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84.私の居場所 Side グラウ
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Side グラウ
朝の約束に呼ばれず、居ても立っても居られなくてユウナギへ飛んだ。
草の上に倒れたユウナギを見て、一瞬息が止まったあと、寝息が聞こえて安堵した。ここはいつかの池のほとりだった。ユウナギが一人で泣いていた場所。
また一人で泣くのか?私がいるのに。不安が押し寄せてユウナギを起こすと、朝露で湿ってしまったユウナギが目覚めて笑う。
大丈夫だと笑う。違う。その笑顔は違う。私と過ごした3日間の笑顔と違う。
ヘルブラオもすぐ気付いて理由を聞き出す。森の夫と何かあったと。
呼んでくれと言ったら、頷いたのに不安が膨らむ。消えてしまいそうに思えて無理に食事へ誘った。
私はユウナギに選ばれない。彼女は森を、森の夫達を愛している。そんな顔をさせるのに、彼女は森を選ぶ。
胸が焼け爛れるようだ。
昼食を三人でとり、色々質問してもユウナギは何も言わず静かに笑っていた。痩せてしまって果物しか食べられないのに、笑っていた。
彼女の心に入れなかった。婚姻の3日間はずっと心も体も一緒だったのに、締め出されてしまった。
ユウナギが熱を出し、しばらく会えず看病もできない。大丈夫だと笑って、そうして私の手を拒絶される。
ヘルブラオと共に森番の家を訪った。拗れているようなら無理矢理連れ帰ると言って。こういう決断はヘルブラオに敵わない。彼女の同意がなければ何もできない私とは違う。悔しいけれど、そうしたほうがいいと私も思う。
ユウナギがいない。焦って飛ぶと炭焼きの家の前だった。外に指輪が置いてあり、急いでドアを叩きユウナギがいるか確認する。
いると答えたので治療棟に連れて行くと言うと、家にも入れてもらえなかった。ユウナギの顔を見ることができない。薬草を届けると食い下がれば、それだけなら、と頷いた。
ユウナギは炭焼きの腕の中。熱を出して倒れたのに私は呼ばれなかった。私ならすぐ助けることができるのに、ユウナギは一人でいた。
ユウナギは夫を頼らなかった。ユウナギにとって夫は何なのだろう?ユウナギは誰も受け入れてないのかもしれない。白い石のユウナギの国の想い人だけ?
森番に怒鳴り、そして不貞を疑われていたと知った。ユウナギは何も言わなかった。私のせいなのに、私のせいで追い出されたのに。私はユウナギに辛い思いをさせるだけで役に立たない。体から全部の力が抜けたみたいでフラついた。
薬草を届けてユウナギの容態を聞くと、良く眠ると教えてくれる。一目でいい、会いたい。
ユウナギに呼ばれた。情けなさに塗りこめられているようで苦しい。
熱が引いた彼女は穏やかに笑った。炭焼きの家で安心したのか、自然な笑顔だった。会えて嬉しいのに胸がじくじくする。
痩せたようだと私の心配をした。病み上がりなのに、すぐに私の心配をしてくれる。気を引きたくて食事に誘った。
私の行動が不貞の疑いを招いたことを謝ると、驚くことを言った。
最初から私を好きだったと。忘れられなかったと。彼女も?私と同じ気持ちだった?ずっと?喜びが爆発したようで混乱した。
喜びのままユウナギを抱きたかった。熱が下がったばかりなのにそんなことはできない。
口付けるとユウナギが濡れた目で私を見る。私のことをそんな目で見る。ユウナギ、あなたに触れたい。ずっと触れていたい。
昼食の約束をした日、約束が果たされることで胸が弾む。最初から想い合っていた、私の妻を迎えに行った。喜びに満たされて彼女を見ると、驚きに目を見開いている。何かあったかと聞くと、私に見惚れたと言う。ああ、彼女も私を想ってくれている。
口付けただけなのに彼女の体は震え、声が漏れた。私が彼女に感じるように彼女も私に感じてくれると思うだけで、体が熱くなる。ユウナギに触れると、もう私を迎える準備が整っていた。
喜びに打ち震え、彼女に入り込むと、私に吸い付いてうねった。私を受け入れて、私に絡みつく。
3日間をともに喜び、ともに感じて過ごしたのに、辛いときに私を呼ばなかった。歓喜と切なさが入り混じる。
ユウナギ、あなたとともに過ごしたい。ああ、もう、あなたは私の半身。あなたがいないと息が苦しい。
ユウナギが悪戯っぽく笑って可愛いことを言うと、それだけで誘われてしまう。
昼食の用意をして約束の時間に迎えに行く。胸が高鳴る。抱きしめたら汗臭いからと体を固くした。構わない。ユウナギはいつも匂いが薄いから、もっと匂いを嗅げるのは興奮する。
ユウナギは体を震わせ私にしがみつく。ベッドの上でユウナギに覆い被さり口付けると、肌を粟立たせ、か細く喘ぎ出す。
喜びと不安が去来する。二人で一つだった3日間と、拒絶され不安を抱えた日々が。
ユウナギ、ユウナギ、私に感じるのになぜ、私を呼ばなかった?頼りない?それとも私は必要ない?
途端、ユウナギが縋り付いた。私がいいと泣きながら必死さをにじませて。
私に絡みつき私を欲しがる。それだけで歓喜が私を満たす。ユウナギに狂おしいほど私を求められ、喜びに満たされて彼女を抱く。
ユウナギの心も体も私を求めて、私達はまた一つになる。私は彼女に包まれ、全てを差し出す。そう、私はユウナギのもの。彼女に包まれて幸せを知る。
二人で食事をすると約束通り食べさせてくれる。楽しそうに。私を見て愛し気に笑った。
自分が悪いから双子に謝りに行くという。酷いことされたのに。私だって胸が焼ける思いをしているのに。
でも、私と過ごす時間は幸せだと聞けた。私も幸せで、一緒に過ごす今も幸せだ。あなたと過ごす時間は幸せに彩られる。
ユウナギが私を好きだと言う。嫉妬すると言う。私を自分だけのものにしたいと。
それだけでおかしくなるくらい嬉しい。ユウナギ、あなたしかいない。私を離さないで。
私はユウナギに必要とされ、求められている。森のことには立ち入れないけれど、彼女の中には、私の居場所もちゃんとある。
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Side グラウ
朝の約束に呼ばれず、居ても立っても居られなくてユウナギへ飛んだ。
草の上に倒れたユウナギを見て、一瞬息が止まったあと、寝息が聞こえて安堵した。ここはいつかの池のほとりだった。ユウナギが一人で泣いていた場所。
また一人で泣くのか?私がいるのに。不安が押し寄せてユウナギを起こすと、朝露で湿ってしまったユウナギが目覚めて笑う。
大丈夫だと笑う。違う。その笑顔は違う。私と過ごした3日間の笑顔と違う。
ヘルブラオもすぐ気付いて理由を聞き出す。森の夫と何かあったと。
呼んでくれと言ったら、頷いたのに不安が膨らむ。消えてしまいそうに思えて無理に食事へ誘った。
私はユウナギに選ばれない。彼女は森を、森の夫達を愛している。そんな顔をさせるのに、彼女は森を選ぶ。
胸が焼け爛れるようだ。
昼食を三人でとり、色々質問してもユウナギは何も言わず静かに笑っていた。痩せてしまって果物しか食べられないのに、笑っていた。
彼女の心に入れなかった。婚姻の3日間はずっと心も体も一緒だったのに、締め出されてしまった。
ユウナギが熱を出し、しばらく会えず看病もできない。大丈夫だと笑って、そうして私の手を拒絶される。
ヘルブラオと共に森番の家を訪った。拗れているようなら無理矢理連れ帰ると言って。こういう決断はヘルブラオに敵わない。彼女の同意がなければ何もできない私とは違う。悔しいけれど、そうしたほうがいいと私も思う。
ユウナギがいない。焦って飛ぶと炭焼きの家の前だった。外に指輪が置いてあり、急いでドアを叩きユウナギがいるか確認する。
いると答えたので治療棟に連れて行くと言うと、家にも入れてもらえなかった。ユウナギの顔を見ることができない。薬草を届けると食い下がれば、それだけなら、と頷いた。
ユウナギは炭焼きの腕の中。熱を出して倒れたのに私は呼ばれなかった。私ならすぐ助けることができるのに、ユウナギは一人でいた。
ユウナギは夫を頼らなかった。ユウナギにとって夫は何なのだろう?ユウナギは誰も受け入れてないのかもしれない。白い石のユウナギの国の想い人だけ?
森番に怒鳴り、そして不貞を疑われていたと知った。ユウナギは何も言わなかった。私のせいなのに、私のせいで追い出されたのに。私はユウナギに辛い思いをさせるだけで役に立たない。体から全部の力が抜けたみたいでフラついた。
薬草を届けてユウナギの容態を聞くと、良く眠ると教えてくれる。一目でいい、会いたい。
ユウナギに呼ばれた。情けなさに塗りこめられているようで苦しい。
熱が引いた彼女は穏やかに笑った。炭焼きの家で安心したのか、自然な笑顔だった。会えて嬉しいのに胸がじくじくする。
痩せたようだと私の心配をした。病み上がりなのに、すぐに私の心配をしてくれる。気を引きたくて食事に誘った。
私の行動が不貞の疑いを招いたことを謝ると、驚くことを言った。
最初から私を好きだったと。忘れられなかったと。彼女も?私と同じ気持ちだった?ずっと?喜びが爆発したようで混乱した。
喜びのままユウナギを抱きたかった。熱が下がったばかりなのにそんなことはできない。
口付けるとユウナギが濡れた目で私を見る。私のことをそんな目で見る。ユウナギ、あなたに触れたい。ずっと触れていたい。
昼食の約束をした日、約束が果たされることで胸が弾む。最初から想い合っていた、私の妻を迎えに行った。喜びに満たされて彼女を見ると、驚きに目を見開いている。何かあったかと聞くと、私に見惚れたと言う。ああ、彼女も私を想ってくれている。
口付けただけなのに彼女の体は震え、声が漏れた。私が彼女に感じるように彼女も私に感じてくれると思うだけで、体が熱くなる。ユウナギに触れると、もう私を迎える準備が整っていた。
喜びに打ち震え、彼女に入り込むと、私に吸い付いてうねった。私を受け入れて、私に絡みつく。
3日間をともに喜び、ともに感じて過ごしたのに、辛いときに私を呼ばなかった。歓喜と切なさが入り混じる。
ユウナギ、あなたとともに過ごしたい。ああ、もう、あなたは私の半身。あなたがいないと息が苦しい。
ユウナギが悪戯っぽく笑って可愛いことを言うと、それだけで誘われてしまう。
昼食の用意をして約束の時間に迎えに行く。胸が高鳴る。抱きしめたら汗臭いからと体を固くした。構わない。ユウナギはいつも匂いが薄いから、もっと匂いを嗅げるのは興奮する。
ユウナギは体を震わせ私にしがみつく。ベッドの上でユウナギに覆い被さり口付けると、肌を粟立たせ、か細く喘ぎ出す。
喜びと不安が去来する。二人で一つだった3日間と、拒絶され不安を抱えた日々が。
ユウナギ、ユウナギ、私に感じるのになぜ、私を呼ばなかった?頼りない?それとも私は必要ない?
途端、ユウナギが縋り付いた。私がいいと泣きながら必死さをにじませて。
私に絡みつき私を欲しがる。それだけで歓喜が私を満たす。ユウナギに狂おしいほど私を求められ、喜びに満たされて彼女を抱く。
ユウナギの心も体も私を求めて、私達はまた一つになる。私は彼女に包まれ、全てを差し出す。そう、私はユウナギのもの。彼女に包まれて幸せを知る。
二人で食事をすると約束通り食べさせてくれる。楽しそうに。私を見て愛し気に笑った。
自分が悪いから双子に謝りに行くという。酷いことされたのに。私だって胸が焼ける思いをしているのに。
でも、私と過ごす時間は幸せだと聞けた。私も幸せで、一緒に過ごす今も幸せだ。あなたと過ごす時間は幸せに彩られる。
ユウナギが私を好きだと言う。嫉妬すると言う。私を自分だけのものにしたいと。
それだけでおかしくなるくらい嬉しい。ユウナギ、あなたしかいない。私を離さないで。
私はユウナギに必要とされ、求められている。森のことには立ち入れないけれど、彼女の中には、私の居場所もちゃんとある。
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