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番外編

1.ささやかで愛しい Side エーミール

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Side エーミール

会合を兼ねた会食が終わり、すっかり夜が更けた中、部屋へ帰る。
部屋の中をぼんやり照らす蝋燭の灯りで、ユウナギが泊まる日だと思い出した。ローブと手袋を脱ぎ寝室へ向かう。
二人の静かな寝息が聞こえる小さなベッドを覗くと、グラウに抱き込まれたまま眠っているユウナギがいた。

グラウが近すぎて口付けもできないことに苛立つ。仕方なくユウナギの額を指で撫でると、ゆっくりとまぶたが開き何度か瞬きをしてから微笑んだ。

「おかえり、エーミール」
「ただいま、ユウナギ。すまない、起こした」
「ううん、待ってた。起きる」

グラウの腕を外して起き上がり、体を隠しながら夜着を着るユウナギを眺める。月明かりに浮かぶ、少し乱れた艶やかな黒髪となめらかな肌が幻想的で心がざわつき、抱きしめて体温を確かめた。私に抱き付く柔らかで温かい体を実感し安心する。
嬉しい。こうして帰りを微笑みで迎えられるのは、なんて幸福だろう。
そっと何度も唇を合わせるだけの口付けをすると、くすぐったそうに笑って私を見上げる。こんな他愛のないやり取りが愛しくて胸が痺れる。

「体を流すか?」
「うん」

すっかり冷えたお湯で軽く体だけ流し、ベッドに一緒に入った。
ユウナギにうつ伏せにされ、何かと思うと、体をほぐされる。香油を付けた手で足の裏を強く押され、ふくらはぎは軽く撫でられるのに少し痛い。

「足、疲れてるね。お疲れ様」
「ありがとう。ほぐされると気持ち良いな」
「たまにはね。体が温まってたほうが良いんだけど」

足の次は腕、背中、首を揉まれる。首から肩が気持ち良い。こうして労わられると気持ちが暖かく柔らかくなり、緊張がほぐれていく。
ユウナギの国の本で覚えたとか、卵から孵ったばかりの虫の話、会食で何を食べたか、何気ないことを穏やかに話して笑う。このささやかさが愛しく何ものにも代えがたい。
最後に顔も撫でるようにほぐされ心地よい気怠さが眠気を誘った。

「これでお終い。お水飲んだほうがいいよ」
「・・・飲ませてくれないのか?」
「あらまあ」

そう言って笑い、口移しで飲ませてくれる。抱き付いて何度もおかわりをねだると、可笑しそうに応えてくれ、頭を撫でられた。

会食は疲れる。隙を作らないよう神経を張り詰めたまま笑顔で応酬し、饗される食事のスパイスがきつかろうと相手の顔を潰さないため、ある程度は食べる。緊張感のあるやり取りを楽しむこともあるが、食事がきついと体が先に疲れてしまう。
ユウナギを見ると心も体もほどけてホッとする。こうして甘えると、可笑しそうに甘やかしてくれる。私の隣に寝て、胸に抱きしめてくれる。ユウナギにこうして抱かれるまで、ずっと孤独だったとのだと気付いたのはいつだったろう?
柔らかなユウナギの胸に頬ずりをする。柔らかさが、温かさが、髪を撫でる手の優しさが私を包む。

「ほぐされると怠いでしょ?もう眠るといいよ」
「ユウナギ、会食で疲れたんだ」

ユウナギに擦りついて抱き付く。
抱きしめられたかった。甘やかされたかった。溶けるような愛情が欲しい。

「仕事頑張ってるね、お疲れ様です。甘えたいの?」
「ああ」
「私の可愛い人、お望みならおっぱい吸いながら眠って良いよ」
「そのまま眠って、許すのか?」
「許すよ。エーミールが欲しい分、全部」

そう言うと私の頭にキスして抱きしめる。乳首を唇で咥えて吸うと、頭をゆっくりと撫でられた。子供のようにあやされ甘やかされる心地よさに、精神が凪いでゆく。優しさに抱かれて眠りについた。

動く気配と小さな話し声で目を覚ます。

「ユウナギ、こっちへ」
「オリヴァ・・・おはよう」

寝起きの頭で状況を考える。目が覚めたら私の隣にユウナギがいるから、嫉妬してるんだろう。まったく、グラウは執着が過ぎる。

「・・・ユウナギおはよう。グラウ、ユウナギを困らせるな」

ユウナギの腰に腕をまわして足も絡めた。

「お前は昨晩、抱いたんだろう?今朝は私に譲れ。私は眠っただけだからな」
「・・・昨晩いなかったのはお前の勝手だ。譲る必要はない」
「お前な・・はぁ。ユウナギ、グラウが夫で本当にいいのか?」
「っふふ、良いよ。どっちもどっちだからね?」
「一緒にしないでくれ」
「お前が言うな」

ユウナギが可笑しそうに笑う。それだけで気分が緩んだ。
ユウナギに抱き付いて押し倒すと、楽しそうに私を見る。愛しい人、私の妻。口付けをすると軽く応えてから、私の頬を挟んで摘まみ、悪戯っぽく笑う。

「話し中でしょ。今日の朝はエーミールで、明日の朝はオリヴァにする?」
「・・・ヘルブラオが終わるまで待つ」
「終わったら呼ぶから、自分の部屋で身支度でもしていろ」
「・・あとでね」

ユウナギが愛し気に微笑んでグラウの手を撫でると、渋々といった顔で飛んだ。あいつ、昨夜は楽しんだんだろうに譲る気もないとは欲深すぎるな。

「ユウナギ、グラウを甘やかし過ぎだ」
「まさか、自分は甘やかされてないとか思ってないよね?」
「私は良いんだ」
「また言ってる。私が一番甘やかしてるの、エーミールだと思うけど?」

からかうように私の目を覗いて抱きしめた。唇への柔らかな感触と、優しい温かな香りが私を包む。私の頬を優しく大事なもののように撫でる、その仕草に心が痺れ抱きしめる腕に力が入る。濡れた舌を絡ませると、ユウナギにもっと深く潜り込みたいと願わずにいられない。
朝陽の柔らかな光が流れるなめらかな肌に触れ、舌を這わす。私の指に舌に反応して身じろぎする体、耳に甘く溶けるような声、私の体にふれる指。私を受け入れて抱きしめる可愛い妻。どうしようもなく愛しくて、恋しい。

乳首をしゃぶりながら、先端を足のあいだに差し込んでぬめりを広げると、悶えて声をあげる。私に縋って快感を味わう姿が興奮を煽る。すぐにも入れたいのを我慢して、絶頂まで導いた。
弛緩するのを待って、ユウナギに入り込む。温かくぬめって絡みつくユウナギの中に入り、繋がって抱き合い口付けた。緩く動き、舌を絡ませながら吐息を味わう。ユウナギとこのまま揺れていたいのに、ぬるりと吸い付く粘膜が、私の名を呼ぶ甘い声が体に頭に痺れを起こし、二人で昇りつめ彼女の中で果てたいと、受け止めてほしいと膨らむ欲望に飲み込まれていく。

ユウナギの中が収縮し私を飲み込む。ああ、このまま私を飲み込んでくれ、ユウナギ。中のヒクつきに導かれて、熱を最後の一滴まで吐き出した。

二人で抱き合って息を整える。愛し合ったあとも肌を寄せたまま離れたくない。こうしていると愛しさが募り、顔を見ると目が合い軽い口付けをして微笑み合うと、それだけで気持ちが満たされた。私はあなたを愛していて、あなたは私を愛している。この喜びを、幸福をあなたに伝えられるだろうか。

二人で笑い合ってると、呼んでもないのにグラウが来た。もう少し待てばいいものを、無粋な奴だ。仕方ないと笑うユウナギが私に口付けしてから、グラウと飛んだ。
グラウの性急さにため息をついて起き上がり、身支度をする。
陽だまりの中、穏やかな幸福に包まれて自然に口元が綻んだ。今夜は早く仕事を終わらせて、ユウナギと夕食を共にしたい。


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