惑星F冒険譚

伊藤テル

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【02 宇宙船】


・【02 宇宙船】


 俺たちは宇宙船に乗り込み、宇宙スーツを身に纏い(身に纏っただけで大体いろんな気温も気圧も大丈夫になるヤツ、全身手袋している状態だけども、触覚の感覚はバッチリのヤツ)、早速発進した。
 最初の操縦は俺が行なったが、あとは惑星Fまで自動運転だ(惑星FのFってファイトマネーもらい過ぎてワロタのF?)。
 ボディガードのナナロロは早々に自分の部屋へ戻っていったが、寧々とリリは俺と同じ、中央の、操縦席もあるスペースにいるので、俺はボケることにした。
「惑星FのFってもしかすると、ファイナルジャケットのF?」
 するとすぐさま寧々が、
「そんなジャケット無いよ!」
 とツッコむと、リリがこう言った。
「ツッコミが雑いな、それ以上にボケが適当過ぎるだろ」
 俺は目を皿にしながら、
「急に品評会かよ」
 と言うと、リリが、
「いやどうせボケ・ツッコミを浴びるなら、高レベルのモノを浴びたいだけだよ」
「俺と寧々のお笑いをシャワーみたいに表現するなよ」
「どちらかと言うと酒のイメージだよ」
 そう言ってリリが鼻で笑うと、寧々が、
「嗜好品という扱い、感謝します」
 と言いながら立ち上がって、しゃなりと頭を下げたので、優雅過ぎるのでは? と思った(優雅な布みたい、ウェディングドレスのことね)。
 俺も何か言わないとなと思って、
「じゃあタバコの煙みたいなボケしてくわ」
 と言うとリリが、
「粗悪なモンぶち込むなよ」
 と言ってきて、ツッコミの勢いが良いなぁ、とは思った。
 俺はちょっと大きな声で、
「俺はミスター副流煙!」
 と言うと、矢継ぎ早に寧々が、
「害があるボケは止めてよね!」
 俺は即、
「全然、有害図書のようなボケはしないから。無害こんにゃくみたいなギャグだけするから」
 と言うと寧々がテンポ良く、
「こんにゃく芋自体は結構危険な食べ物だけどね! 生じゃ食べられないヤツ!」
「もうめちゃくちゃ加工された、粘土のようなボケを繰り出すから大丈夫」
「逆に粘土ってあんま加工しなくても遊べるヤツ! 粘土っぽい土を層から発掘したらすぐ遊べるヤツ!」
 と寧々とバンバン打ち合ったところで、リリが、
「何かもうちょっと分かりやすくしろよ、複雑なこと言えば面白い笑いとかじゃないからな」
 としっかりとしたダメ出しがきて、シュンとしてしまった。
 (タケノコくらいシュンとしてしまった)
 (それは旬か)
 (旬の料理ほど有難いモノってないよね)
 (年取れば取るほど旬の料理を有難く感じるよね)
 (何だろう、あの感覚、遅効性の毒?)
 (たらの芽とか、いつからだろう、あんなに嬉しく感じるようになったのは)
 (木の枝の若芽だもんな、たらの芽って。よくあんなモノ、人は食べようとしたよな)
 (でもさ、逆にそんなモノを食べようとしないと生きていけなかったということだよな)
 (だから今、現代に感謝だよな)
 (西暦五千年の今に感謝だよな)
 (タケノコ)
 と思ったところで、リリが、
「また考え事か? それとも単に何も浮かばなくなったのか?」
 と言われたので、今考えていたことをそっくりそのまま伝えると、まずリリより先に寧々が、
「最後のタケノコって何だよ! 締めの文として機能してないからね! 別に!」
 リリはう~んと唸ってから、
「本当バカみたいなことずっと考えてるんだな、声を発してない時のほうがすごいな、譲は」
 と何か感心してくれたので良かった(感心ポイント、ゲットしちゃった。甘酢と交換しようっと)。
 俺と寧々とリリは今、円卓を囲んでいるわけだが、そう言えばオヤツが無いなと思って、
「そう言えば、オヤツ出すか?」
 と俺が普通に聞くと、リリがすぐに、
「いやナナロロがいない時はいいわ」
 と答えて、真面目なヤツだなぁ、と思った(お歳暮に甘酢送りたい、それかタケノコ)。
 俺と寧々とリリは他愛も無い会話を二時間くらいして、それぞれの部屋へ戻っていった。
 部屋はビジネスホテルのような作りになっていて、さらには簡易的な食事を作り出す機械もある。
 水も食べ物も、宇宙空間にあるエネルギーを吸収して、自動で作り上げるので、楽勝である。
 宇宙船そのものの燃料は着陸状態でしか作り出せないが、それも大気中のエネルギーで作り出すので、まあ着陸さえできれば簡単だ。
 タイムリープする時に使う燃料も宇宙船そのものの燃料と兼用で、その場に着陸して滞在していれば自動で溜まっていくモノだ。
 だから俺が船長と言っても、何かするようなことはほとんど無く、まあなんというか、その場だけのリーダーって感じだ。
 (だからカッコイイ)
 (カッコ可愛い)
 (面白カッコイイぜ)
 (自由民主カッコイイ)
 (剣道部)
 (二十五歳しかいない剣道部)
 (結局一番カッコイイのは剣道部)
 (日本の価値観で言うとね)
 (海外ではやっぱり剣突くヤツになるのかな)
 (あれの正しい名称なんだっけ)
 (シェークスピアみたいな名前だったような気がする)
 (いやシェークスピアが劇作家なのは知ってるけどもさ)
 (みたいな名前って言ってるだけで、そうとは言ってないよ)
 (うるさいなぁ)
 (あぁ、フェンシングね)
 (全然違うじゃねぇか!)
 (タケノコ)
 俺は食べ物を作る装置のボタンを押して、中から出てきた宇宙パンを食べた。
 美味しい。ただただ甘い。パンケーキみたいな感じ。俺の家のパンケーキね(ジャム塗ってるヤツ)。
 (ジャムって美味しいよね)
 (俺は結局ブルーベリーだったなぁ)
 (色が良い、ブルーベリーは面構えが良い)
 (イチゴジャムとか正直幼稚園児用だと思っている)
 (ブルーベリーはレベルが高い)
 (マーマレード? マーマレードはママという言葉が付いているから子供っぽい)
 (でもあの苦み……なかなかやりますな、初段は合格ということにしてあげましょう)
 (でもブルーベリーの前では無力)
 (タケノコ)
 (タケノコのジャムって無いよな)
 (和の怠慢?)
 めっちゃ寝た。
 朝起きると、もう惑星Fの上空まで来ていた。
 俺は全員と確認するために呼び出しボタンを押して、中央のスペースで待っていると、寧々とリリとナナロロがすぐにやって来て、偉いなぁ、小学校じゃこうはいかないだろうなと思った。
「それではここからタイムリープを行なうことにする」
 寧々が万雷の拍手を送ってくれて、リリは適当に手を叩き、ナナロロはふんぞり返るだけで無反応だった。
 まあそんな三者三様が素敵やんと思いながら、俺は、
「タイムリープの数値を決定する部屋は操縦席とはまた別に設置されていて、いわゆるタイムリープ室で確認するわけだが、まず俺が数値を決めて、寧々、リリ、ナナロロの順で確認し、最後に俺が確認するとする」
 と言うとナナロロが鼻で笑ってからこう言った。
「確認強迫かよ」
 俺はムッとしたんだけども、そんなことで怒るのはリーダーらしくないので、まあまあと心の中で唱えていると、リリが、
「確かにそれは確認強迫のきらいがあるな。そのボケたがりのところも含めて、譲は一回精神科に行ったほうがいいかもしれないな。まあ宇宙関係者には多いって聞くけどなぁ」
 (まあまあ)
 (まあまあ)
 (あまあまにすると、ジャムになってくるな)
 (ジャムセッションって最初聞いた時、甘いのかなって思ったよね)
 寧々は軽く挙手しながら、
「でも譲のボケたがりは昔からなので大丈夫ですよ!」
 リリはハッと冷たく笑ってから、
「じゃあただの確認強迫だけだ、でもそれが厄介だからな、ちゃんと受診したほうがいいぞ」
 (まあまあ)
 (まあまあ)
 (どうどう、いや俺馬じゃねぇし)
 さらにリリが、
「確認強迫って大変だからなぁー」
 と言ったところで俺は叫んでいた。気付いたら叫んでいた。
「じゃあいいよ! 最後の確認はしないよ!」
 リリが手を叩いて笑いながら、
「別にそんなマジになんなよー、アタシらは同じ目標へ向かって働く運命共同体だろーっ」
「最後の確認はしないから確認強迫って言うな!」
「分かった分かった……耐えられたらなっ」
 と言ってリリが吹き出すと、それに合わせてナナロロも吹き出して笑った。
 寧々もちょっと笑いをこらえているような顔をしながら、
「まあまあ、譲はイジられたほうが面白いところもあるからぁっ」
 と多分そんなフォローになっていないフォローを言ってきて、もういいっ(プイッ)と思いながら俺はできるだけ冷静を装って、
「じゃあタイムリープの数値を決めるから、ちゃんとした数字になっているか確認してくれよ。二百五十年前って話だからな、マイナス250だぞ」
 と言いながらタイムリープ室に入って、数値を設定してからまた中央の操縦席もあるスペースに顔出して、
「寧々、リリ、ナナロロの順番で確認してくれ」
 と言いながら俺は操縦席のほうへ行った。
 何故タイムリープを設定する場所と操縦席が別なのか、一緒なら最後の確認し放題だったのに。
 でも別になった理由も分かる。何故ならタイムリープする宇宙船はこれだけなので、その機能を後付けで元からある宇宙船に付け足したような形なので、そこが別々なのだ。
 俺が造船人間なら最初から一体化した、しっかりとした丈夫な宇宙船を作るが、なんせ早くレアメタルの採取がしたかったらしく、そういったとってつけたような形式になっているのだ。
 (のだ、の鬼レンチャンかましてしまって申し訳)
 でもなぁ、でもなぁ人間になってしまうが、そういう横着するところ、本当に良くないと思う。ちゃんと宇宙船を一から作るべきだと思う。本来なら。
 結局危険は冒険者に丸投げというか、マジで世界政府にちょっと不信感はある。全く無いと言えば確実に嘘になる。確嘘だよ。
 だからってこっちは船長としての技能を習得するだけだから。あーぁ、最後の確認したかったなぁ。
 何なんだ、確認強迫って、専門用語出しやがって、みんな笑う感じだし。あらヤだ男性一人って不安ね(俺の可愛い一面が出ちゃう)。 
 まあそんな脳内はいいとして、寧々もリリもナナロロも確認したところで、俺は発進の動作を行なった。
 さて、あとは待つだけでタイムリープできるはず。
 ちなみに俺たち四人はタイムリープの事前動作確認を地球とも惑星Fとも違う惑星でそれぞれ一度経験している。
 その時は宇宙船の技術者立ち合いの元だった(だからこそ別の惑星でタイムリープしてもパラレルワールドには行かず、元の、同じ世界線の地球に戻ってこれるということが分かっている)。
 だからそんな緊張をしていないつもりだったのだが、何だかまあ長く感じる。
 タイムリープ中は宇宙船の外が光っている。
 その光が事前動作確認の時よりもずっとずっと長いような気がする。
 まあ待っている時って長く感じるモノだからな、と思っているのだが、寧々がすごく不安そうな表情になってきたので、俺は、
「大丈夫か、寧々。やっぱり緊張すると長く感じるもんだな」
 と言うと、寧々はぶるぶる震えながら、
「とは言え、長過ぎじゃない?」
 と言ったところでリリが、
「今度は何強迫だよ! おい! ちゃんと選ばれたクルーなんだろっ? それとも何だ? もしかすると寧々は刺客ってヤツなんじゃないのか?」
 するとナナロロが、
「刺客という噂、本気にしないほうがいい。リリは陰謀論者か?」
 それに対してリリが、
「いやいやいるって噂だろ、タイムリープのことをよく思ってなくて、この宇宙船自体を抹消させたい勢力がいるってよぉ?」
 ナナロロは鼻で笑ってから、
「わたしは正直、それなら譲の冗談のほうが笑えますね」
 リリは少しムッとしながら、
「はぁ? マジでそういう反対派もいるって話だろ? 冗談とかじゃねぇから!」
 とちょっと険悪になってきたところで、俺は、
「まあまあ! 今は一緒に新作のおもちを考えないか?」
 と一ボケかますと、寧々が叫んだ。
「何かおかしいよ! 光が! 電撃みたいになってる!」
 俺もリリもナナロロも外を見ると、確かに事前動作確認の時は白い光だった光景が、電撃のようなモノがほとばしっていて、さらにはビリビリと聞いたことない音が鳴っていたのだ。
 さすがに違和感を抱いた俺はタイムリープ室に駆け込むと、なんとタイムリープするための数値がイジられていたのだ!
「マイナス250じゃない! マイナス5000になってる! どういうことだ! 今から修正は!」
 と俺が声を荒らげた刹那、外の光景はさっきまでの宇宙に戻った、が、明らかに惑星Fの見え方が違った。
 さっきまで宇宙から見下ろしていた惑星Fは緑緑しい星だったのに、今は海のような青しか見えない星になっていた。
 俺は急いで操縦席へ移って、燃料を確認すると、燃料はもうゼロに等しかった。
「ダメだ! とりあえず着陸して燃料を補給する!」
「どういうことだ!」
 リリが俺に迫るようにそう言うと、
「タイムリープの数値がイジられてマイナス250じゃなくなっていた! マイナス5000になっていた!」
「マイナス5000!」
 と寧々が断末魔のような声で叫んだ。
 俺は皆に伝える。
「すぐに着陸態勢に入る! 三人はその場で待機していてくれ!」
 Gは掛かるが、今の宇宙船にシートベルトのようなモノは要らない。
 だが、今の宇宙船にも必要なことがある。
 それが着陸するための技術だ。
 ある程度平地があれば、自動着陸も可能だが、この宇宙から見た惑星Fは海ばかりで、果たして着陸できるような場所はあるのか無いのか。
 それよりも何でマイナス5000になんてなっていたんだ。ちゃんとみんな確認したんじゃないのか?
 いやそんなことは今どうでもいい。今はちゃんと着陸すること。そのことに全力をかける。
 惑星Fの大気圏は突入終えて、今は惑星F内を飛行し、着陸できそうな場所を探す。
 だが、案の定、海ばかりで陸地が一切無い。
 リリが窓の外を見ながら叫ぶ。
「どうすんだよ! これ!」
 ナナロロの舌打ちが聞こえた。
 まさか急に俺たちの旅が終わってしまうのか。
 と思ったその時だった。
 寧々が、
「あそこ! 陸地がある!」
 すぐさまリリが、
「バカ! あそこは岩場だ! 宇宙船なんて止められるはずねぇだろ!」
 俺もそう思って素通りしたが、それ以降は岩場すらなくて。
 俺は意を決して、
「あの岩場に着陸する」
 と言うとリリが、
「無理だ! そもそも狭い! あんなところに着陸したとしてもすぐに傾いて海に落ちる!」
「大丈夫だ、機体を少し傾けて着陸し、突起のある部分に、もたれるように着陸すれば落ちることもないはず」
「そのあと発進できんのかよ!」
「このタイプの宇宙船なら多少なら大丈夫だ」
「そもそも着陸できるのかよ!」
「そこは任せてくれとしか言えないな」
 リリは「ひぃ!」と声を上げて以降、もう何も発さなくなった。
 俺は慎重に着陸態勢に入った。
 岩場に着陸なんて初めてだ。
 もしかしたら脆い場所かもしれない。でももうここを逃したら他に着陸できそうな場所も無くて。
 もうやるしかない。俺は船長だ。クルーの命を受け持っている。こんな簡単にともしびを消すようなことはしない。
 レバーを持つ手に力が入る。レバーって体に良いって言うけども、あんな血のところ、俺は食う気がしないな……いや今じゃない、それを考えるのは今じゃない。
 何()ナシで、マジみたいな感じでこんなことを考えてしまったんだ。ダメだ、ちょっとだけ気が動転している。
 これじゃいけない、集中する、マジで集中する、俺は船長なんだぞ、小難しい試練を越えてきたんだぞ(訓練のことを小難しいって言うな)。
 (お節介おばさんへの心の中での悪口みたいに言うな)
 (マジで)
「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 ……! 宇宙船はズドンと大きな音を立てたが、操縦席のパネルはちゃんと生きている状態だ。
 着陸と同時にちゃんと空気中の燃料を吸収し始めた。良かった。大丈夫なはず。
「着陸できたぞ!」
 俺がそう言うと、寧々が泣き声で、
「よがっだぁぁああああああ」
 と言い、ナナロロは妙に冷静そうに、
「まあ良かったか」
 と言い、リリはずっと黙っている。
 良かった、確かに良かったが、
「今言うべきことかどうかは分からないが、燃料の吸収が遅い。どうやら一気にタイムリープし過ぎたせいで宇宙船に不具合が起きているみたいだ。なんせ実験していない範囲でのタイムリープだったからな」
 と俺が言ったところですぐさまリリが叫んだ。
「大丈夫なのか!」
「今は大丈夫ということにしておこう。ただしこれから元の時間軸に戻るとしても、ちょっとずつ戻ったほうがいいかもしれない。一気にプラス5000は止めたほうがいいって話だ。まあ一度行った時代というか一度宇宙船が停泊した時代は宇宙船も覚えていて、慣れが生じて、少ない燃料でもいけるらしいが、今回に至っては全然停泊せず一気に通過してしまったらから、ちょっとずつ戻ったほうが安全だと思う」
 俺のその言葉にみんな同意したものの、リリは不安そうな声で、
「そっかぁ……」
 と呟いた。
 重い空気が流れているが、これだけは確認しなければいけないことがある。
「タイムリープ室で、確認、やったよな?」
 すると寧々が少し言いづらそうにこう言った。
「ゴメン、実は私、どこのモニターの数字を見ればいいか分からなかった……」
 するとすぐさまナナロロが、
「まあわたしもそうだったわけだが」
 と言ったところでリリも申し訳無さそうに、
「いや実際アタシもよく分かんなくてな……」
 ……じゃあ!
「俺が最後に確認すれば良かったじゃん! 確認強迫と言ってイジるなよ!」
 リリは頭を下げながら、
「それはマジでゴメン……えっ、でも、誰かイジったってこと……?」
 するとナナロロが、
「いや譲が設定ミスっていた可能性もある、つまりは」
 寧々がわなわな震えながら、
「譲ぅ~」
 と言い出したので俺はすぐに、
「いや俺はマイナス250にしたよ! 絶対に!」
 すると寧々が、
「じゃあこの宇宙船の元々の不具合?」
 リリが頭を抱えながら、
「マジでアタシがタイムリープ反対派になりそ……」
 と言うとナナロロが、
「それは同意だわ」
 と言った。
 でもまあ、
「起きたことは仕方ないし、燃料を補充してちょっとずつタイムリープしていくしかないな。幸い、水も食事も燃料さえ補充できれば自動でできるから」
 と自分で言っておいて、何だかどんどん不安になってきた。
 いや確認だ、こういう時こそ確認だ。
「寧々、リリ、ナナロロ、自分の部屋に戻って水や食事の機械がちゃんと使えるか確認してきてくれ」
 三人良い返事をして自分の部屋へ戻っていった。俺も確認しなければ。
 部屋に戻った俺はまずは水からチェックした。結局これが一番大切だから。
 水は出る、トイレもOK、シャワーも大丈夫みたいだ、熱湯もちゃんと出る、と思ったところで、リリの叫び声が聞こえた。
 俺はリリの元へ直行しようと部屋から出たところで寧々も部屋から出てきて、
「食事の機械が動かない!」
 と寧々が言うと、部屋から出てきたナナロロも、
「食事が作動しない……」
 とうなだれながら言って、つまりは、と思いながらリリの部屋をノックしてから入ると、リリが何度も何度も食事を作るための機械のボタンを押していた。
 俺と寧々とナナロロの姿を見るなり、リリが、
「寧々はメカニックでしょ! これ直してよ!」
 すると寧々は申し訳無さそうに、
「いや宇宙船の核と連動している機械だから多分、今は直せないかなぁ……」
「何だよ! ポンコツ!」
 とリリが声を荒らげた。
 多分俺の部屋のヤツもそうなんだろうなと思いつつ、
「リリ、同じクルーにポンコツという発言はいただけないな。気立ってるのは自分だけじゃない。ここは運命共同体としてポンコツと言ったことは謝ってほしい。そもそもリリだって分かってるはずだ。この食事の機械が宇宙船の内部と連動していることは」
 リリは唇を噛んでから、
「ゴメン……感情に任せて嫌なこと言った……」
 と頭を下げた。
 すぐさま寧々は、
「別にいいよ! そんな時もあるから!」
 と言った。
 まあ今起きていることを総合すると、
「宇宙船に不具合が生じたところも含めて、やっぱり戻るのはちょっとずつがマストだな。また一気に5000戻ったら、強く負荷が掛かってしまい、どんな不具合が起きるかどうか分からない。あとはそうだな。食事だけは現地調達というわけか、寧々、可食センサーみたいなモノは作れるか?」
 リリは小首を傾げながら、
「可食センサー?」
 と言ったので、俺の言い方じゃ確かに分かりづらいなと思って、
「何が食べられる食材か、食べられない食材か判定するようなセンサーを四人分作ることは可能か? 寧々」
 と言うと、寧々は瞳に炎を灯しながら、
「作れると思う! じゃあ待ってて!」
 と言ってその場をあとにした。
 リリはポカンと口を開け、ナナロロは、
「そんなん作れるのかよ、どこがポンコツだよ」
 と言うとリリは即座に、
「それはもう謝ったことだから!」
 と言った。
 さて、一応自分の部屋の機械もチェックはするとして、
「リリとナナロロはその場に待機していてくれ。体力を保つためにも無駄な運動は控えてほしい」
 リリは矢継ぎ早に、
「こんな時に動かないから!」
 と言って、ナナロロは静かに頷いた。
 俺は部屋に戻って食事の機械を押したがやはり動かなかった。
 さて、ここから食料だけは現地調達か。
 とは言え、水と燃料が補給できるだけまだマシと言える。
 まずは寧々の可食センサーが発明されることを待った。
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