ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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104.昔の恋人

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休みを取ったエーミールと王都を歩いていたら話しかけられた。
凄い美少年を連れた、遊び人風イケオジ。美少年は次元が違う美形で、次元が違い過ぎて眩しかった。イケオジが腰抱いて歩いてるし、めっちゃ年下の恋人?少年愛?怖ぇよ、異世界。昼間から堂々と美少年の腰を抱いて歩くイケオジ。
エーミールと知り合いらしい。妻は夫の後ろで控えるからこっそり美形を観察できるのだ。

「そちらが、噂の奥方かい?私に紹介はしてくれないのかな?」
「紹介する義理はない」
「私と君の仲だっていうのに、ふふっ。エーミールが婚姻したと聞いて驚いたよ」
「私だって婚姻ぐらいするさ」
「いやあ、昔を知っているとね、驚くよ」
「そっちは相変わらずみたいだな」
「まあね。美しいだろ?昔の君を思い出すよ」
「・・・美化し過ぎだ」
「そんなことはない。君は美しかった。今も美しい。ふふ。婚姻おめでとう、エーミール。幸せを祈っているよ」
「ああ、そちらも楽しんでくれ」
「楽しむさ。美しい花は愛でるものだ」

去って行くイケオジの後ろ姿をエーミールは眺めてた。なんだ、なんだ、未練ってやつですかい?メンヘラ製造してそうな男だぞ、そいつ。
しかも、さり気に私にマウントとってない?『私と君の仲』とか、配偶者の前で言わないだろうがよ。

「・・・すまない。神殿の関係者だ」
「昔の恋人?」
「・・ああ」
「エーミールは男の趣味が悪いね」
「男の趣味が悪いのはユウナギだろう。ユウナギにだけは言われたくない」
「ふふっ、いくつの時に恋人だったの?」
「17,8の時だ」
「あらー、美しい年頃を過ごした相手なんだ。なんで別れたの?」
「あいつは十代の若い時期が好きなんだ。その時期だけの香しさがあると言っていた」

変らなさ過ぎぃぃぃ。性癖は一生モンか。見た目エーミールと同じくらいで美少年愛好家とか。犯罪かよ。

「・・・人の好みって変わらないんだね。まだ好きなの?」
「そんなわけがない。呆れてるんだ」
「しっかし、凄い美少年だったね。美し過ぎて目が潰れるかと思った。エーミールも昔はあんな輝きが」
「今は?」
「うん、可愛いよ。あの人だって、今も美しいって言ってたし。いけるいける」

答えが気に入らないのか、つまらなさそうな顔をする。

「・・・あいつが連れてたのは男娼だ。ユウナギはダメだぞ」
「え、男娼なの。売れっ子なんだろうねー。あ、あの子に夜着を着てもらったらどうかな?エーミールの昔の恋人に買ってもらえないかな?」
「その呼び方は止めてくれ。あいつは神官長だ。それに男娼はダメだと言っただろう」
「ふーん。自分だって名前呼び許してるじゃん」
「・・・嫉妬か?」

ニヤっと笑って頬を撫でる。またからかってると思い、お返しにニヤリと笑い返した。

「そうなら嬉しい?」
「嫉妬されるのも悪くない」
「エーミールは男娼遊びするの?」
「しない。なんだそれは。するわけないだろう。ユウナギは私がそんな遊びをしても平気なのか?」

エーミールが誰かを抱いてるのを想像してみる。・・・あっ、なんか結構ダメージが。胸が痛くなってしまった。どうしよう、やばい。ばれないように俯いた。

「・・・ダメみたい。エーミールは遊び人ぽいから平気でいたかったんだけど、なんかダメになったみたい。さわれなくなるかも。ごめんね」
「しないと言っただろう?それほど嫌か。・・ククッ、ユウナギ、帰ろうか。ユウナギと遊びたくなった。」

俯いて落ち込んでると、腰を抱かれて動揺する。
往来で腰を抱くなよ。エーミール、お前もか。遊んでるイケオジは腰を抱いて歩くのがデフォなの?なんなの。
王都で買い物するんだ!と言い張り、帰るのは阻止する。腰抱きも手繋ぎに戻した。予定通り行動し、帰ってから夕食を食べる。
なぜだか機嫌良く体を洗われ、楽しそうなエーミールとベッドに寝転んだ。

「ねえ、あの人のどこらへんが好きだったの?エーミールから好きになったの?どこが良かったの?」
「そうだな、私からだ。恋人には優しいし、愛情深い。優しさに惹かれたんだ。私も若かった」
「優しいと好感度上がるよね。じゃあ、次の恋人は?」
「いない」
「えっ!?・・・あっ、遊び相手はいっぱいいたけど、特定の相手はいなかったと、そういうこと?」
「ああ。面倒だから特定の相手は作らなかった」
「そうなんだ」

いや、引き摺ってない?めっちゃ引き摺ってない?君がメンヘラにされちゃったのか?傷心で派手に遊びまわるとかさ、もうもう。
偉くなってからは、本当に面倒になったのもあるんだろうけど。
もうちょっと甘酸っぱい恋の思い出を聞けると思いきや、なんか酸っぱいだけでしたわ。

「愛情深いってどんな感じ?」
「・・・ユウナギのように優しく私を抱いたな」
「じゃあ、私のこと愛情深いって思ってるんだね」
「いや、そうでもないな」
「ええっなんでよ。こんなに甘やかしてるのに。愛情感じないの?」
「感じている、が、なんだろうな?」

不思議そうな顔をして聞かれた。私に聞くなよ。

「受け取り手の問題だよ、きっと。こんなの、とか、どーせ、とか思って、斜に構えて見てるんでしょ。年くってひねくれたんだ。若い頃は純情だってあったのに」
「・・・随分な言われようだ」
「もう、甘やかさない。ひねくれて受け取られるなら、甘やかしたって意味ないし」
「・・ユウナギ」

ぎゅっと抱き付いて顔を擦りつける。

「・・それは嫌だ」
「・・・こういう時ばっかり、甘え上手。手練手管使ってさ」
「培った経験を活かすのは悪いことじゃないだろう?」

この野郎、私が絆されやすいと知ってて、ニヤニヤしてからかいやがって。腹立つな。

「・・そうだね。言っておくけど、振り回してるの私だけじゃないからね。エーミールもだからね」
「・・私が?ユウナギが私に振り回されるのか?」
「無自覚?十二分に振り回してるよ」
「私の愛情深い妻は、夫の我儘に振り回されているわけか」
「わざとらしい」
「クッハハハッ、ククッ・・・ユウナギ、私に特別をくれる約束だろう?」
「何たくらんでんの?」

キスしながら甘く囁くのが、余計に警戒感を煽るな。
エーミールの手がお尻にまわり、指で肛門を撫でながら耳元で問いかける。

「ここでしたことは?」
「・・・ない」
「・・私に捧げてほしい、ユウナギ」
「・・・・・痛くしない?」
「優しくする」
「・・・うん」
「5日間あるんだ。しばらく馴染ませてからする」

そう言って、あのクリームを持ってきた。
トロリとした目で口付けをされ、散々に鳴かされる。少しの緊張は絶頂とともにとけ、ゆっくりと指でほぐされた。

毎晩ほぐされて、指が増えたり、おもちゃになったりしても本当に優しく、私を蕩かした。


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