ボケまみれ

青西瓜

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【漫才を作ろう】

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・【漫才を作ろう】


 この日の放課後、早速二人で教室に残って漫才を作ることになった。
 そんな僕と啓太を恨めしそうに真乃ちゃんが見ながら、下校していったことが印象的だった。
 いやでも実際、もうコンビを組むことが確定したわけだから、啓太の優勝した時の願いもあるし、真面目に取り組もうと思った。
 というか一番の友達が組んでほしいと言っていたわけだから、そもそも断るルートなんて無かったのかもしれない。
「じゃあ駿、どうやって漫才って作ればいいんだ?」
 そうあっけらかんと言い切った啓太。
 いやそんなこと
「僕のほうが知りたいけども……」
 啓太は小首を傾げて、
「今まで変なキャラのヤツにツッコんでいれば良かっただけだけど、いざ自分たちで作るとなると大変だな」
 確かに今までは本当に変なキャラの子たちに囲まれた約1週間だった。
 まあ楽しかったけどもね、いろんな人と会話できて、いろんな考えも知れたし。
 さて、漫才の作り方か……僕と啓太はうんうん唸りながら考えている。
 僕にはキャラが無いから、僕のキャラでボケを作っていくみたいなことはできない。
 じゃあボケは捻り出さないといけない、と考えた時、とある方法が思いついた。
「大喜利でボケを作っていって、それにツッコんでいく形式で漫才を作ってみたらどうかな?」
「なるほど、そうやって作っていけば漫才の形にはなるかもしれないな、やってみるか」
「じゃあまずお題を考えようか。お題はやっぱり学校に関係していることのほうが分かりやすいかな」
「そうだな、漫才大会は小学四年生から六年生までの投票で決まるから、学校に関係しているほうが理解しやすいよな」
 学校に関係しているお題で、かつ、ボケやすいお題がいいだろうなぁ。
 というと”新しい国語の授業の内容”みたいなザックリとしたお題よりも、特別な状況を作り上げているお題のほうがいいのかもしれない。
 じゃあ
「担任の先生が29名で、生徒が1名しかいないクラスで起こること、というお題はどうかな?」
 と僕が提案してみると、啓太は嬉しそうに、
「おぉ、それは何かそれっぽくていいな。じゃあ駿、ボケを考えていってみてよ、俺がツッコむから」
 そうか、僕がボケなんだから、僕が考えるのか。
 ボケなんて正直考えたこと無かったけども、頑張って考えてみるしかないなぁ。
 まず担任の先生が多いということは、優秀になるということかな?
「ちゃんと生徒会長になる、とかどうかな?」
「いやそんな上手く教育できそうな感じしないわ、有り余るだろ……良いボケだと思うよ、やっぱり駿は面白いから自信を持って、もう『どうかな?』とか言わず、どんどんボケてってくれよ」
 そうか、漫才のスタイルにして作っていくなら、つい言ってしまった『どうかな?』とか今の会話の部分はノイズになるか。
 よしっ、どんどんボケていくぞ!
「文化祭の文化度が高い」
「めちゃくちゃ真面目になっちゃってる、ちょっとは遊びがほしいだろ」
「教育実習生がゲェゲェいってる」
「そりゃまあ教育実習生は緊張するけども。先生からの審査厳しそうだけども」
 何だかこうボケただけでも、漫才っぽくなっているような気がする。
 啓太のリアクションも悪くない感じがする。
「避難訓練で机の下に入ると、覗き込んでくる先生の多さ」
「いやちゃんと潜れてくるか確認してくるなよ、大勢から覗き込まれたら怖いだろ」
「タバコとコーヒーの匂いにむせ返る」
「何でそんな旧型の先生しかいないんだよ」
 どんなボケでもツッコんでくれる啓太。
 もっと、いろんな角度でボケてみたくなる僕。
「形だけの席替え」
「そりゃそうなるけども、くじ引くだけになるけども」
「生徒は合唱コンクールで天使のソプラノがち」
「というか先生も歌うのかよ、そりゃ先生は声が低いだろうから生徒だけが天使のソプラノ扱いになるだろうよ」
 啓太も何だか楽しそうで、僕も嬉しい。
「僕が休めば仕事ナシなので、先生方は僕の病欠を祈ってるらしい」
「何その悲しい構図、大勢から病欠を願われている生徒の気持ち最悪だろ」
「日直を毎日1人でこなす僕がまるで先生だ」
「確かにそうなるけども、また生徒が1人だから相棒の日直もいないんだよな」
 啓太は時にバシッとツッコミ、時に説明のようなツッコミでボケを分かりやすくしてくれる。
 啓太の多彩さに負けないように、僕も多彩なボケをしなければ。
「本当の自習をしたことない」
「絶対時間のある先生はいるだろうからな」
「自分は幸せ者だと思うようになる教育が施される」
「いや洗脳されてるから、薄々思っていたけども怖い教室だから」
 こうツッコんでほしいと思った時は必ずそうツッコんでくれた上で、一言二言足してくれる。
 自分でボケて、改めて啓太の実力が分かったような気がした。
「学力を担当し、自分の得点が校内の平均値とされる」
「どういうことだよ、他の連中の扱いも気になるだろ」
「何も変わったことは起きない、それが学校側の美徳」
「だとしたら何でそんな実験みたいなことしているんだよ」
 何だか僕は楽しくなって、思った以上にボケが浮かぶ。
 ボケるという行為も何だか面白味があるなぁ。
「それでも不良になった、オトナになるための通過儀礼だから」
「不良を良いように捉えるな、別に不良にならなくてもオトナになる人はいっぱいいるから」
「先生が29人いることに慣れてしまい、独り立ちできない」
「そりゃそうなる可能性が高いだろ、そういう場合は日直を1人で行なえばいい」
 僕はすぐに『前出たボケをツッコミで重ねる技術だ!』と思った。
 漫才ってこういう要素と要素を重ねて、重厚感を出すところがあるので、そういうツッコミは本当に巧いと思う。
 僕もそういうボケをしたいなぁ。
「自分は所詮ピークの過ぎた人間だと思ってる先生が輪を乱す」
「何だよ、ネガティブなヤツほど空気を悪くするという論は」
「先生の組体操が安全に考慮し過ぎてるし、生徒はクラッカー鳴らすだけだし」
「最近危ないって言われているからな、でも組体操でクラッカーを鳴らすだけって何? 装飾の部分を担当ってどういうことだよ」
「授業参観で先生に紛れた親がその他大勢ヅラして楽しんでる」
「まあ同時にたくさんも教壇立てないだろうけども、遊ぶなよ」
 よしっ、もうボケも浮かばなくなってきたし、最後は天丼というヤツをしよう。
 前にしたボケと同じようなボケを重ねる技術で、漫才では有効な技術。
「自分は下位ランクに沈んでると感じてる先生が輪を乱す」
「先生同士の心の中はどうでもいいんだよ、生徒だけ見てやれよ」
「自分は所詮2部リーグのヤツだという表情の先生が輪を乱す」
「いや輪を乱す先生いっぱいいるな! やっぱり先生は一人でいいな! もういいよ!」
 すごい! 啓太は僕の終わりのような雰囲気を感じ取って、締めの言葉を言ってくれた!
 もう今の喋りをそのまま漫才にしていいのでは? と僕は思っているんだけども、啓太はどこか小首を傾げていて。
 少しの沈黙、そして啓太が口を開いた。
「まあ漫才大会は一組1分くらいだから、もうちょっと短くするにしても、大喜利の羅列だから仕方ないんだけども、やっぱり巧い漫才ではないなぁ」
「でもこれをブラッシュアップしていけばいいんじゃないかな」
「いや根本的な改革が無いとダメなような気がする。駿のボケは面白いんだけども、駿のボケじゃない感じが出ちゃっているんだよね」
 僕は啓太の言っていることがよく理解できなかった。
 僕が出した僕のボケなわけだから、まさしく僕のボケなはずなのに。
 啓太は続ける。
「駿の面白さを俺は知っているけども、周りが知っているとは限らないという部分があって。俺は駿の良さを知っているけども、みんなが知っているとは限らないというか」
 イマイチ言葉にはできないけども、何だか分かるような気がしてきた。
 僕に良さなんて無い、という謙遜のような言葉は一旦無視して、僕にボケの良さがあると前提して考えていくけども、その僕のボケの良さを知らないと、まるで他人が作ったボケのように感じられて、深みが出ないということか。
 えっと、つまり
「ボケが僕のキャラに合っていない、ということ?」
 啓太は強く頷きながら、
「そう! 駿のキャラに合っていないような、というかボケにキャラが無いんだよ! 淡々とボケているだけで駿っぽさが感じられないんだ!」
「そっか、いやでも僕にそもそもキャラなんてないんじゃないの?」
「いやある! キャラの無い人間なんて存在しないから! 駿には何か面白いキャラがあるんだよ!」
 そう強く語る啓太。
 いやでも僕自身、僕に何かキャラがあるようには到底思えなかった。
 結局この日はそれ以上の手掛かりというか、発展は無くて、一緒に下校して家へ戻ってきた。
 僕にキャラってあるのかな、いやどう考えても無いと思うけども。
 というかキャラが大切ならやっぱり啓太は真乃ちゃんとかと組むべきだったんじゃないかな。
 あういうキャラが前面に出ているボケと組むべきだったんじゃないかな。
 やっぱり断ろうかな、とか思って僕の一日が終了した。
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