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9)港町『ティンコ』。①
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3日後、ルナとラングが合流し、俺達は王都を目指して船へ乗っていた。
船旅に慣れている様子のルナとラングに対して、カヴァは青い顔をして船室の奥で床に這いつくばっていた。
「ううう、まだ地面が揺れてるわ……」
ラングの肩を借りて船から下りたカヴァは、半日ほどの船旅を終えて港に着いてもなお、かなり気持ち悪そうだ。
俺とルナがカヴァの背中をさすってやりながら船着き場で休憩していると、ラングはまだ日も高いというのに、港町に宿を取ってくれた。
「ここから王都までは2日程の道のりです。今日はゆっくり休んで、明日の朝出発しましょう」
「うう、ゴメンなさいねぇ」
「いいよ。と言うか、カヴァにも苦手なモンがあったんだなー」
グロテスクなチン・ギン料理も平気そうだったし、ローションのぬめりにもケロリ、夏の暑さにも涼しい顔のカヴァが、青い顔で弱っている姿はなんだか新鮮だ。
「確か、カヴァは昔から船と馬車が苦手でしたヨネ」
「あー、カヴァは乗り物に酔うタイプか」
「そうみたいね……うっぷ」
「あー、無理すんな。いいから寝てろよ」
ここは港町『ティンコ』という街で、名産は海産物。
ここでしか食べられない、"セーシの踊り食い"という食べ物があるらしい。
そう教えてくれたのはラングで、ルナはその名物を食するべく、街へ下りたくてウズウズしていた。
「何事も見て、食べて、異国の味を学ぶのデス! 料理人の血が騒ぎマス!!」
ルナはそう言って張り切っているが、『セーシの踊り食い』と聞いた時点で、俺の食欲は地を這っていた。
「俺はカヴァの看病がてら、宿に残るよ。2人は街へ下りていいぞ」
俺がルナとラングにそう伝えると、顔を見合わせた2人は、何やら示し合わせた様にコクリと頷きあった。
「そういう事なら、カヴァをお願いします。私は街で、街に下ったチー・ママや異世界人が居ないか、情報を集めてまいりましょう」
「じゃあ私は市場へ行ってきマス! 鷹夜様、カヴァ。お土産いっぱい買ってきますかラネ!」
そう言って宿を出る2人を見送って、俺は宿の部屋の布張りの長椅子に横になっているカヴァの隣に戻った。
カヴァは船を降りた直後より大分顔色はマシになっているが、相変わらずグッタリとして元気がない。
いつもハイテンションでニコニコしているカヴァが萎れていると、なんだか変な空気だ。
俺はうちわでカヴァを仰いでやりながらカヴァの頭を撫でた。
「鷹夜……?」
「あ、悪い。起こしたか? 気分はまだ悪いか?」
カヴァの小さな声は、いつものような覇気がない。
「やーねぇ、ただの船酔いよ……。貴方はルナと一緒に市場に行ったんだと思ってたわ」
俺は力なく笑うカヴァの額に手を置いて、汗で額に張り付いていた前髪をそっとかきあげてやった。
「体調の悪い仲間を一人宿に置いてくほど、薄情じゃねーよ。それでなくとも、カヴァにはこっちに来てから世話になりっぱなしなんだから。たまには恩返しさせろよ」
「あらいやだ。かっこいいのね」
カヴァは冗談めかせてそう言って笑い、横向きだった体を仰向けにした。
「鷹夜ってアタシの事、『仲間』って思ってくれてたんだ」
「は? 当たり前だろ。いきなりこっちに飛ばされて、訳分かんなかった俺を、ここまでめちゃくちゃ助けてくれただろ? 正直、あの役所みたいなとこで衛士に捕まりそうになった時は、人生終わったーって思ったもんな」
なんか、懐かしい。メスイキの森に飛ばされたあの日のことが、なんだかとても昔のことのように思えた。
「ふふ。あの時はラングにお願いして、わざと黒チクビーの蜂の巣をつついたのよね。ちょっとした騒ぎを起こすつもりが、ラングったらうっかり巣ごと落としてしまって、大惨事になっちゃったのよねー」
「ちょっと待て。あれ犯人お前らかよ」
……ていうか、黒チクビーって蜂だったのか!
「うふふ。結果オーライってことで。鷹夜はもうすぐ向こうの世界に帰れるから、恋人にも会えるじゃない。良かったわね」
「あ」
にっこり笑ってそう言ったカヴァに、俺は涼の事を思い出す。ちゃんと説明しなくちゃと思っていながら、なんとなくタイミングを逃していたんだった!
「えーっと、それなんだけどな」
「うん?」
「鷹夜さん! トオル様から親書が届きました!」
「え」
俺の声は、勢いよく部屋に飛び込んできたラングによって、打ち消されてしまった。
船旅に慣れている様子のルナとラングに対して、カヴァは青い顔をして船室の奥で床に這いつくばっていた。
「ううう、まだ地面が揺れてるわ……」
ラングの肩を借りて船から下りたカヴァは、半日ほどの船旅を終えて港に着いてもなお、かなり気持ち悪そうだ。
俺とルナがカヴァの背中をさすってやりながら船着き場で休憩していると、ラングはまだ日も高いというのに、港町に宿を取ってくれた。
「ここから王都までは2日程の道のりです。今日はゆっくり休んで、明日の朝出発しましょう」
「うう、ゴメンなさいねぇ」
「いいよ。と言うか、カヴァにも苦手なモンがあったんだなー」
グロテスクなチン・ギン料理も平気そうだったし、ローションのぬめりにもケロリ、夏の暑さにも涼しい顔のカヴァが、青い顔で弱っている姿はなんだか新鮮だ。
「確か、カヴァは昔から船と馬車が苦手でしたヨネ」
「あー、カヴァは乗り物に酔うタイプか」
「そうみたいね……うっぷ」
「あー、無理すんな。いいから寝てろよ」
ここは港町『ティンコ』という街で、名産は海産物。
ここでしか食べられない、"セーシの踊り食い"という食べ物があるらしい。
そう教えてくれたのはラングで、ルナはその名物を食するべく、街へ下りたくてウズウズしていた。
「何事も見て、食べて、異国の味を学ぶのデス! 料理人の血が騒ぎマス!!」
ルナはそう言って張り切っているが、『セーシの踊り食い』と聞いた時点で、俺の食欲は地を這っていた。
「俺はカヴァの看病がてら、宿に残るよ。2人は街へ下りていいぞ」
俺がルナとラングにそう伝えると、顔を見合わせた2人は、何やら示し合わせた様にコクリと頷きあった。
「そういう事なら、カヴァをお願いします。私は街で、街に下ったチー・ママや異世界人が居ないか、情報を集めてまいりましょう」
「じゃあ私は市場へ行ってきマス! 鷹夜様、カヴァ。お土産いっぱい買ってきますかラネ!」
そう言って宿を出る2人を見送って、俺は宿の部屋の布張りの長椅子に横になっているカヴァの隣に戻った。
カヴァは船を降りた直後より大分顔色はマシになっているが、相変わらずグッタリとして元気がない。
いつもハイテンションでニコニコしているカヴァが萎れていると、なんだか変な空気だ。
俺はうちわでカヴァを仰いでやりながらカヴァの頭を撫でた。
「鷹夜……?」
「あ、悪い。起こしたか? 気分はまだ悪いか?」
カヴァの小さな声は、いつものような覇気がない。
「やーねぇ、ただの船酔いよ……。貴方はルナと一緒に市場に行ったんだと思ってたわ」
俺は力なく笑うカヴァの額に手を置いて、汗で額に張り付いていた前髪をそっとかきあげてやった。
「体調の悪い仲間を一人宿に置いてくほど、薄情じゃねーよ。それでなくとも、カヴァにはこっちに来てから世話になりっぱなしなんだから。たまには恩返しさせろよ」
「あらいやだ。かっこいいのね」
カヴァは冗談めかせてそう言って笑い、横向きだった体を仰向けにした。
「鷹夜ってアタシの事、『仲間』って思ってくれてたんだ」
「は? 当たり前だろ。いきなりこっちに飛ばされて、訳分かんなかった俺を、ここまでめちゃくちゃ助けてくれただろ? 正直、あの役所みたいなとこで衛士に捕まりそうになった時は、人生終わったーって思ったもんな」
なんか、懐かしい。メスイキの森に飛ばされたあの日のことが、なんだかとても昔のことのように思えた。
「ふふ。あの時はラングにお願いして、わざと黒チクビーの蜂の巣をつついたのよね。ちょっとした騒ぎを起こすつもりが、ラングったらうっかり巣ごと落としてしまって、大惨事になっちゃったのよねー」
「ちょっと待て。あれ犯人お前らかよ」
……ていうか、黒チクビーって蜂だったのか!
「うふふ。結果オーライってことで。鷹夜はもうすぐ向こうの世界に帰れるから、恋人にも会えるじゃない。良かったわね」
「あ」
にっこり笑ってそう言ったカヴァに、俺は涼の事を思い出す。ちゃんと説明しなくちゃと思っていながら、なんとなくタイミングを逃していたんだった!
「えーっと、それなんだけどな」
「うん?」
「鷹夜さん! トオル様から親書が届きました!」
「え」
俺の声は、勢いよく部屋に飛び込んできたラングによって、打ち消されてしまった。
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