
柚羽は誠二郎の亡骸を悲しそうに見つめていた。
「お父さん。」
二実が小さな声で言った。
「また助けられなかった。ごめん健太君、柚羽(ゆずは)ちゃん。」
みんなそれぞれにショックを受けていた。
全員その場に呆然と立ち尽くしているしかなかった。
大量の血だまりで真っ赤になった倉庫の床と大声で泣き叫ぶ健太をただただ見つめている事しかできなかった。
しばらくして三緒がみんなに言った。
「二実??それにみんなも??健太君と柚羽(ゆずは)ちゃんをしばらくそっとしておいてあげた方がいいんじゃないかな??」
二実が三緒に言った。
「そ、・・そうだね。私たちは外に出てるわ。」
健太は泣き叫んでいて二実達の会話は耳に入っていなかった。
健太の代わりに柚羽が二実に言った。
「すいません、お願いします。」
二実達は健太と柚羽を第二倉庫に残して外に出たのだった。
三緒がみんなに言った。
「二実??それにみんなも。着替えた方がいいわ。」
二実は意気消沈した様子で三緒に言った。
「そうだね、返り血を洗い流さないとね。シャワーを浴びた方がいいわね。」
三緒が晴南に言った。
「晴南ちゃん?先にどうぞ。私達は最後でいいから。」
晴南が三緒に言った。
「あ、はい、そうします。」
優斗が晃太に言った。
「さすがに晴南もショックを受けてるみたいだね。」
晃太が優斗に言った。
「当然だろうな。」
その後二実達は社務所の浴室で順番にシャワーを浴びていったのだった。
そして返り血を浴びてしまった服を着替えたのだった。
全員服を着替えた事で、少し気持ちが和らいだのだった。
晴南が二実に言った。
「二実さん、ありがとうございます。服を貸してもらって。」
二実が晴南に言った。
「私が昔着てたやつだから地味な服ばっかりで悪いんだけど。」
晴南が二実に言った。
「いえ、結構かわいい服だと思いますよ。」
二実が優斗に尋ねた。
「優斗君達もサイズ大丈夫かな?」
優斗が二実に言った。
「ちょっと大きいですけど、これぐらいなら大丈夫です。」
優斗が二実に尋ねた。
「これ二実さんの服なんですか?」
二実が優斗に言った。
「お父さんの部屋から拝借してきたやつよ。さすがに男物の服は持ってなかったからね。」
晴南が言った。
「健太と柚羽?大丈夫かしら??」
二実が晴南に言った。
「そろそろ様子を見に行こうか。」
二実達は再び第二倉庫へと向かったのだった。
すると晴南が倉庫の中に向かって呼びかけた。
「柚羽??健太??どう??」
すると倉庫の扉が開いて中から健太と柚羽が出てきたのだった。
二実が大きく頭を下げて健太と柚羽に言った。
「健太君!!柚羽ちゃん!!本当にごめん。誠二郎さんと満子さんを助ける事ができなくて。」
柚羽が二実に言った。
「頭をあげてください。二実さん。二実さんは全力を尽くしてくれました。ありがとうございました。」
健太が二実に言った。
「父さんと母さんを助けようとしてくれてありがとうございました。」
二実が健太と柚羽に言った。
「ありがとう、健太君、柚羽ちゃん。」
すると健太が二実に言った。
「それで二実さん??今から父さんと母さんをここで弔ってもらえませんか?」
二実が健太に言った。
「弔ってあげたいけど、ここで弔ってしまって大丈夫かなって思ってるのよね。九前坂(くぜんざか)神社の中とはいえここは明井田市内だからね。誠二郎さんと満子さんの魂をあっちの世界に送ってしまわないか心配なのよね。」
柚羽が二実に尋ねた。
「二実さん?お父さんとお母さんの霊はここにはいないですよね?」
二実が柚羽に言った。
「えっ?ええ、誠二郎さんと満子さんの霊はこの周囲にはいないみたいだけど。」
優斗が二実に尋ねた。
「霊は死んだ場所をさまよう事が多いんですよね?」
二実が優斗に言った。
「ええそうよ、ただ必ずそうなるって訳じゃないわ。生前に好きだった場所や自宅をさまよってる場合もあるからね。」
すると柚羽が二実に言った。
「やっぱりそうですよね。実は二実さん、一つお話したい事があります。」
二実が柚羽に聞き返した。
「えっ??なに柚羽ちゃん??」
柚羽が二実に言った。
「実は昨日家に戻った時に父さんと母さんをもう助けられないってかもしれないって感じてたんです。」
二実が柚羽に言った。
「うんそれは私も思ってたんだけど。」
柚羽が二実に言った。
「すいません、少し言い方が悪かったです。私はあの時にお父さんとお母さんを助けられないと確信していました。でも二実さん達が助けようとしてくれたんで、いちるの望みを掛けてお父さんとお母さんを九前坂(くぜんざか)神社に連れてきてもらったんです。」
二実が柚羽に聞き返した。
「助けられないと確信していた??柚羽ちゃん?それどういう事??」
柚羽が二実に言った。
「なんでそう思ったかというとお父さんとお母さんの魂がどこにも感じられなかったんです。魂がお父さんとお母さんの体をすでに離れてしまってる、そんな感じだったんです。」
二実が考え込んだ様子で柚羽に言った。
「魂が体を離れてしまってるか。」
柚羽が空を見ながら言った。
「ねえみんな??空にあるものが見えますか??」
「空にあるもの??」
拓也はそう言いながら空を見上げた。
晴南が空を見上げながら柚羽に言った。
「えっ??いや特に何も見えないけど??快晴の空があるだけよ??」
柚羽がみんなに言った。
「実は私には見えるんですが、大きな白い機械仕掛けの柱が明井田の上空にあってその白い柱の下の方が大きく開いてるんです。」
二実が驚いた様子で言った。
「それって??まさか異世界門?」
柚羽がうなずきながら二実に言った。
「恐らくは。」
二実が柚羽に言った。
「三象(さんしょう)がそれを使ってあっちの世界に魂を送ってるんだったわね。」
二実が柚羽に尋ねた。
「でも柚羽ちゃん??それと誠二郎さん達の事とどうつながるの?」
柚羽が二実に言った。
「たぶんなんですがお父さんと母さんの魂はもう私たちが行った時点ではもう三象に奪われていたと思うんです。少なくともお父さんとお母さんの魂は肉体からは切り離されていたのだと思います。魂を奪われて肉体だけが生きてる状態、それがさっきの状態だと思うんです。」
二実が柚羽に言った。
「魂を奪われて肉体だけが生きてる状態か。それで誠二郎さんも満子さんも一切の意識がなかったわね。」
晃太が二実に言った。
「確かにあの前兆シグナルが出ていた人は一人の例外もなく意識がありませんでしたね。」
優斗が柚羽に言った。
「そう考えると合点はいくね。僕達が健太の家に行った時にすでに誠二郎さんと満子さんの魂が体から切り離されてすでに奪われていたなら、そりゃ誠二郎さんも満子さんも受け答えなんてできないだろうし。」
晃太が優斗に言った。
「それなら前兆シグナルが出ていたみんなが返事をしてくれなかった事の説明もできるな。」
優斗が晃太に言った。
「うんきっとみんな魂を奪われてしまって、肉体だけが生きてる状態だったんだよ。」
二実がみんなに言った。
「柚羽ちゃんの話とこの周囲に誠二郎さんと満子さんの霊がいない事やこれまで前兆シグナルが出ていた人たちの事も考慮すると、柚羽ちゃんの考えはかなり的を得ていると思うわ。」
晃太がみんなに言った。
「でもそうなるとあの状態なってしまったらもう助けようがないって事か。」
柚羽が晃太に言った。
「うん、あの状態になる前に助けなければいけないんだと思います。」
二実は納得した様子で言った。
「なるほどね。」
三緒が二実に言った。
「ということはもう誠二郎さんと満子さんの魂は奪われてしまった後だって事なのね。」
二実が大きくため息をついて三緒に言った。
「もう誠二郎さんと満子さんの魂を守る事すらできないんだね。」
三緒も残念そうに二実に言った。
「ええ、そうね。でも二実?だからこそ誠二郎さんと満子さんを弔ってあげるべきだと思うの。」
二実が三緒に言った。
「そうね。弔われるべき誠二郎さんと満子さんの魂はもうここにいないけれど、満子さんも誠二郎さんも弔ってもらった方が喜んでくれるでしょうから。」
晴南が二実に言った。
「誠二郎さんと満子さんを弔ってあげましょう。」
健太が涙を流しながらみんなに言った。
「ありがとうございます。」
すぐに二実達は簡素であったが誠二郎と満子の葬儀を執り行うのだった。
晴南達は再び第二倉庫へとやってきた。
晴南(はるな)が二実に尋ねた。
「二実(つぐみ)さん、どうですか?」
二実が晴南に言った。
「うん、誠二郎(せいじろう)さんも満子(みつこ)さんも相変わらずよ。」
晴南が二人に呼びかけてみた。
「誠二郎さん??満子さん??」
晴南の呼び掛けにもやはり誠二郎と満子は反応しなかった。
手足をぐるぐる巻きにされている誠二郎と満子はただムカデのようにムクムクと動こうとしているだけであった。
そして誠二郎と満子が首を吊るであろう午前9時20分が徐々に近づいてくるのだった。
拓也が二実に尋ねた。
「そういえば二実さん?荷物が外に出してありましたけど?」
二実が拓也に言った。
「倉庫の中の物で首を吊られたら困るから、倉庫の中の物はいったん倉庫の外に出したのよ。ここには大して物も置いてなかったしね。」
拓也が二実に言った。
「なるほど。」
拓也はそういうと倉庫の中を見渡したのだった。
10畳ほどの広さの第二倉庫の中には荷物が全て外に出されていて、何一つ物が残っていない状態だった。
そして午前9時20分にどんどん近づいてくるのだった。
晃太が時計を見ながらみんなに言った。
「あと1分で9時20分だ。」
三緒が二実に言った。
「誠二郎さんの手足は大丈夫。ぐるぐる巻きの状態よ。」
晃太が二実に言った。
「満子さんの手足も大丈夫です。ぐるぐる巻きの状態です。」
二実は倉庫の中を見渡しながら言った。
「倉庫の中には何も物がないし、手足を縛られた状態では、首を吊るのは不可能なはず。」
晃太が時計を見ながらみんなに言った。
「9時20分になりました。」
二実達は誠二郎と満子を凝視した。
三緒が言った。
「特に変化ないわね。」
二実が三緒に言った。
「安心してはダメ、まだ9時20分になったばかりよ。」
すると誠二郎が満子のいる場所に向かって体をクネクネさせながら少しずつ移動を始めたのだった。
三緒が二実に言った。
「誠二郎さん、首を吊るつもりじゃ??」
二実が三緒に言った。
「手足を拘束してあるから、首は吊れないはず。首を吊れる物もここにはないし。」
三緒が二実に尋ねた。
「どうする??二実??」
二実が三緒に言った。
「とりあえず様子をみましょう。」
二実がみんなに言った。
「みんな??誠二郎さんが首をつる素振りを見せたら、全員で抑え込んでね。」
晴南が二実に言った。
「分かりました。」
すると満子も誠二郎と同じように体をクネクネと動かして誠二郎のいる場所へとゆっくり移動を始めたのだった。
二実が晃太に尋ねた。
「晃太君??今の時間は??」
晃太が二実に言った。
「午前9時32分です。」
晴南が言った。
「とりあえず大丈夫だったんですか?」
二実が晴南に言った。
「うーん??どうだろう??大丈夫だったのかな??」
すると二実は誠二郎に声をかけたのだった。
「誠二郎さん??気がつかれましたか??もし意識が戻っていたら何か返事をしてくれませんか??」
健太が満子に声をかけた。
「母さん??僕だよ??返事をしてよ!!」
だが誠二郎も満子も二実と健太の呼び掛けに対して何の反応も示さなかった。
二実が晃太に尋ねた。
「晃太君?今の時間は??」
晃太が二実に言った。
「午前9時45分です。」
二実がみんなに言った。
「どうやら大丈夫だったぽいね。もう予定の時間を20分も過ぎてるけど、誠二郎さんも満子さんも首も吊らずに生きてるし。」
二実はそう言いながら誠二郎と満子の方を見た。
ちょうど誠二郎と満子がとても近い距離まで体を動かして近づいていたのだった。
すると誠二郎は満子の顔に自分の顔を近づけていった。
二実は少し顔を赤くしながら言った。
「うあ、誠二郎さん、大胆だね。でも満子さんとキスをしようとしてるって事はしゃべれないだけで意識自体はあるのかな??」
三緒が二実に言った。
「ちょっと二実??じっと見つめてたら悪いでしょ。」
二実が三緒に言った。
「ああ、ゴメンゴメン。」
二実達は誠二郎達から目をそらしたのだった。
少しして健太の悲鳴が響いたのだった。
「うあああ!!!父さん!!!母さん!!!」
二実が慌てて誠二郎と満子の方を見たのだった。
「えっ???」
だが二実は誠二郎の方を見て言葉を失った。
誠二郎と満子の二人の首元からすごい勢いの血しぶきが上がっていたからであった。
誠二郎は満子とキスをしようとしていたのではなかった。
誠二郎は満子の首元に勢いよく嚙みついたのである。
一方の満子も誠二郎の首元に勢いよく噛みついたのである。
二人がすさまじい力で噛みつきあい二人の首元からはすさまじい量の血しぶきが出ていたのである。
誠二郎も満子も首元に大きな傷を負ってすさまじい量の血が流れだしていた。
二実達は慌てて誠二郎と満子に駆け寄ると誠二郎と満子の体を抑えたが、二人のすさまじい出血を止める事はできなかった。
二実達に体を抑えられた誠二郎であったが首からすさまじい血しぶきをあげながら、それでも満子に嚙みつこうとするのだった。
満子もまた首から大きな血しぶきをあげながら、誠二郎の首に嚙みつこうとするのだった。
二実達はなんとか止血しようと試みたが、誠二郎と満子の出血量はすさまじく、止血自体があまり意味がなかったのだった。
二実達は誠二郎と満子をなんとか止血しようと試みている間に誠二郎と満子の体は動かなくなってしまった。
倉庫内にすごい量の血だまりができていた。
二実も三緒も晴南もみんなが誠二郎と満子の返り血を浴びていた。
返り血で汚れた服で唖然とした様子で二実が言った。
「そんな??」
健太が大きな声で泣き叫んでいた。
「父さん!!!母さん!!うああああ!!!!!」
健太に満子の亡骸をゆらしながら、大声で泣いていた。
「母さん!!!母さん!!!」
柚羽は誠二郎の亡骸を悲しそうに見つめていた。
「お父さん。」
二実が小さな声で言った。
「また助けられなかった。ごめん健太君、柚羽(ゆずは)ちゃん。」
みんなそれぞれにショックを受けていた。
全員その場に呆然と立ち尽くしているしかなかった。
大量の血だまりで真っ赤になった倉庫の床と大声で泣き叫ぶ健太をただただ見つめている事しかできなかった。
しばらくして三緒がみんなに言った。
「二実??それにみんなも??健太君と柚羽(ゆずは)ちゃんをしばらくそっとしておいてあげた方がいいんじゃないかな??」
二実が三緒に言った。
「そ、・・そうだね。私たちは外に出てるわ。」
健太は泣き叫んでいて二実達の会話は耳に入っていなかった。
健太の代わりに柚羽が二実に言った。
「すいません、お願いします。」
二実達は健太と柚羽を第二倉庫に残して外に出たのだった。
三緒がみんなに言った。
「二実??それにみんなも。着替えた方がいいわ。」
二実は意気消沈した様子で三緒に言った。
「そうだね、返り血を洗い流さないとね。シャワーを浴びた方がいいわね。」
三緒が晴南に言った。
「晴南ちゃん?先にどうぞ。私達は最後でいいから。」
晴南が三緒に言った。
「あ、はい、そうします。」
優斗が晃太に言った。
「さすがに晴南もショックを受けてるみたいだね。」
晃太が優斗に言った。
「当然だろうな。」
その後二実達は社務所の浴室で順番にシャワーを浴びていったのだった。
そして返り血を浴びてしまった服を着替えたのだった。
全員服を着替えた事で、少し気持ちが和らいだのだった。
晴南が二実に言った。
「二実さん、ありがとうございます。服を貸してもらって。」
二実が晴南に言った。
「私が昔着てたやつだから地味な服ばっかりで悪いんだけど。」
晴南が二実に言った。
「いえ、結構かわいい服だと思いますよ。」
二実が優斗に尋ねた。
「優斗君達もサイズ大丈夫かな?」
優斗が二実に言った。
「ちょっと大きいですけど、これぐらいなら大丈夫です。」
優斗が二実に尋ねた。
「これ二実さんの服なんですか?」
二実が優斗に言った。
「お父さんの部屋から拝借してきたやつよ。さすがに男物の服は持ってなかったからね。」
晴南が言った。
「健太と柚羽?大丈夫かしら??」
二実が晴南に言った。
「そろそろ様子を見に行こうか。」
二実達は再び第二倉庫へと向かったのだった。
すると晴南が倉庫の中に向かって呼びかけた。
「柚羽??健太??どう??」
すると倉庫の扉が開いて中から健太と柚羽が出てきたのだった。
二実が大きく頭を下げて健太と柚羽に言った。
「健太君!!柚羽ちゃん!!本当にごめん。誠二郎さんと満子さんを助ける事ができなくて。」
柚羽が二実に言った。
「頭をあげてください。二実さん。二実さんは全力を尽くしてくれました。ありがとうございました。」
健太が二実に言った。
「父さんと母さんを助けようとしてくれてありがとうございました。」
二実が健太と柚羽に言った。
「ありがとう、健太君、柚羽ちゃん。」
すると健太が二実に言った。
「それで二実さん??今から父さんと母さんをここで弔ってもらえませんか?」
二実が健太に言った。
「弔ってあげたいけど、ここで弔ってしまって大丈夫かなって思ってるのよね。九前坂(くぜんざか)神社の中とはいえここは明井田市内だからね。誠二郎さんと満子さんの魂をあっちの世界に送ってしまわないか心配なのよね。」
柚羽が二実に尋ねた。
「二実さん?お父さんとお母さんの霊はここにはいないですよね?」
二実が柚羽に言った。
「えっ?ええ、誠二郎さんと満子さんの霊はこの周囲にはいないみたいだけど。」
優斗が二実に尋ねた。
「霊は死んだ場所をさまよう事が多いんですよね?」
二実が優斗に言った。
「ええそうよ、ただ必ずそうなるって訳じゃないわ。生前に好きだった場所や自宅をさまよってる場合もあるからね。」
すると柚羽が二実に言った。
「やっぱりそうですよね。実は二実さん、一つお話したい事があります。」
二実が柚羽に聞き返した。
「えっ??なに柚羽ちゃん??」
柚羽が二実に言った。
「実は昨日家に戻った時に父さんと母さんをもう助けられないってかもしれないって感じてたんです。」
二実が柚羽に言った。
「うんそれは私も思ってたんだけど。」
柚羽が二実に言った。
「すいません、少し言い方が悪かったです。私はあの時にお父さんとお母さんを助けられないと確信していました。でも二実さん達が助けようとしてくれたんで、いちるの望みを掛けてお父さんとお母さんを九前坂(くぜんざか)神社に連れてきてもらったんです。」
二実が柚羽に聞き返した。
「助けられないと確信していた??柚羽ちゃん?それどういう事??」
柚羽が二実に言った。
「なんでそう思ったかというとお父さんとお母さんの魂がどこにも感じられなかったんです。魂がお父さんとお母さんの体をすでに離れてしまってる、そんな感じだったんです。」
二実が考え込んだ様子で柚羽に言った。
「魂が体を離れてしまってるか。」
柚羽が空を見ながら言った。
「ねえみんな??空にあるものが見えますか??」
「空にあるもの??」
拓也はそう言いながら空を見上げた。
晴南が空を見上げながら柚羽に言った。
「えっ??いや特に何も見えないけど??快晴の空があるだけよ??」
柚羽がみんなに言った。
「実は私には見えるんですが、大きな白い機械仕掛けの柱が明井田の上空にあってその白い柱の下の方が大きく開いてるんです。」
二実が驚いた様子で言った。
「それって??まさか異世界門?」
柚羽がうなずきながら二実に言った。
「恐らくは。」
二実が柚羽に言った。
「三象(さんしょう)がそれを使ってあっちの世界に魂を送ってるんだったわね。」
二実が柚羽に尋ねた。
「でも柚羽ちゃん??それと誠二郎さん達の事とどうつながるの?」
柚羽が二実に言った。
「たぶんなんですがお父さんと母さんの魂はもう私たちが行った時点ではもう三象に奪われていたと思うんです。少なくともお父さんとお母さんの魂は肉体からは切り離されていたのだと思います。魂を奪われて肉体だけが生きてる状態、それがさっきの状態だと思うんです。」
二実が柚羽に言った。
「魂を奪われて肉体だけが生きてる状態か。それで誠二郎さんも満子さんも一切の意識がなかったわね。」
晃太が二実に言った。
「確かにあの前兆シグナルが出ていた人は一人の例外もなく意識がありませんでしたね。」
優斗が柚羽に言った。
「そう考えると合点はいくね。僕達が健太の家に行った時にすでに誠二郎さんと満子さんの魂が体から切り離されてすでに奪われていたなら、そりゃ誠二郎さんも満子さんも受け答えなんてできないだろうし。」
晃太が優斗に言った。
「それなら前兆シグナルが出ていたみんなが返事をしてくれなかった事の説明もできるな。」
優斗が晃太に言った。
「うんきっとみんな魂を奪われてしまって、肉体だけが生きてる状態だったんだよ。」
二実がみんなに言った。
「柚羽ちゃんの話とこの周囲に誠二郎さんと満子さんの霊がいない事やこれまで前兆シグナルが出ていた人たちの事も考慮すると、柚羽ちゃんの考えはかなり的を得ていると思うわ。」
晃太がみんなに言った。
「でもそうなるとあの状態なってしまったらもう助けようがないって事か。」
柚羽が晃太に言った。
「うん、あの状態になる前に助けなければいけないんだと思います。」
二実は納得した様子で言った。
「なるほどね。」
三緒が二実に言った。
「ということはもう誠二郎さんと満子さんの魂は奪われてしまった後だって事なのね。」
二実が大きくため息をついて三緒に言った。
「もう誠二郎さんと満子さんの魂を守る事すらできないんだね。」
三緒も残念そうに二実に言った。
「ええ、そうね。でも二実?だからこそ誠二郎さんと満子さんを弔ってあげるべきだと思うの。」
二実が三緒に言った。
「そうね。弔われるべき誠二郎さんと満子さんの魂はもうここにいないけれど、満子さんも誠二郎さんも弔ってもらった方が喜んでくれるでしょうから。」
晴南が二実に言った。
「誠二郎さんと満子さんを弔ってあげましょう。」
健太が涙を流しながらみんなに言った。
「ありがとうございます。」
すぐに二実達は簡素であったが誠二郎と満子の葬儀を執り行うのだった。
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「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
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