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【07 高山地帯にも】
・
・【07 高山地帯にも】
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惑星F上空、また着陸できそうな場所を探しているが、正直難航している。
何故なら高山地帯にも動く植物がドームを作って住んでいるからだ。
なんとか無人島、というか魚のような形をした茶色い土地を見つけて、そこに宇宙船を着陸させた。
この無人島に動く植物がやって来なければ、それを願うだけだ。
食料調達も新しい時代は新しい時代でしたほうがいいということに四人で話し合った結果なって、今回は俺とリリ、寧々とナナロロのペアで周辺を移動船で飛ぶことにした。
何か異常があれば宇宙船にすぐ戻って来れる範囲で。
この辺りは小さな無人島がいっぱいあるようで、時折着陸しては、そこの地面や魚の原型を感じる箇所を削って、食糧調達している。
宇宙船から少し離れたところで、動く植物が船のようなモノに乗って、釣りをしていることを確認した。
俺はすぐにソイツらから離れようとしたんだけども、リリは道具なようなモノをしっかり使い出していることに興味津々で、ちょっと上空から近付いてその船の中を覗き込もうとしたその時だった。
「見てる! 見てる!」
それはリリの声ではなくて、明らかに動く植物の声だった。
何で……と俺は絶句してしまった。
何故なら今までは、こっちとは違う言語体系を発していたのに、今はどう考えてもこっちと同じ言葉を喋ったからだ。
「かみ! かみ! 見てる! 飛んでる!」
”かみ”という言葉は分からないけども、動く植物たちはリリを指差しながら、そう叫んだ。
リリは青ざめ、すぐに緊急回避といった感じに、上空へ大きく飛んでから、こっちへ戻って来た。
リリは俺と平行に飛行するなり、
「何でこっちの言葉喋ってるの!」
と言ったので、俺は自分の思った仮説を言うことにした。
「もしかしたら、リリが落としたメモから学んで、言葉を覚えたのかもしれない」
「そんなことあるぅ? そんな進化の仕方あるぅ?」
そう目を皿にしたリリ。
でも、
「そうとしか考えられない。発声する音まで一緒になるのは不可思議だけども、同じ意味の言葉を喋るというのはリリのメモから来ていると考えることが妥当だと思う」
「まさかアタシが落としたせいでこんなことに……確かに知らない言葉には発声の仕方とかも書いていたけども……」
肩を落としたリリ。
俺は落ち着いた、あくまで冷静な声で、
「でもこれは俺の仮説であって、そうだとは限った話じゃないから」
「でもそうだと思うよ……絶対そうじゃん……」
「まあ同じ言葉を使ったとて、こっちが不利になるわけでもないし。このまま宇宙船へ戻って逃げよう」
「そうだね……」
とリリは明らかに意気消沈した声で返事をして、俺と一緒に移動船へ戻っていった。
すると一足先に戻っていたのだろう、寧々とナナロロがいるのだが、何だか口論しているようだった。
寧々がナナロロへ、
「別にそれくらい大丈夫だったのに! ナナロロって本当短気だよね!」
「でもわたしは寧々が可哀想で……」
俺は移動船から降りてから、
「何の話だ?」
と聞くと、寧々が、
「ナナロロが動く植物を一体撃っちゃったんだよ!」
するとナナロロはコクンと頭を下げながら、
「それは真実だが、何故か動く植物がこっちと同じ言語を喋っていて、それで寧々のことを煽るようなことを言ったんだよ。だからカッとなって、つい撃ってしまったんだ……」
ナナロロは反省していることが火を見るよりも明らかだったので、俺はそのことを攻めることはせず、まずは何で同じ言語を喋っているのかの仮説を話した。
すると寧々は驚き、ナナロロは興味深そうに頷いた。
この話をする度に、リリが申し訳無さそうな表情をするが、まあそれは致し方ないと思って、俺は心を鬼にして話した。
みんな納得したみたいで、どうやらそんなおかしな仮説ではないみたいだ。
するとリリがこう言った。
「やっぱりタイムリープで戻ってさ、アタシのメモを探しに行こうよ」
でも俺は、
「現実的ではないな、何故ならタイムリープは年単位で移動するから、この日を狙ってということはできないから」
「それは知ってるけどもさぁ……」
と落ち込むような声を上げたリリ。
ナナロロはリリの肩を優しく叩きながら、
「まあこうなってしまったことは仕方ないじゃないか。わたしもカッとならずにするから、このままやり過ごそう」
寧々は同調しながら、
「そうだよね、とにかくやり過ごすことが一番だよ。それにリリのせいじゃないと思うよ。だってそうやって進化するなんて誰も思わないじゃない。メモ落としたくらいで」
俺も頷きながら、
「寧々の言う通りだ。リリもそんなに気に病む必要は無い」
するとリリが、
「じゃあそんな仮説言うなぁ!」
と言ったんだけども、それは本当にその通りだなと思って、俺は反省した。
でもここをうやむやにするとまた無駄に考えることが多くなると思って、ということもちゃんと伝えた。
それにリリは納得したようなコクンとし、
「それも分かってるよ……」
と俯いた。
さて、ナナロロが一発撃ったというところが少し気になるが、今のところ動く植物がこちらへ向かってきているということも無いので、また寧々と俺でアラーム装置を海に浮かせてきて、食事からの就寝となった。
俺はタイムリープ室で考える。
果たしてこのまま俺たちのことを動く植物は無視してくれるのだろうか。
それに”かみ”と言っていた意味が分からない。
いや意味が分からないほうがもはや正しいのだが、明らかにこっちの言葉を喋っているので”かみ”も何らかのこっちの言葉に違いない。
紙、つまりメモの人たちだ、ということだろうか、それとも神の可能性もある。言語を進化させた神のような存在という意味でもありえるか。
噛みはどうだろうか、噛んでしまえ、みたいな、攻撃的な意味だったかもしれない。
加味の可能性もある。いやそんなことを考え出したら眠れなくなるから、眠りやすいことを考えることにしよう。
(羊が一匹)
(羊が一匹)
(羊が一匹)
(これって、数を数えるんじゃなくて、一匹、一匹と同じ言葉を繰り返すことが寝やすくなるってことなんだよな)
(羊が一匹)(羊が一匹)(羊が一匹)(出た! 三連チャン!)
(いや出た三連チャンじゃなくて、大技が飛び出ましたよじゃなくて)
(こういうことを考えると眠れなくなるんだよな)
(タケノコ)
(Zzz)
いつの間にか俺は寝ていたようだ。
朝起きると、いつも通り、リリが早めに中央スペースにやって来て、出汁を飲んでいた。
俺も一緒に出汁を飲むことにした。
「リリ、こっちの味も美味しいぞ」
「それ昨日飲んだから」
「そっか、出汁ソムリエだな」
「全然そんなんじゃないけどもっ」
と優しく笑ってくれたリリ。
だいぶ良い感じだ、バンドも組めるかもしれない、バンドとお笑い両方やるほうのヤツ、やってくれるかもしれない。
俺はここはボケどきだなと思って、
「ソムリエって言ってしまえば何でもソムリエになるよな」
とまずジャブを打つと、そこは普通にスルーされてしまい、おやおやと思ってしまった。
リリはじゃじゃ馬ですなっ、と白髭オジサン余裕強キャラみたいなことを思いながら、その時間を過ごした。
寧々とナナロロはほぼ同時にやって来たので、多分目覚まし時計を同じ時間にセットしているんだと思う。それか同棲しているか。
寧々もナナロロも出汁を飲み始めて、出汁家族じゃんと思っていると(出汁だけで通じ合う家族のこと)、リリが、
「早く燃料溜めて元の世界に戻りたいね」
と言って、寧々も頷きながら、
「そうだねぇ、早く家族に会いたいもん」
と言って、でも俺たちは既に出汁家族なんだよなと思っていると、ナナロロが、
「まあなぁ……」
と何か含みのあるような返事をして、何だろうとは思った。
もしかすると俺たちと一緒にいることが楽し過ぎるのでは。
だとしたら俺はボケなければと思い、
「こんな出汁を味わう関係、出汁スト連中だよな、俺たち」
と言ってみると、全員無視する感じになり(あくまで無視する感じ、無視ではない、無視だと泣いちゃうから)、ふわっと俺の言葉は宙に溶け込んでいった。
(出汁も体に浸透して溶け込んでいっただけに)(全然泣いてないぜZ)(Zzz)
いかんいかん、現実逃避から寝てしまうところだった。
俺たちは移動船に乗って、海の魚を少々すくって時間を過ごし、ある程度燃料が溜まったところでまたタイムリープすることにした。
次の時代の上空、俺たちはみんな焦っていた。
何故なら、
「譲! 無人島が無い! どこもかしこも緑色というか! 動く植物たちが住んでる!」
と寧々が叫べば、リリは深い溜息をついてから、
「終わりだ……ついにどこも逃げ場が無くなってしまった……」
と絶望のような声を出し、ナナロロはハンドガンを整備しながら、
「どこか襲って一帯を空かせないとダメみたいだな」
俺はさすがにと思って、
「ナナロロ、それは最終手段だ」
と言いながらまた高山地帯に移動した。
高山地帯は至るところにドームがあり、どうやらその中で動く植物たちが住んでいるようだった。温室植物園みたいな感じ?
ドームの中に住んでいるということは、比較的高山地帯はまだ苦手なんだろう。
俺は高山地帯のドームからできるだけ遠い所に着陸した。
ドームは点在しているので、その中間ポジションといった感じ。
正直妥協の妥協だがもう仕方ない。
宇宙船は飛びながらでは燃料を溜めることはできない。
どこかに着陸しなければならないのだ。
でもその直後だった。
すぐさまドームからは動く植物たちが顔を出した。
その動く植物たちのサイズは今までで一番大きくなっていて、小学三年生くらいのサイズになっていた。
また、その動く植物たちは何か防寒具を着ているようだった。
最初に顔を出した動く植物たちは一旦戻っていったのだが、三分後には最初に顔を出した数とは比べ物にならないほどの動く植物たちが出てきて、この宇宙船へ向かって進軍し始めたのだ。
でもあの時と違うこともある。それは石器のような武器を持っていないということだ。丸腰で向かってきている。
これは何を意味しているのだろうか。それとも武器は隠し持っているのだろうか。
宇宙船に乗って飛んで逃げるという案もあったが、逃げた場所でも同じように狙われるのでは、という話になり、もうこの場に留まることにした。
ナナロロは勿論、寧々やリリもハンドガンの準備をしてから、移動船に乗って高い位置から動く植物を眺めている。
俺は宇宙船に残り、レーザーサーベルを持って待機している。
連絡は通信で行なっている。
上空から見ているナナロロいわく、間違いなくこの宇宙船を目指して進んできているという話だ。
「そろそろ撃つか」
リリがそう言ったが、俺はまだステイを選択した。
この武器を持っていないことが隠し持っているではなく、友好的な可能性があるからだ。
それに動く植物たちは宇宙船を取り囲むように進軍してきてはいない。
ちゃんと入り口の前に整列するように進路を通っている。
普通攻撃的ならば取り囲むはずだと俺は思う。
まるで対話しようとしているような意志を俺は感じていると、宇宙船の近くに来た動く植物たちが声を上げた。
「神様よ! よく来てくれました! この時代に!」
”かみ”は神様だったか、と思いながら、俺は一応ビームサーベルを携帯した状態で、宇宙船から出てくると、動く植物たちは万雷の拍手をした。
「四人の神様よ! わたしたちと対話をしてくれませんか!」
そう叫んだ一番重装備そうな防寒具を着た多分リーダーだと思われる動く植物。
俺は指示を出して、移動船に乗っているナナロロ以外の寧々とリリをこっちに呼び寄せた。ナナロロを上空に残したのは保険だ。
寧々とリリが移動船から降りて、俺の近くに立つと、また拍手が巻き起こった。
多分リーダーだと思われる動く植物が一体で、触手をバンザイしながらこちらへ近付いてきて、
「文明の神様よ! これから我々はおもてなしの品を運んできます!」
と言うと、軍がそのリーダーから全員離れていき、またドームのほうへ戻っていった。
リーダーを一体だけで残すことが友好の印ということなのだろうか。
俺や寧々やリリは訳も分からず、その場でずっと突っ立っていると、リーダーの動く植物がこう言った。
「我々は神様のノートによって進化しました。そのお礼がしたくて今から木の実などを献上します。よろしければ受け取ってください」
そう言って一礼したリーダーの動く植物。
俺も何か言わなければと思い、
「俺がこの宇宙船のリーダーである譲です。貴方がたに敵対意識が無いことは分かりました。木の実などはこちらの可食センサーという食べられるかどうかの機械を通させていただきますが、有難く受け取らせて頂きます」
「ありがとうございます。さすが神様だ」
と言って頭を下げたリーダーの動く植物。
ナナロロから連絡が入り、他の動く植物たちがリュックサックを背負って、またこっちへ向かっているという情報が入った。
どうやら本当に木の実などを献上してくれるみたいだ。
その動く植物たちも来て、リーダーの近くにリュックサックを置くと、すぐさま離れて、こちらを何だかドキドキしているような瞳で見つめてきている。
リーダーからリュックサックを手渡しされると、他の動く植物たちが拍手をした。
中を開けると中にはぎっしり赤い木の実、イチゴのような実が入っていて、可食センサーを通すとちゃんと食べられると出た。
それからどんどんリュックサックをもらって、その度に拍手が起きて、中にはいろんな果物のような実が入っていて、全て食べられるようだった。
俺は一礼してから、
「ありがとうございます。貴方がたが望むことはありますか? 勿論それらを全て叶えられるわけではないのですが」
と言うと、リーダーの動く植物が、
「いえいえ、神様に望むようなことはありません。我々は神様にお礼ができればそれだけで嬉しいんです」
その後、リーダーの動く植物と共に、動く植物たちはドームの中へ戻っていった。
俺と寧々は一応センサー装置を設置してから、全員で宇宙船に戻り、木の実のチェックをもう一度し始めた。
寧々が、
「本当に食べられるみたいだし、これからずっと友好的ってこと? じゃあもう楽勝じゃん!」
リリも安堵の表情を浮かべながら、
「むしろ結果オーライだったんだな……」
ナナロロもうんうん頷きながら、
「まあ久しぶりに木の実を食べていくか」
と俺も一応は安心しているのだが、不安に思うところもあって。
次のタイムリープは当然二百五十年後に進むことになる。あんまりダラダラもしたくないし、そうしてきたわけだから。
ただ次の世代になった時、果たして同じ考えを持っていてくれるのか、そのことが脳内で渦を巻いて。
でも考えても仕方ないことは考えないことにして、今はその木の実の美味しさを堪能した。
(木の実、旨っ)
(木の実ガチ勢になろうかな)
(でもタケノコの有難さも忘れられない)
(タケノコには手紙を書いて、木の実にはメールを送ろうかな)
(木の実のラジオにネタメールを送る職人になろうかな)
(木の実あるある、一つだけあります、赤いと有難い)
(木の実あるある、ブルーベリーは生食するほどじゃない)
(木の実あるある、甘酸っぱいの酸っぱいが分かるお年頃になりました)
(木の実あるある、キイチゴの異形さにヒく)
(木の実あるある、結局ビワ)
(まあこんなところか、結構あったなぁ、木の実あるある、これマジで正式にラジオ始まるかもな)
(俺も放送作家として参加したいなぁ)
(有名放送作家になって、裏垢稼働させたいなぁ)
(裏垢スクショされちゃった、とか言いたいなぁ)
(と言いつつタケノコに手紙を送って、手書きのファンレターだよね)
(あーぁ、俺も手書きのファンレターに五年越しでお返事を書く有名漫画家になりたいなぁ)
(有名漫画家になって、裏垢稼働させたいなぁ)
(偏った食生活の話ばかりしてフォロワーから心配されたいなぁ)
(というか今、俺、木の実ばっか食ってないか?)
(偏った食生活やってるじゃん、これはもうフォロワーから心配されているわ、今)
(俺のフォロワー、多分全員妖精だから俺の今の様子を千里眼で見てるわ)
(俺はいつもそう思っている)
(妖精のフォロワーが千里眼で俺のこと監視していると思ってる)
(そう思うと、身も正せるじゃないか)
(いいティップスだよな、妖精のフォローのために今日も頑張っているよ!)
(じゃーん! 今日は木の実パーティ! めちゃくちゃ美味しい木の実を食べてるよ!)
(妖精は何を食べてるかな、なんやかんやで宅配ピザかな?)
(……宅配ピザ食べたくなってきたな……悪手だったな、これ……)(本当の悪手は木の実にオナラをかけること)
(だからまだまだ大丈夫だぜ!)
(タケノコ)
そんなことを考えながら、過ごした。
その後も動く植物がこちらに干渉してくることはなく、燃料も溜まったところでタイムリープした。
・【07 高山地帯にも】
・
惑星F上空、また着陸できそうな場所を探しているが、正直難航している。
何故なら高山地帯にも動く植物がドームを作って住んでいるからだ。
なんとか無人島、というか魚のような形をした茶色い土地を見つけて、そこに宇宙船を着陸させた。
この無人島に動く植物がやって来なければ、それを願うだけだ。
食料調達も新しい時代は新しい時代でしたほうがいいということに四人で話し合った結果なって、今回は俺とリリ、寧々とナナロロのペアで周辺を移動船で飛ぶことにした。
何か異常があれば宇宙船にすぐ戻って来れる範囲で。
この辺りは小さな無人島がいっぱいあるようで、時折着陸しては、そこの地面や魚の原型を感じる箇所を削って、食糧調達している。
宇宙船から少し離れたところで、動く植物が船のようなモノに乗って、釣りをしていることを確認した。
俺はすぐにソイツらから離れようとしたんだけども、リリは道具なようなモノをしっかり使い出していることに興味津々で、ちょっと上空から近付いてその船の中を覗き込もうとしたその時だった。
「見てる! 見てる!」
それはリリの声ではなくて、明らかに動く植物の声だった。
何で……と俺は絶句してしまった。
何故なら今までは、こっちとは違う言語体系を発していたのに、今はどう考えてもこっちと同じ言葉を喋ったからだ。
「かみ! かみ! 見てる! 飛んでる!」
”かみ”という言葉は分からないけども、動く植物たちはリリを指差しながら、そう叫んだ。
リリは青ざめ、すぐに緊急回避といった感じに、上空へ大きく飛んでから、こっちへ戻って来た。
リリは俺と平行に飛行するなり、
「何でこっちの言葉喋ってるの!」
と言ったので、俺は自分の思った仮説を言うことにした。
「もしかしたら、リリが落としたメモから学んで、言葉を覚えたのかもしれない」
「そんなことあるぅ? そんな進化の仕方あるぅ?」
そう目を皿にしたリリ。
でも、
「そうとしか考えられない。発声する音まで一緒になるのは不可思議だけども、同じ意味の言葉を喋るというのはリリのメモから来ていると考えることが妥当だと思う」
「まさかアタシが落としたせいでこんなことに……確かに知らない言葉には発声の仕方とかも書いていたけども……」
肩を落としたリリ。
俺は落ち着いた、あくまで冷静な声で、
「でもこれは俺の仮説であって、そうだとは限った話じゃないから」
「でもそうだと思うよ……絶対そうじゃん……」
「まあ同じ言葉を使ったとて、こっちが不利になるわけでもないし。このまま宇宙船へ戻って逃げよう」
「そうだね……」
とリリは明らかに意気消沈した声で返事をして、俺と一緒に移動船へ戻っていった。
すると一足先に戻っていたのだろう、寧々とナナロロがいるのだが、何だか口論しているようだった。
寧々がナナロロへ、
「別にそれくらい大丈夫だったのに! ナナロロって本当短気だよね!」
「でもわたしは寧々が可哀想で……」
俺は移動船から降りてから、
「何の話だ?」
と聞くと、寧々が、
「ナナロロが動く植物を一体撃っちゃったんだよ!」
するとナナロロはコクンと頭を下げながら、
「それは真実だが、何故か動く植物がこっちと同じ言語を喋っていて、それで寧々のことを煽るようなことを言ったんだよ。だからカッとなって、つい撃ってしまったんだ……」
ナナロロは反省していることが火を見るよりも明らかだったので、俺はそのことを攻めることはせず、まずは何で同じ言語を喋っているのかの仮説を話した。
すると寧々は驚き、ナナロロは興味深そうに頷いた。
この話をする度に、リリが申し訳無さそうな表情をするが、まあそれは致し方ないと思って、俺は心を鬼にして話した。
みんな納得したみたいで、どうやらそんなおかしな仮説ではないみたいだ。
するとリリがこう言った。
「やっぱりタイムリープで戻ってさ、アタシのメモを探しに行こうよ」
でも俺は、
「現実的ではないな、何故ならタイムリープは年単位で移動するから、この日を狙ってということはできないから」
「それは知ってるけどもさぁ……」
と落ち込むような声を上げたリリ。
ナナロロはリリの肩を優しく叩きながら、
「まあこうなってしまったことは仕方ないじゃないか。わたしもカッとならずにするから、このままやり過ごそう」
寧々は同調しながら、
「そうだよね、とにかくやり過ごすことが一番だよ。それにリリのせいじゃないと思うよ。だってそうやって進化するなんて誰も思わないじゃない。メモ落としたくらいで」
俺も頷きながら、
「寧々の言う通りだ。リリもそんなに気に病む必要は無い」
するとリリが、
「じゃあそんな仮説言うなぁ!」
と言ったんだけども、それは本当にその通りだなと思って、俺は反省した。
でもここをうやむやにするとまた無駄に考えることが多くなると思って、ということもちゃんと伝えた。
それにリリは納得したようなコクンとし、
「それも分かってるよ……」
と俯いた。
さて、ナナロロが一発撃ったというところが少し気になるが、今のところ動く植物がこちらへ向かってきているということも無いので、また寧々と俺でアラーム装置を海に浮かせてきて、食事からの就寝となった。
俺はタイムリープ室で考える。
果たしてこのまま俺たちのことを動く植物は無視してくれるのだろうか。
それに”かみ”と言っていた意味が分からない。
いや意味が分からないほうがもはや正しいのだが、明らかにこっちの言葉を喋っているので”かみ”も何らかのこっちの言葉に違いない。
紙、つまりメモの人たちだ、ということだろうか、それとも神の可能性もある。言語を進化させた神のような存在という意味でもありえるか。
噛みはどうだろうか、噛んでしまえ、みたいな、攻撃的な意味だったかもしれない。
加味の可能性もある。いやそんなことを考え出したら眠れなくなるから、眠りやすいことを考えることにしよう。
(羊が一匹)
(羊が一匹)
(羊が一匹)
(これって、数を数えるんじゃなくて、一匹、一匹と同じ言葉を繰り返すことが寝やすくなるってことなんだよな)
(羊が一匹)(羊が一匹)(羊が一匹)(出た! 三連チャン!)
(いや出た三連チャンじゃなくて、大技が飛び出ましたよじゃなくて)
(こういうことを考えると眠れなくなるんだよな)
(タケノコ)
(Zzz)
いつの間にか俺は寝ていたようだ。
朝起きると、いつも通り、リリが早めに中央スペースにやって来て、出汁を飲んでいた。
俺も一緒に出汁を飲むことにした。
「リリ、こっちの味も美味しいぞ」
「それ昨日飲んだから」
「そっか、出汁ソムリエだな」
「全然そんなんじゃないけどもっ」
と優しく笑ってくれたリリ。
だいぶ良い感じだ、バンドも組めるかもしれない、バンドとお笑い両方やるほうのヤツ、やってくれるかもしれない。
俺はここはボケどきだなと思って、
「ソムリエって言ってしまえば何でもソムリエになるよな」
とまずジャブを打つと、そこは普通にスルーされてしまい、おやおやと思ってしまった。
リリはじゃじゃ馬ですなっ、と白髭オジサン余裕強キャラみたいなことを思いながら、その時間を過ごした。
寧々とナナロロはほぼ同時にやって来たので、多分目覚まし時計を同じ時間にセットしているんだと思う。それか同棲しているか。
寧々もナナロロも出汁を飲み始めて、出汁家族じゃんと思っていると(出汁だけで通じ合う家族のこと)、リリが、
「早く燃料溜めて元の世界に戻りたいね」
と言って、寧々も頷きながら、
「そうだねぇ、早く家族に会いたいもん」
と言って、でも俺たちは既に出汁家族なんだよなと思っていると、ナナロロが、
「まあなぁ……」
と何か含みのあるような返事をして、何だろうとは思った。
もしかすると俺たちと一緒にいることが楽し過ぎるのでは。
だとしたら俺はボケなければと思い、
「こんな出汁を味わう関係、出汁スト連中だよな、俺たち」
と言ってみると、全員無視する感じになり(あくまで無視する感じ、無視ではない、無視だと泣いちゃうから)、ふわっと俺の言葉は宙に溶け込んでいった。
(出汁も体に浸透して溶け込んでいっただけに)(全然泣いてないぜZ)(Zzz)
いかんいかん、現実逃避から寝てしまうところだった。
俺たちは移動船に乗って、海の魚を少々すくって時間を過ごし、ある程度燃料が溜まったところでまたタイムリープすることにした。
次の時代の上空、俺たちはみんな焦っていた。
何故なら、
「譲! 無人島が無い! どこもかしこも緑色というか! 動く植物たちが住んでる!」
と寧々が叫べば、リリは深い溜息をついてから、
「終わりだ……ついにどこも逃げ場が無くなってしまった……」
と絶望のような声を出し、ナナロロはハンドガンを整備しながら、
「どこか襲って一帯を空かせないとダメみたいだな」
俺はさすがにと思って、
「ナナロロ、それは最終手段だ」
と言いながらまた高山地帯に移動した。
高山地帯は至るところにドームがあり、どうやらその中で動く植物たちが住んでいるようだった。温室植物園みたいな感じ?
ドームの中に住んでいるということは、比較的高山地帯はまだ苦手なんだろう。
俺は高山地帯のドームからできるだけ遠い所に着陸した。
ドームは点在しているので、その中間ポジションといった感じ。
正直妥協の妥協だがもう仕方ない。
宇宙船は飛びながらでは燃料を溜めることはできない。
どこかに着陸しなければならないのだ。
でもその直後だった。
すぐさまドームからは動く植物たちが顔を出した。
その動く植物たちのサイズは今までで一番大きくなっていて、小学三年生くらいのサイズになっていた。
また、その動く植物たちは何か防寒具を着ているようだった。
最初に顔を出した動く植物たちは一旦戻っていったのだが、三分後には最初に顔を出した数とは比べ物にならないほどの動く植物たちが出てきて、この宇宙船へ向かって進軍し始めたのだ。
でもあの時と違うこともある。それは石器のような武器を持っていないということだ。丸腰で向かってきている。
これは何を意味しているのだろうか。それとも武器は隠し持っているのだろうか。
宇宙船に乗って飛んで逃げるという案もあったが、逃げた場所でも同じように狙われるのでは、という話になり、もうこの場に留まることにした。
ナナロロは勿論、寧々やリリもハンドガンの準備をしてから、移動船に乗って高い位置から動く植物を眺めている。
俺は宇宙船に残り、レーザーサーベルを持って待機している。
連絡は通信で行なっている。
上空から見ているナナロロいわく、間違いなくこの宇宙船を目指して進んできているという話だ。
「そろそろ撃つか」
リリがそう言ったが、俺はまだステイを選択した。
この武器を持っていないことが隠し持っているではなく、友好的な可能性があるからだ。
それに動く植物たちは宇宙船を取り囲むように進軍してきてはいない。
ちゃんと入り口の前に整列するように進路を通っている。
普通攻撃的ならば取り囲むはずだと俺は思う。
まるで対話しようとしているような意志を俺は感じていると、宇宙船の近くに来た動く植物たちが声を上げた。
「神様よ! よく来てくれました! この時代に!」
”かみ”は神様だったか、と思いながら、俺は一応ビームサーベルを携帯した状態で、宇宙船から出てくると、動く植物たちは万雷の拍手をした。
「四人の神様よ! わたしたちと対話をしてくれませんか!」
そう叫んだ一番重装備そうな防寒具を着た多分リーダーだと思われる動く植物。
俺は指示を出して、移動船に乗っているナナロロ以外の寧々とリリをこっちに呼び寄せた。ナナロロを上空に残したのは保険だ。
寧々とリリが移動船から降りて、俺の近くに立つと、また拍手が巻き起こった。
多分リーダーだと思われる動く植物が一体で、触手をバンザイしながらこちらへ近付いてきて、
「文明の神様よ! これから我々はおもてなしの品を運んできます!」
と言うと、軍がそのリーダーから全員離れていき、またドームのほうへ戻っていった。
リーダーを一体だけで残すことが友好の印ということなのだろうか。
俺や寧々やリリは訳も分からず、その場でずっと突っ立っていると、リーダーの動く植物がこう言った。
「我々は神様のノートによって進化しました。そのお礼がしたくて今から木の実などを献上します。よろしければ受け取ってください」
そう言って一礼したリーダーの動く植物。
俺も何か言わなければと思い、
「俺がこの宇宙船のリーダーである譲です。貴方がたに敵対意識が無いことは分かりました。木の実などはこちらの可食センサーという食べられるかどうかの機械を通させていただきますが、有難く受け取らせて頂きます」
「ありがとうございます。さすが神様だ」
と言って頭を下げたリーダーの動く植物。
ナナロロから連絡が入り、他の動く植物たちがリュックサックを背負って、またこっちへ向かっているという情報が入った。
どうやら本当に木の実などを献上してくれるみたいだ。
その動く植物たちも来て、リーダーの近くにリュックサックを置くと、すぐさま離れて、こちらを何だかドキドキしているような瞳で見つめてきている。
リーダーからリュックサックを手渡しされると、他の動く植物たちが拍手をした。
中を開けると中にはぎっしり赤い木の実、イチゴのような実が入っていて、可食センサーを通すとちゃんと食べられると出た。
それからどんどんリュックサックをもらって、その度に拍手が起きて、中にはいろんな果物のような実が入っていて、全て食べられるようだった。
俺は一礼してから、
「ありがとうございます。貴方がたが望むことはありますか? 勿論それらを全て叶えられるわけではないのですが」
と言うと、リーダーの動く植物が、
「いえいえ、神様に望むようなことはありません。我々は神様にお礼ができればそれだけで嬉しいんです」
その後、リーダーの動く植物と共に、動く植物たちはドームの中へ戻っていった。
俺と寧々は一応センサー装置を設置してから、全員で宇宙船に戻り、木の実のチェックをもう一度し始めた。
寧々が、
「本当に食べられるみたいだし、これからずっと友好的ってこと? じゃあもう楽勝じゃん!」
リリも安堵の表情を浮かべながら、
「むしろ結果オーライだったんだな……」
ナナロロもうんうん頷きながら、
「まあ久しぶりに木の実を食べていくか」
と俺も一応は安心しているのだが、不安に思うところもあって。
次のタイムリープは当然二百五十年後に進むことになる。あんまりダラダラもしたくないし、そうしてきたわけだから。
ただ次の世代になった時、果たして同じ考えを持っていてくれるのか、そのことが脳内で渦を巻いて。
でも考えても仕方ないことは考えないことにして、今はその木の実の美味しさを堪能した。
(木の実、旨っ)
(木の実ガチ勢になろうかな)
(でもタケノコの有難さも忘れられない)
(タケノコには手紙を書いて、木の実にはメールを送ろうかな)
(木の実のラジオにネタメールを送る職人になろうかな)
(木の実あるある、一つだけあります、赤いと有難い)
(木の実あるある、ブルーベリーは生食するほどじゃない)
(木の実あるある、甘酸っぱいの酸っぱいが分かるお年頃になりました)
(木の実あるある、キイチゴの異形さにヒく)
(木の実あるある、結局ビワ)
(まあこんなところか、結構あったなぁ、木の実あるある、これマジで正式にラジオ始まるかもな)
(俺も放送作家として参加したいなぁ)
(有名放送作家になって、裏垢稼働させたいなぁ)
(裏垢スクショされちゃった、とか言いたいなぁ)
(と言いつつタケノコに手紙を送って、手書きのファンレターだよね)
(あーぁ、俺も手書きのファンレターに五年越しでお返事を書く有名漫画家になりたいなぁ)
(有名漫画家になって、裏垢稼働させたいなぁ)
(偏った食生活の話ばかりしてフォロワーから心配されたいなぁ)
(というか今、俺、木の実ばっか食ってないか?)
(偏った食生活やってるじゃん、これはもうフォロワーから心配されているわ、今)
(俺のフォロワー、多分全員妖精だから俺の今の様子を千里眼で見てるわ)
(俺はいつもそう思っている)
(妖精のフォロワーが千里眼で俺のこと監視していると思ってる)
(そう思うと、身も正せるじゃないか)
(いいティップスだよな、妖精のフォローのために今日も頑張っているよ!)
(じゃーん! 今日は木の実パーティ! めちゃくちゃ美味しい木の実を食べてるよ!)
(妖精は何を食べてるかな、なんやかんやで宅配ピザかな?)
(……宅配ピザ食べたくなってきたな……悪手だったな、これ……)(本当の悪手は木の実にオナラをかけること)
(だからまだまだ大丈夫だぜ!)
(タケノコ)
そんなことを考えながら、過ごした。
その後も動く植物がこちらに干渉してくることはなく、燃料も溜まったところでタイムリープした。
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