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12話 ホラーチャンネル配信者
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雄太君の葬儀から三日後に俺は理沙と一緒に隣町の九是山市まで出かけていた。
雄太君の葬儀以降理沙はずっと落ち込んでしまっていた。
気落ちしている理沙を元気つけようと思ったからだ。
俺は理沙が好きな場所である九是山庭園(くぜやまていえん)へとやってきていた。
九是山庭園にはたくさんの人々がやって来ていた。
「ほう平日だっていうのに九是山庭園は割と混んでるんだな。」
庭園内には至る所でフジの花が満開になっており、多くの人達がフジの花を見て楽しんでいた。
理沙もその一人だった。
「見てお兄ちゃんきれいなフジの花だよ!!!」
理沙はそう言いながら九是山庭園の中を嬉しそうに進んでいった。
そしてフジの花が咲いている下の休憩スペースまでやって来ると、嬉しそうにスマホで写真を撮り始めた。
「お兄ちゃん、いい時に来たよ、今フジの花がシーズンだからね。」
「そうなのか?」
「うん、一緒に来てくれてありがとね。」
「ああ、これくらい訳ないさ。」
雄太君の件依頼ずっと暗い顔をしていた理沙がようやく笑ってくれていた。
すると理沙がこう言ってきた。
「なんかお兄ちゃん、ごめんね。気を使わせちゃって。」
「気にするな。理沙はここが好きだろう。九是山庭園のフジの花が。」
「うん、ここは景色もいいし、フジの花がとても綺麗だから大好き。一緒に来てくれて本当にありがとうね、お兄ちゃん。」
「ああ。」
理沙にいつもの笑顔が戻って来ていた。
しかし本当に雄太君の事は分からない事だらけだった。
雄太君に取り憑いていた青い自然霊というのはなんだったのか?
雄太君はどこにも体に悪い所もないのになぜ突然死んでしまったのも不可解だ。
今までだって捜査に謎つきものだったが、それにしても最近は本当に意味不明な事が多すぎる。
矢場先生の教えてくれた情報も裏どりして確認しておきたいとは思っていたが、捜査も難航しているこの状況では後に回すしかないだろうな。
ただ今は何より理沙の気分を少しでも和らげたいと思っていた。
「さあ九是山庭園の次はどこに行く?」
「う~ん、そうだな。」
理沙がスマホを見ながら次の目的地を悩んでいると後ろから声を掛けられたのだった。
「あら、理沙じゃない。」
後ろを振り返ると細身のショートヘアの20くらいの女性が立っていた。
理沙はその女の人を見てこう言った。
「あら春香、久しぶり。」
どうやら理沙の知り合いのようだった。
「春香、今日はどうしたの?」
「今日は仕事でね、こっちの方に来てるんだけど。」
「仕事って事は配信チャンネルの撮影か何か?」
「うんまあそんなところ。」
するとその女性が少し考え込んでいた。
「理沙がいるんだったら。うーん。」
その様子を見た理沙が不思議そうに尋ねた。
「春香、どうかしたの?」
「実はさちょっと気になる事があってね。」
「気になる事?」
「うん、そうなのよ。」
俺は理沙に尋ねてみた。
「理沙、こちらの方は?」
「ああごめん。この人は佐田(さだ)春香(はるか)さん、えっとホラーチャンネルの配信者なんだ。」
「配信者の人か。」
「うん春香はさ、ハルカの怖すぎホラーチャンネルって名前で配信してるんだけど、チャンネル登録者が50万人を超えてる配信者だからね。」
「その登録者が50万人というのはすごいのか?」
「トップのヒエー怖すぎさんの所でチャンネル登録者が100万人だから、ホラー配信の界隈では超有名人だよ、春香は。」
「そりゃすごいな。」
「それほどすごくはないですよ。」
すると今度は春香さんの方が俺の方をじっと見つめてきたのだった。
「ねえ理沙、この人は誰?理沙の彼氏?」
「彼氏じゃなくて、お兄ちゃんなの。」
「ああ、お兄さんなんだ。そう言えば前に言ってたね。刑事のお兄さんがいるって。」
「うん、そう。」
「それじゃあ理沙は、今日は依頼でここに来ているの?」
「いや依頼っていうか。息抜きって言った方がいいかな。」
「そうなんだ。」
すると春香さんは少しの間考え込んでいた。
「・・・・」
理沙は黙り込んだ春香さんに尋ねた。
「春香、どうかしたの?」
「ああ、ごめん、ちょっと考え事をしちゃってた。だったらさ理沙、今日の夕方にどこかで会えないかな。実はちょっと話したい事があって。」
「話したい事?」
「うん、いいけど。」
「あっできればお兄さんも一緒にお願いしたいんですけど。」
「俺もですか?」
「はい、是非とも。」
「俺は部外者だからいない方がいいと思いますが。」
「そんな事ないです、お兄さんにも是非話を聞いてもらいたいんです。」
「いいよね理沙?」
「別に私は構わないよ。」
「はあ分かりました。では理沙と一緒に伺います。」
春香さんはなぜか俺にも参加して欲しいようだった。
「それでどこで待ち合わせをするの?」
「場所は九是山駅前の喫茶のローグで午後5時でいいかしら。」
「喫茶ローグに午後5時ね、分かった、じゃあ後でね。」
「うん、また後で。」
そう言うと春香さんは去って行った。
「次はどこに行くか決めたか?」
「九是山大滝に行こうかな。」
「九是山大滝だな。」
俺達はその後九是山大滝へと向かい、その後も九是山市内の観光を続けたのだった。
そして午後四時半くらいに喫茶ローグへとやってきた。
喫茶ローグは九是山駅前のスエダビルという雑居ビルの2階部分にある喫茶店だった。
俺達は喫茶ローグへ入ると、店のレジ前で春香さんの姿を探した。
だが春香さんの姿を見つける事はできなかった。
「春香さんの姿はなさそうだな。」
「うーん、まだ4時半だからね。さすがに早すぎたかな。」
「とりあえず店内で待つとするか。」
俺達は喫茶ローグの窓際のテーブルに座った。
すぐに店員さんが水を持ってきてくれた。
「ご注文は何になさいますか?」
俺はメニュー表をざっと見てみた。
そして注文を決めた。
「コーヒーを一つお願いします。」
「私はレモンティーをお願いします。」
店員さんは注文を聞き終わると、レジへと戻っていった。
すぐに注文したコーヒーとレモンティーが運ばれてきた。
だが肝心の春香さんが午後5時を過ぎてもなかなか姿を現さなかったのだった。
「なかなか来ないな、春香さん。」
「なんか遅いね春香、ちょっと連絡してみるね。」
「ああ、頼む。」
すぐに理沙はスマホを取り出すと、理沙さんに連絡を取ってくれたようだった。
「ダメ、繋がらないみたい。」
「SNSの方はどうだ?」
「うん。」
理沙はSNSで春香さんに連絡を取ろうとしてくれた。
だが少しして理沙が首を横に振った。
「SNSでも連絡してみたけど、返事もないし既読もつかないわ。多分春香は見てないんだと思う。」
「春香さん、どうしたんだろうな?」
「渋滞とかにハマってしまったのかもしれない。もう少し待ってみるか。」
「そうだね。」
だが春香さんは現れずに、さらに時間が過ぎて午後6時になろうとしていた。
「さすがに遅すぎるな。」
「そうだね、さすがに渋滞とかで遅れるにしても春香なら連絡はくれると思うんだよね。」
「理沙、もう一度春香さんに連絡を取ってくれないか?」
理沙が再びスマホを操作して春香さんに連絡しようとしてくれた。
だがまたしても理沙は首を横に振った。
「だめお兄ちゃん、春香は通話にもSNSにも反応してくれない。」
「そうか、それは困ったな。」
「まさか春香、交通事故とかにでもあったりしてないよね?」
「そうそう事故に巻き込まれりはしないと思うが。」
どうしたものかと考えながら俺はふと窓から喫茶店の外を見たのだった。
するとビルの外に春香さんの姿を見つけたのだった。
俺は理沙に指をさしながら確認した。
「あれって春香さんじゃないのか?」
「えっ?」
「ほらあっちからこのビルに向けて歩いてきている女性がいるだろう。」
「ああ本当だ、春香だ。ちゃんと来てくれたんだね。」
春香さんは俺達のいるビルの中に入ってきたのだった。
「春香さん、このビルに入ってきてくれたからじきに春香さんがこの店に来るな。」
「そうだね。」
俺達は春香さんが俺達の席にやってくるのを待っていた。
だがそれからいくら経っても春香さんは現れなかったのだった。
時計を見たらすでに午後6時30分を過ぎようとしていた。
「おかしいな、あれからもう30分は経つぞ。春香さんいつまで経っても店の中に入ってこないぞ。」
「春香、どうしちゃったんだろう?」
「もう一度連絡してみようか。」
「ああ、頼む。」
理沙は再びスマホを操作して連絡を取ろうとしてくれた。
「ダメ、春香は出ないわ。SNSでコメントも送ってみたけど、全然返してくれないし。既読もつかないよ。」
「どうなっているんだ?」
「分からない。」
理沙も全くわけが分からないようだった。
「うーん、あんまり考えたくはないんだが、これは約束をすっぽかされたという事なのか?春香さんって遅刻したり約束を破ったりする人なのか?」
「春香はそういう事はしないよ。遅れるにしても連絡は絶対にくれるはずだし、私は今まで一度だってそんな事をされた事はないよ。」
「俺がいるから顔を出しにくいという事はないよな。」
「お兄ちゃんも来て欲しいって頼んできたの春香の方だよ。それはたぶんないと思う。」
そうなると他に可能性としてありそうなのは。
「俺たちに気づかないで他の席に座ってしまっているかもしれないな。」
「そうだね、少し探してみようか。」
俺と理沙は席を立って店内を見て回ってみたが、どの席にも春香さんの姿を見つける事はできなかった。
俺達は自分達のテーブル席に戻ってきた。
「どの席にも春香いないね。」
「となるとやっぱりこの店には来ていないみたいだな。よし理沙はここにいてくれ。ちょっと店の外を探してくる。」
すると今度は理沙が窓の外を指さしながら言った。
「ねえお兄ちゃん、なんか道路に人が集まってない?」
「えっ?」
俺は理沙が指さした窓の外を見ると確かに道路の通行人達がたくさん立ち止まって上を見上げていた。
「ん、なんだ?みんな立ち止まって、何を見ているんだ?」
そして次の瞬間信じられない映像が目に飛び込んできた。
俺の目の前を春香さんの顔がすっと上から下に流れていったように見えたのだった。
えっ??
一瞬何が起こったか分からなかった。
今の春香さんの顔に見えなかったか?
次の瞬間、ハッと我にかえると窓からビルの前の道路の様子を確認した。
すると誰かが頭から血を流していて地面に横たわっていた。
そして周囲の通行人達が大騒ぎをしているようだった。
「理沙はここにいろ。」
俺は理沙にそう伝えると、すぐに喫茶店ローグを出るとビルの外に飛び出した。
雄太君の葬儀以降理沙はずっと落ち込んでしまっていた。
気落ちしている理沙を元気つけようと思ったからだ。
俺は理沙が好きな場所である九是山庭園(くぜやまていえん)へとやってきていた。
九是山庭園にはたくさんの人々がやって来ていた。
「ほう平日だっていうのに九是山庭園は割と混んでるんだな。」
庭園内には至る所でフジの花が満開になっており、多くの人達がフジの花を見て楽しんでいた。
理沙もその一人だった。
「見てお兄ちゃんきれいなフジの花だよ!!!」
理沙はそう言いながら九是山庭園の中を嬉しそうに進んでいった。
そしてフジの花が咲いている下の休憩スペースまでやって来ると、嬉しそうにスマホで写真を撮り始めた。
「お兄ちゃん、いい時に来たよ、今フジの花がシーズンだからね。」
「そうなのか?」
「うん、一緒に来てくれてありがとね。」
「ああ、これくらい訳ないさ。」
雄太君の件依頼ずっと暗い顔をしていた理沙がようやく笑ってくれていた。
すると理沙がこう言ってきた。
「なんかお兄ちゃん、ごめんね。気を使わせちゃって。」
「気にするな。理沙はここが好きだろう。九是山庭園のフジの花が。」
「うん、ここは景色もいいし、フジの花がとても綺麗だから大好き。一緒に来てくれて本当にありがとうね、お兄ちゃん。」
「ああ。」
理沙にいつもの笑顔が戻って来ていた。
しかし本当に雄太君の事は分からない事だらけだった。
雄太君に取り憑いていた青い自然霊というのはなんだったのか?
雄太君はどこにも体に悪い所もないのになぜ突然死んでしまったのも不可解だ。
今までだって捜査に謎つきものだったが、それにしても最近は本当に意味不明な事が多すぎる。
矢場先生の教えてくれた情報も裏どりして確認しておきたいとは思っていたが、捜査も難航しているこの状況では後に回すしかないだろうな。
ただ今は何より理沙の気分を少しでも和らげたいと思っていた。
「さあ九是山庭園の次はどこに行く?」
「う~ん、そうだな。」
理沙がスマホを見ながら次の目的地を悩んでいると後ろから声を掛けられたのだった。
「あら、理沙じゃない。」
後ろを振り返ると細身のショートヘアの20くらいの女性が立っていた。
理沙はその女の人を見てこう言った。
「あら春香、久しぶり。」
どうやら理沙の知り合いのようだった。
「春香、今日はどうしたの?」
「今日は仕事でね、こっちの方に来てるんだけど。」
「仕事って事は配信チャンネルの撮影か何か?」
「うんまあそんなところ。」
するとその女性が少し考え込んでいた。
「理沙がいるんだったら。うーん。」
その様子を見た理沙が不思議そうに尋ねた。
「春香、どうかしたの?」
「実はさちょっと気になる事があってね。」
「気になる事?」
「うん、そうなのよ。」
俺は理沙に尋ねてみた。
「理沙、こちらの方は?」
「ああごめん。この人は佐田(さだ)春香(はるか)さん、えっとホラーチャンネルの配信者なんだ。」
「配信者の人か。」
「うん春香はさ、ハルカの怖すぎホラーチャンネルって名前で配信してるんだけど、チャンネル登録者が50万人を超えてる配信者だからね。」
「その登録者が50万人というのはすごいのか?」
「トップのヒエー怖すぎさんの所でチャンネル登録者が100万人だから、ホラー配信の界隈では超有名人だよ、春香は。」
「そりゃすごいな。」
「それほどすごくはないですよ。」
すると今度は春香さんの方が俺の方をじっと見つめてきたのだった。
「ねえ理沙、この人は誰?理沙の彼氏?」
「彼氏じゃなくて、お兄ちゃんなの。」
「ああ、お兄さんなんだ。そう言えば前に言ってたね。刑事のお兄さんがいるって。」
「うん、そう。」
「それじゃあ理沙は、今日は依頼でここに来ているの?」
「いや依頼っていうか。息抜きって言った方がいいかな。」
「そうなんだ。」
すると春香さんは少しの間考え込んでいた。
「・・・・」
理沙は黙り込んだ春香さんに尋ねた。
「春香、どうかしたの?」
「ああ、ごめん、ちょっと考え事をしちゃってた。だったらさ理沙、今日の夕方にどこかで会えないかな。実はちょっと話したい事があって。」
「話したい事?」
「うん、いいけど。」
「あっできればお兄さんも一緒にお願いしたいんですけど。」
「俺もですか?」
「はい、是非とも。」
「俺は部外者だからいない方がいいと思いますが。」
「そんな事ないです、お兄さんにも是非話を聞いてもらいたいんです。」
「いいよね理沙?」
「別に私は構わないよ。」
「はあ分かりました。では理沙と一緒に伺います。」
春香さんはなぜか俺にも参加して欲しいようだった。
「それでどこで待ち合わせをするの?」
「場所は九是山駅前の喫茶のローグで午後5時でいいかしら。」
「喫茶ローグに午後5時ね、分かった、じゃあ後でね。」
「うん、また後で。」
そう言うと春香さんは去って行った。
「次はどこに行くか決めたか?」
「九是山大滝に行こうかな。」
「九是山大滝だな。」
俺達はその後九是山大滝へと向かい、その後も九是山市内の観光を続けたのだった。
そして午後四時半くらいに喫茶ローグへとやってきた。
喫茶ローグは九是山駅前のスエダビルという雑居ビルの2階部分にある喫茶店だった。
俺達は喫茶ローグへ入ると、店のレジ前で春香さんの姿を探した。
だが春香さんの姿を見つける事はできなかった。
「春香さんの姿はなさそうだな。」
「うーん、まだ4時半だからね。さすがに早すぎたかな。」
「とりあえず店内で待つとするか。」
俺達は喫茶ローグの窓際のテーブルに座った。
すぐに店員さんが水を持ってきてくれた。
「ご注文は何になさいますか?」
俺はメニュー表をざっと見てみた。
そして注文を決めた。
「コーヒーを一つお願いします。」
「私はレモンティーをお願いします。」
店員さんは注文を聞き終わると、レジへと戻っていった。
すぐに注文したコーヒーとレモンティーが運ばれてきた。
だが肝心の春香さんが午後5時を過ぎてもなかなか姿を現さなかったのだった。
「なかなか来ないな、春香さん。」
「なんか遅いね春香、ちょっと連絡してみるね。」
「ああ、頼む。」
すぐに理沙はスマホを取り出すと、理沙さんに連絡を取ってくれたようだった。
「ダメ、繋がらないみたい。」
「SNSの方はどうだ?」
「うん。」
理沙はSNSで春香さんに連絡を取ろうとしてくれた。
だが少しして理沙が首を横に振った。
「SNSでも連絡してみたけど、返事もないし既読もつかないわ。多分春香は見てないんだと思う。」
「春香さん、どうしたんだろうな?」
「渋滞とかにハマってしまったのかもしれない。もう少し待ってみるか。」
「そうだね。」
だが春香さんは現れずに、さらに時間が過ぎて午後6時になろうとしていた。
「さすがに遅すぎるな。」
「そうだね、さすがに渋滞とかで遅れるにしても春香なら連絡はくれると思うんだよね。」
「理沙、もう一度春香さんに連絡を取ってくれないか?」
理沙が再びスマホを操作して春香さんに連絡しようとしてくれた。
だがまたしても理沙は首を横に振った。
「だめお兄ちゃん、春香は通話にもSNSにも反応してくれない。」
「そうか、それは困ったな。」
「まさか春香、交通事故とかにでもあったりしてないよね?」
「そうそう事故に巻き込まれりはしないと思うが。」
どうしたものかと考えながら俺はふと窓から喫茶店の外を見たのだった。
するとビルの外に春香さんの姿を見つけたのだった。
俺は理沙に指をさしながら確認した。
「あれって春香さんじゃないのか?」
「えっ?」
「ほらあっちからこのビルに向けて歩いてきている女性がいるだろう。」
「ああ本当だ、春香だ。ちゃんと来てくれたんだね。」
春香さんは俺達のいるビルの中に入ってきたのだった。
「春香さん、このビルに入ってきてくれたからじきに春香さんがこの店に来るな。」
「そうだね。」
俺達は春香さんが俺達の席にやってくるのを待っていた。
だがそれからいくら経っても春香さんは現れなかったのだった。
時計を見たらすでに午後6時30分を過ぎようとしていた。
「おかしいな、あれからもう30分は経つぞ。春香さんいつまで経っても店の中に入ってこないぞ。」
「春香、どうしちゃったんだろう?」
「もう一度連絡してみようか。」
「ああ、頼む。」
理沙は再びスマホを操作して連絡を取ろうとしてくれた。
「ダメ、春香は出ないわ。SNSでコメントも送ってみたけど、全然返してくれないし。既読もつかないよ。」
「どうなっているんだ?」
「分からない。」
理沙も全くわけが分からないようだった。
「うーん、あんまり考えたくはないんだが、これは約束をすっぽかされたという事なのか?春香さんって遅刻したり約束を破ったりする人なのか?」
「春香はそういう事はしないよ。遅れるにしても連絡は絶対にくれるはずだし、私は今まで一度だってそんな事をされた事はないよ。」
「俺がいるから顔を出しにくいという事はないよな。」
「お兄ちゃんも来て欲しいって頼んできたの春香の方だよ。それはたぶんないと思う。」
そうなると他に可能性としてありそうなのは。
「俺たちに気づかないで他の席に座ってしまっているかもしれないな。」
「そうだね、少し探してみようか。」
俺と理沙は席を立って店内を見て回ってみたが、どの席にも春香さんの姿を見つける事はできなかった。
俺達は自分達のテーブル席に戻ってきた。
「どの席にも春香いないね。」
「となるとやっぱりこの店には来ていないみたいだな。よし理沙はここにいてくれ。ちょっと店の外を探してくる。」
すると今度は理沙が窓の外を指さしながら言った。
「ねえお兄ちゃん、なんか道路に人が集まってない?」
「えっ?」
俺は理沙が指さした窓の外を見ると確かに道路の通行人達がたくさん立ち止まって上を見上げていた。
「ん、なんだ?みんな立ち止まって、何を見ているんだ?」
そして次の瞬間信じられない映像が目に飛び込んできた。
俺の目の前を春香さんの顔がすっと上から下に流れていったように見えたのだった。
えっ??
一瞬何が起こったか分からなかった。
今の春香さんの顔に見えなかったか?
次の瞬間、ハッと我にかえると窓からビルの前の道路の様子を確認した。
すると誰かが頭から血を流していて地面に横たわっていた。
そして周囲の通行人達が大騒ぎをしているようだった。
「理沙はここにいろ。」
俺は理沙にそう伝えると、すぐに喫茶店ローグを出るとビルの外に飛び出した。
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