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【14 大きな怪物】
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・【14 大きな怪物】
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回廊を抜けると、また大きな部屋に繋がっていた。
また霧が出てきている。
後ろを振り返ると、やっぱり今来ていたはずの回廊が無く、霧に包まれている状態。
でももうこんな状況には慣れた。
きっと怪物が出てきて、それをかわすだけだ、と思っていると、すぐに僕とリーエの目の前にその怪物が現れた。
ただし、その怪物は今までの二メートルくらいの怪物ではなく、五メートルはあるような、大きな大きな怪物だった。
大きい分、一度に進む一歩がデカく、相対的にスピードが速い。
さらに鈍器も振り下ろす感じではなくて、薙ぎ払うように、屈んでから横に殴るので、攻撃の範囲が広い。
「リーエ、大丈夫か! 動けるっ?」
「勿論、今回は呪われていないよ!」
じゃあもうこの勝負は分かった。
どこかにもう一体いて、それを相打ちさせればいいんだ。
ただ薙ぎ払う時、床をこするように振るので、しゃがんでかわすことはできない。
だからもしかしたら寸前で一歩前に出て、鈍器の範囲じゃなくて、腕の範囲に入らないといけないかもしれない。
だけどもそれはまず怪物を二体、目視してからだ。
僕とリーエは一緒に逃げ始めた。
霧は行った場所の霧が晴れるようになっていて、まずこの大きな部屋の霧が全部晴れるように走り回った。
すると、この部屋の全貌が分かった。その時に絶望した。
なんと、この部屋には大きな怪物が一体しかいなかったからだ。
同士討ちを狙えない、そう分かったその時、心臓の脈拍が明らかに上がってきた。
緊張と恐怖、怪物は僕とリーエをまとめて殴ろうと、近付いてきてはバンバン鈍器を振り回す。
僕とリーエは逃げ惑うだけで何もできない。
体格差もあるし、きっと足にしがみついたとて、止められないだろうし。
周りを見渡しても、道具になるような、ヒントになりそうなモノも何も無い、円状の部屋。
こんなこと今まで無かったのに、と思ったけども、あくまで僕はこの世界がクリアできるものだと思い込んでいただけなんだと分かった。
僕とリーエはこの怪物に殴られて終わるだけなんだ、そう思ったその時に考えたことは、なんとかリーエだけは助け出したいと思った。
「リーエ、あくまでこの世界は僕を倒そうとしているだけだから! 僕がこの怪物の攻撃を受ける! そうしたらきっとリーエは無事で終わるはずだ!」
「そんな! そんなのはダメだよ!」
「リーエ! リーエなら僕の気持ち、分かっているだろう! 僕はリーエのことを大切に思っている! だから僕がこの攻撃を受けて終わらせる!」
「ダメだって! 死んじゃうよ! こんな攻撃喰らったらひとたまりもないよ!」
「でも文字の謎解きの時だって、僕を、僕の写真をどうにかしようとしていたじゃないか! だから僕が死ねばこの世界は終わるんだよ! きっとそうすればリーエも案内人じゃなくて、この世界から出られるよ!」
「ダメだって! そんなことは絶対させないから!」
そう言ってリーエは僕と怪物の間に立った。
「リーエ!」
そう言って僕はリーエの肩を掴んでどかそうとしたが、リーエはビクともしない。
そりゃ僕よりも体格がいいけども、それ以上に何だか、妙な硬さを感じた。
「ヒロ、命令して、きっとアタシはできるはず」
「じゃあ命令だ! 僕が死んで終わらせる!」
「それじゃない! そうじゃない!」
怪物はどんどん僕とリーエに近付いてくる。
僕は脳内をフル回転させる。
きっとリーエのこれがヒントなんだ、どこかに答えがあるんだ。
僕が死ぬことは間違いで、リーエが闘うことが正解なんだ。
でもリーエが闘うってどうやって?
体格差は僕とリーエの比じゃない、あの怪物からしたら僕もリーエも小人だ。
何か武器が無いと闘えない。ノコギリでも持ってくれば良かった。
いやあんなノコギリよりも、もっと鋭利な武器があれば……鋭利? 鋭い?
そうか、リーエの能力は通じ合うじゃないんだ!
「リーエ! 爪を鋭くして!」
「おっ、いいねぇ~、いいねぇ~」
こんな緊張感のある場面ではありえないほど、柔らかい声を出したリーエが手を挙げると、その手の爪はナイフのように尖くなった。
「アタシは鋭い! だから刺す!」
リーエは自分の体を弾丸のようにして怪物に飛び込み、そのまま怪物のスネを貫いた。
すると怪物はその場に前のめりに倒れ込み、リーエは笑いながら、
「シャキ~ン!」
と言ってから、怪物の背中の上に立ち、心臓らしき場所に爪を刺した。
すると怪物は幻だったかのように半透明になり、そのまま消えていった。
どこからともなく、また階段が出現し、ここはこれでクリアというわけか。
僕はリーエを見ながら、
「リーエは、鋭いだったんだね。通じ合っていると思ったら勘が鋭かったというわけか。そしてそのリーエという名前も逆にするとエーリ、鋭利だったんだね」
「逆にするというか、頭を捻るとね」
そう言ったリーエの爪はいつの間にかいつもの人間の爪に戻っていた。
「いこうか、ヒロ、もう分かったはずだよね。物事は考えることが大切ということを」
「そうだね、どんな時も思考を止めないということが必要なんだね」
僕とリーエは階段を上がった。
・【14 大きな怪物】
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回廊を抜けると、また大きな部屋に繋がっていた。
また霧が出てきている。
後ろを振り返ると、やっぱり今来ていたはずの回廊が無く、霧に包まれている状態。
でももうこんな状況には慣れた。
きっと怪物が出てきて、それをかわすだけだ、と思っていると、すぐに僕とリーエの目の前にその怪物が現れた。
ただし、その怪物は今までの二メートルくらいの怪物ではなく、五メートルはあるような、大きな大きな怪物だった。
大きい分、一度に進む一歩がデカく、相対的にスピードが速い。
さらに鈍器も振り下ろす感じではなくて、薙ぎ払うように、屈んでから横に殴るので、攻撃の範囲が広い。
「リーエ、大丈夫か! 動けるっ?」
「勿論、今回は呪われていないよ!」
じゃあもうこの勝負は分かった。
どこかにもう一体いて、それを相打ちさせればいいんだ。
ただ薙ぎ払う時、床をこするように振るので、しゃがんでかわすことはできない。
だからもしかしたら寸前で一歩前に出て、鈍器の範囲じゃなくて、腕の範囲に入らないといけないかもしれない。
だけどもそれはまず怪物を二体、目視してからだ。
僕とリーエは一緒に逃げ始めた。
霧は行った場所の霧が晴れるようになっていて、まずこの大きな部屋の霧が全部晴れるように走り回った。
すると、この部屋の全貌が分かった。その時に絶望した。
なんと、この部屋には大きな怪物が一体しかいなかったからだ。
同士討ちを狙えない、そう分かったその時、心臓の脈拍が明らかに上がってきた。
緊張と恐怖、怪物は僕とリーエをまとめて殴ろうと、近付いてきてはバンバン鈍器を振り回す。
僕とリーエは逃げ惑うだけで何もできない。
体格差もあるし、きっと足にしがみついたとて、止められないだろうし。
周りを見渡しても、道具になるような、ヒントになりそうなモノも何も無い、円状の部屋。
こんなこと今まで無かったのに、と思ったけども、あくまで僕はこの世界がクリアできるものだと思い込んでいただけなんだと分かった。
僕とリーエはこの怪物に殴られて終わるだけなんだ、そう思ったその時に考えたことは、なんとかリーエだけは助け出したいと思った。
「リーエ、あくまでこの世界は僕を倒そうとしているだけだから! 僕がこの怪物の攻撃を受ける! そうしたらきっとリーエは無事で終わるはずだ!」
「そんな! そんなのはダメだよ!」
「リーエ! リーエなら僕の気持ち、分かっているだろう! 僕はリーエのことを大切に思っている! だから僕がこの攻撃を受けて終わらせる!」
「ダメだって! 死んじゃうよ! こんな攻撃喰らったらひとたまりもないよ!」
「でも文字の謎解きの時だって、僕を、僕の写真をどうにかしようとしていたじゃないか! だから僕が死ねばこの世界は終わるんだよ! きっとそうすればリーエも案内人じゃなくて、この世界から出られるよ!」
「ダメだって! そんなことは絶対させないから!」
そう言ってリーエは僕と怪物の間に立った。
「リーエ!」
そう言って僕はリーエの肩を掴んでどかそうとしたが、リーエはビクともしない。
そりゃ僕よりも体格がいいけども、それ以上に何だか、妙な硬さを感じた。
「ヒロ、命令して、きっとアタシはできるはず」
「じゃあ命令だ! 僕が死んで終わらせる!」
「それじゃない! そうじゃない!」
怪物はどんどん僕とリーエに近付いてくる。
僕は脳内をフル回転させる。
きっとリーエのこれがヒントなんだ、どこかに答えがあるんだ。
僕が死ぬことは間違いで、リーエが闘うことが正解なんだ。
でもリーエが闘うってどうやって?
体格差は僕とリーエの比じゃない、あの怪物からしたら僕もリーエも小人だ。
何か武器が無いと闘えない。ノコギリでも持ってくれば良かった。
いやあんなノコギリよりも、もっと鋭利な武器があれば……鋭利? 鋭い?
そうか、リーエの能力は通じ合うじゃないんだ!
「リーエ! 爪を鋭くして!」
「おっ、いいねぇ~、いいねぇ~」
こんな緊張感のある場面ではありえないほど、柔らかい声を出したリーエが手を挙げると、その手の爪はナイフのように尖くなった。
「アタシは鋭い! だから刺す!」
リーエは自分の体を弾丸のようにして怪物に飛び込み、そのまま怪物のスネを貫いた。
すると怪物はその場に前のめりに倒れ込み、リーエは笑いながら、
「シャキ~ン!」
と言ってから、怪物の背中の上に立ち、心臓らしき場所に爪を刺した。
すると怪物は幻だったかのように半透明になり、そのまま消えていった。
どこからともなく、また階段が出現し、ここはこれでクリアというわけか。
僕はリーエを見ながら、
「リーエは、鋭いだったんだね。通じ合っていると思ったら勘が鋭かったというわけか。そしてそのリーエという名前も逆にするとエーリ、鋭利だったんだね」
「逆にするというか、頭を捻るとね」
そう言ったリーエの爪はいつの間にかいつもの人間の爪に戻っていた。
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僕とリーエは階段を上がった。
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