ショタヌキとのカフェは今日も思考する

青西瓜

文字の大きさ
7 / 19

【07 リアル間違い探しイベント】

しおりを挟む

・【07 リアル間違い探しイベント】


 今日は私が企画したリアル間違い探しイベントの日。
 常連さんから祖父の時代はいろんなイベントをやっていたから、やったほうがいいと言われてすることにしたのだ。
 まずカフェに集まって、一旦全員でハイキングコースに出て、その間に私とショタヌキでカフェ内の内装を変えて、間違い探しをみんなでするという楽しいイベントだと我ながら思う。
 こっちにはショタヌキがいるので、大胆な模様替えというか、変化を見せつけることもできるし(変化の術でね)。
 さらにカフェならではの仕掛けも考えているので、これはもう盛り上がること間違いなし、という気持ちでいると、何故か今日に限って画材を持ってカフェにやって来る人が多い。画材のオフ会あんの?
 いやでも今日はリアル間違い探しイベントだから、画材のオフ会はよそでやってほしいなぁ、それとも間違いを画材で作ろうと思っている? カフェの内装を画材で変えてやれ、じゃぁないんだよ、こっちが決めた間違いをお客さんたちが当てるだけだから。
 とか思っていると、画材を誰よりも持っている人が入ってきたと思ったら、私の顔を見るなりすぐに外に出て、何か、看板を確認してからまた中に入ってきて、その画材おばさんがこう言った。
「おっちゃんは、どこですか?」
 おっちゃんというのは祖父の呼ばれていたあだ名だ。
 私は画材おばさんに、
「祖父は腰をやってしまって、今は湯治に行っています」
 画材おばさんは伺うように、
「それは……今日中に帰ってくるぅ?」
「いいえ、もう一ヶ月くらいはいませんよ。勿論今日もです」
「じゃあ! 絵画教室のことは聞いていますか!」
「……聞いていませんけども。絵画教室って何ですか?」
 画材おばさん、否、多分絵画の先生は眉間に手を当てて悩むような動作をしている。
 もしかすると、祖父が伝えていなかった定期的なイベントというものがあった?
 いやでも、リアル間違い探しイベントを楽しみに待っている、お子たちも既にカフェの中でタダ麦茶飲んでいる。
 ここはもう断るしかないと思っていると、画材を持っていた人たちが、
「お久しぶりです! 先生!」
 とマンキンの笑顔で喋り出して、そんなことはもう言えない雰囲気に。
 絵画教室を外でやってもらうか、でもみんな画材が高そうで、外の風に煽られて大丈夫な感じじゃないんだよな。
 リアル間違い探しイベントを外でやる? いやせっかく私が考えたカフェならではの仕掛けはみんなに発露したい。
 するとレジのイスに座っていたショタヌキが近付いてきて、
「両方やるしかないですね」
 と言ってきて、そんな、ワンパクなっ、と思ったけども、確かにそうするしかないかもしれない。
 というわけで私は今の状態をカフェにいる全員に説明した。
 リアル間違い探しイベントをやる予定だったこと、絵画教室があるということは知らなかったということ、そしてその両方をやるということを。
 リアル間違い探しイベントのお子たちは「そんなんどっちでもいいやい! やっほーい!」みたいなテンションなんだけども、絵画教室の人たちは少し難色を示している。
 どうやらちょっと騒がしいのでは、という話だ。
 すると絵画の先生が、
「ではこうしましょう。リアル間違い探しイベント中はこちらも休憩時間にしましょう。そちらのお子さんたちはこっちには触れないようにするという約束のもとに」
 良かった、分かってくれる人で、と思いつつ、私はお子たちにもそういう指示を改めて飛ばして、無事スタートということになった。
 テーブルのほうでは絵画教室を行ない、L字のカウンター側でリアル間違い探しイベントの覚えるパートだ。
 とは言え、変化させられる部分が狭くなってしまったなぁ、と思った。
 無事覚えるパートが終わり、お子たちはみんな裏口からハイキングコースのほうへ出て行った。
 お子たちの安全を監視するのは常連さんたちがやってくれる。和装のお客さんも来ていて、お子好きなんだ、と思った。
 本当は五分くらいのスパンでリアル間違い探しをどんどんやっていく予定だったが、絵画教室とバッティングしてしまったため、ここから三十分後一発勝負ということになった。
 というわけで、後半に用意していた大仕掛けはもう使っちゃおうと思って、私はまず換気扇を回してから台所のほうで作業をし、ショタヌキが事前に決めた通りに内装を変えていく。
 ショタヌキは背が低いので、主に床担当だ。私は換気扇を止めたところで、テーブルより上の内装を変えていく。
 とは言え変え過ぎると”全部じゃん”となってしまうので、この塩梅が難しい。
 まあ小物を置いたり、ショタヌキは床にシールを貼ったり、そんな感じで結構すぐに三十分経ちそうになったその時、絵画の先生が優しい声で、
「こちらもそろそろ休憩に入るので、こっちのモチーフを別のモノに変えておきましょうか?」
 と言いながら、テーブルの上に置いていた、リンゴと瓶のモチーフをどかした。
「えっ? いいんですか!」
「はい、お子さんたちがこっちに近付かなければ大丈夫なだけなので、ちょっと見ただけで分かる程度のモノならこちらも安心です」
 お言葉に甘えてといった感じで、じゃあと思って、
「祥太くん、石膏の像に変化できる?」
「やってみます!」
「大きめね!」
 と私が言ったところで、ショタヌキはテーブルの上に乗っかるようにジャンプしたと思ったら、そのまま一気に、パンツを履いている小型のダビデ像になった。パンツ配慮するんだ。
 今までの傾向からお尻くらい出しそうだったけども、こういういろんな年齢・性別の方々がいる時は配慮するんだ。いや私にはお尻発言OKだろうなぁ、じゃぁないんだよ。いやOKだけどもさ。
 そんなショタヌキのパンツ配慮ダビデ像は絵画教室の生徒さんたちに大ウケで。結構ウケいいなぁ、このユーモアは覚えておこうと思った。
 絵画の先生がショタヌキのパンツ配慮ダビデ像を回して、キッチン側を正面に向けながら、
「お子さんにも面白いほうが正面になるように」
 と言って、絵画の先生にもウケるんだ、絶対覚えようと思った。
 いざ、ハイキングコースにいるお子たちを呼んで、リアル間違い探しイベントの開始だ!
 お子たちが裏口から、何なら入口からもなだれ込み、早速いろんなところを見ている。
 でも最初のフリというかアレのおかげで、絵画教室のほうは全然見ていない。これはかなり良い感じだ。
 あと私のカフェならではの仕掛けにはまだ気付いている人はいなさそう。それともお子と言うにはちょっとオトナな、高校生組が黙って用紙に記入しているかもしれない。
 十五分のシンキングタイムも終了し、答え合わせとなった。
 ショタヌキの床シールは全員分かったみたい、小物系もみんな分かったみたいだけども、カフェにBGMが流れているところは正解者が少なかった。これもカフェならではかもね。
 さて、私のカフェならではの仕掛けだが、案の定、高校生組の二人が正解していた。
 そう、私がわざわざ換気扇を回して止めてをして作った仕掛け、カフェで煮ている鍋の料理が違う、だ!
 最初はポトフを煮ていて、間違い探し中はラタトゥイユを煮ていたのだ! コンソメの香りとトマトの香り!
 高校生組に話を聞くと「BGMが流れていたので、こういうカフェならではのことがもう一個あるのではと思いました」と言っていて、しまった、BGMがヒントになってしまっていたか、と思った。
 ちなみにショタヌキのパンツ配慮ダビデ像の正解率も低くて、パンツ配慮ダビデ像、もっと大勢にウケてほしかったな、と思った。
 また、答え合わせした時の反応も何かイマイチで、そうか、お子は元々のダビデ像をまだ習っていないか、ということに気付いた。知見。
 でも高校生組にはウケて良かった。高校生からの笑いなんだ、パンツ配慮ダビデ像って。
 というわけで最後はそのポトフとラタトゥイユをみんなに振る舞った。
 基本的にどちらか一品食べられるということにしていたけども、この問題に正解した食いしん坊バンザイには二品プレゼントした。
 するとその高校生の一人が、
「美味しいです……ポトフは鶏を一旦焼いて香ばしくしていて手間が掛かっている、それにコンソメ……だけではないですよね、また別の味の深みがあります」
 私は頷きながら、
「そうですよ、私はポトフがご飯にも合うように、ほんだしを入れているんです」
 と答えると、その高校生は満面の笑みで、
「なるほど! わたしも真似します!」
 と言ってくれて、高校生にウケるのテンションが上がるので、割合を全部教えた。それは教えるよ。若い子にウケたいから。
 もう一人の高校生は最初にラタトゥイユを食べて、
「夏野菜の旨味たっぷりなのに、あっさりしていますねっ」
「こっちはあえてトマトのホール缶と塩胡椒でしか味付けしていないんです。ポトフが複雑な味の分、こっちはトマトの香りだけがカフェに充満するように」
「そんなリアル間違い探しイベントと味への配慮が!」
 と全部分かってくれて、めっちゃ嬉しかった。ずっと高校生にウケる女でいたいと思った。
 そんな話をしていると、当然お子たちも「両方食べたい!」となってきて、結局量もあったので、なあなあになってみんなに振る舞った。
 お子たちが「美味しい」「美味しい」と言ってくれて、お子ウケも有難いと思った。
 ちなみに両方とも、にんにくはあえて使っていない、あんまお子がクサいとか嫌だから。お子はクサくないであれ、私のいらない格言だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...