【完】メスイキTrip!〜メスイキした瞬間フリ○んで異世界に飛ばされて魔王を目指す羽目になるとかちょっと意味が分からない〜

唯月漣

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6−②

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 射精の泉を抜けた先に広がる南の都『ハッテンバー』は、寂れた温泉街のような街だった。
 石畳のつらなる街の大通りは、山の斜面に沿って温泉旅館風の建物が幾つも並んでいた。

 建物こそ普通だったが、この街のほぼ全ての旅館の入り口には、赤や白の布が数枚、一見のれんのように横並びで干してある。

 ヒラヒラと風にはためく、長方形の薄い布たち。
 左右の端には、長細い紐がピロピロと伸びている。
 なんかこの布、どっかで見たことがある気がする。えーっと、どこで見たんだっけ……?


 俺は布の正体をなかなか思い出せず、もやもやを抱えたままカヴァとルナに連れられて一軒の旅館の前に立った。


「いっ、いいっ、いらっしゃいませぇ……! おっおっ、お待ちしておりましたっっ!」
「んー……? ああーーッッ!!」

 旅館風の建物から出てきた異様にビビっている様子の男の股間に、先程の見覚えのある白い布を見付け、俺はもやもやが晴れると同時にいつものツッコミ欲に襲われる。

 どこかで見たような、股間から垂れる長方形の布の正体。

 ーーーーそう。
 それはまごうこと無き『ふんどし』だったのだ。

 ジャパニーズ、ふ・ん・ど・し!!

 赤、白、黒。
 街を振り返れば、カラフルなふんどし達が街中に元気いっぱいはためいている。

 いや、日本でもたまに、祝祭日に日本の国旗を軒先に掲げてるお家とかは見かけるよ?
 でも流石に、軒先にふんどし掲げてるなんて、何アピールなの!?


「なあっ、アンタ……それ……!」
「ああ、鷹夜はまわしを見るの、初めてよね? これはハッテンバーの伝統的な民族衣装で……」
「は!? いや待って。それ、ふんどしでは!?」
「え??? これはまわしよ?」
「まわしです」
「まわしでスヨ」


 3人に揃って否定されて、俺は思わず頭を抱えた。
 どう見てもコレは俺の世界で言うところの『ふんどし』なのだが、こちらの世界ではコレを『まわし』と呼んでいるらしい。

 ええい、ややこしいっ。
 とりあえず、これを命名したやつは全力士と全俺に謝れッ。


「因みに赤まわしはタチ、白まわしはネコ。リバは……」
「それ、服を脱がす前に分かる方法が必要だよね!?」
「うふふ、やーねぇ。流石にジョークよ?」
「ッッ!! あ……危ねえ、また必要以上に異世界に適応するとこだった!!」
「鷹夜様ー? 帰りにお土産物屋さんで可愛いまわしを買いましょウヨ」
「いやふんどしとか俺は付けねぇよ!?」
「ですから、あれはマワシですっテバ」


 俺が久しぶりに盛大なるツッコミを繰り広げていると、その様子を黙って見ていたビビリ男がおずおずと俺の前に歩み出てきて言った。


「えーっと……貴方が鷹夜様ですね? 改めまして、私は南のチーママ、ヴァードG様の側室、セイ・ヤーと申します。あなた様のお噂はかねがね聞いております。今夜はハッテンバー名物の温泉に浸かってお体をお休め下さい、とのことです」
「どういう噂かは敢えて聞かないことにするとして、ハッテンバーの温泉ってソレ、普通に入っていいやつなの?!」


 俺がそう聞くと、答えたのはルナだった。


「鷹夜様。ハッテンバーの温泉は、太古の昔から美肌と疲労回復、そして精力増強にとても効果があるといわれておりマス」
「…………もう、何も言うまい」


 ーーーーこの世界の住人は、どうしてこうも精力増強にばかりに拘るのだろう。

 
 セイさんは俺たちを連れて、旅館風の建物の中を廊下の奥へ向かって歩いていく。
 廊下の最奥、T・N・Kと書かれた部屋の前に来ると、Tと書かれた部屋の扉を開けた。


「鷹夜様はこちらのお部屋をお使い下さい。下僕の方々は、お隣のNとKのお部屋をご用意しております。鷹夜様のお食事は、夕刻にお持ちいたしますので、それまではゆっくりとおくつろぎ下さい」


 セイさんはそう言い残して、そそくさと逃げるように引っ込んでしまった。なんだか、始終怯えてる人だったなぁ。
 室内は板の間に竹で出来た寝台、机が置かれただけの、簡素なものだった。
 TNKのTは竹のTか………。
 俺に続いて室内に入ってきたカヴァは、部屋を見回して言った。


「久しぶりに来たけど、大分寂れたわねぇ」
「……え? カヴァは以前、ここに来たことがあるのか?」
「ええ。アタシの父が最初に飛ばされてきたのは、射精の泉だったから。ギルドをたてる前はこの街に住んでいた時期あったのよ。いわばこの街は父の故郷ってところね」
「なるほど」

 窓の外を眺めて父親に思いを馳せている様子のカヴァをぼんやり見つめながら、俺はルナに向かって言った。


「温泉に入ろうと思うんだけど、なんとなーく1人じゃ不安なんで、ルナ、一緒に入らないか?」
「ほぇ??? はい、いいでスヨ。ではお背中お流ししまスネ!」
「えーっと、それは気持ちだけ貰っとく」


 苦笑いで風呂に誘う俺に、ルナは不思議そうに首を傾げながらも上目遣いでそう答えて可愛らしく微笑んだ。


「やだ、鷹夜。お風呂に行くならアタシも誘ってちょうだいよぉ。流石に魔王候補を襲ったりなんてしないから」
「は!? ……まさか。カヴァ、お前もしや、タチ……?」
「うふふ。さあねー? 良かったら今夜、試してみる?」
「えっ!?」
「やぁねぇ。そんな反応されたら傷付いちゃうわ」

 カヴァは楽しそうにそう笑って、部屋に用意されていた部屋着とタオルを掴んで立ち上がった。

 そう言えば以前、夜伽がどうとか言われた気がする。

 奇抜なファッションとメイクではあるが、カヴァは素材自体はイケメンだ。
 ルナだって、出会った時から明らかに俺に好意を向けてくれている。

 そこまで考えて、俺はぶんぶんと頭を左右に振った。
 なっ、何考えてるんだ、俺は。


 俺達3人は、連れ立ってハッテンバーの温泉に浸かる。
 カウパー泉に入ったときには何とも思わなかったはずなのに、俺はやけに意識してしまう。



 すっかりメイクを落としたカヴァは、鍛え上げられた肉体に整った顔立ち。トカゲのような長い尻尾はあるものの、背が平均より僅かに高い俺より、更に5センチ以上は背が高い。
 くっきりとした二重に、凛々しい眉と真っ直ぐな鼻筋は、あちらの世界にいたらモデルにスカウトされてもおかしくないレベルだ。

 因みに、一方のルナは俺より二十センチ以上は小さく、メイクを落とすと可愛らしい普通の男の子、といった感じだ。

 透き通る肌に長いまつげとくりくりの瞳は、濃い脛毛を除けば、某アイドルグループ事務所に所属していてもおかしくない。


「鷹夜……? 急に黙り込んで、どうしたのよ。のぼせでもした?」


 気が付くと目の前にカヴァの心配そうな顔のどアップがあって、俺は心臓が僅かに高鳴る。


「なっ、何でもない!」


 俺には、愛する涼がいる。
 俺は現魔王に会って、絶対に向こうの世界に帰るんだ。

 自分に言い聞かせるようにそう考えて、俺は無理矢理笑顔を作った。
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