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一章

一大事

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理沙達は再び北館3階にへと戻ってきたのだった。

楓や由衣は久保と牧田の方が気になっているようで今回は男の子の幽霊がいるかどうかは聞かなかった。

第二情報処理室の扉を開けて武藤先生が先に部屋の中に入っていった。

すると武藤先生が急に入り口を入った所で立ち止まってしまうのだった。

武藤先生は教室の中を見て顔を青くしていた。

理沙達は不思議に思って武藤先生に声をかけた。

「武藤先生どうかしたんですか??」

そう言うと第二情報処理室の中を覗いたのだった。

すると理沙達も言葉を失ったのだった。

久保(くぼ)と牧田(まきた)の二人が天井からロープを吊るして首を吊っていたのだ。

理沙は慌てて第二情報処理室の中に入っていった。

「久保君!!牧田君!!」

首を吊っている久保と牧田が理沙達を睨みつけるように見つめているようだった。

由衣が武藤先生に言った。

「武藤先生!!まだ首を吊ったばかりだから、すぐに下せば助けられるかもしれない。」

武藤先生はハッと我に返ると由衣に言った。

「そうだな。」

武藤先生が三谷(みたに)に言った。

「三谷(みたに)さん?久保の体を持ち上げてもらえますか?その間に俺がロープを切るんで。」

だが三谷は思いがけない言葉を武藤に返すのだった。

「いやワシは帰らせてもらうよ。」

武藤が三谷に尋ねた。

「何を言ってるんですか?三谷さん?」

三谷が武藤に言った。

「だって久保君と牧田君が首を吊ってるだけだろう??そんな事でここに長居をするわけにはいかないからな。」

武藤が三谷に言った。

「待ってください、三谷さん。緊急事態でしょう。」

だが三谷は不思議そうな顔で武藤にこう言ったのだった。

「久保君と牧田君が首を吊ってるだけじゃないか?どこが緊急事態なんだ??」

そういうと三谷は第二情報処理室の外に出て行ってしまった。

楓が不思議そうに言った。

「なんで二人をほかっていっちゃうの?」

すると理沙が武藤に言った。

「先生、私たちが久保君の体を支えますから、その間に久保君のロープを。」

「すまない、頼む。」

理沙達は大急ぎで久保と牧田の二人を床に下したがすでに手遅れだった。

武藤が横たわっている二人を確認した。

「だめだ、久保も牧田も息をしていない。」

理沙が悲しそうな顔で武藤に言った。

「そんな。」

理沙達は悲しみに包まれたのだった。

すると桃子が武藤に尋ねた。

「先生?救急車を呼んだ方がいいんじゃないですか??」

武藤が桃子に言った。

「そうだな救急車とあと警察を呼ばないと。」

すぐに理沙が自分のスマホを取り出して電話をかけようとしたのだった。

だがなぜかスマホの画面に表示されている電波が立っていなかった。

理沙は不思議そうにスマホの画面をのぞきながら言った。

「スマホが繋がらない??」

桃子もスマホで電話をしようとしたが無駄だった。

「なんで??」

それは楓や由衣も同じ状況のようだった。

楓が由衣に言った。

「ここの電波の環境っていいはずだよね。なのになんで?通信障害とかかな?」

由衣が楓に言った。

「分からない、でも理沙や桃子それに楓や私の通信キャリアは別々の会社だったはず。大手の通信キャリアが一斉に通信障害とかまずありえないから通信障害ではないと思う。」

理沙が武藤に尋ねた。

「先生のは??」

武藤が理沙に言った。

「ダメだ、俺のも使えない。」

楓が理沙に言った。

「どうしよう?」

由衣がみんなに言った。

「それなら図書館に行って救急か消防に連絡してもらったら?」

楓が由衣に言った。

「そっか、学校の図書館なら今日も人がたくさん来てるもんね。」

理沙達はすぐに敷地内にある図書館へと向かったのだった。

図書館の扉を開けて、理沙達はすぐにカウンター前へとやってきたのだった。

カウンターには受付の当番をしていた司書の村上がいたのだった。

司書の村上は慌てて入ってきた武藤に尋ねた。

「武藤先生?慌ててどうされたんですか?」

武藤先生が司書の村上に言った。

「村上さん??至急救急車を呼んでもらえませんか??」

村上が驚いた様子で武藤に聞き返した。

「ええ??武藤先生??怪我でもしたんですか??」

武藤が村上に言った。

「うちの生徒が校舎で首を吊ってるんですよ!!」

村上が驚いて聞き返した。

「ええ??生徒が校舎で首を吊ってる??」

司書の村上が大声で驚いていると何事かと思って自習室で自習していた生徒たちまで集まってきたのだった。

そして理沙達のクラスメイトでもある山内が桃子に尋ねたのだった。

「なあ吉田??校舎で首吊ってる奴がいるって本当か?」

桃子が山内に答えた。

「ええ本当よ晃(あきら)。私も第二情報処理室を直接見てきたんだから。」

山内は驚いた様子で桃子に言った。

「マジかよ、とんでもない事になったな。」

司書の村上は慌ててカウンターに備え付けられている電話で救急に電話をしたのだった。

「すいません、救急車をお願いします。」

一方カウンター前には集まった生徒達がざわついていた。

「首吊りなんて怖いわね。」

「本当ね、でもなんで校舎の中で首吊りなんてしたんだろう?」

「知らないわよ、でも第二情報処理室って北館の3階でしょ。もしかして男の子の幽霊の仕業とか?」

「何を言い出すかと思えば幽霊の仕業だと??そんなわけないだろうが。」

「でも男の子の幽霊が出るって噂になってた三階で首を吊ったんでしょう。何か関係があるんじゃない?」

「関係ねえよ、たまたま第二情報処理室で首を吊っただけだろう。幽霊に人間の首を吊らせるなんてできるわけないだろうが。バカバカしい。」

すると山内が理沙に尋ねてきた。

「そういえば聞き忘れてたけど誰が首を吊ったんだ??」

理沙が山内に言った。

「久保君と牧田君が首を吊ってるんです。」

すると山内は呆れた顔で理沙に言った。

「なんだよ、首を吊ったのは悟(さとる)と裕也(ゆうや)かよ。ビックリさせるんじゃねえよ。悟(さとる)と裕也(ゆうや)が首を吊ってたぐらいの事で大騒ぎしないでくれ。」

他の生徒達も同様の反応を示すのだった。

「なーんだ、人が死んでると思ってビックリしちゃったわ。」

「人騒がせだな。」

そしてカウンター前に集まっていた生徒達は呆れた顔で自習室に戻ろうとするのだった。

自習室に戻ろうとする晃を桃子が呼び止めたのだった。

「ちょっと待ちなさいよ晃(あきら)??晃は悟(さとる)や裕也(ゆうや)と仲良かったでしょ?なんでそんなひどい事いうわけ?」

晃(あきら)が桃子に言った。

「おい、吉田。俺がいつひどい事を言った?悟も裕也も俺の大切な親友だ。いつの事かは分からないが俺はどんな時だって親友の悪口を言ったりしない。」

桃子が晃に言った。

「言ったじゃないの?悟と裕也が首を吊ったぐらいで大騒ぎしないでくれって。」

晃が桃子に言った。

「そりゃそうだろう。悟と裕也が首を吊っただけなんだぞ。騒ぐほどの事じゃないだろうが。」

武藤が晃に言った。

「いや絶対に騒ぐほどの事であるはずだ。一体どうしてしまったんだ山内??」

すると晃は周囲にまだ残っていた生徒に尋ねたのだった。

「なあみんな?俺の言ってる事なにかおかしいか?」

残っていた生徒達が晃に答えた。

「いや別におかしくないと思うよ。」

「だって久保君と牧田君が首を吊ってただけだもんね。」

「そうだよね、全然騒ぐような事じゃないよね。」

晃が武藤に言った。

「俺からすると武藤先生や吉田達の方がおかしいと思うぞ。」

晃はそう言い残すと、自習室へと戻っていったのだった。

するとそこに司書の村上がやってきたのだった。

武藤が村上に尋ねた。

「ああ、村上さん??救急車はあと何分で到着すると言ってましたか?」

すると司書の村上は怒った様子で武藤に言った。

「武藤先生、救急車なんて呼ぶのをやめたに決まってるでしょ。」

武藤が村上に尋ねた。

「呼ぶのを止めた??なぜです??」

村上がきつい口調で武藤に言った。

「なぜって、そりゃそうですよ。だって首吊ってたのが、久保君と牧田君だったんですよ。そんなの救急車呼ぶ必要が全然ないじゃないですか。」

武藤が村上に言った。

「呼ばなければダメでしょう。」

村上が武藤に言った。

「武藤先生??そんな事で救急車を呼んだら、救急の人にも怒られますよ。だって久保君と牧田君が首を吊ってただけなんですから。」

武藤が村上に言った。

「久保と牧田が首を吊ったんですよ。一大事でしょう。」

村上が武藤に言った。

「そんなの全然一大事じゃありませんよ。武藤先生??どうさんれたんですか??今日の武藤先生は変ですよ。」

村上がみんなに言った。

「武藤先生それにあなた達も、今日はもう帰った方がいいんじゃないですか?体調が悪い時に頑張ろうとしても状況が悪化するだけですよ。」

図書館にいた誰もが理沙達の話を一大事だと捉えてくれなかったのだった。

理沙達は茫然としながら図書館を後にするしかなかった。

その後、明井田高校近くのコンビニで電話を借りて救急や警察にも通報したのだが、司書の村上とほぼ同じ反応と対応をされて大事と捉えてもらえないのだった。

さらには家族や友人にもこの状況を電話で伝えたのだが、またしても村上の時と同じ反応をされるだけであった。

理沙達は途方に暮れるのだった。

楓がみんなに尋ねた。

「久保君と牧田君が首を吊ってたのって普通なら一大事のはずよね。」

武藤が楓に言った。

「ああ普通なら大騒ぎになる。」

理沙が武藤に言った。

「でも誰も大事だと捉えてくれない。なんでだろう。」

桃子が理沙に言った。

「本当に意味わかんないわ。」

すると理沙は由衣がスマホで色々と調べているのに気がついた。

「由衣??何してるの??」

由衣はスマホを理沙の方に見せながら言った。

「投稿した画像を確認してるの。」

理沙が由衣に聞き返した。

「画像の確認??」

由衣が理沙に言った。

「うん、実はこの前の投稿した画像を確認してたんだ?」

理沙が由衣に聞き返した。

「投稿した画像って?」

由衣が理沙に言った。

「ほらこの前行った九前坂(くぜんざか)のマッテリアに行った時にスマホで写真を撮ったでしょ?」

理沙が由衣に言った。

「そう言えば由衣、店に入った時に撮ってたね?でもそれがどうかしたの?」

由衣が理沙に言った。

「その画像をSNSにあげてたんだけどあの時って店の中ってこんな画像だったっけ?」

由衣はそう言うと自分のスマホをみんなに見せたのだった。

由衣のスマホ画面にはマッテリアの店内画像が表示されていた。

マッテリアの店内は首を吊った人々の亡骸で埋め尽くされていた。

マッテリアの店員やサラリーマン姿の男性などいろいろな人々が首を吊って死んでいる画像であった。

楓が驚いて由衣に言った。

「何これ??」

桃子が由衣に言った。

「首を吊った人なんてあの時いなかったでしょ。」

理沙が由衣に言った。

「私も首を吊ってた人なんて誰もいなかったと思う。」

桃子が由衣に言った。

「それ誰か別の人が投稿した画像と間違えて表示してるんじゃないの?」

由衣が桃子に言った。

「うん私も最初そう思ったんだけど、スマホの画像アルバムの中にも同じ画像が入ってるし、ほらここに投稿時間も記録されてるでしょ。」

由衣はそう言うとその日時を画面を操作して表示させた。

画面には7月16日午後1時49分と表示されていた。

楓が怖そうな様子で由衣に言った。

「ちょっと待って、それ私達がマッテリアに到着した頃の時間じゃない?」

理沙が由衣に言った。

「そういえば由衣はSNSに投稿したってあの時言ってたね。」

由衣が楓に言った。

「それにここにウォーターサーバーも写ってる。私達が行った時もちょうどこの場所にウォーターサーバーがあったよね。」

理沙が由衣に言った。

「確かにここにあったと思う。」

由衣が理沙に言った。

「しかもさ、もっと怖いのがこのSNSに投稿した画像に3600人の人がいいねを押してるんだよね。」

由衣はそう言うと画面を操作して画像を上に移動させて、いいねの数を表示させた。

すると確かに3645の人がこの画像にいいねを送っているのだった。

全員が黙り込むのだった。

理沙達は身に覚えのないこの画像に恐怖していたのだった。

武藤がみんなに言った。

「これは自分で撮った写真や投稿した画像を調べた方がよさそうだな。」

すぐに理沙達はこの意味不明な状況に怯えつつも、自分の投稿した写真に変なものが写り込んでいないか調べるのだった。

すると意味不明の首吊り遺体が写り込んだ写真をいくつも発見してしまうのだった。

理沙達は完全に恐怖に包まれたのだった。

そして理沙はわらにもすがる思いで二実に電話を掛けたのだった。

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