83 / 139
82.慰めが欲しい
しおりを挟む
エーミールに向き直って側に行くと、ニッコリして抱きしめられ匂いを嗅がれた。
「おはよう、エーミール」
「おはよう、ユウナギ。今朝は随分とゆっくりだな」
「・・・エーミールさん、嫌味の前に愛の一つも囁いたらいかがですか」
「・・・・・匂いがする」
「・・・座って、座って、髪梳かすから」
流して流してこ~。君は犬か。匂い嗅ぐなよ。どんな匂いなんだろ?栗の花?
「私にも慰めをくれないか?」
「どんな?」
「・・・・・ユウナギ、心配したんだ。本当は凄く心配した。ユウナギが必要なくても、私には必要なんだ」
悲しそうな声で私を痛いほど抱きしめた。
エーミールはこんな風に抱きしめたことなかった。いつも優しい強さだった。そんなことに気付いて悲しくなってしまい、強く抱きしめ返す。
「必要ないとかそんなこと言ってない」
「・・・・・口で言わずとも、ユウナギの選択はそうだろう。夫を頼らず一人でいた。・・・まだ居なくなりたいと?」
「ううん。私、拾われて炭焼きの家の子になったから。だから戻れたとしても戻らないよ。これからは頼るかもしれない」
「・・・森が好きだな。神殿は?」
「神殿は石造りだから落ち着かない。私が育った家は木でできてたから、木の家がいい」
「ククッ、家の違いか」
少し力が抜けた体が、笑って揺れた。笑いながら私の頭にキスをする。
「うん。私、この国にずっといることにしたんだけど、まだ夫でいたい?」
「当たり前だ。なぜそんなことを聞く?」
「心配ばっかりかけるから、面倒になったかと思って」
「クッハハハッ、確かに心配が多いな、ハハッ。・・・・・私が夫を降りると言ったら?」
静かな声だった。抱きしめられている胸から大きな鼓動が聞こえる。
「・・・・・泣くかな、淋しくて。・・・でも、エーミールが幸せなら良いよ」
「・・・ユウナギ、・・・私は・・」
抱きしめる腕にまた力がこもる。頭の横で静かに吐く息が少し震えて聞こえた。
エーミールを見ると、少し眉を下げて泣きそうな、なんともいえない顔をしている。それがなんだか可笑しくて、少し笑ってしまった。
「・・・なぜ笑う」
「変な顔してるから、ふふ」
エーミールの柔らかな頬を撫でる。窓から陽射しが入る部屋は明るくて、光の粒がサラサラした金髪の上で踊ってる。
「傷つけてごめんね。・・・・・でも、エーミールがいると楽しいのは本当」
「・・・楽しい?」
「ふっふっふ、酷いからかい話はエーミールとしかできないからね」
「・・・とんでもないな。私も被害者だろう」
「共犯者でしょ」
「・・共犯か。まあ、いいか。まったく、酷い妻を持ったものだ」
「酷い夫に酷い妻ならお似合いですよ」
目を合わせて二人で小さく笑った。
頬を挟んでエーミールの唇に柔らかく唇を乗せる。角度を変えて何度も。そして、そっと食んで唇を離した。
「私の可愛い夫、慰めになった?」
「・・足りない」
唇が落ちて温かい舌が口中に潜り込む。私の後頭部を押さえて舌を絡め、執拗に吸い付いくのが縋られているようでなんだか切なく、髪をゆっくりと撫でた。
唇が離れてエーミールが私を見る。指先で頬を撫で、柔らかく微笑んだ。
「次はいつ泊まりにきてくれるんだ?」
「相談してみる。双子に謝りに行く予定もあるから」
眉間に皺を寄せて一気に不機嫌顔になった。
「・・・・・なぜ、謝る?」
「私が悪いからだよ。・・・アルを痛い目に合わせたのは私だから。エーミールなら分かるでしょ」
「・・・まあ、若いと、多少きついかもしれないが、そういうものを飲み込んでこそ夫だろう?」
すげー、超絶都合の良い話だ。妻が他の夫のことで浮かれていても飲み込むわけか。なんつー良き夫像。マジか。あれか、おじさん世代の価値観とかか?
「エーミールは?少しキツかった?」
「・・・驚いたがな、妻が美しくなるのは嬉しいことだ。自分の手でならもっと良いが、それを言っても仕方がない」
「美しかった?浮かれてただけじゃなく?」
私の頬を優しく撫でながら笑う。
「ああ、花が咲いたようだった。・・・まったく、すっかり痩せてしまって。売られる子供みたいで抱く気がしない。早く太ると良い」
「・・・売られる子供って。ひどい例えを」
「ハハッ、そうだな、売られる子供はもっと痩せてるか」
「詳しいね」
「実体験だからな。私の親は神殿に高く売りつけたかったが、神殿は金を出さない。キリがないからな。ギリギリまで粘ったが無駄だと分かると家を追い出された。今も同じ様なことをする奴はいくらでもいる。金への執着は面倒なものだ」
エーミールさん、めっちゃハードモードじゃないですか。ここにも理不尽仲間がいましたわ。
なんか普通の調子で話してるけど、いいの?平気なの?同じ売られ仲間がいっぱいいて気にしなくなったとか?
「・・・エーミールは、えーと、今も、気にしてる感じ?」
「どうだろうな。なにせ一年中、何人もそういう手合いが入ってくるから嫌でも慣れる。色付きじゃない捨て子もいるからな、育てるのに金ばかりかかる」
「・・・筆頭さんは金策が大変だね」
「筆頭の一番重要な仕事だな。金策に走りまわってる」
「今日もこれから大事な仕事だね。頑張ってくださいな」
エーミールの頬にキスをして笑うと、エーミールも笑った。
自然な笑顔で、ああ、良かったと思う。こうして笑っているのを見ると、私も嬉しい。
「不思議だね」
「何が不思議なんだ?」
「知らないうちに好きになるから、不思議だなーと思って」
笑って言うと、ぎゅうと抱きしめられて、ゆっくりと吐く息が頭にかかった。
「・・・あまり煽らないでくれ。ベッドに連れて行きたくなる」
「煽ってないけど」
「グラウの気持ちがわかるな。夜を待ち切れない」
「・・・ダメですよ。もう時間ですよ」
「・・・クッ、本当だ。大分、遅くなった。ハハハッ、グラウが苛ついて待ってるな」
もう一度、抱きしめてから体を離した。
「オリヴァを呼ぶね」
不機嫌なオリヴァが現れてエーミールに文句を言ったけど、それを笑って流して、私の額にキスをした。エーミール、つよい。
オリヴァに抱きしめられ森へ送ってもらう。耳元で『昼に』と囁いて、消えた。
なんていうか、グッとくる。腰が砕けそう。あ、さっき砕けたわ。あーまったく、私に止める術はない。
オリヴァが迎えにくる前に洗濯をする。
また下着を替えねばなるまいよ。オリヴァめ。麗しのオリヴァ。下着、もう少し増やしたいな。手ぬぐい作った布の残りで作るか。部屋着も欲しい。トイレ行くのに裸でウロウロするの落ち着かない。
いつ謝りに行こうか。もう、今夜行ってしまおうか。先延ばしにすればするほど辛くなるから。何を謝る?浮かれポンチでごめん、じゃダメだ。えー、無神経な振る舞いでアルを傷付けたこと、それを謝る。償いをさせてほしいとお願いする。アルの望む償いを。
許してほしいけど、許してもらえなくても仕方ないって思ってる。でも許してほしい。アルとベルのこと好きだもん。そう、二人のこと好きだから。
調子良すぎるか。オリヴァと過ごして浮かれてたのに、そんなこと言われても不信感しかないかな。でも、好きだとは伝えよう。信用されなくてもいいや。
こんなふうに思えるのはミカのお陰だな。ミカは味方してくれる。ミカは私の安心。こんなふうに思えることって初めて。不思議だ。もしかして、私、異世界きて良かったのかもしれない。あ、すごい、180度変わってる!きて良かったと思うとか。まあ、不便なことがあるたび、日本を思い出すだろうけど。
ミカすごい。ミカの大きな愛情に包まれて私は幸せなのです。私はミカみたくなれないな。アルを幸せにできなかった。
どうしようもない。今夜、謝ろう。
「おはよう、エーミール」
「おはよう、ユウナギ。今朝は随分とゆっくりだな」
「・・・エーミールさん、嫌味の前に愛の一つも囁いたらいかがですか」
「・・・・・匂いがする」
「・・・座って、座って、髪梳かすから」
流して流してこ~。君は犬か。匂い嗅ぐなよ。どんな匂いなんだろ?栗の花?
「私にも慰めをくれないか?」
「どんな?」
「・・・・・ユウナギ、心配したんだ。本当は凄く心配した。ユウナギが必要なくても、私には必要なんだ」
悲しそうな声で私を痛いほど抱きしめた。
エーミールはこんな風に抱きしめたことなかった。いつも優しい強さだった。そんなことに気付いて悲しくなってしまい、強く抱きしめ返す。
「必要ないとかそんなこと言ってない」
「・・・・・口で言わずとも、ユウナギの選択はそうだろう。夫を頼らず一人でいた。・・・まだ居なくなりたいと?」
「ううん。私、拾われて炭焼きの家の子になったから。だから戻れたとしても戻らないよ。これからは頼るかもしれない」
「・・・森が好きだな。神殿は?」
「神殿は石造りだから落ち着かない。私が育った家は木でできてたから、木の家がいい」
「ククッ、家の違いか」
少し力が抜けた体が、笑って揺れた。笑いながら私の頭にキスをする。
「うん。私、この国にずっといることにしたんだけど、まだ夫でいたい?」
「当たり前だ。なぜそんなことを聞く?」
「心配ばっかりかけるから、面倒になったかと思って」
「クッハハハッ、確かに心配が多いな、ハハッ。・・・・・私が夫を降りると言ったら?」
静かな声だった。抱きしめられている胸から大きな鼓動が聞こえる。
「・・・・・泣くかな、淋しくて。・・・でも、エーミールが幸せなら良いよ」
「・・・ユウナギ、・・・私は・・」
抱きしめる腕にまた力がこもる。頭の横で静かに吐く息が少し震えて聞こえた。
エーミールを見ると、少し眉を下げて泣きそうな、なんともいえない顔をしている。それがなんだか可笑しくて、少し笑ってしまった。
「・・・なぜ笑う」
「変な顔してるから、ふふ」
エーミールの柔らかな頬を撫でる。窓から陽射しが入る部屋は明るくて、光の粒がサラサラした金髪の上で踊ってる。
「傷つけてごめんね。・・・・・でも、エーミールがいると楽しいのは本当」
「・・・楽しい?」
「ふっふっふ、酷いからかい話はエーミールとしかできないからね」
「・・・とんでもないな。私も被害者だろう」
「共犯者でしょ」
「・・共犯か。まあ、いいか。まったく、酷い妻を持ったものだ」
「酷い夫に酷い妻ならお似合いですよ」
目を合わせて二人で小さく笑った。
頬を挟んでエーミールの唇に柔らかく唇を乗せる。角度を変えて何度も。そして、そっと食んで唇を離した。
「私の可愛い夫、慰めになった?」
「・・足りない」
唇が落ちて温かい舌が口中に潜り込む。私の後頭部を押さえて舌を絡め、執拗に吸い付いくのが縋られているようでなんだか切なく、髪をゆっくりと撫でた。
唇が離れてエーミールが私を見る。指先で頬を撫で、柔らかく微笑んだ。
「次はいつ泊まりにきてくれるんだ?」
「相談してみる。双子に謝りに行く予定もあるから」
眉間に皺を寄せて一気に不機嫌顔になった。
「・・・・・なぜ、謝る?」
「私が悪いからだよ。・・・アルを痛い目に合わせたのは私だから。エーミールなら分かるでしょ」
「・・・まあ、若いと、多少きついかもしれないが、そういうものを飲み込んでこそ夫だろう?」
すげー、超絶都合の良い話だ。妻が他の夫のことで浮かれていても飲み込むわけか。なんつー良き夫像。マジか。あれか、おじさん世代の価値観とかか?
「エーミールは?少しキツかった?」
「・・・驚いたがな、妻が美しくなるのは嬉しいことだ。自分の手でならもっと良いが、それを言っても仕方がない」
「美しかった?浮かれてただけじゃなく?」
私の頬を優しく撫でながら笑う。
「ああ、花が咲いたようだった。・・・まったく、すっかり痩せてしまって。売られる子供みたいで抱く気がしない。早く太ると良い」
「・・・売られる子供って。ひどい例えを」
「ハハッ、そうだな、売られる子供はもっと痩せてるか」
「詳しいね」
「実体験だからな。私の親は神殿に高く売りつけたかったが、神殿は金を出さない。キリがないからな。ギリギリまで粘ったが無駄だと分かると家を追い出された。今も同じ様なことをする奴はいくらでもいる。金への執着は面倒なものだ」
エーミールさん、めっちゃハードモードじゃないですか。ここにも理不尽仲間がいましたわ。
なんか普通の調子で話してるけど、いいの?平気なの?同じ売られ仲間がいっぱいいて気にしなくなったとか?
「・・・エーミールは、えーと、今も、気にしてる感じ?」
「どうだろうな。なにせ一年中、何人もそういう手合いが入ってくるから嫌でも慣れる。色付きじゃない捨て子もいるからな、育てるのに金ばかりかかる」
「・・・筆頭さんは金策が大変だね」
「筆頭の一番重要な仕事だな。金策に走りまわってる」
「今日もこれから大事な仕事だね。頑張ってくださいな」
エーミールの頬にキスをして笑うと、エーミールも笑った。
自然な笑顔で、ああ、良かったと思う。こうして笑っているのを見ると、私も嬉しい。
「不思議だね」
「何が不思議なんだ?」
「知らないうちに好きになるから、不思議だなーと思って」
笑って言うと、ぎゅうと抱きしめられて、ゆっくりと吐く息が頭にかかった。
「・・・あまり煽らないでくれ。ベッドに連れて行きたくなる」
「煽ってないけど」
「グラウの気持ちがわかるな。夜を待ち切れない」
「・・・ダメですよ。もう時間ですよ」
「・・・クッ、本当だ。大分、遅くなった。ハハハッ、グラウが苛ついて待ってるな」
もう一度、抱きしめてから体を離した。
「オリヴァを呼ぶね」
不機嫌なオリヴァが現れてエーミールに文句を言ったけど、それを笑って流して、私の額にキスをした。エーミール、つよい。
オリヴァに抱きしめられ森へ送ってもらう。耳元で『昼に』と囁いて、消えた。
なんていうか、グッとくる。腰が砕けそう。あ、さっき砕けたわ。あーまったく、私に止める術はない。
オリヴァが迎えにくる前に洗濯をする。
また下着を替えねばなるまいよ。オリヴァめ。麗しのオリヴァ。下着、もう少し増やしたいな。手ぬぐい作った布の残りで作るか。部屋着も欲しい。トイレ行くのに裸でウロウロするの落ち着かない。
いつ謝りに行こうか。もう、今夜行ってしまおうか。先延ばしにすればするほど辛くなるから。何を謝る?浮かれポンチでごめん、じゃダメだ。えー、無神経な振る舞いでアルを傷付けたこと、それを謝る。償いをさせてほしいとお願いする。アルの望む償いを。
許してほしいけど、許してもらえなくても仕方ないって思ってる。でも許してほしい。アルとベルのこと好きだもん。そう、二人のこと好きだから。
調子良すぎるか。オリヴァと過ごして浮かれてたのに、そんなこと言われても不信感しかないかな。でも、好きだとは伝えよう。信用されなくてもいいや。
こんなふうに思えるのはミカのお陰だな。ミカは味方してくれる。ミカは私の安心。こんなふうに思えることって初めて。不思議だ。もしかして、私、異世界きて良かったのかもしれない。あ、すごい、180度変わってる!きて良かったと思うとか。まあ、不便なことがあるたび、日本を思い出すだろうけど。
ミカすごい。ミカの大きな愛情に包まれて私は幸せなのです。私はミカみたくなれないな。アルを幸せにできなかった。
どうしようもない。今夜、謝ろう。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる