最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第3章 逃亡生活

小麦峠

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次の日僕達はジール公国側のギレート山脈の峠道にいた。

小麦粉の入った麻袋を積載した荷車を後ろから六人で押して、坂道を下から上に向かってゆっくり進んでいた。

そう臨時の配達人の仕事というのは、小麦粉の運搬作業の事であった。

何でもホルムス共和国への輸出される小麦粉を、国境近くの倉庫まで運ぶのである。

僕達は朝一でマルディーヤ近くの保管倉庫まで行き、荷車に小麦粉の入った麻袋を積んでから、出発した。

カルヤーン街道を通って北上して、国境線近くの町カルヤーンの倉庫が目的地だった。

平らな道は馬達に運ばせて、坂道は配達人が荷車に積んである麻袋を一旦下ろして、一個づつ担いで運ぶのである。

そして軽くなった荷車を後ろから押して坂の上に運ぶのである。

この仕事かなりきつい。

息が切れるなんてこの世界に来て始めてだ。

一緒に来ていたバルガスとオーエンも息が切らしていた。

そして最後の荷車は、予定より時間が遅れているという事で、積み荷の半分だけ担いであげた後、六人で後ろから押す事となった。

一人の騎士が皆に大声で告げる。

「いいか、この峠道は小麦峠と呼ばれている。なぜそう呼ばれているか?それはここを通る小麦粉を運ぶ者達がよく事故を起こす場所でな。そして小麦粉の入った麻袋がぶちまけられて、この坂一面が真っ白になる。よってここは小麦峠と呼ばれている。いいか!絶対に運び終えるまで気は抜くな!」

全員が答える。

「おう!」

先ほどの騎士が再度大声をあげる。

「よし!ジール大公様に栄光あれ!」

僕を含めた全員が答える。

「ジール大公様に栄光あれ!」

最初こそ抵抗があったが、何回も言ってる内にもう慣れてしまった。

そして荷車の後ろに六人が回り込んだ。

僕達は荷車を押して、坂をのぼりはじめた。

そしてゆっくりと荷車を坂の上へと押していく。

そしてあと少しで上に上がるという所で、オーエンが手を離してしまった。

バルガスが大声を上げる。

「オーエン、何やってるんだ!」

オーエンが答える。

「疲れたから、少し手を離しただけだって。今はちゃんと押してる。」

だがそのせいで荷車が少し下に戻ってしまった。

今度は一緒に押していた騎士が声をあげた。

「まずいぞ、右側の車輪が地面の穴にはまったみたいだ!」

押しても車輪が穴にはまって荷車が動かなくなってしまった。

一緒に押している騎士が声を張り上げる。

「いいか、イチニノサンで全力で押すんだ!」

そして騎士の号令の元、力を振り絞り全力で押した。

荷車は動き出し、何とか荷車を上まで運ぶ事ができた。


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