かみかかり

しまうま弁当

文字の大きさ
4 / 31

4話 理沙

しおりを挟む
俺はある場所へと向かっていた。

笠歌市の住宅街を抜けて林の中へと入っていった。

「ここも昔のままだな。」

俺は昔の記憶を振り返りながら、林の奥までやってきた。

林の奥には古びた神社がひっそりとたたずんでいた。

俺はその神社の敷地に入っていくと、敷地の一角にある社務所の建物へと向かった。

実はここは俺の実家であり、我が家は由諸ある家系で代々笠歌市にある春山神社の管理している家柄だった。

この春山神社は一昔前まではパワースポットとして有名だったのが、あの事をきっかけに今はその面影はほとんどなくなってしまった。

今ではただの古い神社であった。

しばらくはここに居を置く事になりそうだな。

俺は社務所兼住宅の前までやってくると玄関の引き戸が少し開いており、中から女子の声が聞こえてきた。

俺が玄関の中を覗くと長い黒髪の顔立ちの整った20ぐらいの女子が立っていた。

俺はその女子に声を掛けた。

「なんだ理沙もこっちに戻っていたのか?」

長い黒髪の女子は俺に答えた。

「戻ってたのかはこっちのセリフだよ、お兄ちゃんこの前まで新潟に行ってたでしょ。こっちに戻って来てたなんて知らなかったよ。」

「ああ、ここの近くの捜査本部に配属になったからな。笠歌に戻ってきたんだったらホテルに泊まらずにここに戻ってきた方がいいと思ってな。」

「そうなんだ。」

「そういう理沙もこっちに用事があったのか?」

「うんこっちで診て欲しいって依頼があって。地鎮祭の依頼も終わったから急遽こっちに戻ってきたの。」

「そうだったのか。」

彼女は春山(はるやま)理沙(りさ)と言って俺の妹だ。

年は22歳で俺より7つほど下だった。

妹の理沙にはいわゆる霊能力と呼ばれる力を持っており、今は理沙がこの春山神社を引き継いで神主となっていたのだった。

俺にはそういう霊的な力は持ち合わせていなかったが、妹の理沙は小さな頃からそういう力を持っていた。

理沙は昔から幽霊が見えており、そういう存在を祓う事もできる本物だった。

俺が子供の頃になくし物をした時も、よくどこにあるかを言い当てていた。

まあ俺はそういう能力とはずっと無縁であったが。

俺は理沙に尋ねた。

「理沙、しばらくここに泊まりたいと思っているんだが、構わないか?」

「もちろんいいよ。」

「じゃあ俺の部屋を使わせてくれ。」

「うん、分かった。」

俺は理沙にそう伝えると、かつの自分の部屋へと向かった。

階段を登り、自分の部屋のドアを開けた。

「この部屋も前のままか。」

久しぶりに見る自分の部屋は、懐かしく感じていた。

また懐かしく思える日が来るなんてな。

そういえば理沙が依頼があると言っていたな。

俺は自分の部屋に荷物を置くと、階段を降りて理沙の元に向かった。

「理沙、少しいいか?」

「うんいいよ、なにお兄ちゃん?」

「さっき言ってた依頼者はいつ来るんだ?」

「それが今晩に来たいって言ってるんだよね。」

「今晩か結構急な話だな。」

「うんだからこっちに急いで戻ってきたんだよね。」

「理沙、何か俺が手伝える事はあるか?」

「拝殿を使う準備をしておいてくれると助かるんだけど。」

「分かった、なら拝殿の準備をしておこう。」

「助かるけど、いいの?お兄ちゃんも事件の捜査で疲れてるでしょ?」

「いいさ困ってる人をほうってはおけないだろう。」

理沙は笑顔になって俺に言った。

「うん。ありがとう。じゃあお願いするね。」

俺は社務所兼住居を出ると、そのまま春山神社の拝殿へと向かった。

夜の神社というのはなかなか独特の雰囲気があって、怖さを感じてしまう時がある。

拝殿と本殿と社務所は廊下で繋がっており、俺は廊下を通って拝殿へとやってきた。

すぐに掃除道具をとり、掃除を始める。

なかなか埃が溜まって大変だったが、一通り掃除を終えると神具の榊やおおぬさを並べていた。

一通りの準備を終わらせて、理沙に知らせに戻った。

「理沙、拝殿の準備ができたぞ。」

「ああ、ありがとう、お兄ちゃん。」

理沙はいつの間にか神職の正装であるに白い袴に着替えていた。

すると玄関の外から声が聞こえてきた。

「すいません!!」

理沙が外にいる人物に声を掛けた。

「はーい、どちら様ですか?」

「電話をした佐伯(さえき)と申します。」

「お待ちしてました。」

俺達は玄関を開けて出迎えた。

玄関前には二人が立っていた。

「佐伯さんですね、お待ちしてました。」

「はい、娘の秋江(あきえ)を見てやってくれますか。」

なるほどこの二人は親子というわけか。

見ると母親が心配そうに娘の顔を覗き込んでいたが、肝心の娘の方はニタニタと少し怖い笑みを浮かべていた。

「拝殿の方を開けてありますので、詳しい話はそちらでききます。こちらです。」

俺達はその親子を拝殿まで案内した。

そしてその親子に拝殿にあがってもらってから、話を始めたのだった。

「どうか、秋江をみてやってください。」

「はい、もちろんです。」

「秋江さん、すいません。少しお話を聞かせてもらっていいですか?」

だが秋江さんは理沙の問いかけに何も反応しなかった。

「秋江さん、すいません。お話をさせてもらっていいですか?」

「秋江、お願いだから答えてあげて。」

だが秋江さんは理沙や母親の言葉に何も反応しない。

「秋江さん、お話したくないんですか?」

すると突然

「あははははは!!あははははは!!」

秋江さんが狂ったように大笑いを始めたのだった。

秋江さんは不気味な笑みを浮かべながら大笑いしている。

拝殿内に秋江さんの笑い声が響き渡った。

「あっはっはっはっはっは!!!」

しばらくの間秋江さんの笑い声が拝殿内に響き渡った。

その後、秋江さんは再び黙り込んでしまった。

理沙が再び秋江さんに話しかけた。

「秋江さん、何か面白い事でもあったんですか?」

だが秋江さんは理沙の問いかけには何も反応しなかった。

すると母親が心配そうな顔で説明してくれた。

「もうここ一週間ぐらい娘の秋江がこんな調子になんです。何を話しても黙り込んで答えてくれないんです。そうかと思ったら突然大声で笑い出すんです。」

「秋江さんはいつからこの状態になったんですか?」

「一週間ぐらい前です。」

「その一週間前ぐらいに秋江さんに何かありましたか?」

「それが秋江は学校の友達と一緒に肝試しに行ったみたいで。」

「肝試しですか?」

「はい秋江は笠歌高校の生徒なんですが、高校の近くにある旧笠歌病院の廃墟に一緒に行ったらしくて、そこから帰ってきてからずっとこんな状態なんです。」

「病院には診察に行かれましたか?」

「はい、いくつかの病院の先生に診察もしてもらったんですが、特に悪い所は発見できずに何の病気かも分からないと言われてしまって。途方に暮れていたんです。それで今の私にはもう春山さんにすがるしかなくて。どうか娘を助けてください!!」

秋江さんを助けたい一心が伝わってきた。

「分かりました。最善を尽くしたいと思いますので、今日は一旦帰ってもらって宜しいでしょうか。」

「はい、分かりました。」

そして佐伯親子は一旦帰って行った。

俺は親子を見送った後で理沙に尋ねた。

「理沙、あの子の悪霊を祓ってあげないのか?」

「確かに強力な霊ではあるんだけど、どうもそんな単純じゃなさそうなんだよね。」

「そうなのか。」

理沙は何かに引っかかっているようだった。

「お兄ちゃん、私その秋江さんが行った旧笠歌病院の廃墟に明日の朝に行ってみようと思うんだ。お兄ちゃんも一緒に来てくれない。」

「別に構わないぞ。」

「じゃあ明日の朝、お願いね。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/2/15:『ねこ』の章を追加。2026/2/22の朝頃より公開開始予定。 2026/2/14:『いけのぬし』の章を追加。2026/2/21の朝頃より公開開始予定。 2026/2/13:『てんじょうのかげ』の章を追加。2026/2/20の朝頃より公開開始予定。 2026/2/12:『れいぞうこ』の章を追加。2026/2/19の朝頃より公開開始予定。 2026/2/11:『わふく』の章を追加。2026/2/18の朝頃より公開開始予定。 2026/2/10:『ふりかえ』の章を追加。2026/2/17の朝頃より公開開始予定。 2026/2/9:『ゆぶね』の章を追加。2026/2/16の朝頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

都市伝説レポート

君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...