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16.用途確認 ※

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 ダニエルを見送って2階に戻ると、遅いと文句を言われた。このあいだで開き直ったのか先生は既に裸だった。
 ムスッとしてベッドに腰掛けてる。先生って性急。そんな焦らなくてもいいのにさ。でも、早くヤリたいって焦る姿も興奮するものがあるな。可愛い先生。

 服を強引に脱がされて洗われベッドに転がされる。先生はベッドに入るなり私を押し倒し、尋問を始めた。

「……ヘルマンはどうだった」
「平気でした」
「口付けは」
「しました。唇がないので不思議ですが口の中は同じですね」

 先生が鼻息荒く舌を差し込んだので応えようとしたら吸い付いてきた。チュウチュウと吸うのが可愛くて先生の頭を撫でると、一瞬動きが止まったあとに勢いを増した舌が口の中で暴れた。
 乳房を揉みながら真剣な目で見下ろされる。

「胸を揉まれたか?」
「はい。あの大きい手で揉まれました」
「どうだった?」
「手のお肉がもっちりしていて気持ち良かったです」

 そう答えると、先生は目をギラつかせて乳房をグニャグニャと揉み、乳首に吸い付いてグニグニと舌で押し潰していく。
 ハンスが好きってわけじゃなく呪い付きが好きっぽいね。先生って同好の士かしら。異形好きだけど同性愛じゃないから、代わりに私を抱くのかな。じゃあ、質問には詳細に答えようか。喜ぶかな? どうだろう?

「体を触っただろう?」
「はい。抱き合うとお肉に受け止められてるみたいで安心感があります」
「全身で抱き合った?」
「はい。私が上に乗っかって」

 そう答えたら、おもむろに先生がベッドに横たわり私を引っ張る。

「上に乗れ」

 先生ってば面白いな。おとなしく上に乗り、閃いたことをやってみた。体勢を整えてから先生の腕を取って私の体に巻き付ける。

「こうやって、抱き合いました」

 先生は無言で抱きしめる腕に力を入れ、無茶苦茶にキスをされた。先生のキスに応えると興奮がうつる。体中まさぐり合いながら深く深くキスをした。
 息を切らして唇を離し見つめ合う。ヘルマンの黒い目みたいに先生の目も潤んで艶やかだ。
 体を起こしてペニスの前に移動し先生を見上げた。

「……さっきもこうして?」
「はい。こうして」

 鈴口を舌先でチロチロとくすぐると、先生が呻き声をあげる。円を描くように先端を舐めまわした。

「お肉の塊みたいで凹凸がないので、こうしたんです」

 唇で挟んで咥え込んでいく。先生を見ると、上気した頬の口元をほころばせてるのに眉をぎゅっと寄せて、泣き笑いみたいな顔でこちらを凝視していた。
 なかなか複雑な表情の先生を喜ばせるべく、さっきのように音を立てて吸い付きながら上下させる。

「……こんな、ことを……あっ」

 仏頂面で偉そうな先生が私の髪を掴みながら仰け反って悶えてる、その光景に興奮した。頑張って上下させると、ヘルマンより早く射精が訪れたので助かった。疲れるのよ、これ。
 口の中を片付けて先生の隣に寝転ぶと、腕を掴まれて刺すような目線で問いかけられる。

「……出てくるのが遅かった」
「はい」
「もっと、したんだろう?」
「しました」
「……どんな」

 あー、先生、たまんないね。異形仮想セックスとはなんて倒錯的なんでしょう。ゾクゾクさせてくれますわ。涎たれそう。
 体を起こしてヘッドボードに手を掛け、振り向く。

「お肉が厚いから、後ろからです、先生」

 先生も起き上がり目の据わった顔をして私の腰を掴む。私はさっきのようにローションを手につけて後ろにまわし、ペニスの根元を握った。

「根元が太すぎて入らないので、こうやって握りました」
「……そうか」

 先生が私の尻たぶを広げて挿入する。ハッ、ハッ、ハッ、と走った犬みたいな息遣いが後から聞こえる。バックだし犬の交尾と同じとも言えるなと考えつつ、ニュルニュルと動く先生のペニスを指で揉んだ。
 しばらくして先生が射精し、息をつく。

「……まだ、したか?」
「はい、もう一回。先生達が待ってるからそれで終わりました」
「……いなければ、もっとした?」
「たぶん」

 そう答えると、なぜか喘ぎながら腰を振り出した。先生の興奮スイッチはどこなんだ?

「っは、そんなに? ……あっ、したいのか? 呪い付きと?」
「……っぁ、したいです」
「っっくぅっ、はっ、……私は、全部……っく、入れられるっ」

 根元を握る私の手を乱暴に引き剥がし、グジュっと根元まで捩じ込んだ。私の腰を掴んでペニスを突き立てる先生の興奮に煽られて、背中がしなる。先生の興奮してる喘ぎ声が最高にそそった。

「先生、っああ、……ぅあっあぁぁ、先生の、……気持ち良いっ、ああっ」
「あっ、……気持ち良い? ……ぅっ、はっ、私のが?」
「はい、あっ、先生のがっああぁっ」
「呪い付きも、っは、私も、両方?」
「っあ、……はい、両方とも、……ああぁっ、気持ち良い、せんせいっ、もうっあああ」
「くぅっ、……っっっ」

 私が仰け反って絶頂すると痛いほど腰を掴まれて、先生も達したようだった。ヘッドボードに掴まって息をつく。
 少し休憩をしたい。

「先生、休憩をいただいていいでしょうか?」
「……ああ」

 まだ硬いままのペニスを引き抜いてベッドに座った先生に、コップに入った水を差しだした。

「水はいかがですか?」

 水を受け取り目も合わせず無言で飲み干した先生は、これまた無言でコップを返してよこした。子供かよ、先生。お礼くらい言いなさいよ。
 自分でも一口飲んで先生の隣に座り息を吐く。仏頂面でこっちを見ない先生を下から覗き込んで聞いてみた。

「先生、この間は朝まで買っていただいてありがとうございました。今日もゆっくりしていきますか?」
「呪い付きと寝てもらう」
「はい」

 それはさっき聞いた。真剣な目をして私を向き直る先生の質問の意図が不明だ。なんだ?

「そのあと、…………私とも」
「先生とも寝るんですね」

 そんな、眉を寄せて苦虫を噛み潰したような顔をされてもさあ。不本意だけど性欲に負けて仕方なく、みたいな感じがヒシヒシとしますよ。ちょっと悲しい。

「先生、明日まってます」
「…………ああ」
「今日は? まだしますか?」

 立てた片膝に乗せている手をそっと触って聞いてみると、私を睨むように見つめ両手を取って握り返す。

「何人もの呪い付きと寝るんだ」
「はい」
「良いのか?」
「……楽しみです、先生」

 そう答えた私を勢い良く押し倒した先生の目には欲望が見えた。額をくっつけて重苦しいような声で先生が呟く。

「呪い付きと寝たあと、……私とも寝る」
「嬉しいです、先生」
「楽しみか? 呪い付きと寝るのが」
「はい、先生」

 そう答えた私の腰を抱え、またもや硬くなったペニスを根元まで差し込んだ。爛々と目を輝かせた先生は、舌なめずりしそうなほど欲にまみれた顔をして腰を振って擦りつける。

「っは、ああっ、何人もと寝るのに? ……はっぁ」
「寝るの、楽しみです、あっ……ぁ」
「そんなに、はっ、っふ、寝たいか?」
「ああっ、あっ、寝たい、です、……っあ」

 そのために買うくせに詰るとか、その矛盾が倒錯していて頭が興奮する。先生は絶好調で、私も楽しく言葉責めを受け、私の答えで先生が興奮する様子を眺めては私も興奮した。


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