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3章

アールスローン戦記 レギスト機動部隊 実戦投入

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マイクが言う
「17部隊 レギストへも 是非 出動要請を!」
バックスとレムスが驚き レムスがムッとする

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVの前に集まっていて言う
「これじゃねーか!?」
「場所も 16部隊の管轄 ランドム地区に近付いてる!これだ!」
TVからレポーターの声が聞える
『…尚 先ほど送られた 犯人グループからの要求は 依然変わりなく ”人質を返して欲しければ 先日の陛下のパレードの際に 陛下から国民へ向けて贈られる筈であった 陛下の御言葉を 頂戴しろ これが果たされない場合は 我々は更なる人質を取って 篭城する” との事です』
隊員たちが驚き顔を見合わせ言う
「…陛下の… 熱狂的なファン とか?」
隊員が殴って言う
「馬鹿っ んな訳ねーだろ!?」
殴られた隊員が頭を押さえて言う
「いってぇ~ じゃ なんだよ?」
隊員が困って言う
「え?…そんなの …分かる訳ねーだろ?」
隊員たちが顔を見合わせる

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

マイクが言う
「ランドム地区の廃墟は とても数が多く 過去に大富豪が多く居た地域でもあるので ひとつひとつの建物が大きい事が特徴です 犯人たちが複数の建物を使っているとしたら 16部隊だけで それらを補う事は不可能です ですから 隣の地区を担当する レギストに応援を!」
バックスが考えて言う
「うーん…」
レムスがバックスへ向いて言う
「その必要はありませんっ バックス中佐」
バックスとマイクがレムスへ向く レムスが言う
「ランドム地区は 我々16部隊の管轄です 自分たちの管轄する地域の事は 自分たちが一番良く知っています そこへ 不慣れな他の部隊が入り込む事は 我々の足を引っ張る事とも なり兼ねません どうか、16部隊に ご一任を!」
マイクが言う
「しかしっ」
バックスが言う
「マイク少佐」
マイクがバックスを見る バックスが言う
「レムス少佐の言う事は 一理ある 君の意見にも頷ける所はあるが 今回は 16部隊に任せる」
レムスが敬礼する バックスが頷き言う
「行きたまえ レムス少佐」
レムスが言う
「はっ!ご期待に沿います!」
バックスが頷く レムスが部屋を出て行く バックスがマイクへ向いて言う
「マイク少佐 16部隊への援護を」
マイクが言う
「…了解!」
マイクが敬礼して立ち去る

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

TVからレポーターの声がする
『犯人グループは 国道22号から ランドム地区へ向かった模様で… あ、今入った情報です 警察は今回の事件を 国防軍へ委託 以後の犯人グループとのやり取りは 国防軍が行うとの事です これにより…』
ハイケルがTVを横目に ノートPCを操作すると モニターがボクシングの試合から 地図に切り替わる

【 皇居 】

警察車両が引き上げると入れ替わり 国防軍13部隊の車両が入り 隊員たちが出ると 皇居周囲の警戒に就く そこへ高級車が到着して 執事がドアを開けると 軍曹が降り立ち皇居を見上げ 間を置いて入って行く 国防軍隊員たちが敬礼する

女帝の間

軍曹が入ると気付き言う
「ラミリツ攻長…」
ラミリツが軍曹へ向いて ムッとして言う
「…あのさ 好い加減 その呼び方やめてくんない?」
軍曹がラミリツの言葉に疑問した後 気を取り直して御簾の前にひざまずいて言う
「到着が遅くなり 真に持って申し訳ありませんでありますっ 陛下!しかしながら 陛下の御身は 国防軍と我ら 陛下の剣と盾が 必ずやお守りするであります!」
ラミリツが呆れてため息を吐いて顔を左右に振る 軍曹が立ち御簾の左側へ立つと 気を切り替え ラミリツへ向いて言う
「では~?自分は何と ラミリツ攻長を お呼びしたら良いのか?」
ラミリツが衝撃を受けてから 不満そうに言う
「…同じ名誉なんだから 攻長と防長で 良いだろ?」
軍曹が疑問して言う
「うむ~?そうであろうか?それでは何とも味気ないのだ そうは思わぬか?ラミリツ攻長?」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「だ、だからっ 何度も気安く呼ぶなって言ってんのっ!アンタ 知らないの?役命の前に フルネームじゃない名前の一部を付ける事は 親しい間柄か 自分より下位の者に対してだけなんだよっ?…それとも何? 僕が アンタより 下位だって言いたいのっ?」
ラミリツが怒りの視線を軍曹へ向ける 軍曹が呆気に取られた後 笑んで言う
「自分とラミリツ攻長は 防長と攻長の間柄でなないか!それは 親しい間柄と言って 何も間違いは無い!ラミリツ攻長も遠慮なく 自分の事は ヴォール防長かアーヴァイン防長と呼んでくれ!…ああ!なんなら アーヴィンでも良いぞ!?あははははっ!」
軍曹が笑う ラミリツが衝撃を受け怒って言う
「誰がっ!アンタなんかとっ!」
役人がやって来て 軍曹に盾を渡す 軍曹が驚き言う
「これは…」
役人が言う
「盾です …今回は 作り物ではありません 防長閣下も こちらでしたら?」
軍曹が笑んで頷いて言う
「うむ!これで良い!これでこそ盾!盾とは こうでなくてはならんっ!」
軍曹が盾を持ち上げ 床へ着く 重い音が響く 役人が呆気に取られてから頭を下げて言う
「では 失礼致します」
軍曹が言う
「うむ!」
役人が下がり密かに言う
「あんなに重い盾を 軽々と…」
役人がもう1人の役人を見る もう1人の役人がラミリツへ剣を渡して言う
「こちらは 本物の刃物となります …どうか お取り扱いには 十分 お気を付け下さい」
ラミリツが剣を受け取って言う
「うるさいな 訓練なら受けてるよ 大きなお世話」
役人が頭を下げて下がる ラミリツが剣を確認してから軍曹を横目に見る 軍曹が満足そうに盾を眺めている ラミリツが不満そうに顔を背ける 軍曹が眺めていた盾を再び床に着ける 重い音が響く

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員が言う
「国防軍13部隊より伝達 防長閣下、攻長閣下のお二方が 皇居へご到着 13部隊は 陛下を含む3名を 引き続き 警護する との事です」
マイクがPCを操作してから 軽く息を吐いて言う
「16部隊への協力なんて言ってもなぁ~ それこそ 無線の調整程度だし …また ハイケル少佐のレギストと 任務をやりたいよなぁ…」
情報部員がマイクへ向いて言う
「あれ?少佐 この前のパレードで 物凄く緊張したから もう嫌だー って言ってませんでした?」
マイクが苦笑して言う
「うん~ まぁ 確かに あの時はそう思ったんだけど やっぱり あーやって 機動部隊と一緒に 任務に当たっていると 自分たちが必要とされているんだって 実感出来るからね?今にして思うと… 物凄く大変だけど 同じ位 やり甲斐があったよ」
情報部員が言う
「良いな~ 俺たちは あの時だって やっぱり 無線担当でしたから」
マイクが苦笑して言う
「もし、また ハイケル少佐から依頼を受けたら その時には君たちにも手伝ってもらうぞ?正直 私1人では 手に負えない パレードの警備でも 想像以上にやる事があったんだ 今回みたいな事件の時は きっと あれを遥かに越える 能力が要求されるはずだからね?」
情報部員たちが表情を明るめ顔を見合わせる マイクが言う
「さて、その時のためにも 今回の16部隊への協力で 練習しておこう!皆 ここからは 本番だと思って!」
情報部員が言う
「少佐~?今だって 本番ですよ?」
マイクが衝撃を受けて言う
「おっと そうだった よし!それじゃ 皆 気合を入れ直して行こう!」
情報部員たちが敬礼して言う
「はっ!」「了解!」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVを見つめている TVからレポーターの声が届く
『現場上空からの中継です!犯人グループが逃げ込んだ ランドム地区のこの一帯は 廃墟が点在している地域であり 現在は 国防軍の指示により通行規制がなされている事もあり 日が落ちた今 辺り一面は暗闇に包まれています』
ハイケルが食堂に現れ コーヒーを用意し ふと気付いて休憩所へ目を向ける 隊員たちはTVに釘付けになっている 隊員が言う
「これだけ暗いと 犯人を見つけても 見えねーよな?」
「んじゃ 向こうだって こっちが分からないんじゃないか?」
「けど、向こうは 一応 国防軍が動いてるって知ってるんだろうし… 人質も居る以上 警戒してるだろうなぁ?」
「じゃ やっぱ 鉢合わせたら 戦闘になるだろうけど」
「相手が見えないんじゃ どうやって戦うんだ?」
「う~ん…」
隊員たちが悩む 隊員たちの後方で ハイケルが隊員たちを眺めコーヒーを飲む

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

情報部員が言う
「16部隊より通信 情報部へ対し 無線通信を要求」
マイクが言う
「16部隊 こちら 情報部 応答を」
レムスの声がスピーカーから聞える
『こちら16部隊レムス少佐だ 現在16部隊の使用出来る 無線周波数を教えてくれ』
マイクがPCを操作して言う
「そちらの区域で使用できる周波数は 18から21です 今それらの使用確認を」
レムスの声が届く
『では 18を使用する』
マイクが慌てて言う
「あ、待って下さい 今 それらの使用確認をします!無線処理をしなと 盗聴される可能性もありますから!3分ほどで終わるので」
レムスの声が届く
『時間が無いっ 犯人グループの車両は 既に建物の前に到着した!犯人グループと人質と思われる人物らが 建物に入った事も確認している 隊員たちと連絡したい 全隊員へ周波数18を伝えろ』
マイクが言う
「しかしっ」
レムスが怒って言う
『早くしろ!現場は時間との戦いなんだっ』
マイクが表情を困らせて言う
「…了解 16部隊 無線周波数18を 各隊員へ通達!」
情報部員が言う
「はっ!無線周波数18を通達!」
情報部員たちがPCを操作し イヤホンマイクに言っている
「国防軍16部隊 無線周波数を18へセットせよ 国防軍16部隊 無線周波数を18へセットせよ 国防軍16部隊 無線周波数を18へセットせよ」

【 ランドム地区 】

犯人グループAが無線機を操作している チャンネルを変えているうちに 音声が聞える
『…防軍16部隊 無線周波数18確認 セット完了 これより作戦を開始する 犯人グループは ランドム地区 住所旧マイシュ通り 41K26の建物に逃げ込んだ 16部隊A班は建物の西へ B班は東へ回り 進入路を確保 C班は…』
犯人グループAが微笑し顔を向ける 顔を向けた先 仲間たちが頷き合い立ち上がる

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVの前に釘付けになっている ハイケルが後方に居るが皆気付かず言う
「ん?あの建物 今ちょっと光らなかったか?」
「え?どこどこ?」
「ほら、そこの画面右上の」
「あっ ホントだ 建物の周りにチカチカしてるな?」
「あれって… もしかして16部隊か?」
TVからレポーターの声が届く
『ん?…どうやら あの建物の様です!先ほどから 建物の周りに ちらちらと光が!どうやら 国防軍は あの建物に居るであろう 犯人グループへと 向かっている模様です』
ハイケルが顔を顰め 携帯を取り出しダイヤルする 隊員たちが心配そうに言う
「…なぁ?この映像ってさ?俺たち今 普通に見てるよな?」
「だよな?…それで 16部隊の様子が分かるって …やばくねぇ?」
ハイケルの携帯が着信し ハイケルが言う
「ハイケル少佐だ マイク少佐 何をしている?」
隊員たちが驚き 振り返って言う
「しょっ 少佐っ!?」「いつの間にっ!?」

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが驚いて言う
「え!?TV中継に 16部隊の状況が!?」
マイクが慌ててTVをつけ 呆気に取られる 携帯からハイケルの声が届く
『先にマスコミへ事件が知られている場合は 機動部隊が動く前に そちらへ手を回す事も情報部の仕事だ そんな事も知らないのか?』
マイクが表情を困らせて言う
「す、すみません…っ うちの情報部は 少し前にゴタゴタして そう言った詳細な引継ぎが行われないまま 現在に至っていまして…」
携帯からハイケルの声が届く
『言い訳は良い さっさとメディア各社へ連絡し 現場の映像を消させろ!』
マイクが慌てて言う
「は、はいっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

ハイケルが携帯を切る 隊員たちが呆気に取られた状態で顔を見合わせる TVの画像が切り替わり キャスターが言う
『では、ここからは 犯人グループが要求している 女帝陛下の御言葉 陛下の居られる皇居前からの中継です』
隊員たちがTVモニターへ向き直り言う
「あ、切り替わった…」
「もう現場の映像は 映らねーのかな?」
TVからレポーターの声が届く
『はい、こちらは 皇居前です 現在皇居とその周辺は 国防軍の部隊によって 厳重に警備がなされ…』
隊員たちが言う
「皇居前… 13部隊の連中か」
「犯人たちが陛下の 御言葉を聞きたがってるって事は 陛下の身も危険って事だもんな?」
「…なぁ?じゃぁ 陛下の盾である 軍曹も 今は あそこに居るのかな?」
隊員たちが密かに後方のハイケルを伺う ハイケルはTVモニターを見ながら考えている

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツがあくびをする 軍曹が気付き不満そうに言う
「むっ?ラミリツ攻長っ?犯人たちがいつ陛下を狙って来るやも知れぬ この様な時に あくびなどしていては 危険なのである!」
ラミリツが軍曹を見て言う
「あのさぁ?犯人も馬鹿だけど アンタも相変わらず… だよ」
軍曹が衝撃を受け 不満そうに言う
「だ、だよ!?だよ とは 一体?」
ラミリツが呆れて言う
「はぁ… 兄上から言われてるから 仕方なく伏せてやってるのに…」
軍曹が疑問する ラミリツが言う
「考えても見ろよ?人質の1人や2人 捕まえたって あいつらの要求なんて通る訳無いじゃん?犯人たちって 本気で 要求 通ると思ってるのかな?だとしたら 救いようの無い馬鹿だよ?」
軍曹が困って言う
「うむ!?…そうなのであるか?自分は 犯人たちは本気で要求を通さんと やっていると思うのが 何故 1人や2人の人質では 本気に思われないのか?」
ラミリツが軍曹へ向いて言う
「だって?犯人たちの要求は 女帝陛下だよ?人質を取るとしたら もっともっと!それこそ1千人位の人質じゃないと 陛下には釣り合わないだろ?」
軍曹が衝撃を受け言う
「なんとっ!?…そ、そうであったのか 陛下に釣り合う人質の数は1千…」
ラミリツが呆れて言う
「…まじで言ってんの?」
軍曹が気を切り替えて言う
「いや!ともすれば 犯人たちはその事に気付き!1千の人質を取って 陛下を要求するかもしれん!やはり 自分たちは 気は引き締めて居るべきなのだっ!ラミリツ攻長!」
ラミリツが呆れて言う
「はぁ… もう良い… アンタ治らないや… やっぱ …だよ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「やはり だよ であるのか!?うむぅ… やはり 分からん…っ」
軍曹が考える ラミリツが呆れる 外が騒がしくなる 軍曹とラミリツが疑問し 軍曹が言う
「む?何やら 外が騒がしい様だが?」
軍曹とラミリツが出入り口へ視線を向け 軍曹が盾を握ると同時に扉が開かれ 軍曹とラミリツが身構える 沢山のフラッシュと共にTVカメラが向けられる 軍曹とラミリツが驚き呆気に取られる マスコミたちが軍曹とラミリツへカメラを向ける 沢山のフラッシュに軍曹が眩しそうに目をそらす

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

TVモニターに 軍曹とラミリツの姿が映っている 隊員たちがTVを見ていて言う
「おおっ!軍曹だ!」 「軍曹ー!」
隊員たちがTVの映像に喜んで声を上げている ハイケルがTVの映像を見てから立ち去る 隊員たちが気付き ハイケルを目で追いながら言う
「少佐…」「何処行くんだろ?」
隊員たちが顔を見合わせる

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】



ハイケルがドアをノックしようとした手を止め その手でドアノブを回しドアを開ける 隊員たちが後方に追って来ていて その様子を見て顔を見合わせる

室内

ハイケルが入り周囲を見渡す マイクが情報部員へ言う
「レムス少佐の指示した場所を地図へ!」
情報部員が言う
「レムス少佐の指示した場所は 屋敷の見取り図には書かれていません」
情報部員が言う
「先ほど無線No43を使っていた隊員が 恐らく その位置だと思われる場所に 部屋があることを確認していました!」
マイクが言う
「え?え~と!それじゃぁ 見取り図に書き込みを!その位置から…」
スピーカーから声が聞える
『こちらB班!突入します!』
情報部員が言う
「B班が突入!」
マイクが言う
「よし!B班が突入した事を想定し マップに書き込みを!マップY21X11に居る予定の レムス少佐が突入と同時に… えっとぉ… 何するかなぁ?う~ん よし!それじゃ レムス少佐は B班の応援に向かう事を想定する!」
情報部員が言う
「了解 レムス少佐 B班の応援へ向かいます」
ハイケルがモニターに映っているマップを眺めて言う
「私であれば B班の突入と同時に 人質の下へ向かう」
マイクが驚きハイケルへ向いて言う
「ハ、ハイケル少佐っ!?」
ハイケルがマイクへ向き苦笑して言う
「ノックはしなくて良いと 言われた筈だが?」
マイクが苦笑して言う
「あ… ははっ そうでした!いえ、まだ 駐屯地にいらっしゃるとは 思っていなかったもので」
マイクが時計を見上げる 時刻は23時を過ぎている ハイケルが言う
「私の他にも 事件を気に掛け 未だ この駐屯地内に待機している隊員たちは居る」
マイクが呆気に取られて言う
「え?そうだったんですか?」
ハイケルが言う
「それで、このマップの様子は?…とても 16部隊の現状とは思えないが?」
マイクが衝撃を受け 苦笑して言う
「う…っ あ…ははっ やっぱり そう思います?」
ハイケルがマイクを見る マイクが表情を困らせて言う
「これでも 16部隊の無線を聞いて 私たちなりに 想像してみたんですがね?」
ハイケルが言う
「想像 とは?お前たちは今 16部隊の援護をしているのだろう?」
マイクが言う
「それはそうなんですが 最初の無線案内以来 全然… ハッキリって 我々は蚊帳の外です 元々16部隊の管轄である この地域の情報は 我々の下にはありませんでしたし 何とか 16部隊の無線にあった 住所を頼りに 過去のその屋敷の見取り図を探し出しては見たのですが… そこで展開されている 16部隊の班割り 作戦内容などが さっぱり分からないので 正直 お手上げです」
スピーカーからレムスの声が聞える
『こちらレムス少佐 B班に合流 C班!』
マイクが気付き言う
「お?あははっ レムス少佐は 私の想像通り B班に合流したみたいですね?」
ハイケルが不満そうに言う
「今しがた聞いたばかりで 現状は掴めないが… 人質の保護は最優先 隊長はよほどの理由が無い限り そちらへ向かうべきだ」
マイクが言う
「ほほー …では、今後の材料にさせて頂きます!」
ハイケルが微笑する スピーカーからレムスの焦りの声が聞える 
『C班応答しろ!人質の保護はどうなったっ!?…C班!』
ハイケルとマイクが疑問し マイクが言う
「どうしたんでしょう?」
ハイケルが見取り図を見て言う
「この見取り図の この印の位置に人質が居ると言うのは… これも想定か?」
マイクが見て言う
「いえ、確実とは言い切れませんが 無線を聞いていた限りでは 恐らく正しい位置になっていると思います 同時に 各班の突入箇所 正確な場所までは分かりませんが 方位に関しては間違いないので 人質に一番近い位置から入ったのは C班である事 これも 正しいと思います」
ハイケルが言う
「それなら B班と対面側から進入したレムス少佐が B班へ合流するよりずっと前に C班は人質の場所へと到達している C班から人質の確認を知らせる通信は無かったのか?」
マイクが真剣な表情で顔を左右に振って言う
「いえ…っ C班からの その連絡は」
情報部員がハッとして言う
「そう言えば… マイク少佐!」
マイクとハイケルが情報部員を見る 情報部員が言う
「C班からの通信は ずっと前に1度あったきり!他の班の通信は沢山あったのに 一番重要なC班からの通信が その1度きりというのは 可笑しくありませんかっ!?」
マイクがハッとして言う
「まさかっ!」
ハイケルが視線を強める マイクが慌てて通信マイクを使い言う
「レムス少佐!レムス少佐!こちら情報部マイク少佐!すぐに人質の確認をっ!同時に C班の現状を 直接 確認して下さいっ!」



隊員たちがドアに耳を付け中の様子を伺っている状態で驚き 顔を見合わせ言う
「なんか… やばいらしい?」
隊員たちが神妙な表情で居る

【 皇居 女帝の間 】

朝日の柔らかな光が差し込む 御簾が照らされ やがて光が床で眠っているラミリツの顔に掛かる ラミリツが寝苦しそうに顔をゆがめてから 目を開き疑問して言う
「…れ?…えっと…?」
ラミリツが身を起こし周囲を見渡してからハッとして反対側を見る 軍曹が盾を頬杖状態にして居眠りしている ラミリツがそれを確認してから 軍曹の横へ行き 言う
「ねぇ… 起きれば?ちょーダサいんだけど?その顔…」
軍曹は寝息を立てて寝ている ラミリツがムッとして言う
「僕に声掛けてもらいながら 無視?…このっ」
ラミリツが軍曹の盾蹴る 軍曹がバランスを崩し後ろへ倒れる 盾がラミリツに寄り掛かり ラミリツが焦って言う
「うわっ ちょっ ちょっとっ!?重っ」
軍曹が起き上がり 苦笑笑顔で言う
「いやあ いかんいかん どうやら眠ってしまっていた… お?ラミリツ攻長?」
ラミリツが困り焦って言う
「は、早く 助け…っ」
軍曹が一瞬疑問した後 倒れ掛かっている盾を押さえて言う
「おおっ すまんすまんっ!盾を手放すとは!陛下の盾として 申し訳が立たん!」
軍曹が盾を引き寄せ一度持ち上げ 改めて床へ着く 重い音が響く ラミリツが溜息を吐いて言う
「…軽々と …まじ 信じられないんだけど …アンタ それでもホントに怪我人なの?」
軍曹が気付き思い出した様に言う
「おお!そう言えば 声を張っても痛みが走らんのだっ!どうやら すっかり回復した様だ!よーし!これでレギストへ復帰出来るっ!いやあ!こんなに嬉しい事は無いっ!少佐ぁーっ!皆ーっ!自分はすぐに!戻るでありますーっ!わっはっはっはっはー!」
軍曹が嬉しそうに笑っている ラミリツが耳を塞いでうるさそうに言う
「ちょ うるさいなっ 陛下の御所だって事 忘れてんの!?」
軍曹がハッとして言う
「はっ!そうであった!陛下!早朝から騒ぎ立て致しましてっ 真に申し訳…っ!…うん?陛下は…?」
ラミリツが呆れて言う
「居る訳ないし… はぁー 事件 どうなったんだろ?TVも無くて状況も分かんないし 一体 いつになったら 屋敷に帰らせてもらえるんだよ?」
軍曹が困って言う
「うむぅ… 自分も 早速 レギストの早朝訓練に 向かいたいのだが…」
部屋の外が騒がしくなる 軍曹とラミリツが気付き 軍曹が言う
「む?…もしや また?」
ラミリツがムッとしてから 自分の持ち場に戻り剣をかざして立つ 軍曹がそれを見て 自分も盾をかざして身構える 一瞬の間の後 扉が勢い良く開かれ 無数のフラッシュとTVカメラが向けられる 警備の者たちが抑える中 記者たちが口々に言う
「防長閣下!防長閣下!」
軍曹が疑問する 記者たちが叫ぶ
「今回の国防軍の失態は どのようにお考えでしょうかっ!?」
「国防軍の失敗は 防長閣下も既にご存知であられるかと!?それとも 防長閣下は 国防軍のそれら作戦には…!?」
「防長閣下!」「防長閣下!せめて一言だけでも ご感想を!」
軍曹が疑問して思う
(国防軍の失敗?一体…?)
記者たちが叫ぶ
「防長閣下!どうか ご感想を!人質2名と 国防軍の隊員8名 合わせて10名が犠牲となった 今回の任務は やはり 失敗であったと!?」
軍曹が内心驚いて思う
(なっ!?今のはっ!?どう言う事かっ!?国防軍の隊員8名とは…っ!?それに 人質がっ!?)
軍曹は表情を変えず 正面を見据えている 人知れず汗が流れる ラミリツが横目に軍曹を見る

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

アルバート、ハイケル、マイク、レムスの前にバックスが立ち言う
「総司令官へ 敬礼!」
アルバート、ハイケル、マイク、レムスとバックスが敬礼する アースが言う
「まずは 昨日の部隊配備と作戦内容を 詳しく 聞かせてもらおう」
バックスが敬礼して言う
「はっ!昨日の部隊配備と作戦内容を お知らせいたします!」
バックスが説明をしている ハイケルが正面を向いた状態で 横目にレムスを見る ハイケルとレムスの間に居るマイクが気付き 一度ハイケルを見てからレムスを見る レムスが表情を硬くしている マイクが僅かに表情を落としてハイケルへ視線を向ける ハイケルはマイクとは視線を合わせる事なく 再び正面を見据える マイクが視線を落とす

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

軍曹が驚き呆気に取られた後 表情を落として言う
「なんと… 酷い事が…」
隊員たちが表情を落として居る TVに映像が流れていて キャスターが言う
『…と、現場では 現在も国防軍による現場検証が行われておりますが 依然 犯人の手掛かりになるような物は発見されておらず 今回人質の救助に向かい 犠牲となった国防軍の部隊 16部隊の1班8名と 人質であった2名の遺体の確認がなされた との情報以降は…』
軍曹がTVを見てから言う
「で、お前たちも少佐も 昨日からこの駐屯地で?」
隊員がぼそぼそと言う
「はい…」「何となく 帰る気になれなくて…」「俺らが居たって 何か出来るって事も無いって 分かってるんですけどね」「はは… 何やってるんだろな?俺ら」
隊員たちが表情を落とす 軍曹が言う
「いや!何を言うっ!」
隊員たちが驚いて軍曹を見る 軍曹が言う
「お前たちは!例え別部隊であろうとも 16部隊の皆が任務に当たっている事を気に掛け ここに留まっていたのだ!お前たちのその思いは 真 レギストの!…いや!国防軍の仲間としての想い!自分は…っ 自分は その様な想いを持つ お前たちを 誇りに思うっ!」
隊員たちが呆気に取られた後顔を見合わせ 悔しそうに言う
「軍曹…」「軍曹ー!」
隊員たちが泣く 軍曹が言う
「えぇえい!泣くな!お前たちっ!16部隊の尊い犠牲はっ!必ずや 我ら国防軍が 晴らすのだーっ!」
軍曹が号泣する

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

アースが言う
「レムス少佐」
レムスが敬礼して言う
「はっ」
アースが言う
「16部隊の作戦 及び 部隊指揮は君が執っていたとの事だが バックス中佐は 情報部の力も利用するようにと命じていた 何故 君はそれを怠った?」
ハイケルとマイクがレムスへ視線を向ける レムスが言う
「はっ 情報部の力は 16部隊の無線周波数を 各隊員へ知らせるのに 利用させて頂きました」
アースが言う
「それだけか?」
レムスが言う
「はっ 以上であります」
アースが言う
「情報部の力は 無線管理だけではなく 地域の情報や 犯人たちの情報 更には 作戦過程においても あらゆる面に置いて 諸君の力となるものだ レムス少佐 君は16部隊を率いる者として その力を十分に 利用しなければならなかった」
マイクがハッとしてハイケルを見る ハイケルは正面を見据えている マイクが一度視線を落としてから レムスへ向く レムスが視線を落とした状態からアースへ向いて言う
「お言葉では御座いますが 総司令官 今回の事件の現場となった ランドム地区の情報は 我々16部隊が その全貌を把握しています 従って 地域の情報に関しては それらの情報を持たない 情報部より 我々の方が勝っています 自分はその事を既知であったが為 全貌を把握している 我々だけで行動を行いました!」
マイクが視線に悔しさを滲ませつつ視線を落とす アースが言う
「そのおごりが 16部隊C班の全滅を招いたのだっ その上 人質であった2名さえ 巻き込んでのものっ レムス少佐 現時刻を持って 君を16部隊隊長の任から除名する」
レムスが驚き 踏み出して言う
「お、お待ち下さいっ!総司令官!自分はっ 犠牲となった あいつらの仇を 取るまではっ!」
アースが言う
「共に 3ヶ月間の謹慎処分を言い渡す」
レムスが驚き呆気に取られ言う
「そんな…っ 犯人グループを追っている 今に…っ」
アースが言う
「アルバート中佐」
アルバートが敬礼して言う
「はっ!」
アースが言う
「16部隊の指揮権を しばらく君へ預ける」
アルバートが言う
「はっ!了解っ!総司令官!」
アースが視線を向けて言う
「ハイケル少佐」
ハイケルが一瞬驚き 敬礼して言う
「はっ」
アースが言う
「その顔色からして 昨夜からこの駐屯地にて 待機していたのだろう」
ハイケルが言う
「はっ 個人的な判断で 待機しておりました」
アースが言う
「それと、情報部へ連絡を行い メディアが事件現場の映像を 民法放送に流していたのを 止めさせたそうだな?」
ハイケルが横目にマイクを見る マイクがハイケルの視線に一瞬微笑してから視線を前へ戻す ハイケルが視線を戻して言う
「はっ …個人的な判断で 進言致しました 別部隊の作戦中に 独断を行い 申し訳ありません」
アースが言う
「いや、あれは正しい判断だった 私も メディアの映像を確認し 情報部のマイク少佐へ連絡を行った折 聞いた話だ 謝罪の必要は無い 良くやってくれた」
レムスが視線を怒らせる アースが視線を向けて言う
「バックス中佐」
バックスが敬礼して言う
「はっ」
アースが言う
「現在18部隊の行っている ランドム地区の後処理を 16部隊へ引継ぎ アルバート中佐の16部隊を用いて 18部隊の処理の続きと 現場検証を行わせろ」
アルバートとバックスが敬礼する アースが言う
「犯人は今だ逃走中だ 同様の事件が起こる可能性も否定出来ない 事件の委託を返還した 政府警察への協力を惜しまず 警戒を続ける様に 以上だ」
バックスが言う
「総司令官へ敬礼っ!」
皆が敬礼する

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】

隊員たちが食事を取りつつ話している
「んじゃ 結局 駐屯地に泊まり込んでた その連中のお陰で 今日のレギストの訓練は休みになったって事か」
「ああ、いつも通り さっさと帰った俺たちの他の連中は 皆おねむだってさ」
「けど、訓練が終わったら帰るのは 普通だから 今日、元気に出隊した俺らって 別に悪く無いよな?素直に休みを共有しても 良いよな?」
「じゃ、午前の通常訓練も終わったし 昼飯食ったら 解散するか?」
「そうだな 少佐も軍曹も居ないんだ 俺らだけじゃ訓練所も使えねーし 帰るか!」
隊員たちが頷き合う

【 ハイケルの部屋 】

昼の高い光が部屋に差し込む ベッドの上でハイケルが寝息を立てている すぐ近くに携帯が置かれている

【 ハブロス家の屋敷 】

高級食にナイフとフォークが当てられる アースが言う
「高位富裕層 ハブロス家の者として 最下層の者である ハイケル少佐の事は 認めたくは無いが… 国防軍総司令官として 私個人としては 彼を認めざるを得ない」
アースが料理を食べる 向かい側 軍曹がムッとして言う
「兄貴 それはつまり どちらなのだ?俺は兄貴や父上と共に ハブロス家を守りたいとは思っているが 兄貴がどうしても少佐を悪く言うとあれば 俺は…」
アースが言う
「ハブロス家を捨ててでも ハイケル少佐を擁護すると?」
軍曹が表情を困らせる アースが苦笑して言う
「…フフ 面白いな ハイケル少佐が 女性だとでも言うのなら お前の言葉も頷けはするが」
軍曹が言う
「そうではないっ 俺が言っているのは 兄貴や父上の様に 人を階級や何やらで 差別すると言う事が 気に入らんのだっ」
アースが料理に手を付けながら言う
「確かに 上流階級の者であれば 知識や能力もそれに付随すると言う考え方は もはや古い考えになりつつある しかし、現状は 未だに その考えが色濃くあると言う事も事実… これは私だけの意見ではない 分かってくれるだろう?アーヴィン」
軍曹が表情を落として言う
「う~む… では 兄貴はそれを俺に分からせて 何をしたいというのだ?」
アースが言う
「国防軍16部隊から17部隊レギストを含む18部隊までが拠点とする 国防軍レギスト駐屯地だが… 元は国防軍大佐 サロス・アレクサー・レーベットが 総責任者を務めていた場所だ それがレーベット大佐が自害された事を機に 大規模な人員削減などが成され 総責任者が不在のまま 現在に至っている …そこで アーヴィン」
軍曹が疑問する アースが言う
「そのレーベット大佐が勤めていた 総責任者の地位に レギスト機動部隊 軍曹である方の お前を置いてみたいと 私は考えているんだ」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?軍曹である自分が 総責任者!?」
アースが苦笑して言う
「もちろん、1駐屯地の総責任者となるからには 軍曹の軍階では有り得ない そちらのお前の軍階を 大佐 もしくは それ以上の軍階へ昇格した上での就任だ」
軍曹が表情を困らせる アースが食事に手を付けながら言う
「しかし、例えお前を ハイケル少佐の直属の上官として置いたとしても お前はハイケル少佐に指示を出す事は無いのだろう?従って 何か事件が起こり 国防軍レギスト駐屯地に在する部隊を動かす事となった時には お前の命令の下で ハイケル少佐に総指揮を取らせる… これなら 実質 彼が全ての部隊の指揮取る事となり 彼の持つ能力ならば 今回のような失態も 恐らくは無くなるだろう …どうだ?アーヴィン?」
軍曹が言う
「それならばっ わざわざ俺を 総責任者に仕立てる事などせず!少佐を 総責任者へ任命すれば 良いだけの話なのである!」
アースが言う
「ここまで言っても 分からないのか?彼の階級では それが出来ないから 私は提案をしているんだ この案は 言ってしまえば 彼のための提案だ」
軍曹が呆気にとられる アースが言う
「総責任者となった お前が 全ての指揮を ハイケル少佐へ命じると言うのは 見る者が見さえすれば お前が無能であると言う事を示している それは 我らハブロス家の汚点とも なりかねない事だ しかし」
軍曹が考える アースが微笑して言う
「お前を陛下の盾に… 防長とする時も お前は分かってくれた アーヴィン お前は無垢ではあるが 愚かではない 私の言っている事の重大さを理解し 今回も…」
軍曹が顔を上げ 立ち上がって言う
「いや!俺は やはり 少佐の上に立つ事などは 出来んっ!」
アースがムッとして言う
「アーヴィン!私の言う事が聞けないのか?私は お前やハイケル少佐の為にと」
軍曹が言う
「少佐の有能さは 俺は良く知っている!少佐ほど素晴らしい指揮官は 居られないのだっ!従って!きっと少佐は!御自分の力で 俺などより上へと上り詰める!俺や兄貴の画策など 少佐には 不要なのだっ!」
軍曹が立ち去る アースが間を置いて溜息を吐いて言う
「…上手くいかなかったか 今回もハイケル少佐をだしに使えば 軽く乗ると考えた私が 甘かったか…」
アースが気を切り替えて食事を進める アースの携帯が鳴る



軍曹が部屋を出て立ち止まり 視線を落として言う
「…これで 良かったのだろうか?兄貴が 折角少佐のためにと 考えて下さったのなら 俺が言った事は やはり間違えで…?」
軍曹が頭を掻いて悩み 気を取り直して歩き始めると 軍曹の携帯が鳴る

【 ハイケルの部屋 】

月明かりの差し込む部屋 ハイケルが寝返りを打つと 携帯が鳴る

【 ハブロス家 玄関前 】

高級車が止まる アースがエントランスから出てくると もう一台高級車がやって来て止まる 軍曹がエントランスから出て来る アースが最初の高級車のドア前に立ち 軍曹へ言う
「私は総指令本部へ向かう 陛下は頼んだぞ」
軍曹がもう一台の高級車のドアの前に立って言う
「陛下の御所には 外の様子を伺えるものが何も無いのだっ 役人たちは何やら隠している様子で信用ならん!兄貴」
アースが頷いて言う
「国防軍から人を送る お前にだけ情報を与えるようにと伝えておく 恐らく13部隊の者となるだろう」
軍曹が頷いて言う
「了解した!」
アースと軍曹が各々の車に乗り 車が屋敷を出て行く

【 夜道 】

ハイケルが歩きながら携帯の画面を見る 携帯の画面は受信メール画面 ハイケルが文章を見てから携帯をしまい 走り出す

【 国防軍レギスト駐屯地 正門 】

ハイケルが走ってやって来る 警備兵が敬礼して門を開ける ハイケルが警備兵たちを一瞥してから 再び走って中へ入る 警備兵が門を閉める

【 国防軍レギスト駐屯地 館内 】

ハイケルが通路を歩き 自分の執務室の鍵を開けようとしてふと気付き 通路の先へ顔を向けてから向かう

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】

隊員たちがTVに釘付けになっている ハイケルが食堂に現れ 隊員たちを見て微笑し向かう 隊員たちが話している
「う~ん 今回はまったく 現場からの映像は無しか」
「要求が同じって事は やっぱり同じ犯人だよな?」
「くぅ~ 気になって家を飛び出して来たは良いけど いくら国防軍の駐屯地だって TVは同じTVだよなぁ?」
「どうする?今回は ここの駐屯地の部隊でもないし… 俺らが徹夜して見てたって 明日はきっと通常訓練だ 寝不足で軍曹にしごかれたら 倒れるぜ?」
「とは言っても 家に帰ったって 気になって眠れねーよ 犯人は同じで また ”俺らの仲間が戦ってるんだ”」
隊員たちが神妙な面持ちになり言葉を止める ハイケルが言う
「そこまで言うのなら 付いて来い」
隊員たちが驚きハイケルへ向く ハイケルが歩き始める 隊員たちが顔を見合わせ頷き合いハイケルに続く 

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】



ハイケルが隊員たちを連れて 情報部のドアの前へ来て 振り返って言う
「ここで待っていろ」
隊員たちが敬礼する ハイケルがドアを開け入る

室内

マイクがPCモニターを見つめている ドアが開かれ ハイケルが入って来て言う
「マイク少佐」
マイクが驚き慌てて言う
「わっ!ととっ!? ハ、ハイケル少佐?」
ハイケルがモニターを見て言う
「状況は?」
マイクが苦笑して言う
「今回は別駐屯地の任務ですからね こちらは 何とも…」
ハイケルが言う
「昨日と同じで良い 無線を傍受し そこから推測される情報を表示して欲しい」
マイクが頷いて言う
「ええ、一応 私もそのつもりで 彼らと共に待機中です」
マイクが言って情報部員たちへ視線を向ける ハイケルがその視線の先を見る 情報部員たちの殆どが待機している ハイケルが微笑し頷いて言う
「流石は レギストの情報部だ」
マイクが微笑して言う
「ええ!そうですとも!」
ハイケルが言う
「情報部がそうであるように 機動部隊の彼らも 集まっている」
マイクが驚いて言う
「えぇ!?別駐屯地の事件なのに?」
ハイケルが言う
「その彼らと私の為に 隣接するミーティングルームを開けて欲しい そして、情報の共有を」
マイクが微笑し言う
「了解!」
マイクが立ち上がり 引き出しから鍵を取り出すと 壁にある鍵穴に挿しスイッチを押す 壁がスライドして隣の部屋と繋がり ハイケルへ向く ハイケル頷きドアへ向かう

特設ミーティングルーム

隊員たちが薄暗い部屋に入り 周囲を見渡す マイクがPCを操作すると 部屋の明かりがともり 同時に周囲に沢山のモニターが起動する 隊員たちが驚き呆気に取られて言う
「な…」「すげぇ~…」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルがマイクの隣の席に座りモニターを眺めている 隊員たちが顔を見合わせた後 特設ミーティングルーム内に設置されている椅子へ向かい 各々腰を下ろす 情報部員が言う
「15部隊の通信を確認 レムル駐屯地情報部への着信を確認 …通信遮断されました!」
マイクがPCを操作しながら言う
「う~ん…」
ハイケルが振り向いて言う
「どうした?」
マイクが苦笑して言う
「どうやら 無線傍受への対策を 取られてしまったみたいです」
ハイケルが言う
「レムル駐屯地が使用する周波数は 把握しているだろう?地域から特定して 同じ国防軍のコードを使用すれば 受信は問題ない筈だ」
マイクが言う
「そうは言われましても… レムル駐屯地は 国防軍の中において最も広い地域を担っているので 使用周波数の数は一番多いんですよ 地域で区切ったとしても…」
マイクがPCを操作している ハイケルが間を置いてPCを操作して 通信マイクへ言う
「レムル駐屯地情報部 聞えるか こちら 国防軍レギスト駐屯地 17部隊隊長 ハイケル少佐だ」
一瞬の後 スピーカーから マックスの声が聞える
『こちら国防軍レムル駐屯地情報部主任 マックス大尉 ハイケル少佐 お久しぶりです』
隊員たちが呆気に取られ顔を見合わせる マイクが呆気に取られていると ハイケルが通信マイクへ言う
「任務支援中にすまない 今後の参考までに この事件の情報提供を願いたい 共に…」
スピーカーから マックスの声が聞える
『フフフッ …マーガレット中佐が脱退されてしまったお陰で 我々の情報を盗み聞きする事が 出来なくなってしまったのですね?その様な堅苦しい言い回しは結構です ハイケル少佐』
ハイケルが顔を向ける スピーカーから マックスの声が聞える
『それに、もし私が断ったとしても 中佐のお力を得て どの道ご盗聴なさるおつもりでしょう?それでしたら 最初からしっかりとご覧に入れます 現国防軍において 最も優れているとされる 我らレムル駐屯地情報部の力を …とくとご覧あれ 現レギスト駐屯地 情報部のマイク少佐』
マイクが驚いて言う
「え!?何故… 私の事を」
スピーカーから マックスの声が聞える
『フフフ…』
マイクが表情を困らせる マイクの前のモニターに情報が転送され 次々に各モニターがハックされる 隊員たちとマイクが驚いて呆気に取られる スピーカーから マックスの声が聞える
『とは言え 余計な手出しをされては困りますので こちらの作業を全て見せる代わりに 貴方方の行動は止めさせてもらいます どうぞ ごゆっくりご鑑賞を』
ハイケルが視線を向けずに言う
「明日から情報部のセキュリティを強化させろ」
マイクが言う
「は、はい…」
モニターと共にスピーカーから 15部隊の状況とレムル駐屯地情報部の通信や情報が送られる 情報部員と隊員たちが呆気に取られる ハイケルが無表情に見聞きしている マイクが人知れず両手を握り締めモニターを見つめている ハイケルが気付き一度視線を向けてからモニターへ視線を戻す

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツと軍曹が定位置で構えている 13部隊長が現れ敬礼してから軍曹の下へ行き耳打ちする ラミリツが横目に見て表情を顰める 軍曹が一瞬反応してから わずかに微笑し頷いて言う
「うむ 良くやったと伝えよ!」
13部隊長が敬礼して言う
「はっ!」
13部隊長が立ち去る ラミリツが言う
「…何?今の」
軍曹が微笑して言う
「うむ!良い知らせである!我が国防軍の15部隊が 事件を無事解決!人質を救助し 且つ 犯人グループを取り押さえたとの事なのだ!」
ラミリツが一瞬呆気に取られた後 視線をそらして言う
「ふーん…?けどそれって 普通 当たり前の事じゃない?その為の 国防ー軍だろ?」
軍曹が苦笑して言う
「まぁ そうとも言うが 実際には そんなに簡単な事ではないのである!自分はまだ 実戦の経験は無いが 話を聞いただけでも 大変な事なのだ!」
ラミリツが言う
「ふーん… まぁ良いや これで 屋敷に帰らせてもらえるんだろ?床で寝るなんて もう 二度と御免だね」
軍曹が苦笑して言う
「あれは 自分やラミリツ攻長が 居眠りをしてしまったのであって 本来は 警護の途中で寝ってしまっては いけないのである!」
ラミリツがムッとして顔をそらす 軍曹が苦笑する

【 皇居 前 】

高級車がやって来てエントランス前に止まり 執事がドアを開けて待つ 軍曹が現れると 遠くからフラッシュが焚かれカメラが向く中レポーターが叫ぶ
「防長閣下!防長閣下!」「国防軍15部隊が 犯人たちを拘束したとの事ですが!」「防長閣下!一言!」
軍曹が一度マスコミへ視線を向けるが 無言で車に乗り込み 車が発車する マスコミたちが追って取材をする中 高級車がやって来てエントランス前に止まる ラミリツが現れると 遠くからフラッシュが焚かれカメラが向く中レポーターが叫ぶ
「攻長閣下!攻長閣下!」「国防軍から護送された 犯人グループは現在政府警察にて 取調べを受けているとの事ですが」「攻長閣下!この度の国防軍の働きへ 一言!」
ラミリツがムッとして言う
「…当然の事でしょ」
執事がドアを開け ラミリツが車に乗り込む マスコミたちが追って取材する中 車が発進する

【 国防軍総本部 総司令官室 】

アースがTVを見ていて 苦笑して言う
「当然の事…か ふふ…っ 子供が 生意気を言ってくれる」
電話が鳴る アースが受話器を取り言う
「…ああ、何か分かり次第 こちらにも情報を伝えて貰えるよう 政府警察へ… いや、政府長官へ 私の名を使って送って置いてくれ 今回の事件では 人質2名と共に 我が国防軍の尊い犠牲があった そちらの言葉も 添えるように」
アースが受話器を置き 気分を切り替えて言う
「さて… これで 国防軍レギスト駐屯地の問題も 一時休止か… 良い切欠になると思ったのだがな…?」
アースがノートPCを終了させる モニターに表示されていた ハイケルのプロフィールが消える

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が叫ぶ
「少佐へ敬礼っ!」
軍曹と隊員たちが敬礼し 軍曹が言い掛ける
「おはようござ」
隊員たちが軍曹の声を掻き消す大声で叫ぶ
「お早う御座いますっ!少佐ぁっ!」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが敬礼を返して言う
「お早う」
軍曹が衝撃を受けハイケルを見る ハイケルが言う
「昨夜 この駐屯地に駆け付けた隊員たち ご苦労だった」
軍曹が驚く 隊員たちの一部(1班)が敬礼する 敬礼していない隊員たち(2班)が驚いて 1班を見る ハイケルが言う
「まずは全員で通常訓練を行え」
1班が敬礼して叫ぶ
「はっ!」
ハイケルが言う
「軍曹」
軍曹がハッとして敬礼して言う
「はっ!少佐ぁ!」
ハイケルが言う
「具合はどうだ?」
軍曹が一瞬呆気に取られた後気を引き締めて言う
「はっ!ご心配をお掛けしました!もう完全に大丈夫でありますっ!」
ハイケルが言う
「そうか では 彼らと共に訓練を行い 終了次第 私へ知らせろ」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!了解いたしましたぁー!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「訓練を開始しろ」
軍曹が敬礼したまま言おうとする
「は」
1班が軍曹の声を掻き消し 敬礼して叫ぶ
「はっ!了解っ!」「通常訓練の1 開始ーっ!」
1班が気合の入った腕立てを開始する 2班と軍曹が呆気に取られる ハイケルが立ち去る 軍曹がハイケルの背を見ながら言う
「な… 何があったのだ?自分が居らない間に…」
軍曹が呆気に取られたまま1班を見て 再びハイケルの後姿を見てから 笑んで言う
「うおぉおおっ!自分もーっ!負けては居れんのだぁああっ!」
軍曹が1班を越える腕立てを開始する 2班が呆気に取られて言う
「す…」「すげぇ…」「流石 軍曹…」「で、あいつらの方は?」
2班が1班を見る 1班のメンバーが軍曹を見て更に気合を入れて腕立てをする

軍曹が立ち上がり叫ぶ
「どうしたーっ!お前たちっ!まだまだぁーっ!」
2班が腕立てをしている 軍曹の後ろに1班が立っていて叫ぶ
「まだまだぁーっ!」
軍曹が衝撃を受け驚いて振り返る 1班が気合の入った表情で言う
「軍曹っ!自分らも終了しましたっ!」
「軍曹っ!通常訓練の2が開始されるまでの間 自分らへ ご指示をっ!」
軍曹が呆気に取られた後 強く笑んで言う
「よぉおし!お前たち!通常訓練の2に先んじて 駐屯地周回 40週を与える!自分に続けー!」
1班が敬礼して叫ぶ
「はっ!有難う御座います!軍曹っ!」「軍曹に続けーっ!」
軍曹と1班が走り去る 2班が腕立てを止めて言う
「軍曹が…」「増殖した…」
2班が呆れの汗をかく

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

入り口のドアを開き ハイケルが入って来る ハイケルが周囲を見渡す しんとした室内 真剣な表情の情報部員たちがひたすらタイピングを行っている ハイケルがそれを見渡してから 視線を向けた先 マイクが真剣にタイピングを行っている ハイケルがマイクの横の席に腰を下ろし PCを起動させる

PC本体に付けられているメモリースティックが抜かれる ハイケルがそれを確認してから PCを終了させ視線を隣へ向ける マイクが真剣に考えつつタイピングを行っている

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

2班が倒れている 軍曹が叫ぶ
「えぇえいっ!お前たちっ!お前たちはそれでもっ!」
1班が言う
「軍曹っ!通常訓練は全て終了しましたっ!」
軍曹が衝撃を受け1班へ振り返る 1班が言う
「軍曹!少佐へ 終了のご連絡をっ!」
軍曹が一瞬反応してから表情を困らせて言う
「う、うむぅ~ しかし…」
軍曹が2班を見る ハイケルがやって来て言う
「終了したか」
軍曹がハッとする 1班が敬礼して言う
「終了しましたっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが言う
「よし、では」
軍曹が言う
「少佐っ!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「どうした 軍曹」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!お言葉の途中で 申し訳ありませんっ!しかしながらっ こいつらは」
ハイケルが1班と2班を見てから 軍曹へメモリースティックを渡す 軍曹が疑問しつつ受け取りながら言う
「こ…これは?」
ハイケルが言う
「昨夜の事件を記録したものだ 君を含め 昨夜駐屯地に居なかった隊員たちと共に そちらを確認しろ ミーティングルームの使用許可は得てある」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
ハイケルが1班を見る 1班のメンバーがハイケルへ強い意志を向けている ハイケルが言う
「その外の者は 第2訓練所にて 設備を使った訓練を行う 直ちに向かい 各自訓練を開始しろ」
1班が敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
1班が走って向かう 軍曹が1班の後姿を見送る ハイケルが立ち去る 軍曹がハイケルの後姿を見送ると 2班が立ち上がり軍曹のそばへ行く 軍曹が言う
「一体 どうなっておるのだ?」
2班が言う
「さぁ…?」
軍曹がメモリースティックを見て疑問する 

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】

1班メンバーが必死に訓練をしている ハイケルがそれを見ている

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

PCにメモリースティックがセットされている 軍曹と2班がそれを確認する メンバーの1人がPCを操作し 映像が流れる レムル駐屯地情報部が的確な指示を出す 15部隊がキビキビと任務を遂行している
 
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所2 】

隊員Aが安定して着地する 隊員Bがストップウォッチを切り タイムを見て驚く 隊員Aが隊員Bの下へ来るとハッとして敬礼する 隊員Bが疑問すると 隣に居たハイケルが言う
「上出来だ」
隊員Bが振り向き驚く 隊員Aが一瞬呆気に取られた後 喜んで言う
「はっ!有難う御座いますっ!少佐!」
ハイケルが立ち去る 隊員Bが呆気に取られている 隊員Aが大喜びで言う
「バイちゃん!タイムは!?タイム~~!少佐に褒められちゃった~!」
隊員Bが苦笑しながら見せて言う
「う、うん…」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「…え?」
隊員Bが苦笑して言う
「5分12秒32… この前より… 10秒 遅いんだけどなぁ?」
隊員Aが衝撃を受け言う
「え~~っ!?そ、そんなぁ…」
隊員Aが落ち込んでいる 隊員Bが苦笑して言う
「まぁまぁ、5分02秒32も 5分12秒32も 四捨五入すれば 同じ5分じゃない?落ち込むなよ?」
ハイケルの前に1班が集まる 1班のメンバーが呼ぶ
「おーい お前らー 集合だー!」
隊員Aと隊員Bが慌てて集合に加わる ハイケルが言う
「お前たちは 全員合格だ 今は居ない隊員たちとは異なり 午後からは特別訓練を行う 休憩が終わり次第 車両保管所へ集合しろ 以上だ」
1班が敬礼して言う
「はっ!了解しましたっ!少佐っ!」
1班がバラける ハイケルが立ち去ろうとすると 隊員Aが言う
「あ、あのっ!少佐!」
隊員Bが驚く ハイケルが気付き 向き直って言う
「何だ」
隊員Aが言う
「じ、自分は!休憩時間を返上し もうしばらく この場所の訓練を続けても 宜しいでしょうかっ!?」
ハイケルが言う
「…それは構わないが 私から見て お前にこれ以上 この施設を使った訓練は 必要ない」
隊員Aが言う
「自分は以前 先程よりも10秒以上早いタイムを出せていました 今日のタイムが遅いと言う事は 何か失敗があったのだと… 自分は!それを確認し修正したいと思います」
隊員Bが隊員Aを見つめる ハイケルが隊員Bを見て言う
「バイスン隊員」
隊員Bがハッとして言う
「は、はいっ!?」
ハイケルが言う
「先ほどの アラン隊員の訓練について 感想を言え」
隊員Aが驚き疑問する 隊員Bが一瞬焦った後 思い出すように言う
「は、はっ!了解… えっと… 自分が思いますに 先ほどのアラン隊員の訓練は 全体的に安定していて …無駄な力を 一切使っていなかった様に 思います」
隊員Aが驚く ハイケルが言う
「その通りだ」
隊員Aがハイケルを見る ハイケルが言う
「機動部隊の訓練は 競技ではない 必要なのはタイムより 各施設を越えるのに必要とされる知識 それを基にした安定性だ スピードを重視するあまり 体力を浪費するのでは意味が無い」
隊員Aがハッとして 以前の自分の姿を思い出す ハイケルが微笑して言う
「分かったか?」
隊員Aが敬礼して言う
「はっ!分かりました!ご指導を有難う御座います!少佐!」
ハイケルが言う
「礼なら バイスン隊員へ言え …それと 午後の訓練はハードなものになる 休憩は得ておくべきだろう」
ハイケルが立ち去る 隊員Aが敬礼して言う
「はっ!承知致しましたっ!少佐っ!」
隊員Bが呆気に取られている 隊員Aが喜んで叫ぶ
「うおぉおお!聞いたかーっ!?バイちゃん!?」
隊員Bが呆気に取られたまま言う
「う、うん…」
隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「バイちゃん!…ありがとお~~っ!!」
隊員Aが隊員Bへ抱き付く 隊員Bが衝撃を受け 嫌がって叫ぶ
「ぎゃーっ 何すんだっ!気持ち悪いっ!離れろっ!離れろってー!」
隊員Aと隊員Bが戯れている

【 マイルズ地区 郊外 】

1班が建物内の訓練を行っている

隊員Aが銃を持ち 壁を背に 先を伺いながら警戒し進む 部屋の中に隊員Bが隠れていて 外を確認し飛び出した瞬間 隊員Aと隊員Bが鉢合せになる 隊員Aが思わず言う
「うわぁああっ!び、びっくりしたぁ」
隊員Bが尻餅をついて言う
「お、俺も…っ」
隊員Aが苦笑し隊員Bへ手を差し伸べる 隊員Bが苦笑してその手を取って立ち上がると言う
「訓練でも こんなに驚くって言うのに… 15部隊の連中… すごいよなぁ?」
隊員Aが言う
「ああ… 俺なんて 実戦だったら ここに来るまでに 3回は撃たれてる」
隊員Bが言う
「あー それじゃ 後1回は大丈夫なんじゃない?」
隊員Aが苦笑して言う
「俺は軍曹じゃないんだから 1回で無理だって」
隊員Aと隊員Bが笑い 隊員Bが言う
「ねぇ?ここからは 2マンセルでも良い?俺、正直 1人じゃもう神経持たないんだ 頼むよー」
隊員Aが微笑して言う
「ああ、俺もその方が良い 点数下がるけどな?」
隊員Bが言う
「うん 2マンセルで半分だけど 2人で倍倒せば 同じ!」
隊員Aが言う
「ああ!そうしようぜ!」
隊員Bが言う
「よし!後ろは任せろ!」
隊員Aが苦笑して言う
「…って 後ろかよ?まぁ良いか よし!後ろは任せた!行くぜ?」
隊員Bが頷き2人で向かう

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

ノートPCにメモリースティックが付けられていて ハイケルがモニターを見ている 軍曹が居て ハイケルが言う
「君に任せた方の隊員たちは どうだった?」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!その… 彼らは…」
ハイケルが軍曹を一瞥してから モニターへ視線を戻して言う
「思わしくなかったか」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「うっ あ、い、いえ…っ」
ハイケルが言う
「君の反応を見れば分かる」
軍曹が一度視線を落としてから 改めて言う
「いえっ!彼らは 15部隊の… そちらの映像を見た事よりも …少佐が」
ハイケルが軍曹へ視線を向ける 軍曹が視線をそらす ハイケルが言う
「私が何だ?」
軍曹が困ってから改めて言う
「いえっ!自分はっ!レギストへ復帰しましたがっ!少佐や 少佐と共に別訓練を行った連中と!共に 訓練が出来ずっ 少々 …残念に!思いましたでありますっ!」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹がハイケルを見続ける ハイケルが言う
「分かった」
軍曹が疑問する ハイケルが言う
「明日は 全員で同じ訓練を行う」
ハイケルが席を立つ 軍曹が言う
「少佐っ」
ハイケルが立ち止まる 軍曹がハイケルへ向いて言う
「何故 隊員たちを 2班に振り分けるのでありますか!?」
ハイケルが言う
「私が振り分けた訳ではない 彼らが」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「自ら戦いへの意志を示した 私はその彼らと共に 戦う事を選ぶ」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「もちろん 他の隊員たちも 同じレギストの仲間だ 共に戦いはするだろう だが 先行隊員となるか それ以外の者になるかは大きな問題だ それを見極める」
ハイケルが立ち去る 軍曹が間を置いて視線を落とす

【 マイルズ地区 郊外 】

ハイケルが言う
「これより 訓練用蛍光弾を使用した 実戦模擬訓練を行う 昨日この施設を確認した班は 犯人グループの役を行え 他の者は この施設へ逃げ込んだ 犯人グループを拘束する事を目的とする 但し 犯人グループとの戦闘になった際は 他の隊員との無線を使用し 残りの犯人グループの人数を確認 必要最低限の犯人数が 確保される場合は その他犯人グループの射殺もいとわない」
隊員たちが驚く ハイケルが言う
「これは 実戦においても言える事だ 訓練用蛍光弾を身に受けた者は その場で倒れ 仲間の救護を待て 仲間の救護を行うか 犯人グループの拘束を優先するか それは 君たちへ任せる 以上だ …訓練を開始しろ」
1班が敬礼して言う
「はっ!」
2班が遅れて敬礼し 隊員たちが施設へ向かう 軍曹がハイケルへ向いて言う
「少佐 自分は…?」
ハイケルが言う
「加わるのなら 後攻部隊へ加われ だが…」
ハイケルが横目に軍曹を見る 軍曹が疑問する ハイケルが言う
「君は攻撃出来るのか?」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが言う
「実戦において 私は 君を投入する事はしない」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?」
ハイケルが苦笑する
「何を驚く 防長閣下?」
軍曹が一瞬間を置いてから気合を入れて言う
「いえっ!自分はっ アーヴァイン軍曹でありますっ!従いまして!後攻部隊と共に 訓練に励むでありますっ!」
軍曹が敬礼してから走って向かう ハイケルが間を置いて向かう

施設内

隊員Aが表情を怒らせて言う
「このーっ!」
隊員Aが銃を放つ 後攻隊員が蛍光弾を受け倒れる 隊員Aがニヤリと笑んで言う
「へっへーん 少佐に一目置かれている このアラン様をなめたら…」
隊員Aの胸に蛍光弾が当たる 隊員Aが呆気に取られる 隊員Bが衝撃を受け叫ぶ
「ぎゃーっ!アッちゃんがやられたー!?」
隊員Aが呆気に取られて視線を向ける 隊員Cがニヤリと笑んで言う
「やりぃ!」
隊員Aが言いながら倒れる
「やーらーれーたー…」
隊員Aが倒れる 隊員Bが慌てて呼びながら駆け寄る
「アッちゃんっ」
隊員Aが言う
「馬鹿っ!来るな!お前までっ」
隊員Bが隊員Aへ向かうと 後攻隊員たちが銃を撃ちまくる 隊員Bが怒って言う
「よくもアッちゃんをー!」
隊員Bが銃を乱射する 後攻隊員たちが驚いて言う
「ま…まじかよ…?」
後攻隊員たちが自分の受けている蛍光弾を確認して倒れる 隊員Bが蛍光弾を受けていない自分の体を見てから驚いて言う
「見たか!アッちゃん!仇は打ったぞー!」
隊員Aが怒って言う
「お前っ 俺の死体を盾にしただろーっ!」
隊員Aの体が蛍光弾だらけになっている 隊員Bが笑って言う
「にひひっ バレた?」

別場所

軍曹が銃を持って言う
「よし!では 自分が先行するっ!お前たちは 自分の無事を確かめたら 付いて来るのだっ!」
軍曹の後方に居る隊員たちが頷く 軍曹が言って駆け出す
「行くぞーっ!」
軍曹が通路の先へ出て銃を構える 1班の隊員が居て ハッとして軍曹へ銃を向ける 軍曹がハッとして銃を撃とうとするが指が動かない 軍曹が驚いて思う
(指がっ… 動かんっ!?)
軍曹の後方に居た隊員Xが飛び出して来て叫ぶ
「軍曹ーっ!」
飛び出した隊員Xが銃を撃つのと同時に 1班の隊員が銃を撃ち 2人が相撃ちになる 軍曹が焦って言う
「なぁっ!?な、何故飛び出して来たっ!?自分はっ!自分の無事を 確かめてから来いとーっ!」
隊員Xが 軍曹を見上げて言う
「す、すみません軍曹 自分は… つい 軍曹を助けたいと…」
隊員Xが倒れる 軍曹が泣きながら叫ぶ
「うおぉおおーーっ!何と上官思いなぁあ!死ぬなぁっ!必ず助けるーっ!待っておれーっ!」
軍曹が隊員Xを担いで走って行く 残された隊員と1班の隊員が呆れて言う
「す… 凄い まるで 実戦の様だ…」 「ああ… 訓練に見えない」
軍曹が走り去った場所を 物陰からハイケルが腕組みをして見ている

【 政府警察 拘留所 】

シェイムが見下ろして言う
「国防軍の部隊など 取るに足らないのではなかったのか?」
拘束された犯人たちが顔を上げる リーダーが言う
「くっ… 先日の国防軍16部隊が 余りにも余裕だったから …油断したんだっ」
シェイムが言う
「言い訳なら もっとマシなものを用意したまえ …君たちに残された道は2つだ このまま ここで国防軍16部隊の8名と人質2名 合わせて10名の命を奪った殺人犯として 実刑を受けるか もしくは…」
リーダーが言う
「依頼は必ずやり遂げるっ」
シェイムが言う
「分かっているのなら結構 次の策を用意した …言って置くが 今度こそ 失敗は許されない」
犯人たちが焦りの表情を見せる シェイムが苦笑して言う
「だが 安心しろ 今までとは違い 人質も篭城も不要 …簡単なお芝居だ」
犯人たちが疑問し顔を見合わせる

【 マスターの店 】

マスターが作業をしながら言う
「へぇ~ 遂に実戦模擬訓練に突入か 懐かしいね~?」
ハイケルが苦笑して言う
「明日からは 以前良く使用していた マイルズ郊外にある あの屋敷跡を使う だが今度は レギスト機動隊員60名を使っての大掛かりなものだ 俺とお前… いや、実際には俺1人であった あのバーチャル訓練とは 違う」
マスターが苦笑して言う
「しょうがねーだろ?あの頃は 俺とお前の2人しか居なくて いつも部隊訓練が終わった後に こっそり行ってやってたんだ 見回りの管理人じーさんに ヒヤヒヤしながらな?プククッ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ヒヤヒヤしていたのは その現場に居た俺だけだろう?おまけに お前の撤退ナビゲートの間違で見つかった俺は 思いきり頭を殴られたんだぞっ」
マスターが笑って言う
「こんな時間に 子供が戦争ごっこなんて やってるんじゃない!ってなー!?プククククッ!」
ハイケルが不満そうにマスターを見る ハイケルの携帯が鳴る ハイケルとマスターが気付き マスターが言う
「この音… 別部隊の出動通知メールかっ」
ハイケルが携帯を取り出しメールを確認して言う
「国防軍13部隊の緊急出動…」
ハイケルとマスターが顔を見合わせ マスターがTVを付ける TVの映像が切り替わり キャスターが言う
『たった今入ったニュースです 先ほど 午後6時40分 警察と皇居へ 脅迫犯行声明が出されたとの事です 内容は 先日国防軍15部隊が拘束した 犯人グループの釈放 それが行われない場合は 彼らが果たせなかった 女帝陛下のお言葉を 直接、頂きに参上する との事です 警察は この事件を国防軍へ委託 その委託を受け 現在国防軍13部隊が緊急配備』
ハイケルが立ち上がる

【 皇居 】

13部隊員たちが警備に付いている ぞくぞくと国防軍の車両が集まり増員されて行く 外にマスコミが押し寄せている 高級車が入って来て 玄関の前で止まる 軍曹が降り立つ

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが剣を着いて立っていて考える

【 回想 】

ラミリツが驚いて言う
『兄上…っ それじゃ あの2つの事件は どちらも兄上がっ!?』
シェイムが微笑して言う
『次なる奴らは陛下を狙って御所へ押し入る だが 奴らは決してお前を傷付けはしない 全て演技だ そして、その奴らには 斬り付けられれば 本物と見間違うほど巧妙な血飛沫が舞う 加工を施した上着を渡した …と 奴らは本気で思っているだろう だが』
ラミリツが疑問する シェイムが苦笑して言う
『例え一般の者なら誤魔化せようが その様な紛い物 本物を知る者には見破られる筈だ 従って 奴らに渡した上着に その様な加工などは 一切施されてはいない』
ラミリツが呆気に取られて言う
『それじゃ…?』
シェイムが微笑して言う
『エーメレス 私と取引をした 奴らを 全員始末しろ』
ラミリツが驚き目を見開く シェイムが言う
『剣術の稽古は済んでいるだろう?切れ味の良い 本物の剣で行えば 人を殺める事など簡単だそうだ』
ラミリツが怯えて言う
『そ、そんな… 僕は…っ』
シェイムが言う
『これが失敗すれば 私もお前も… いや、メイリス家は お終いだ …やれっ!』

【 回想終了 】

ラミリツの手が震える ラミリツがハッとして手を押さえ僅かに視線を上げる 視線の先 監視カメラが起動している ラミリツが視線を正面へ戻して 冷や汗と共に唾を飲み込む ドアが開かれ ラミリツが慌てて構える 軍曹が現れラミリツの様子に疑問して顔を向ける ラミリツが肩の力を抜いて 浮かない表情で一度視線を落としてから正面を見据える 軍曹が疑問しつつも 女帝の御簾の前に跪き言う
「陛下!陛下の御身は 必ずや!自分とラミリツ攻長が お守りするでありますっ!」
御簾の先に変化は無い ラミリツが横目に軍曹を見てから 視線を戻し表情を困らせる 軍曹が定位置に着き 盾を床に着く 重い音が響く ラミリツが剣を握り締める 

【 国防軍レギスト駐屯地 正門前 】

乗用車が到着する 運転席に居る隊員Aが衛兵にIDを見せる 衛兵が敬礼して合図を送ると もう1人の衛兵が門を開ける 隊員Aが敬礼を返してから言う
「あ、そうだ 少佐はー …あ、いや ハイケル少佐が居るかどうかって 分かるか?」
衛兵が言う
「ハイケル少佐なら いつも通りの時間に駐屯地を後にしていたが 事件を知って戻ってくるかもな?お前の他にも レギストの連中が戻って来てるぜ お疲れ!」
隊員Aが一瞬驚いた後微笑して言う
「そうか 分かった お疲れさん!」
隊員Aが敬礼して車を発車させる

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員Aがやって来る TVの前に1班たちが集まって居て 隊員Aの姿に気付き言う
「おせーぞー?」
隊員たちが笑う 隊員Aが苦笑して言う
「悪ぃ悪ぃ 風呂入っててさ?これでも車 飛ばして来たんだぜ?」
隊員Bが後方を見渡して言う
「少佐は… 今日は来ないのかな?」
隊員Aが言う
「まだ駐屯地に戻ってきてねーって さっき 正門の警備の奴に聞いたよ」
隊員が言う
「そっか じゃぁ 情報部のあのミーティングルームには 入れないな」
隊員が言う
「けどよ、今回は…」
隊員たちがTVを見る TVに女帝の間の映像が映っていて レポーターが言う
『この様に 陛下の御所の様子は しっかりと監視がなされ 我々を含む大勢の目に 見守られているとも取られます この状態であるなら 犯人たちによる 陛下の誘拐なども無いかと思われ』
隊員たちが疑問して言う
「確かにこれなら 陛下を誘拐するって事は 難しいだろうな?」
「けどよ?なんかこれ… 可笑しくねーか?」
「うーん まぁ良いだろ?これなら 軍曹の姿も見れるしよ?」
隊員たちが微笑して言う
「そうだな!何かあれば 軍曹が陛下をお守りしてくれるさ!」「軍曹ー!」「軍曹ー!がんばれー!」
隊員たちが笑う ハイケルが食堂に現れ 隊員たちの笑い声に疑問する

【 皇居 外 】

13部隊の隊員たちが警戒している

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが緊張して剣を握り締める 軍曹が気付き言う
「ラミリツ攻長」
ラミリツがハッとして慌てて言う
「な、何っ?」
軍曹が一瞬呆気に取られる ラミリツがハッとして視線をそらす 軍曹が苦笑して言う
「そんなに心配しなくても 大丈夫なのだっ!皇居の周りは 国防軍13部隊がしっかりと守りを固めている!犯人たちが入り込む隙などは無いのだ!」
ラミリツがムッとして言う
「…アンタこそ 少しは緊張した方が良いんじゃない?この前のパレードの時なんかは そっちの方が ヒヤヒヤしてたくせにっ」
軍曹が一瞬呆気に取られた後笑って言う
「ああ!あれは 自分に与えられる使命と 陛下をお守りする術が無い事に ヒヤヒヤしていたのだ!今の自分には この盾がある!」
軍曹が一度盾を持ち上げ嬉しそうに床に下ろす 重い音が響く 軍曹が言う
「これだけ頑丈なものならば もはや、銃弾の4発5発など 恐れるに足らんのだ!陛下の御身は しっかりと自分が死守するのである!」
ラミリツが言う
「いくら丈夫な盾があったって ずっと敵の攻撃を防いでいるつもり?どーせまた 武器は回収されたんだろ?」
軍曹が言う
「いや!そうではないっ!武器は 回収されると分かっておったから 最初から持って来なかった!」
ラミリツが衝撃を受け怒って言う
「アンタ 本当に馬鹿だよっ!こんな時にっ!」
軍曹が驚き呆気に取られる ラミリツがハッとして視線をそらし 正面に向き直る 軍曹が呆気に取られたまま言う
「ラミリツ攻長…?」

【 皇居 前 】

1台のトラックがやって来る 13部隊員たちが顔を見合わせ 隊員が運転手の下へ行く

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

1班隊員たちとハイケルがTVを見ている TVに女帝の間の映像が映っている キャスターが言う
『尚、警察は 犯人の要求を断固拒否 現在警察省長に拘留されている 犯人グループの釈放には応じないとの事です これにより 陛下の御身に危険が及ぶのではないかとの意見がある中 陛下と共にある 皇室関係者に話を伺った所 犯人たちの凶悪且つ独創的な考えには 共感出来ないとの事 それを受け政府警察は国防軍と連携を取り 今後も犯人たちとは 徹底抗戦の構えを見せています』
隊員たちが言う
「…なぁ これってひょっとして すっげー長期戦になったりするんじゃねーかな?」
「そうかもしれないな?人質も取られてないし 犯人からは特に 時間の指定とかもない訳だし」
「けど、警察が釈放しないって言ったからには 答えが出た訳だから 犯人たちも動くかもしれねーぜ?」
「なるほど それもあり得るな?」
隊員たちが後方を見る ハイケルが考えている TVの映像が切り替わりレポーターが言う
『たった今っ 皇居エントランス前に 一台のトラックが入りました!警察とも国防軍とも異なる 無印のトラックです あのトラックは一体っ!?』
隊員たちとハイケルが反応してTVへ向く TVの画像が慌しくなる

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが視線を強める

【 回想 】

シェイムが言う
『当日は長期戦が予想される事を前提とし 陛下のお気持ちを和らげる為 手段をこうじる だが、それこそが…』

【 回想終了 】

ラミリツが表情を困らせつつ思う
(何が来るかは分からない けど… そいつらは 僕を傷付けはしないんだ… だからっ 僕は痛くなんかないっ 怖くなんか…っ)
ラミリツの手が震える ラミリツがその手を押さえる 軍曹が見つめている

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】

TVからキャスターの声がする
『…尚 陛下の心身を気遣い 皇居へは オーケストラの一団が入るとの連絡が 先ほど警察への確認で分かりました このオーケストラの身柄は 政府警察並びに 国防軍が正式に確認を取っているとの事で』
隊員たちが肩の力を抜いて言う
「なんだ… そうなのかぁ」
「びっくりしたぜ~」
ハイケルが視線を強める

【 皇居 前 】

13部隊員が書面を確認してから 運転手へ書面を返し言う
「では、一応 オーケストラの団員と 楽器の方を確認させて頂きたい」
運転手が言う
「ああ、オーケストラの楽器は丁重に扱ってもらわねば困る 事前に連絡はしてあるが 隊長さんが直々に確認してくれるって」
13部隊員が呆気に取られて言う
「え?…そうなのか?」
運転手が言う
「ああ、ちゃんと連絡してあるよ?えっと… ああ、そうそう マーレー少佐さんだ」
13部隊員が呆気に取られて言う
「う、うむ… では 今 連絡を…」
13部隊員がイヤホンを押さえ言葉を発そうとすると マーレーがやって来て言う
「ああ、到着したか よし、私が確認をする 荷台を開けてくれ」
運転手が降りながら言う
「はい、分かりました…」
マーレーと運転手が目配せをして 荷台へ向かう

【 皇居 女帝の間 】

役人が現れて言う
「陛下 申し上げます これより陛下へのご負担を少しでも和らげられればと ささやかながら このメイス地区を代表する 小オーケストラ楽団による演奏会が」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なっ!?ペジテの姫が 竪琴を奏でる夜に その姫の前で 演奏会だとっ!?」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

ハイケルが言う
「おかしいな…」
1班隊員たちが驚き振り返る ハイケルが言う
「ペジテの姫である陛下は 毎夜竪琴を奏でる事が役目だ 例え 事件が起きていようとも その陛下の前で 音を立てるとは… 気に入らん」
隊員たちが言う
「ペジテの姫… アールスローン戦記?」
「確かに… 陛下の兵士である 防長閣下や攻長閣下は 現代も居るけど…」
「その防長閣下が 軍曹だったりもするけど…」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルはTVを見据えている 隊員たちがこっそり言う
「少佐って あーいうの信じるタイプだったのか?」
「意外だな?」
隊員たちがハイケルをこっそり見る

【 皇居 女帝の間 】

オーケストラが用意を進めている ラミリツが表情を強張らせて思う
(き… 来たっ!?…どうしようっ!?)
ラミリツが軍曹を見る 軍曹は不満そうにオーケストラたちを見つめている ラミリツが俯き強く目を閉じて剣を握り締める

【 皇居 前 】

再びトラックがやって来る 13部隊員が気付き 運転手へ向かい言う
「あんたらも さっきのオーケストラの人か?」
運転手が言う
「…ああ そうだ 荷台の確認なら もう終わっている ほら、マーレー少佐のサインだ」
運転手が書類を見せる 13部隊員が一瞬呆気に取られて言う
「え?あ、ああ 確かに…」
13部隊員が周囲を見渡して言う
「少佐… いつの間に?」
運転手が言う
「じゃ、行かせてもらう」
13部隊員が困りつつ言う
「あ… ああ…」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩室 】

1班がTVを見つめている TVの映像が切り替わり レポーターが言う
『あ、たった今 もう一台のトラックが…』
隊員たちが言う
「あれもオーケストラか?」
「そうかもな?」
ハイケルがTVを見ていると ハイケルの鼓動が急に高鳴る ハイケルが目を見開き左胸を押さえ 俯いて僅かに声を出す
「…クッ」
隊員たちは気付かずTVを見ている TVからレポーターの声が届く
『…どうやら あちらも同じく オーケストラのトラックだった様です 先ほどと同じ様に 皇居のエントランスへと向かって行きました』
隊員が言う
「…う~ん けどよぉ?さっきの御所の映像だと 最初のトラックの人以上に オーケストラの道具やメンバーって 居なそうな感じだった様な…」
ハイケルが隊員たちの後ろで苦しんでいる

【 政府本部 】

シェイムがTVモニターを見ていて言う
「うん?もう一台…?どう言う事だっ!?」
シェイムが焦り 受話器を取る

【 皇居 エントランス 】

役人たちが驚いて言う
「なっ 何をする!?やめっ!」
役人たちが次々と殴り倒される ガイズのメンバーがイヤホンマイクへ言う
「よしっ 退路は確保した …ターゲットへ向かう」
イヤホンから声が届く
『了解 御所では オーケストラの演奏が 間もなく開始される模様 演奏開始を待ち 同時に襲撃を決行しろ』
ガイズのメンバーが御所の入り口左右に待機する

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員の1人がふと気付き 振り返り驚いて言う
「少佐っ?」
隊員たちが声に驚き振り返る 隊員が言う
「少佐っ!?大丈夫ですかっ!?少佐っ!?」
隊員たちが慌ててハイケルの近くへ集まる ハイケルが身を折り息を切らせつつ言う
「はぁ…はぁ… 大丈夫だ… 問題 ない…っ」
隊員たちが心配して言う
「しかしっ」
「医務室へ向かわれた方がっ」
ハイケルがはっとTVへ顔を向ける 隊員たちが反応して思わずTVを見る

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが気付く 軍曹が疑問する 演奏を開始しようとしていたオーケストラのメンバーが 楽器を放り拳銃を向ける 軍曹が驚いて言う
「なっ!?」
ラミリツが剣を抜き声を上げて向かう
「やぁあああっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちが驚いて言う
「なっ!?」
TVからキャスターの慌てた声が聞える
『なっ!何と言う事でしょうっ!オーケストラの演奏者たちが!』
TVの映像が一瞬乱れ 扉が乱暴に開かれ 人が押し入る 隊員たちが驚いて言う
「今度は何だっ!?」
ハイケルが目を見開き 即座に走り出す 隊員たちが驚き振り返って叫ぶ
「少佐っ!?」
TVの映像が戻り 女帝の間にガイズのメンバーが入り込む キャスターが叫ぶ
『た、大変ですっ 陛下の御所に 今度は武装集団がっ!』
隊員たちが驚き見る 

【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】

ハイケルが走って来て ジープに飛び乗り エンジンを掛けると同時にサイレンのスイッチを押す

【 国防軍レギスト駐屯地 正面入り口 】

警備兵がサイレンの音に疑問し振り返ると ジープが車両保管所のシャッターを吹き飛ばして出てくる 警備兵たちが驚き叫ぶ
「きっと ハイケル少佐だっ!」
「やばいぞっ!門を開けろーっ!」
警備兵たちが門を開けると 門ギリギリをすり抜け 正面のガードレールに当たりつつ ジープが走り去って行く 警備兵たちが呆気に取られる

【 車内 】

サイレンを鳴り響かせながら ハイケルが運転している 息を切らせ ハンドルを握る手を握り絞め言う
「く…っ なんだっ!?何故 俺は!?俺はっ!?」
ハイケルがアクセルを踏み込む

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが驚いて言う
「な、何っ?他にもっ!?」
軍曹が叫ぶ
「ラミリツ攻長!前をっ!」
ラミリツがハッと前を向くと ガイズのメンバーが銃を向け撃つ ラミリツが目を見開く 甲高い音が鳴り ラミリツが強く閉じていた目を開き驚く
「っ!?」
ラミリツの前に軍曹が盾を構えていて言う
「ラミリツ攻長っ!自分はっ!陛下をお守りしなければっ 自分に代わり 奴らを倒してくれっ!」
ガイズのメンバーが女帝の御簾へ向かう 軍曹がガイズのメンバーをタックルして 倒れた相手を盾で床に押し付ける ラミリツがガイズのメンバーを見る ガイズのメンバーが銃を向けるが銃がシャムる ガイズのメンバーが舌打ちしつつ銃を捨て ナイフを抜く ラミリツが剣を持ちながら怯え一歩後ず去る 軍曹が叫ぶ
「ラミリツ攻長!」
ラミリツが顔を上げると剣を構えて叫ぶ
「やぁあああっ!」
ラミリツがナイフを持ったガイズへ剣を振り下ろす

【 皇居 前 】

13部隊員がイヤホンを押さえながら言う
「何だって!?聞えないぞっ!?…うん?」
13部隊員がふと顔を上げると マスコミたちが後方を見ていて 騒ぎが悲鳴に変わり 慌てて門の前を開ける その門を目掛け ハイケルの運転するジープが突っ込んで来る 13部隊員が驚き銃を向け叫ぶ
「なっ 何だっ!?止まれっ!止まらんと… のわぁああっ!」
13部隊員が飛び退いた所をジープが突っ込み 皇居前を固めていた隊員たちが慌てて退避する ジープが皇居エントランスに突っ込む

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが悲鳴を上げる
「あぁああっ!い、痛いっ 痛いよっ やめてぇえ!」
ガイズがラミリツを押し倒し肩にナイフを刺している 軍曹が叫ぶ
「ラミリツ攻長っ!…ぐっ!」
軍曹にガイズたちが銃を乱射する ラミリツへ攻撃していたガイズが軍曹を見て ナイフを抜き軍曹へ言う
「そっちも やっちまえっ!」
ガイズが軍曹へ向かう 軍曹がハッとする ガイズが軍曹へナイフを振り下ろす 軍曹が顔を上げると 銃声が鳴り 軍曹へ振り下ろされていたナイフが弾け飛ぶ 軍曹が驚き顔を向けて叫ぶ
「しょ…っ!?」

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVを見ていて叫ぶ
「「少佐ぁあーーっ!?」」

【 皇居 前 】

レポーターがカメラに向かって焦って言っている
「先ほど!一台のジープが 我々報道陣や 国防軍の隊員たちを抜け 皇居エントランスに突っ込みました!これにより!」
マーレーが叫ぶ
「13部隊A班!皇居内へ向かえー!」
13部隊A班が皇居エントランスへ向かう レポーターが言う
「た、たった今!国防軍の一部の隊員たちが!皇居内へと!」

【 皇居 女帝の間 】

ラミリツが肩を押さえて四つん這いになって顔を上げる 視線の先 ハイケルがガイズへ向かい 銃を乱射 体術も利用して次々にガイズのメンバーを倒して行く ラミリツが言う
「…なん なの… あいつ…」
ハイケルが走りながらガイズの撃つ銃弾を回避し 手にしている銃を撃つが 弾切れの音が響く ハイケルが舌打ちをして銃を捨て サーベルを抜く ハイケルが声を上げ ガイズのメンバーへサーベルで攻撃を繰り出して叫ぶ
「あぁああーーっ!」
ガイズがハイケルへ銃を向けるが ハイケルは銃弾を避けガイズを切り捨てる 軍曹がハッとして叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが振り返った先 ガイズが遠くから銃を撃つ ハイケルが瞬時に構え 銃弾を全てサーベルで弾く

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVに釘付けになって叫ぶ
「でたぁー!」「少佐お得意の!」「銃弾サーベル弾き!!」
隊員Bが言う
「けどっ まずいぞ!少佐にはもう 武器がないっ!あれをやっちゃうと サーベルがっ!」
隊員たちがハッとして隊員Bを見る

【 皇居 女帝の間 】

ハイケルが銃を撃ったガイズへ向かい サーベルを振るう ガイズが悲鳴を上げ倒れる ハイケルに向け銃が放たれる ハイケルが走りガイズへ向かいサーベルを振りかざす ガイズが拳銃でサーベルを受け止める サーベルが音を立てて折れる ハイケルが目を見開く ガイズがハイケルへ銃を向ける ハイケルが一歩後ず去り周囲へ視線を巡らせハッと気付く ガイズが銃を放つと同時にハイケルが走る ラミリツが自分に向かって来るハイケルに驚いて言う
「なっ なにっ!?来ないでっ!」
ラミリツが慌てて身を引くと ハイケルがその前にあったラミリツの剣を手にする ラミリツが驚く ガイズが銃を放つ ハイケルがラミリツの剣の刃身で銃弾を防ぎ立ち上がると 瞬時に剣を構えてガイズへ攻撃する ガイズが銃を撃ちつつ斬られ倒れる ハイケルが剣を構え周囲を見渡す ガイズが怯え後ず去る ハイケルが銃を向けたガイズに気付き向かい 叫びながら剣を振り上げる
「死ねぇえーっ!」
ガイズが怯え逃げようとする 軍曹が叫ぶ
「少佐ぁあー!」
ハイケルの剣が ガイズのギリギリで止まる ガイズが怯えてうずくまっている 13部隊A班が入って来て銃を構える ハイケルが13部隊A班を見る 13部隊A班のメンバーが銃を向けつつ呆気に取られてハイケルを見る 軍曹が叫ぶ
「少佐!」
ハイケルが数回瞬きをしてから正気に戻って言う
「…俺は?」
ハイケルが呆気に取られゆっくりと後方へ向き 軍曹を見て言う
「…軍曹?」
軍曹が苦笑し 立ち上がるとラミリツを見て ラミリツの横へ膝を着き ラミリツの傷を確かめる ラミリツが隠そうとする 軍曹がラミリツの腕を掴むとラミリツが悲鳴を上げて言う
「痛いっ」
軍曹が13部隊へ向いて言う
「すぐに救護の者をっ!」
13部隊隊員がハッとして敬礼して言う
「…はっ!了解っ!」
13部隊隊員が外へ向かう 軍曹が13部隊A班へ向き直り言う
「何をしている!賊を拘束しろ!」
13部隊隊員たちがハッとして武器を下ろし敬礼して言う
「はっ!防長閣下!」
13部隊隊員たちがガイズや先の犯人たちを拘束する ハイケルが自分の持っている剣を見る 軍曹がやって来てハイケルへ言う
「そちらの剣は 自分が ラミリツ攻長へ お返しして置きます」
ハイケルが軍曹を見上げ一瞬驚き視線をそらしながら言う
「あ… ああ…」
ハイケルが軍曹へ剣を渡す 軍曹が柄と刃を支え持って剣を受け取り 微笑して小声で言う
「また 助けに来て頂きまして 自分は 嬉しいであります 少佐っ」
ハイケルが呆気に取られて軍曹を見る 軍曹が一瞬笑みを見せてから 姿勢を正し平然とラミリツの下へ向かって行く ハイケルが軍曹の背を見てから周囲を見渡す 周囲では13部隊A班が犯行者たちを拘束している ハイケルが間を置いて言う
「…俺が?」
軍曹がラミリツの下へ行くと 13部隊の隊員がラミリツの傷へ応急処置を施している 隊員が言う
「攻長閣下 治療の為 失礼致します」
隊員がラミリツの上着を開き 傷の様子を見る 軍曹が傷を見て一度表情を落とすと 隊員が応急処置を施す 上着がずれラミリツの左胸にあるアールスローンの刻印が見える 軍曹がそれを見て驚く

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVを見つつ呆気に取られて言う
「す… すげぇ…」
「あれが… 俺たちレギストの 隊長…」
「俺ら 無敵じゃねぇ?」
隊員たちが溜息を付いて肩の力を抜く
「「はぁ~~…」」
隊員AがTVの映像を見て言う
「お?何だ 皇居の病院って 御所の中には無いのか?」
TVの映像に ラミリツが13部隊員に支えられながら移動している姿が映る 隊員Cが言う
「ああ、確か 御所にある医療施設は 陛下専用だから 他の奴は 同じ敷地内だけど別の建物にある 医療所へ行かないといけないらしい」
隊員たちが納得して言う
「へぇ~」
隊員たちがTV映像を見る ラミリツが運ばれる中無数のフラッシュが焚かれている ラミリツの右肩に包帯が見え 開かれた上着の下に 刻印が見え隠れする 隊員たちがTVを見つつ言う
「所で… これで事件は解決 だよな?」
「だな?俺ら…どうする?」
「…少佐 は?」
隊員たちが顔を見合わせTV画面を見る レポーターが言う
『あ!ハイケル少佐ですっ!先日のパレードに続き 今回も素晴らしい攻防を披露し 陛下をお守りした 国防軍17部隊レギストの隊長 ハイケル少佐が!今!』
TV画像にハイケルの姿が映る 大勢のマスコミにもまれる中 ハイケルが周囲を見渡し気付くとそちらへ向かう

【 皇居 前 】

マスコミたちが追いかけると ハイケルが 場所を移され置かれていたジープに乗り込む マスコミたちが衝撃を受け 慌てて道を空ける ハイケルがジープをゆっくり動かし去って行く マスコミたちが呆気に取られた後 慌てて追いかけようとするが ジープが走り去って行く

翌日――

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

ハイケルが休憩所で新聞を開いて驚いて言う
「なっ!?」
新聞には ハイケルの名前と 壊れた国防軍レギスト駐屯地のシャッターの写真 曲がったガードレール なぎ倒された信号制御機 壊れた皇居のエントランスの写真が デカデカと掲載されている ハイケルが呆気に取られ困惑して言う
「…なんだっ?これは…っ?」
隊員たちが遠巻きにハイケルを覗き見ている ハイケルが頭を押さえて言う
「そう言えば 今朝方 あの見慣れたジープが なぜか半壊していた… あれは 俺が…?…おまけに 車両保管所のシャッターも…」
隊員たちが顔を見合わせて言う
「しょ… 少佐 もしかして…?」
「いや それは… 無いでしょう?」
「でも、あの様子って 覚えてませんが?…みたいな?」
隊員たちがぎこちなく視線をハイケルへ戻す ハイケルが言う
「…そう 言えば 記憶の奥底に 薄っすらと…」
館内放送が流れる
『ピンポンパンポ~ン♪17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 』
ハイケルが衝撃を受ける 隊員たちが思わず伝染して衝撃を受ける 館内放送が続く
『大至急 会議室へお越し下さい 繰り返します 17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 大至急 会議室へお越し下さい』
ハイケルが表情を強張らせつつ 新聞を片付け立ち去る 隊員たちがハイケルを目で追う

【 国防軍レギスト駐屯地 会議室 】

ハイケルが会議室前で気を引き締めドアをノックして言う
「17部隊隊長 ハイケル少佐であります!」
室内から声が返って来る
「入りたまえ」
ハイケルが言う
「はっ 入ります!」
ハイケルが唾を飲みドアノブを回す

室内

ハイケルが室内へ入りドアを閉め 室内のメンバーを確認し敬礼する アースが微笑して言う
「お早う ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「お早う御座います 総司令官」
アースが苦笑する バックスが言う
「ハイケル少佐 こちらへ来たまえ」
ハイケルが返事をして向かう
「はっ」
バックスが言う
「ハイケル少佐 何故呼び出されたのかは 分かっているな?」
ハイケルが一瞬間を置いて言う
「はっ …昨夜の事であると」
アースが静かに頷く ハイケルが視線を落とす バックスが言う
「分かっているのなら 説明は要らないだろう よって 単刀直入に言う 君は除名だ」
ハイケルが驚く バックスが言う
「当然だろう ハイケル少佐?昨夜 皇居並びに陛下の警護に付いていたのは レギストではなく 13部隊だ 更には 国防軍レギスト駐屯地の車両を無断で使用 同じく駐屯地の備品を破損 あまつさえ 公共の設備を破壊した上に あろう事か 皇居の正面入り口を破壊 更に言うならば たとえサイレンを鳴らしていようとも 公道の制限速度は60キロ厳守だ」
ハイケルが焦りの汗を流す バックスが顔を左右に振って言う
「とても庇いきれないっ むしろ 君1人の除名処分などでは 到底 まかない切れるものではない!分かっているのか!?ハイケル少佐」
ハイケルが俯く バックスが言う
「どう 責任を取るのかね?」
ハイケルが沈黙する アースが苦笑して言う
「…そろそろ 良いのではないか?バックス中佐」
バックスがアースを見てから苦笑して身を静める アースが言う
「バックス中佐が 今しがた説明をした …これが通常だ ハイケル少佐」
ハイケルがアースを見る アースが言う
「だが 今回は通常ではなかった 君があの時向かわなければ 陛下の御身へ危険があった事は勿論 ヴォール・アーヴァイン・防長閣下は 敵の刃に倒れていた」
ハイケルが呆気に取られる アースが言う
「そもそも君の事は 例え私が庇わずとも その防長閣下が全てを補ってくれるだろう 従って わざわざ国防軍の身内で 問題を広げるつもりは無い ハイケル少佐 今回の君の全責任は免除する」
ハイケルが驚くアースが苦笑する ハイケルが僅かにホッとして敬礼して言う
「はっ 有難う御座います 総司令官」
アースが微笑して言う
「いや、今回も 礼を言うのは私の方だ …とは言え、少々派手にやってくれたな?この騒ぎを収めるのは 私であっても容易ではない 次からはもう少し 控えめに頼みたい」
ハイケルが言う
「…申し訳ありません …自分でも 反省しております…」
ハイケルが視線を落とす バックスが咳払いをして言う
「うんっ ハイケル少佐 反省するのは勿論だが いくら全責任を免除すると言われても それなりに 果たさねばならない責任と言うものはある 例えば 君は以前にも 国防軍の所有物である あの車両No1のジープを 無断で使用したと」
ハイケルが衝撃を受ける バックスが言う
「おまけに今回は その車両の無断使用は勿論の事 半壊させた上 公共の器物破損に速度違反 この辺りの事は 国防軍としてと言うよりも 君個人の責任とも取られる よって!」
ハイケルが驚き目を見開く

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】

軍曹が叫ぶ
「遅くなりまして 申し訳ありません!少佐ぁー!」
昼食中の隊員たちが顔を向ける ハイケルがテーブルにコーヒーを置き言う
「…問題ない …私の国防軍における責任を 処理して来てくれたのだろう …感謝する」
軍曹が気付き 喜んで言う
「流石少佐っ!良くご存知で!しかしっ!自分にとって少佐はっ!命の恩人でありますっ!国防軍の責任など 正直言ってしまえば 自分が総司令官の兄貴に一言言うだけで 済む事でありますので!どうか お気になさらずにっ!」
ハイケルが言う
「…そうか 流石は防長閣下 …心強いな」
軍曹が気付き否定して言う
「っ!…いえっ!少佐ぁっ!自分はレギストに居ります時には!アーヴァイン軍曹として 誠心誠意邁進すると 胸に誓っておりますのでっ!どうか この時にある自分には 防長である事を忘れ 少佐の部下である軍曹として 何なりと ご指示ご命令をお願い致しますっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「そうか 分かった では 早速 そうさせて貰おう」
ハイケルが立ち上がる 軍曹が疑問して言う
「はっ!…はぇ?早速?」
ハイケルが叫ぶ
「軍曹っ!」
軍曹が気を引き締め敬礼して言う
「はっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルがテーブルに両手を着いて頭を下げて言う
「1千600万を 貸してくれっ!」
隊員たちが驚く
「なぁー!?」「少佐がっ」「軍曹にっ!」「って…金?」
軍曹が呆気に取られて沈黙している ハイケルが言う
「頼むっ 320回払いで返すっ」
軍曹が驚いて慌てて言う
「しょ 少佐ぁー!?い、一体何がっ!?と、とりあえずっ お顔を上げて下さいっ 少佐ぁーっ」
隊員たちが顔を見合わせる

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が叫ぶ
「通常訓練の1 開始ぃーっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解!」
隊員たちと軍曹が腕立てをする 隊員が軍曹へ言う
「軍曹!質問を宜しいでしょうか!?」
軍曹が腕立てしながら気付いて言う
「おおっ!腕立てをしながら 会話が出来るようになったとはっ!成長したなっ!お前たちっ!」
隊員が言う
「はっ! これも全ては軍曹の ご指導のお陰でありますっ」
軍曹が言う
「何を言う!全ては少佐のご指導の賜物なのだっ!自分は少佐のご命令を お前たちへ伝達しているに 過ぎないのであるっ!」
隊員が言う
「で、その少佐なのですが お姿が見えないようで ありますが…」
隊員が言う
「もしや 借金を集める為 何処かを走り回っているのでは…?」
軍曹が言う
「何を馬鹿な事を言うのかーっ!お前たちっ!お前たちも昨夜の事件は かいま見て居ったのだろうーっ!?少佐には 借金を背負う責任などは 微塵も無いのであるっ!それなのに バックス中佐と総司令官が 少佐の首に縄を掛けたいなどと!そのような事を企んで居ったので 自分がー!」

【 国防軍レギスト駐屯地 バックスの執務室 】

バックスが呆気に取られている 机の上に 1600万の請求書があり ヴォール・アーヴァイン・防長のサインが入っている バックスが言う
「…やり返された…」
バックスがガクッとうな垂れる

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員と軍曹が腕立てをしながら 隊員が言う
「おぉおー!」「流石軍曹!…いや、防長閣下!」
軍曹が言う
「違ぁーうっ!自分はーっ!防長としての権力など 使いたくは無いのだっ!だがっ!権力を振りかざす者には!断固 その権力を持って 戦うのであるーっ!」
隊員たちが言う
「すげぇー」
「あの少佐と 防長閣下の軍曹が居る このレギストって…」
「もしかして 国防軍最強っ!?」
隊員が言う
「では… 借金を背負わなくて済んだ少佐は… 一体どちらに?」
隊員たちが疑問する 軍曹が腕立てを終えて言う
「うむっ!少佐は 権力による支配から免れはしたが 御自分がなさった事には しっかりと御反省をなさりたいとっ!少々頭を冷やしてくると 仰っておられたっ!流石は少佐ぁっ!御自分の事を しっかと律するとはっ!少佐はやはり!素晴らしきお方なのであるーっ!」

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

ハイケルが机に突っ伏している 頭の上に氷嚢が乗っている ハイケルが言う
「…助かった」
ハイケルが深い溜息を吐く

【 車内 】

アースが新聞を見ている ハイケルの記事がデカデカとある アースが苦笑してページをめくると ラミリツの記事がある ラミリツの胸にある刻印が写された写真がある アースが目を細めて言う
「本当に神の刻印などがあったとは これで彼が 攻撃の兵士… いや、神の刻印を持った 悪魔の兵士である事は 確かなものとなった …しかし」
アースが助手席へ視線を向けて言う
「彼の兄であり 政府長長官である シェイム・トルゥース・メイリス 奴が何を企んでいるのか …そろそろ ハッキリさせなくてはな?我々との格の違いと言うものを」
助手席の執事が微笑して言う
「心得ております」
車が向かう

【 政府本部 】

シェイムがTVを見ている TVではニュースが流れていて キャスターが言う
『…この様に 昨夜の皇居襲撃事件は 攻長閣下、防長閣下のお二方を始め 国防軍13部隊と 同じく17部隊の隊長ハイケル少佐の尽力により 襲撃犯は全てその場で捉えられ 現在彼らの身柄は警察省長に拘留されているとの事です 尚 この事件の際 お怪我を負われた ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 皇居内の施設で治療を受けられた後 現在はご本人の希望により メイリス邸にて ご静養されているとの事です』
映像にはラミリツの刻印を確認するようにアップにされている シェイムが微笑して言う
「予定外ではあったが これで 攻長閣下は アールスローン戦記の 悪魔の兵士として 受け入れられた筈だ これからは その攻長閣下をどうやって…」
電話が鳴る シェイムがボタンを押すと 電話から声が届く
『国防軍のアース・メイヴン・ハブロス総司令官がお越しです 第1応接室へご案内します』
シェイムが言う
「…分かった すぐに向かう」

【 政府省長 応接室 】

アースが言う
「攻長閣下のご容態は?」
シェイムが言う
「ご心配なく 防長閣下と同じく 彼もまた ペジテの姫の為に遣わされた 悪魔の兵士 彼の命を奪えるのは 防長閣下か 何処かの国の王子の兵士だけかと」
アースが微笑して言う
「なるほど… しかし、攻長閣下の身に 神の刻印があると言う事は 少なくとも 防長閣下との攻防を行うと言う事は 無いのでしょう?」
シェイムが言う
「仰る通りかと」
アースが軽く笑む シェイムが言う
「それで、国防軍総司令官ともあるお方が わざわざ攻長閣下の容態を聞きに こちらへ?」
アースが言う
「いえ」
シェイムが微笑して言う
「では どう言ったご用件で?」

【 マスターの店 】

ハイケルがカウンターテーブルに突っ伏している マスターが笑って言う
「あっはははっ 馬鹿だなぁー ハイケルー そんなもん 最初からちょっとした冗談だって 分かるだろう?」
軍曹が困って言う
「マ、マスターっ」
ハイケルが突っ伏したまま言う
「…分かる訳がないだろう 向こうは総司令官をバックに 総責任者不在の 国防軍レギスト駐屯地における 最上軍階 中佐なんだ 例え冗談であっても 奴の命令であれば従うざるを得ない」
マスターが苦笑して言う
「う~ん… だとしてもだなぁ?いくらなんでも1600万を 今日中に用意しろとは 言わないだろう 普通? …なぁ?」
マスターが軍曹へ同意を求める 軍曹がハッとして慌てて言う
「え?あ… えっと…?」
ハイケルが身を起こして言う
「それこそ お前の常識違いだ 富裕層の連中にとって 1600万など それこそポケットマネーで 今すぐにでも払えるのだろう」
マスターが衝撃を受け軍曹へ言う
「えっ!?そうなの?」
軍曹が慌てて言う
「はえっ!?い、いえ 流石に ポケットマネーとは行きませんが 今すぐに用意しろと言われれば…」
マスターが衝撃を受け呆気にとられる ハイケルがコーヒーを飲んで言う
「ほらみろ 富裕層の連中に 慣れて居ないのは お前の方だ」
マスターが不満そうにハイケルを見る 軍曹が2人を見て困る マスターが気を切り替えて言う
「とは言え、お前~ いくらなんでも 部下たちの前で アーヴィン君へ借金を願い出るだなんて 折角の英雄振りが 台無しじゃねーか?」
ハイケルが言う
「そんなもの 壊れて消えてくれた方が 清々する」
軍曹が驚く マスターが苦笑して言う
「まったく 相変わらずだなぁ?可愛くないの!」
ハイケルが言う
「可愛くなくて結構だっ」
ハイケルが立ち上がって言う
「行くぞ 軍曹」
軍曹が慌てて立ち上がって言う
「あっ は、はいっ!少佐ぁ!」
マスターが皿を拭きながら言う
「今日から夜間訓練か?」
ハイケルが言う
「正確には明日からだが やる気のある連中が 今夜から泊り込むと言う …折角だ 少ししごいてやろうかと思ってな」
マスターが微笑して言う
「とか何とか言っちゃって 本当は 本人が脱力して 指揮を取れなかった 昼間の埋め合わせなんじゃねーのか?ハイケル?」
ハイケルが衝撃を受け怒りを殺す 軍曹が慌てて2人を見る ハイケルが歩き出して言う
「行くぞっ!軍曹っ」
軍曹が慌てて言う
「はっ はいっ!少佐ぁー!それでは マスター 本日も美味しいコーヒーを ご馳走様でありましたぁっ!」
マスターが言う
「ああ!また来いよー!今度は一杯1千万のブルマンNo1を 用意しておいてやるからな!」
ハイケルが顔を顰めて言う
「二度と来るかっ!」
ハイケルが怒って出て行く 軍曹が困りつつ言う
「で、ではっ!また お邪魔させて頂きます!失礼致しますっ マスターっ!…少佐ぁー!お待ち下さいーっ 少佐ぁーっ!」
軍曹が追いかけて行く マスターが軽く笑う

【 マイルズ地区 郊外 】

ハイケルが言う
「これより 少人数編成による 夜間 実戦模擬訓練を開始する」
1班メンバーが敬礼する ハイケルが言う
「状況は 犯人1名が 人質1名を取って篭城 人質の救護を優先するため 犯人の射殺も厭わない ただし…」
隊員たちが集中する ハイケルが言う
「現場には 多数のトラップが仕掛けられている模様 犯人を刺激しない為にも それらのトラップを回避する事が重要とされる」
隊員たちが顔を見合わせる 隊員Aが言う
「こんな暗いのに トラップまであるのか…」
隊員Bが言う
「回避するって言っても 見えないのをどうするんだ?」
隊員Cが考えて言う
「この間の16部隊みたいに ライトを…」
ハイケルが言う
「あれでは駄目だ」
隊員たちが驚いてハイケルを見る ハイケルが言う
「そもそも16部隊の敗因は 犯人らに自分たちの行動を 知られていた事が要因する …従って 今日はお前たちに そのための訓練をさせる …軍曹」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!少佐!」
軍曹が敬礼を解除して持ってきたザックを前に下ろし開ける ハイケルが言う
「全員暗視ゴーグルを着用 光を使わず 音を立てぬ様 トラップを回避し 可能であれば犯人を拘束 人質を解放しろ 以上だ」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!」

施設内

暗視ゴーグルの映し出す風景 隊員Aが慎重に周囲を確認しつつ進み ふと気付いて上部を見上げ言う
「あ… あそこに 何か…?」
隊員Bが背を向けて進み 後方を見渡していると その背が隊員Aに当たり隊員Aが慌てて言う
「のわっ」
隊員Bが疑問して振り返って言う
「え?」
ガッシャーンと盛大に音が鳴る 隊員Aが四つん這いで顔を上げると 目の前に金バケツが転がっている 隊員Bが慌てて言う
「ぎゃーっ アッちゃんが 水浸し~っ」
周囲に水がばら撒かれている 隊員Aが衝撃を受け 振り返って言う
「お前が押すからっ!トラップに引っかかったじゃないかっ!」

別部隊1

ガッシャーンと音が聞える 隊員Cが反応し言う
「なんだっ?」
隊員Dが言う
「何か近くで…」
2人が疑問した瞬間 後方に一瞬風が吹き 2人が振り返った瞬間 2人の胸に蛍光弾が放たれる 2人が呆気に取られて言う
「なっ!?」「あっ!」
ハイケルが言う
「他者が発動させたトラップであっても 近く居れば自分たちにも危険が及ぶ 忘れるな」
隊員Cと隊員Dが敬礼して言う
「は、はいっ 少佐っ」
ハイケルが蛍光弾を仕込みながら言う
「お前たちは犯人に撃たれた 訓練が終わるまで そこで寝ていろ」
隊員Dが言う
「りょ、了解」
ハイケルが立ち去る 2人が床に寝て 隊員Cが言う
「少佐が犯人役だったのか…」
隊員Dが言う
「…うん?それじゃ 人質は?」

別部隊2

隊員Eが警戒しながら向かう先 足元のロープに引っかかると 上部で鈴が鳴り響く 隊員Eが衝撃を受け慌てて上を見ると 沢山の鈴がぶら下がっている 隊員Eがほっとして言う
「なんだ…鈴かぁ びっくりした」
隊員Eが一歩進みハッとする 胸に蛍光弾が打ち込まれる 隊員Eが呆気に取られると ハイケルがやって来て言う
「油断をするな 小さな物音でも 実戦ではそれが命取りになる」
隊員Eが敬礼して言う
「も、申し訳ありません 少佐…」
ハイケルが言って立ち去る
「お前は撃たれた 訓練が終わるまで そこで寝ていろ」
隊員Eがハイケルを振り返り言う
「は、はい…」

別部隊1

隊員Bが衝撃を受けて言う
「ぎゃーっ アッちゃんっ ここに死体がっ!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
隊員Cが怒って言う
「おいっ 勝手に殺すな」
隊員Bが言う
「にひひ バレた?」
隊員Dがリラックスしながら言う
「けどまぁ、お前らが来るまでの時間で考えれば 俺たちもう 死んでるかもな?」
隊員Cが苦笑して言う
「まぁな…」
隊員Aが蛍光弾入りの銃を構えて言う
「よし、それじゃ お前らの仇は 俺たちが取ってやるぜ!」
隊員Bが頷いて銃を構える 隊員Cと隊員Dが顔を見合わせてて苦笑すると 隊員Dが言う
「ああ、それならお前ら 1つだけ 教えといてやるよ」
隊員AとBが疑問する 隊員Cが頷いて言う
「”他者が発動させたトラップであっても 近く居れば自分たちにも危険が及ぶ 忘れるな”だぜ?」
隊員AとBが顔を見合わせ微笑して頷く 隊員Bが言う
「そういえばさっき アッちゃん この近くでトラップ発動させちゃったもんね?」
隊員CとDが衝撃を受ける 隊員Aが困って言う
「あれはバイちゃんが 押したからだろ?」
隊員CとDが怒って言う
「「お前らのせいかっ!」」
隊員AとBが慌てて逃げて行く

別部隊2

隊員Aと隊員Bが走って来る 隊員Aが気付いて言う
「バイちゃんっ あそこにも死体がっ!」
隊員Bが驚いて言う
「えぇえっ!?」
隊員Aが隊員Eへ言う
「おいっ 大丈夫かっ!?」
隊員Bの足がロープに当たる 上部で鈴が鳴る 隊員AとBが上部を見上げ 隊員Bが言う
「今度は鈴だぁ」
隊員Eがハッとして言う
「油断をするな!小さな物音でも 命取りになるぞ!」
隊員Bが呆気に取られて言う
「へ?」
隊員Aがハッとして隊員Bの手を引いて走りながら言う
「バイちゃんっ 逃げろーっ!」
隊員Bが言う
「えぇえー!?」
隊員AとBが逃げ去ったところに ハイケルが銃を向けたまま現れ言う
「死体が喋るな」
隊員Eが衝撃を受け言う
「も、申し訳…」
ハイケルが苦笑して言う
「まぁ 良い」
ハイケルが隊員Eへ蛍光弾を撃つ 隊員Eが衝撃を受ける ハイケルが言う
「確実に仕留める これも重要な事だ 今度こそ死んでいろ」
隊員Eが苦笑して敬礼し言う
「りょ、了解っ」

別部隊3

隊員M、N、Vが階段を見上げ言う
「人質は上にいるって事も 考えられるよな?」
「そうだな」
「犯人も 上にいるかもしれねーぜ?」
3人が顔を見合わせ苦笑して言う
「けど、行かねーわけにも だよな?」
「よし、周囲をよく見て トラップに気を付けろ?」
3人が頷き合い 同時に足を踏み出す 途中の階段に大量のワックスが塗ってあり 3人が滑って悲鳴を上げながら転び落ちる
「おわーっ」「のわーっ」「とっとっとっとっとーぉ!」
3人が下段まで落ちて来て 各々体を擦りながら言う
「いってぇ~…」
3人の体に蛍光弾が1発づつ打ち込まれる 3人が衝撃受け振り返る ハイケルが呆れて言う
「潜入時における移動術を学んでいないのか?階段は上体を下げ 前傾姿勢で上がり 複数人の場合は 横に並ぶな」
3人が慌てて敬礼して言う
「りょ、了解っ」「す、すみませんっ少佐」「うっかり 忘れてました…っ」
ハイケルが言う
「3人とも その場で倒れ 反省していろ」
ハイケルが去る 3人が言う
「はっ 了解…」
3人が倒れる

隊員AとBが恐る恐るやって来る 隊員Bが衝撃を受け 小声で慌てて言う
「ぎゃーっ アッちゃんっ アッちゃんっ」
隊員Aが振り向いて言う
「んー?」
隊員Bが言う
「階段の前にも死体がっ!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「げーっ!ほんとだっ!」
隊員AとBが3人を見る 3人が横一列に並んで倒れている 隊員AとBが顔を見合わせてから階段を見上げ 隊員Aが疑問して言う
「落ちてきたのか?」
3人が衝撃を受ける 隊員Bが言う
「そうみたい」
隊員Aが3人を見て言う
「おまけに落ちたところを 犯人に撃たれたって感じだな?」
隊員Bが笑って言う
「にひひっ かっこわる~」
3人が衝撃を受け怒りを堪える 隊員AがBへ言う
「んじゃ、俺たちも そーならねー様に 気をつけようぜ」
隊員Bが頷いて言う
「そうだねー …うん?」
隊員Aが疑問して言う
「どうした?バイちゃん?」
隊員Bが表情を顰めて言う
「この屋敷 廃墟の癖に なんだか ワックスの匂いがしない?」
隊員Aが周囲の匂いをかいで言う
「ん~ そういえば 確かに」
隊員Bが笑んで言う
「わかった こいつら きっと それに滑って落ちたんだ そうと分かれば」
隊員AがBを見る隊員Bが言いながら階段を昇り言う
「アッちゃん 俺が先に行くから 少し後から来て」
隊員Aが言う
「よしっ 安心しろ!もしバイちゃんが落ちても 俺が受け止めてやる!」
隊員Bが言う
「うんっ 下敷きにするから 大丈夫!」
隊員Aが衝撃を受け 不満そうに追って言う
「珍しく先行すると思ったら そう言う事かよっ!?…お前が言うと 本当にやりそうだよなー」
隊員Bが進みながら言う
「にひひ バレた?」
隊員Aが追いながら言う
「もう ばればれー」
隊員Aと隊員Bが去った所に ハイケルが来て言う
「お前たちよりは 合格だ」
3人が衝撃受け言う
「も… 申し訳…」
「あのお笑いコンビに負けた…」
3人がガクッとうな垂れる ハイケルが微笑する 遠くで ガッシャーンと金バケツの落ちた音が鳴る ハイケルが振り返り向かう 3人が振り向き言う
「ところでさぁ 気になってたんだけど…」
「ああ、俺も」

施設外 

施設から金バケツの落ちた音や鈴の音が聞えてくる 人影が視線を細め歩き出す

別部隊4

隊員Fが金バケツを頭にかぶっている 隊員Gが爆笑して声を抑えている 隊員Fが金バケツを外し 怒って言う
「これがトラップかよっ」
隊員Gが笑いを収めて言う
「っはは はぁ まぁまぁ 訓練なんだから しょうがねーだろ?」

施設上部

軍曹が双眼鏡で外を見ていてハッと気付き 慌てて無線に言う
「むっ!?あれは!…少佐っ!少佐ぁーっ!」

施設2F

ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「どうした 軍曹」
イヤホンから軍曹の声が届く
『少佐っ!緊急事態 発生でありますっ!』
ハイケルが言う
「そうか 分かった …全隊員へ告ぐ!」

別部隊4

隊員Gがイヤホンを押さえて言う
「ん?何だ?訓練中止か?」
隊員Fが立ち上がり言う
「あぁ?」
隊員Fへ猟銃が向けられて ブロッドの声が聞える
「動くなっ」
隊員FとGが振り向き 猟銃を見て驚いて言う
「なっ!?」
「は、犯人か?」
ブロッドが猟銃を突きつけて言う
「誰が犯人じゃっ 勝手に人の家に入り込みおってぇ!」
隊員Fと隊員Gが衝撃を受け 驚いて言う
「えぇええっ!?」
「ひ、人の家ってっ!?」
隊員FとGがイヤホンを押さえて言う
「しょ、少佐っ!?」「少佐っ!緊急事態でありますー!」
ブロッドが言う
「何が少佐だっ!子供がこんな時間に 戦争ごっこなど やっているんじゃない!」
隊員Gが呆気にとられて言う
「えぇえ~っ!?」

施設外

ハイケルが言う
「事前に連絡が出来ず 申し訳ない」
ブロッドが笑って言う
「あっはっは 何 構わんさ 今日の夜からだろうと 明日の朝からだろうと 大して変わりない」
ハイケルが苦笑する 隊員たちが呆気に取られて顔を見合わせる ブロッドが言う
「じゃが、実は 悪戯防止にと あの屋敷には 今でも色々仕掛けを付けていてな?レギストの皆さんへ屋敷を明け渡す前に 撤去するつもりだったんじゃが その作業しようと思っていた昨日 あんな事件があったろう?わしゃ すっかりTVにかじりついてしまってな!」
ブロッドが笑う 隊員たちが顔を見合わせて言う
「それじゃ… あの屋敷にあった トラップって…」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルが言う
「いえ、むしろ その仕掛けが丁度良かったので 利用させてもらいました あの仕掛けの精度の良さは 身を持って確認済みなので」
ブロッドが笑って言う
「いやぁ~ あの戦争ごっこ好きな子供が レギストの少佐様とは わっはっはっ!昔は良く 見付けては しかりつけておったのにな?」
ハイケルが苦笑して言う
「いえ… ですから 何度も言いましたが あれは 訓練であって…」
ブロッドがハイケルへ向いて言う
「とは言え わしの悪戯小僧発見の為の仕掛けが役立って これほど立派な少佐様になってくれたんなら あの頃の不法侵入は 許してやるかの?」
ハイケルが苦笑して言う
「感謝します」

【 国防軍レギスト駐屯地 宿舎 】

1班と軍曹が雑魚寝している

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

ハイケルがTVを見ている TVにニュースが流れていてキャスターが言う
『…では 次のニュースです 昨夜 皇居にて陛下を襲いその場で捕らえられた犯人たちは その後の調べで 以前 陛下の20周年をお祝いするパレードにおいて 襲撃を行った 反政府組織 ガイズを名乗っているという事が 政府警察の調べで』
ハイケルが疑問して言う
「反政府組織 ガイズ…?」
ハイケルがノートPCに入力し検索する TVではニュースが流れ続けている
『そして、今朝早く その反政府組織ガイズのメンバーから 現在拘束中のガイズメンバー10人の釈放を要求する連絡が 警察省長へ送られていたとの情報もありますが 詳しい内容の方は明らかにされていません』
ハイケルがキー入力をする手を止めて疑問して言う
「釈放要求は10人だと?」
ハイケルが記憶を思い出す ハイケルの脳裏に事件後の皇居の映像が思い出される 女帝の間の中に倒れている武装したガイズメンバーと ラミリツの周囲に倒れている オーケストラの服装をし 手に銃を持っている者たち ハイケルが疑問し キー入力をやり直してエンターを打つTVではニュースが流れ続け キャスターが言う
『釈放要求は10人との事ですが…』
『変ですねぇ?襲撃犯はもっと大人数でしたが…』
ハイケルがTVを見てからノートPCへ視線を戻し マウスを操作するとモニターに記事が掲載される ハイケルが言う
「陛下を襲った人数は 20人… 間違いは無い 俺の記憶と同じ いや… そもそも あの様子は 監視カメラに映し出されていた 紛う筈は無い それなのに 10人と言う事は…」
ハイケルが目を細めて言う
「犯行は 2グループ」

【 メイリス家 】

シェイムが歩きながら言う
「エーメレス… いや、攻長閣下の御容態はどうだ?」
メイドが言う
「はい 熱の方は下がり 意識もしっかりとされておりますが…」
シェイムが言う
「他に何かあるのか?」
メイドが視線を落として言う
「…いえ ただ、もうこれ以上は 攻長閣下のお仕事は されたくないと」
シェイムが言う
「言わせておけ」
メイドが言う
「しかし…っ」
シェイムが言う
「私が言えば 嫌とは言わない …いや 言わせはしない」
メイドが言う
「旦那様…」
部屋の前に立ち シェイムが言う
「もう良い お前は下がれ」
メイドが頭を下げて言う
「はい…」
シェイムがドアを開ける

【 メイリス家 ラミリツの部屋 】

ラミリツが横目に見る シェイムが言う
「具合は 良いそうだな エーメレス」
ラミリツが視線をそらして言う
「良くないよ… 少し動かすだけでも 痛いし…」
シェイムが言う
「今日 私の所へ 国防軍のハブロス総司令官がいらしたぞ?お前の容態を聞かれたので 私の方から 心配は無いと伝えておいた」
ラミリツが視線を落として言う
「心配は無いんじゃなくて する気が無いの くせに…」
シェイムが微笑して言う
「防長閣下も パレードの襲撃でお怪我を負われたが すぐに回復されていた 同じく 攻撃の兵士であるお前も すぐに回復するのだろう?」
ラミリツが毛布に身を隠しながら言う
「僕は… あんな怪物みたいな奴とは 違うんだ…」
シェイムが言う
「昨夜の襲撃 私の策に紛れ 余計な者が入り込んだが お陰で お前はあの映像を見ていた全ての国民に お前が 攻撃の兵士… いや、神の刻印を持った 悪魔の兵士である事を 知らしめる結果となった 作戦とは異なったが 結果は成功だ 良かったな?エーメレス」
ラミリツが顔を向け言う
「ちっとも… ちっとも良くなんてっ!僕はもう こんな事をするのも 痛いのも嫌だっ …だから 兄上っ!」
シェイムが苦笑して言う
「何を言っているんだ エーメレス お前は 悪魔の兵士 アールスローン戦記にある 不死身の兵士だ 例え どの様な怪我を負おうとも」
ラミリツが起き上がって刻印を見せて言う
「こんな刺青で 不死身の兵士になれるんならっ!兄上がなれば良いよっ!僕なんかよりっ 兄上の方がずっと… うっ!」
ラミリツの傷に痛みが走る ラミリツが肩を押さえ 苦しそうにベッドに身を戻す シェイムが苦笑して言う
「とりあえず 今日と明日位は休んでいても良いだろう 明後日には 防長閣下の様に外へ姿を見せるんだ」
部屋の扉が叩かれ メイドが言う
「旦那様 少々問題が…」
シェイムが表情を顰めて言う
「うん?」
シェイムが立ち去る ラミリツが毛布に潜り込む

【 メイリス家 シェイムの部屋 】

シェイムが机を叩いて言う
「ガイズから仲間の釈放要求する連絡とは何だっ!私は聞いていないぞ!?」
シェイムの視線の先TVニュースが流れている シェイムが電話を掛ける

【 警察長官宅 】

警察長が電話に出ていて言う
「はいっ 我々政府警察も一切聞いておりませんっ!その様な事実はっ!」
受話器からシェイムの声が届く
『ではっ 何故 メディアに知られているっ!?奴らの仲間が釈放を求めているとっ それも 人数は10人!』
警察長が冷や汗を拭って言う
「私は知りませんっ!本当ですっ!」

【 メイリス家 シェイムの部屋 】

TVにニュースが流れていてキャスターが言う
『…昨夜 皇居にて陛下を襲い捕らえられた犯人たちは その後の調べで 以前 陛下の20周年をお祝いするパレードにおいて 襲撃を行った 反政府組織 ガイズを名乗っているという事が 警察の調べで』
シェイムがTVニュースを見てから言う
「そもそも 奴らが ガイズと名乗る 反政府組織であると言う事さえ まだメディアには伏せて置くようにとっ!」
シェイムがハッとする

【 回想 】

シェイムが言う
『それで、国防軍総司令官ともあるお方が わざわざ攻長閣下の容態を聞きに こちらへ?』
アースが言う
『いえ』
シェイムが微笑して言う
『では どう言ったご用件で?』
アースが首をかしげて言う
『昨夜も… では ありますが 以前のパレード襲撃事件で捕らえ そちらへ身柄を引き渡した あの犯人ら そろそろ何か 情報のようなものは聞き出せたのでしょうか?何しろ奴らは 我ら国防軍の代表とも言える 防長閣下を傷付けた者たちだ 我々としては』
シェイムが一瞬間を置いてから 微笑して言う
『生憎 彼らは今も 黙秘を続けています とは言え どの道陛下のお命を狙った者たちです 防長閣下の痛みと苦しみを拭って差し上げられるほどの刑を 架す事を約束しますよ?』
アースが苦笑して言う
『それは… 警察と言うのも 中々恐ろしいですね 我々国防軍は 防長閣下が示すように 防衛が主 私としても その襲撃犯たちを どう懲らしめてやりたい と言うよりも 何故 あの様な事を… 陛下のお命を奪おう等としたのか それを聞き出したいのです』
シェイムが苦笑して言う
『…それは失礼 少々言葉が荒かった様ですね 何しろ 彼らには 昨夜 我々政府の代表である 攻長閣下を傷付けられたばかりですので どうか お許しを』
アースが微笑して言う
『心情はお察し致します』

【 回想終了 】

受話器から警察長の声がする
『長官!?長官っ!?』
シェイムが気付いて言う
「”昨夜も…”だとっ!?では 奴は 反政府組織である 奴らガイズを利用してっ!?…あのパレードの時からっ!?」
シェイムが言う
「最初から奴は 政府長官の私を狙っていたのだっ そして 私を大罪人へ …おのれ ハブロス総司令官っ!」
シェイムが机を叩く 受話器から警察長の声がする
『長官っ!?メイリス長官っ!?』
シェイムが受話器を電話機へたたき付ける様に切る

【 ハブロス家 アースの部屋 】

アースがタバコを吹かして言う
「フー… 呆気無かったな」
TVにニュース映像が流れている


翌日――

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

1班と軍曹がTVの前で驚いていて 軍曹が言う
「なっ… 何と言う事か…っ!?」
TVの映像にシェイムが拘束され連行される姿が映し出されている レポーターが言う
『事件は急展開を迎えました!一昨日の 皇居襲撃事件には反政府組織ガイズの他に 先日の人質2人を含む 国防軍16部隊隊員8名が犠牲となった あの事件の犯行グループの一味が加わっていたとの事です!そして あろう事か それら犯行グループを影で操っていたのは 政府長長官シェイム・トルゥース・メイリス容疑者であった事が判明!今朝早くに逮捕状が出され…』
隊員が言う
「それじゃ政府の長官が事件を起こして 人質2人や国防軍の隊員を…っ!?」
隊員が表情を顰めて言う
「酷い話だ」
隊員Aが言う
「何が攻長閣下だよっ 政府は… 人殺しじゃないかっ!」
皆が驚く 隊員Bが言う
「アッちゃんっ 落ち着けって 悪いのはコイツだけだよ」
隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「けどっ コイツは あの攻長閣下の兄貴だろっ!?政府長の長官がこんな奴で!…16部隊の奴らは コイツに 殺されたんだっ!」
隊員Bが言う
「アッちゃんっ!」
隊員Aが悔しそうに俯き 頭を抱えながら言う
「…っ …ごめん…」
隊員Cが言う
「気持ちは分かるぜ 一歩間違えば 俺たちだったかもしれないんだ」
隊員たちが気付き顔を見合わせる TVの映像が騒がしくなる 隊員たちが顔を向ける 映像が慌しく動き レポーターが言う
『あ!攻長閣下ですっ!今 警察へ護送される シェイム・トルゥース・メイリス容疑者を前に!』
軍曹が表情を悲しめて言う
「ラミリツ攻長…」

【 メイリス家 エントランス前 】

ラミリツが言う
「兄上…っ」
シェイムが僅かにラミリツへ視線を向けるが 気付かれないように視線を正面へ戻し連行される ラミリツがハッとして踏み出し言う
「あ、兄上…っ うっ… うぅう… い、痛い…っ」
ラミリツが肩を押さえうずくまる シェイムが警察車両に乗せられ 車両が出て行く ラミリツにメイドたちが寄り添う

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちと軍曹がTVを見ている TVからレポーターの声が響く
『攻長閣下です あぁ… 一昨夜に負われた傷が痛むのでしょうか とても立っていられないと言った様子で 右の肩を押さえ うずくまってしまわれました 付き添いの方々に支えられるようにして 今 お屋敷の中の方へ…』
軍曹が視線を細め 立ち上がり立ち去る 隊員たちが疑問して言う
「軍曹…?」

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

ハイケルがTVを見ている TVからレポーターの声が届く
『尚 ラミリツ・エーメレツ・攻長閣下は 既に陛下の剣である攻長として戒名されている為 シェイム・トルゥース・メイリス容疑者とは 家族・兄弟としての繋がりは無いものとされています』
ハイケルが沈黙する TVからレポーターの声が続く
『これにより シェイム・トルゥース・メイリス容疑者の罪状に関わらず 今後も ラミリツ・エーメレツ・防長閣下は 政府長攻長 陛下の剣として 攻長閣下の御使命に殉ずる事と…』
ハイケルがTVを消す

【 国防軍総司令部 総司令官室 】

アースが椅子に座っている ドアがノックされる アースが言う
「入れ」
ドアが開き 軍曹が居る アースが微笑して言う
「来ると思っていたよ アーヴィン」
軍曹が表情を落とす アースが立ち上がり言う
「そんなところに居ないで 中へ入ったらどうだ?用件は… これの事だろう?」
アースが応接テーブルに新聞を放る 新聞の書面にシェイムとラミリツの写真がある 軍曹がそれを確認して部屋へ入りドアを閉める

アースと軍曹が向かいのソファに座っている アースがタバコを吹かすと軍曹が言う
「やはり、兄貴が告発したのか?」
アースが苦笑して言う
「まさか?」
軍曹が言う
「だが、兄貴のその様子は… そうだと言っている」
アースが苦笑して言う
「相変わらず目ざといな アーヴィン?だが、本当だ 私が彼を告発した訳ではない 私はただ… 手を貸したまでだ」
軍曹が言う
「手を?」
アースが言う
「事件の概要はこうだ まず、最初に あの陛下のパレードにて襲撃を行った者 奴らは 反女帝組織ガイズと名乗った」
軍曹が呆気にとられて言う
「反女帝組織?TVでは 反政府組織と…」
アースが言う
「ああ、それは 政府がマスコミへそう言い換えさせている 何故なら、その反女帝組織の者たちは 政府の人間らしいからな?」
軍曹が言う
「え…?」
アースが言う
「政府の一部に 女帝陛下に逆らおうと言う 不届き者たちが居るのだそうだ その者たちが パレードを始めとした今回の一連の事件を引き起こした」
アースが言う
「では メイリス長官は その反女帝組織のメンバーであったと言う事か?」
アースが言う
「いや、そうではない 現に 彼は 彼の弟である ラミリツ・エーメレス攻長を 陛下の剣として 陛下へ付く側に身を置いていた」
軍曹が思案する アースが言う
「だが、彼は 攻長閣下を立て 自らが政府の長となった事で 今度は それ以上の力を …反女帝組織の力をも 手に入れようと企んだ様だ」
軍曹がアースを見る アースが言う
「そして 彼はパレードにて 我々国防軍が捕らえた 反女帝組織ガイズのメンバーと手を組み 彼らを政府警察から釈放した …その彼らが起こした事件が 後に続いた一連の事件だ」
軍曹が考えて言う
「そうであったのか… では 政府警察はメイリス長官の思うがままだったと言う事なのだな …レギストや15部隊が何度捕らえ様とも 奴らはメイリス長官によって釈放されてしまう …これでは事件は止まらんっ」
アースが言う
「ああ、だが メイリス長官のその考えは 流石に強引だったのだろう 彼と取引を行っていなかった 他のガイズのメンバーや 政府の者たちの目に止まり そして… 私の下へと話が舞い込んで来た」
軍曹がアースを見て言う
「で、兄貴は?」
アースが言う
「私としては もっと詳しい事を 特に その反女帝組織の者たちの話を 知りたかったのだが 深入りするには情報が少な過ぎる 従って 今回は彼らガイズや 他の政府の者たちへ協力し 貸しを作っておいた …16部隊で犠牲となった隊員たちの 仇を取ってやりたいと言う思いもあったしな?メイリス長官が操っていた ガイズの一部のメンバー… 皇居にて捉えられたその者たちからは 既に それらの犯行へ携わったという話が聞かれているそうだ 詳しい事が分かり次第 また連絡をくれるとも」
軍曹が視線を落として言う
「…では、犠牲となった人質や 16部隊の隊員たちの仇は 取られたと言って良いのだろうか?」
アースが言う
「15部隊と16部隊が携わった そちらの2件の事件に付いては 犯行グループと共にメイリス長官を捕らえた事で 事件は解決した事になる よって、仇は取ったと言っても 間違えでは無いのかもしれない だが… 反女帝組織と女帝推進組織と言うべきか 2つに分かれている政府の現状が変わらない限りは 再び同じ事件が起きる可能性も否めない」
軍曹が表情を顰めて言う
「…では どうしたら良いのだ?」
アースが言う
「私やお前は 国防軍の者であって 政府の者ではない そうとなれば この問題に口を出す事は難しいが その政府のせいで起きる抗争… 事件には 国防軍として巻き込まれる可能性が十分にある 従って 引き続き 私の方で調べを進め 何らかの術が見付かれば 防長であるお前か 軍曹であるお前 どちらかに動いてもらう事も考えられるが…」
軍曹が驚く アースが軍曹を見て言う
「その時は どちらのお前であっても 私に協力してくれるか?アーヴァイン」
軍曹が呆気に取られた後微笑して言う
「勿論なのだ 俺はどちらの俺であっても 兄貴の弟である事に代わりは無い!従って 協力するのは当たり前なのである!」
アースが微笑して言う
「そうか… そうだな?有難う アーヴィン」
軍曹が微笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Aが叫ぶ
「通常訓練の1!開始ー!」
隊員たちが腕立てを開始する ハイケルが隊員達を見ている 隊員たちが顔を見合わせ 小声で言う
「軍曹… 居ないな?」
「朝は居たのに 何処へ行ったんだ?」
「あれじゃねーか?女帝陛下に朝のご挨拶…とか?」
「ああ、そっか 軍曹忙しいんだな 防長閣下なのは嬉しいけど… ちょっと寂しい気もするぜ」
隊員Bが言う
「それにー? アッちゃんの号令じゃ なんか 気合入らないしねー?」
隊員Aが衝撃を受け言う
「仕方がないだろっ!?少佐にお前がやれって言われたんだから…」
隊員Cが言う
「え?そうなのか?」
隊員Aが笑んで言う
「へっへ~ん 俺は少佐に期待されてるからな!」
隊員Bが言う
「それか~ もしかしたら 名前順で明日は俺になるかも?」
隊員Aが衝撃を受ける 隊員Nが笑って言う
「っはははっ それ 有り得る~」
隊員Aが羞恥怒りしている ハイケルが隊員たちを見た後 軍曹がいつもやって来る側を見る 視線の先に人影は無い ハイケルが視線を戻し軽く息を吐く

【 皇居 玄関前 】

高級車が到着し 軍曹が降り立つ 警備をしている国防軍隊員やその他の者たちが敬礼や礼をする中 軍曹が歩いて行く

【 皇居 女帝の間 】

扉が開かれ 軍曹が中を見渡す 御簾に人影がある 他に人は居ない 軍曹が攻長の場を見てから 横に居る門兵へ言う
「ラミリツ攻長は 今日も見えていないのか?」
門兵が言う
「はっ 攻長閣下は 本日もご欠席なさるとの ご連絡を頂いております」
軍曹が言う
「そうか…」
軍曹の後ろに居る役人が言う
「防長閣下 配置にて 盾を御構えになって下さい 本日分のそちらの映像を納めましたら 以降はその映像を監視カメラへ流し続けますので」
軍曹が言う
「うむ …所で その監視カメラ自体の撤去は やはり出来ぬのか?」
役人が言う
「はい… 残念ながら あのような事が起きてしまいました故に 監視カメラは いざと言う時の為に これからも置き続けた方が良いと その様な意見が多く御座いますので 一応防長閣下からの御言葉として 伝えはして置きますが 返答は恐らく 思わしくないだろうと」
軍曹が言う
「…分かった では いつもの通り よろしく頼む」
役人が礼をして言う
「はい」
軍曹が進み入り 御簾の左へ立ち そこへ立て掛けてある盾を取り 前へ構える 役人が頷き監視カメラを見上げる 監視カメラが動き映像を録画している 軍曹は前を見据えたまま 僅かに横を見てラミリツの立ち位置を見て 表情を落とし考える

【 国防軍レギスト駐屯地 正門前 】

軍曹の車が来る 衛兵にIDを見せると 衛兵が敬礼して言う
「お疲れ様であります! …アーヴァイン軍曹!」
軍曹が一瞬疑問した後苦笑し敬礼して言う
「おおっ!お疲れであるっ!」
衛兵が苦笑し もう1人の衛兵へ合図を送る その衛兵が頷き門を開ける 衛兵が車から一歩離れ言う
「どうぞお通り下さい」
軍曹が言う
「うむ!…あ、レギスト機動部隊は まだ出ては居ないだろうか?」
衛兵が言う
「はい、先ほどまで 訓練所にてウォーミングアップをしていた様なので 今頃は恐らく 夕食後の休憩辺りかと 夜は 外の施設へ向かうと 連絡が入っています」
軍曹が言う
「そうか!了解した!情報伝達を感謝する!」
衛兵が敬礼して言う
「はっ!防長閣下っ!」
軍曹が一瞬呆気に取られた後苦笑して車を進める 車が過ぎ門が閉められると もう1人の衛兵が来て言う
「ハイケル少佐を 顔パスにしてるんだから これからは防長閣下もそうするか?」
衛兵が言う
「そうだな?そうするか?」

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】

外部

軍曹がドアをノックして言う
「アーヴァイン軍曹でありますっ!」
室内からハイケルの声がする
「入れ」
軍曹が言う
「はっ!入りますっ!」

室内

軍曹が入り敬礼して言う
「遅くなりまして 申し訳ありませんっ!少佐ぁっ!」
ハイケルがノートPCから一度視線を上げノートPCを見てから再び軍曹を見て言う
「…問題ない」
軍曹が疑問する ハイケルが言う
「25分後に メイス地区郊外の屋敷跡にて実戦訓練を行う …参加をするなら 5分前までに車両保管所へ集合しろ」
軍曹が一瞬疑問してからすぐに敬礼し言う
「はっ!了解いたしましたっ!」
軍曹がハイケルを見る ハイケルがノートPCを見ている 軍曹が敬礼を解除し少し考えてから言う
「…あ、あの 少佐?」
ハイケルが言う
「録画映像か…」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?」
ハイケルが言う
「皇居が公開している 皇居御所の映像だ 昨日から今日に掛け ラミリツ・エーメレス・攻長閣下が居ない事は頷けるとしても こちらに居た筈の 防長閣下が ずっと御所に控えている」
軍曹が表情を困らせて言う
「は… はぁ その… 実は そうでありまして…」
ハイケルがPCマウスを操作しながら言う
「良く出来ている ただ録画した物をそのまま繰り返し流している訳ではなく 常に僅かながらの編集がなされている ただ見ている分では 録画映像だとは思えない出来だ」
軍曹が呆気にとられて言う
「そう… でありましたか」
ハイケルが軍曹を見て言う
「編集は何処が行っている?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?え、えっと…?」
ハイケルが苦笑して言う
「知らないのなら良い …もしこれが皇居の関係者が行っているのだとしたら あの襲撃の際 何故映像の配信を 処理しなかったのかと 考えていただけだ」
軍曹がハッとして言う
「あ、あのっ 少佐 その事件の真相なのですがっ」
ハイケルが軍曹を見る

ハイケルが言う
「…なるほど」
軍曹が言う
「これで メイリス長官が携わった事件に関しては 一応解決した と… そして、兄… いえ、総司令官は これからも政府の情報を調べると言っていました きっと 何か分かりましたら また 自分に教えてくれるものかと… そうしましたら!自分が再び 少佐へお知らせいたしますのでっ!」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが考えていた状態から軍曹を見て言う
「で、具体的なところ 総司令官は彼らへ 何の手助けをしたんだ?」
軍曹が呆気にとられて言う
「は…?」
ハイケルが言う
「反女帝組織ガイズと女帝推進の政府 その2つのグループが 今回新たに3番目として出来てしまった そのメイリス長官の指揮するグループを潰すに当たり 先の2グループは 政府のその様な内情を知らせてまで 国防軍の総司令官へ協力を願い出た… 政府内のその様な抗争を まして 女帝陛下に関係する内容だ 表向きには政府と手を取り合っていると見せている国防軍だが その実、彼らにとっての最大のライバル そこへ その様な重大事を晒してまで 必要とする協力とは何だ?」
軍曹が言う
「それは… 総司令官が協力したのは 皇居襲撃の際に入れられる オーケストラに化けた 犯人たちを見逃す事 そして、一通りの事が済むまで 13部隊を御所へ入れないことであったかと…」
ハイケルが言う
「それは そうであったとしても あの時… 13部隊が動かない状態の時に 私が飛び込んでいかなければ 陛下をお守りし 動けずに居た君は 間違いなく 敵の攻撃を受けていたっ」
ハイケルが視線を強める 軍曹が呆気に取られる ハイケルが言う
「それとも 私が行かなくても あの時 君を襲った敵の手を 止める術があったと?少なくとも 私には …そうは思えない」
軍曹がハイケルから視線をそらし考えて言う
「それは… そう ですね…」
ハイケルが言う
「総司令官は その事に対し 事件の前にも後にも 君へは何も言わなかったのか?」
軍曹が間を置いて言う
「…は …はい」
ハイケルが軽く息を吐いて言う
「…まぁ 良い」
軍曹がハッとして言う
「は?」
ハイケルが軍曹の横へ来て言う
「時間だ 私は隊員たちと共に 訓練施設へ向かう」
軍曹がはっとしてから気を入れて言う
「自分もっ 向かいます!」
ハイケルが間を置いて言う
「…そうか」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!」
ハイケルが部屋を出る 軍曹が続く

【 メイス地区郊外 屋敷跡 】

ハイケルが言う
「これより この施設を使った 実戦模擬訓練を行う 今回は 犯人や人質といった概念は持たない 2グループに別れた総力戦とする 昨夜 訓練を受けた者は 先に屋敷内へ入り 後に入る 後攻部隊を迎え撃て 後攻部隊も 今回は拘束ではなく 先に待ち構えている敵対グループを 殲滅する事を目的とする」
隊員たちが息を飲む ハイケルが言う
「使用武器は 訓練用蛍光弾を装填した銃のみとし 蛍光弾を受けた者はその場に倒れ 仲間の救護を待つ …ただし 倒れた者が 仲間へ言葉を発せられるのは3分間 3分を経過した者は 死亡したものと扱い 以後一切の言葉の使用を禁止すると共に 救護の対象から除外する」
隊員Aが表情を強めて言う
「敵の攻撃を受けて 生きていられるのは3分間だけ…か」
隊員Bが言う
「3分以内でも 自分の事は放っといて 敵を倒してくれーってのも ありかな?寝てられるし… にひひっ」
隊員Aが衝撃を受け 怒って言う
「お、お前っ 訓練がんばろーって気はねーのかよっ!?」
隊員Bが言う
「そりゃ 頑張るけどー やられちゃったら どの道アウトでしょー?」
ハイケルが言う
「自分の救護を拒否し 仲間の足を引かないと言う考えは有りだ ただし、訓練終了時は 生き残った人数は勿論だが 救護された者の人数も査定する 実戦においては 救護された者のみが生き残り 先へ進んだ者が全滅する事もある その際は 例え 途中までであっても その場までの情報を知る者として 有力な情報源とされる」
隊員Bが言う
「なるほど~」
隊員Aが言う
「けど、やっぱ やるからには 最後まで生き残る!バイちゃん 眠くてもしっかり戦ってくれよ?」
隊員Bが笑って言う
「大丈夫ー 一発でも銃撃てば 目覚めるから」
隊員Cが笑んで言う
「一発打つ前に やられたりしてな?クフフッ」
隊員Bが不満そうに隊員Cを見る 隊員Aが言う
「それは無いね?この俺が居るんだ バイちゃんが最初の一発も撃たないで やられるって事は無いぜ?」
隊員Bが呆気に取られて隊員Aを見る 隊員Cが言う
「なんだー?少佐に少し褒められたからって 良い気になってると…」
軍曹が言う
「おいっ そこーっ!少佐のお言葉の途中だ!私語は慎まぬかぁーっ!」
隊員ABCがビクッと衝撃を受け 敬礼して言う
「「「失礼しましたっ!軍曹っ!」」」
軍曹が頷いて言う
「うむ!」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが言う
「では、訓練を開始する 準備を済ませ次第 先行部隊は屋敷へ向かえ 後攻部隊は5分後に突入する 以上だ」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!」

屋敷内1

隊員Bが物陰に隠れて言う
「ねぇねぇ アッちゃん」
隊員Aが疑問して言う
「んー?」
隊員Bが言う
「さっきのあれ どう言う事?」
隊員Aが蛍光弾を装填しながら言う
「さっきのあれって?」
隊員Bが言う
「ほら、さっき サッちゃんが 俺に言ったじゃん?俺が一発打つ前にやられたりーって」
隊員Aが言う
「ああ」
隊員Bが言う
「その時 アッちゃん言ったじゃん?俺が撃つ前にやられる事は無いって アッちゃんが居るから…」
隊員Aが言う
「しっ!静かにっ」
隊員Bが疑問する 隊員Aが銃を構えて小声で言う
「始まったみたいだ… 話は後でなっ」
隊員Bが銃を構えて言う
「んー 分かった じゃ 後で…」
隊員Aが顎を引いて小声で言う
「俺が先に出る バイちゃんは後からっ!」
隊員Bが言う
「…やっぱ そう言う事?」

施設内2

軍曹が銃を構えて小声で言う
「自分が先に行くっ お前たちは」
隊員が小声で言う
「いえっ!軍曹っ 自分が先に行きます!」
軍曹が驚いて小声で言う
「な、何を言うっ!?先に何があるやもしれぬ こう言う時は 上官が先頭に立つものっ!」
隊員が軍曹の前に出て小声で言う
「自分が行きますっ!」
隊員が通路の先へ飛び出す 軍曹が慌てて言う
「ま、待てっ」

施設内1

隊員Aが言う
「来たっ!」
隊員Aが物陰から飛び出し 蛍光弾を撃つ

施設内2

隊員Aの撃った蛍光弾が隊員の体に当たる 軍曹がハッとして言う
「モルト隊員っ!」
軍曹の後ろに控えていた隊員たちが一斉に飛び出し 蛍光弾を撃つ

施設内1

隊員Aが言う
「よしっ!…っとと!」
隊員Aが物陰へ身を隠すと 蛍光弾が隊員Aが元居た場所へ放たれる 隊員Aが振り返って言う
「軍曹の一団が来るぞ!バイちゃん!バイちゃんの銃さばき見せてやれ!」
隊員Bが言う
「うん!まかせろ!…でもあれ アッちゃんの死体が無いと出来ないんだけど?」
隊員Aが衝撃を受けつつ言う
「支援するから!死なせないでやってくれ!」
隊員Bが横へ来て言う
「うん じゃあ やってみる」
隊員Aが言う
「よしっ 俺が飛び出すから!」
隊員Bが言う
「おーけー!」
隊員Aが言う
「いくぞーっ!」

施設内2

軍曹が隊員を抱え言う
「自分はモルト隊員を救助するっ!お前たち ここは頼んだぞ!」
隊員たちが言う
「了解!」
軍曹が隊員を背負い走って行く 隊員たちが顔を見合わせ頷き 1人が言う
「次は 俺が飛び出す!」
隊員たちが頷く

施設内1

隊員Aが飛び出し銃を構える 隊員Aが構えている先に 隊員が飛び出し銃を向ける 隊員Aが瞬時に引き金を引く

施設内2

飛び出した隊員が銃を撃てずに蛍光弾を受け言う
「あっ」
隊員たちが飛び出し銃を向ける 隊員たちの視線の先隊員Aが瞬時に物陰へ向かう 隊員たちが隊員Aへ銃口を向けると 隊員Aが居た後ろの場所に隊員Bが居て 隊員たちへ銃を乱射させる 隊員たちが驚き銃を放ちつつ体に蛍光弾を受ける 隊員たちが驚いて言う
「う… 嘘だろ…?」
隊員たちが倒れる

施設内1

隊員Bが呆気にとられて言う
「あ…」
隊員Aが蛍光弾だらけになっている物陰から顔を覗かせ 自分の体と隊員Bの体を見てから 喜んで言う
「やったぞ!?バイちゃんっ!俺らの作戦勝ちー!」
隊員Bが隊員Aへ向いて言う
「酷いよ!アッちゃん!俺てっきり アッちゃんが死体になって 俺の盾やってくれると思ったのにー!」
隊員Aが怒って言う
「だからっ 俺を 殺そうとするなってっ!」

屋敷外

軍曹が隊員を下ろす 隊員が軍曹の背を降り言う
「ご迷惑をお掛けして 申し訳ありません 軍曹…」
軍曹が言う
「迷惑などではない 気にするな …だが、何故さっきは 自分の前に出たのだ?自分は 自分が先行すると」
隊員が視線を落として言う
「すみません… ただ、もしこれが実戦だったとしたら… 自分はやはり!軍曹の前に出ます!」
軍曹が驚き怒って言う
「何を言うっ!実戦であれば尚更っ!お前は 本物の銃弾に倒れていたのであるっ!」
隊員が軍曹を見て言う
「しかしっ!軍曹は我々の上官にして 防長閣下でありますっ!自分は その軍曹をお守りしたいとっ」
軍曹が驚く 隊員がハッとして視線を落として言う
「…っ すみません 守る所か 守られておきながら…」
軍曹が苦笑して言う
「いや、すまん …謝るのは自分の方だ」
隊員が驚いて軍曹を見る 軍曹が苦笑して言う
「少佐にも言われている 実戦の際には 自分は投入しないと …少佐も 自分の事を防長として お考えなのかもしれない …残念だが」
隊員が呆気に取られた後微笑して言う
「し、しかし!軍曹があの後 敵を撃ってくれなかったら 自分は更なる敵の攻撃に 3分所か 致命傷を受けていたかもしれません 有難う御座います!軍曹!」
軍曹が呆気に取られた後慌てて言う
「お… おおっ!当然なのだっ!例え少佐にそうと言われておろうともっ!自分はっ!やはり レギストとしてっ お前たちと共に戦うのだ!従って 訓練には全力で向かうっ!」
隊員が言う
「はいっ!軍曹!どうか 自分の仇を お願いしますっ!」
軍曹が言う
「まかせよっ!お前はここで 朗報を待っておれーっ!」
隊員が敬礼して言う
「はっ!承知いたしました!軍曹!」
軍曹が屋敷へ走る 隊員が軍曹の後姿を見て微笑する

施設内1

隊員Bが言う
「ねーねー?アッちゃんー?そろそろ別の所に移動しない?俺飽きて来ちゃったー」
隊員Aが蛍光弾を装填して言う
「そうだな ここで俺らが倒してばっか居ると 他の連中も暇で寝ちまうかもしれないし 同じ訓練じゃ 意味も無いもんな?」
隊員Bが言う
「そうそうー もっと奥に行って寝てようよ?何か後攻部隊 弱過ぎー?きっと一番奥なら 1人も来ないんじゃないー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「それじゃ 訓練にならないじゃないか!?俺はもっと訓練したいんだ!」
隊員Bが言う
「違うよ アッちゃん 俺だって訓練したい だから この訓練が終われば また 俺らだけの 少佐特別訓練が待ってるかもしれないじゃない?」
隊員Aが喜んで言う
「おっ!そいつは良い!」
隊員Bが言う
「でしょー?だから 今の内に休憩取って 備えるのー!」
隊員Aが笑んで言う
「なるほど!よし!それなら 奥へ移動しよう!」
隊員Bが言う
「うん!」
隊員Aが物陰から周囲を確認し 隊員Bへ頷いて走る 隊員Bが続く

施設内2

軍曹と隊員たちがやって来て 驚いて言う
「なっ!?」
軍曹が慌てて 隊員たちの倒れた山へ言う
「何があったっ!?お前たちっ!?」
隊員たちが軍曹を見てから時計を見て黙る 軍曹がハッとして言う
「何と… 既に3分が過ぎたというのか …皆 アラン隊員1人にやられたと?」
隊員たちが言葉言いたげに悔しそうにする 軍曹が言う
「すまぬっ 皆… 本来であれば 助け出してやりたいが 今は 進まねばならんっ お前たちの仇は 自分らが取ってやるのだっ!朗報を待っておれ!」
軍曹が銃を抱え通路の先を伺い 走り去る 隊員たちが追う

施設内3

隊員Aと隊員Bが走りながら言う
「おーい 俺らは奥に行くから!後は頼んだぜー!」「皆ちゃんと起きてるー?」
物陰に隠れている先行部隊が居眠りから起きてハッとする 隊員Aが通り過ぎざまに言う
「後はよろしくー!」
先行部隊が銃を構えて言う
「やっべー すっかり寝てた」
ハイケルが物陰に居て様子を伺っている

しばらくの後 通路の手前に軍曹と隊員たちがやって来る ハイケルが顔を向ける 軍曹が隊員たちへ言う
「自分が先行するっ 皆 自分の後に続くのだっ」
隊員たちが言う
「了解っ」
軍曹が頷き 銃を構えてから 通路の先へ飛び出し通路の先へ銃を向ける 先行隊員たちが一斉に飛び出し軍曹へ銃を放つ 軍曹がハッとして銃を撃とうとするが指が動かない 軍曹が驚く 隊員たちが一瞬の後に飛び出し 銃を放つ 先行隊員たちが物陰へ身を隠す 数人が被弾し言いながら倒れる
「く…やられた」 「けど 敵の将を取ったぜ」 「へっへーん どんなもんだ アラン隊員」
ハイケルが沈黙して軍曹を見る 軍曹がハッとして自分の身を見て言う
「うっ!?や やられ…」
隊員たちが通路の手前へ身を隠していて言う
「軍曹っ」 「軍曹っ!」
軍曹が残念そうに倒れようとする 全隊員たちのイヤホンにハイケルの無線が入る
『…今回は特例として アーヴァイン軍曹は被弾しても倒れない …不死身の兵士とする』
全隊員たちが衝撃を受け 呆気に取られる 軍曹が驚いて言う
「は…?はぇっ!?」
全隊員たちが噴出し 笑いを抑えながら言う
「確かに…」「流石 防長閣下…っ」
ハイケルの無線が続く
『共に 既に被弾している後攻隊員たちは 現時刻をもって 訓練を再開 不死身の守りの兵士を盾としてでも 屋敷の奥まで到達しろ 以上だ』
軍曹が衝撃を受け 慌てて言う
「しょっ 少佐ぁーっ!?」
先行部隊が失笑する中 軍曹より後方にいた隊員たちが軍曹の後ろに到着する

施設内 奥

隊員Bがイヤホンを聴きながら言う
「んー 残念ながら 今日の特別訓練は無さそうー?」
隊員Aが蛍光弾を装填しながら言う
「けど 面白そうじゃないか!後攻部隊の連中が 軍曹を盾にして来るんだ きっとここまで到達するぜ?どうする?」
隊員Bが笑んで言う
「それは勿論 今度こそ 俺も アッちゃんを盾にして 戦うぜー!」
隊員Aが苦笑して言う
「やっぱそーだよな?」
隊員Bが言う
「にひひっ バレた?」
隊員Aが言う
「最初っから ばればれ!だから言っただろ?バイちゃんが一発も撃たないで倒される事はないって?」
隊員Bが呆気に取られた後言う
「あぁ… そう言う事?」
隊員Aが溜息混じりに言う
「ああ そう言う事」
隊員Bが苦笑して言う
「なんだ…」
隊員Aが疑問して言う
「なんだ って?」
隊員Bが蛍光弾を装填して言う
「何でもなーい」
隊員Aが疑問しつつ銃を構える

【 国防軍レギスト駐屯地 】

隊員たちが思い思いの休憩を取っている

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】

ハイケルがノートPCを眺めている 軍曹が敬礼して言う
「夜間訓練っ!お疲れ様でありましたっ!少佐ぁ!」
ハイケルがノートPCから目を向けないまま言う
「お疲れ 軍曹」
軍曹が敬礼を解除しハイケルを伺いつつ言う
「所で… 少佐?明日も… 同じ訓練を 行うのでありましょうか?」
ハイケルが視線を変えずに言う
「明日は先行後攻を入れ替え 行う予定だ」
軍曹が言う
「えーっと… その、自分も 再び 不死身の兵士として… で ありましょうか?」
ハイケルが言う
「そうだな 明日は入れ替わる 先行部隊が やはり今日と同じ様子であるなら それもあるだろう」
軍曹が苦笑して言う
「は… はぁ…」
ハイケルがPCマウスを操作してから 軍曹を見て言う
「それが どうかしたのか?」
軍曹が困りつつ言う
「は、はい… その 本当に それで良いものかと…?」
ハイケルが言う
「何が言いたい?」
軍曹が言う
「はっ その… 少佐のお考えの下 行っている訓練に口を差し挟むようで 申し訳無いのですが…」
ハイケルが言う
「問題ない」
軍曹が言う
「はっ では、自分の考えとしては 現在の先行後攻の隊員たちを 半数ずつ入れ替えるなどして 全体的な訓練をした方が 良いのでは ないかと… 現行では 自分と行動を共にする隊員たちが どんどん遅れを取ってしまうようで」
ハイケルが言う
「それで良い」
軍曹が驚いて言う
「え!?」
ハイケルが言う
「私は例え少数であっても 私と共に行動出来る隊員を作りたいと考えている …他の者は 後衛部隊 もしくは支援部隊として 別に備える」
軍曹が呆気に取られた後視線を落として言う
「しかし… それでは…っ」
ハイケルが言う
「君の言う様に半数を入れ替え 訓練を行っていけば 結果として 全体的に同じ戦力にはなるだろう だが 同時に一人一人の隊員たちの能力を 押さえ付ける事にもなる」
軍曹がハイケルへ向いて言う
「それは 確かに そうはなってしまうかと 思われますが しかし 部隊は複数の人数で 構成されるものであります そうである以上 隊員一人一人の能力が ある部分では押さえられ また、ある部分では補われると言うのは 至極当然であるかと」
ハイケルが言う
「それが国防軍の部隊において 当然であるのなら尚更 私のレギストは 特別な部隊にする」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「通常の部隊が必要なら 国防軍第1部隊からレギスト17部隊を除いた 20までの部隊が当たれば良い だが、それらの部隊では出来ない事を レギストは行う …その為の 部隊編成と訓練だ」
軍曹が呆気にとられて言う
「そうで… ありましたか」
ハイケルが軽く息を吐いて言う
「とは言え 君と行動を共にする隊員たちは 少々非力過ぎるな?あれでは 不死身の守りの兵士である君が居なければ 最初の戦闘で全滅だ」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「そ、そのっ 少佐ぁっ!その事なのでありますがっ!」
ハイケルが言う
「何だ」
軍曹が言う
「自分を盾とする事は… その事は全く持って構いませんがっ いくら 守りの兵士であっても 何十発もの銃弾を受けて居てはっ 自分としても生き続ける自信が 無いのでありまして… そ、それからっ 自分はレギストに居る間は アーヴァイン軍曹であって 守りの兵士では無いのでありますっ」
ハイケルが言う
「では、何故 攻撃をしない?」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「今日の訓練において… いや、先日の時もそうだ 君は 敵部隊へ銃を向けはするが 決して引き金を引かない」
軍曹が視線を落として言う
「そ… それは…」
ハイケルが言う
「…引き金は 引かないのではなく 引けないのではないか?」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが見つめる 軍曹が表情を困らせ言葉に詰まる ハイケルが言う
「最初は君の 隊員たちへの思いから 心理的に引くのが遅れているのだと思ったが …その様子では どうやら違う様だな …実戦においては 致命的だ」
軍曹がハイケルを見る ハイケルが言う
「やはり 君は 実戦時には除外する… いや、もう既に 除外するべきなのか?」
軍曹が驚き言葉を失う ハイケルが言う
「このままレギストへ残り 訓練へ参加すると言うのなら それなりに考えはする だが どうするのかは 君に任せる」
軍曹が言う
「少佐…」
ハイケルがノートPCへ視線を向けて言う
「以上だ」
軍曹が視線を落とし 一度口を閉ざしてから言う
「失礼致しましたっ」
軍曹が部屋を出て行く ハイケルがノートPCから視線を上げ 軍曹の出て行った後を見る

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちが談話して居る 軍曹がやって来て隊員たちを見渡してから表情を落とす 隊員が軍曹に気付いて言う
「あ、軍曹!」 「軍曹!」 「お疲れ様であります!軍曹!」
軍曹が呆気に取られた後苦笑し笑顔になって言いながら向かう
「おお!皆!お疲れである!」
隊員たちが楽しそうに軍曹を向かえる 軍曹が人知れず表情を寂しがらせる

軍曹がソファに座っている 軍曹の周りに隊員たちが集まり談話している中 TVからキャスターの声がする
『それでは次の話題です 今朝早く逮捕状が出され 逮捕されたシェイム・トルゥース・メイリス長官は 現在も警察省長にて取調べを受けているとの事…』
隊員たちがTVのニュースに反応して皆がTVへ向く キャスターが言う
『…そんな中 今日も皇居御所では 攻長閣下の居られない状態のまま 防長閣下が陛下の警護に付いているご様子が伺えます 尚 シェイム・トルゥース・メイリス長官のご兄弟でもあられる ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 先日の皇居衝撃の際に負われた怪我が 治り次第 陛下の警護に復帰なされるとの…』
隊員が言う
「メイリス長官が逮捕されたのに いくら戒名してるからって 弟のラミリツ・エーメレス・攻長閣下が 攻長のままっていうのも 何か変な感じだよなー?」
軍曹が反応して隊員を見る 他の隊員が言う
「そうだよな?攻長は政府の代表なんだから その政府の長官が代わったら 攻長も替われば良いのにな?」
隊員Cが言う
「けど、ラミリツ攻長は 兄貴の長官がどうだろうと 神の刻印を持った悪魔の兵士 攻長なんだろ?むしろ 戒名がどーとかって言うより その攻長閣下の兄貴になった奴が たまたま悪い事をしちまった って事なんじゃねーのかな?」
軍曹がハッとして ラミリツの刻印を思い出し 視線を落とす 隊員Bが言う
「あれー?サッちゃんも少佐と同じ様に アールスローン戦記を信じるんだ?2人とも 意外とロマンチックだったんだね~?にひひっ」
軍曹が疑問して隊員Bを見る 隊員Cが頬を染めて言う
「なっ そ、そんなんじゃねーって!」
隊員Bが言う
「あー?否定すると 少佐の事も否定する事になるけど 良いのかな~?」
隊員Cが怒って言う
「なっ!?ならっ!バイスン隊員だって 俺と一緒に 少佐を馬鹿にしてるって事になるだろっ!?」
隊員Bが言う
「俺は別に 少佐がアールスローン戦記を信じることに対しては 馬鹿になんかしてないもん サッちゃんが どっちとも言い切らないからー?」
軍曹が言う
「少佐がアールスローン戦記を 信じていると言うのは その… ラミリツ攻長が 神の刻印を持った悪魔の兵士である と言う話の事であるか?」
隊員Cと隊員Bが顔を見合わせた後 隊員Aが言う
「少佐が攻長閣下の事をどう思ってるのかは 知らないですけど 以前」
軍曹が言う
「以前?」
隊員Aが言う
「あの皇居襲撃の時だろ?ペジテの姫が… なんだっけ? とにかく その夜に オーケストラが目の前で音楽をやるのは 気に入らないとか なんとか…」
軍曹が気付いて言う
「ペジテの姫が竪琴を奏でる夜に… と言う事であるか?」
隊員Aが言う
「はい まさか 少佐の口から ペジテの姫って 言葉が出ただけでも 俺としては意外でしたけど」
軍曹が考えて言う
「うむ…」
隊員Bが言う
「それに今日も 軍曹の事 不死身の守りの兵士 って言ってたし~?」
隊員たちが笑って言う
「あっははっ!そうだよな!ペジテの姫の 2人の兵士は 不死身だもんな!」 「そうそう!」
軍曹が呆気にとられて言う
「は?何故 守りの兵士が 不死身なのだ?」
隊員たちが呆気にとられて言う
「え?何故って…」
隊員が軍曹へ問う
「軍曹 防長閣下なのに アールスローン戦記を読んだ事が無いんですか?」
隊員Eが言う
「お前馬鹿だなぁ 防長閣下や攻長閣下は 国防軍と政府の象徴であって アールスローン戦記の 神の兵士 と 悪魔の兵士 じゃねーんだよ」
隊員Bが驚いて言う
「え!?そうだったのっ!?」
隊員Aが言う
「全く無関係って言うんじゃなくて 一応 当てはめてはいるって話だろ?」
軍曹が言う
「いや、その話ではなく… 自分は アールスローン戦記の原本と言われる物を読んでいたが ペジテの姫の 守りの兵士が不死身だ などと言う事は 書いていなかったと思うのだが?」
隊員たちが顔を見合わせ言う
「え…?俺は… 確か不死身だって読んだ気が…」 「俺も…」
隊員Aが言う
「ペジテの姫の2人の兵士は 一度 お互いに戦って死んでしまうけど その後 ペジテの姫が神様に願って 2人は生き返らされて… その後は 何度でも生き返るから 不死身って言われるんだろ?」
隊員Bが言う
「ついでに また 喧嘩を始めちゃうから お姫様が 神様にお願いするんだよね?守りの兵士は攻撃の兵士を 攻撃の兵士は守りの兵士を守るようにして下さいーって!」
隊員Cが言う
「それで 攻撃の兵士の胸には 神様の刻印があるんだよな?守りの兵士を攻撃しないようにって」
隊員Aが言う
「そうそう!」
隊員Bが気付いて言う
「あ、それじゃ 軍曹」
軍曹が呆気に取られた状態からハッとして言う
「むっ?」
隊員Bが軍曹へ向いて言う
「あの攻長閣下に神様の刻印があるってことは 軍曹にも神様の刻印があるんですかー?」
軍曹が呆気に取られる 隊員Aが苦笑して言う
「バイちゃん 違うって 刻印があるのは 悪魔に作られた 攻撃の兵士である 攻長閣下だけー」
隊員Bが言う
「えー?何でー?」
隊員Cが言う
「元々 神様に作られた守りの兵士である 防長閣下は 神様の兵士なんだから 刻印なんてしなくても 神様の言いつけを守るんだろ?…たぶん」
隊員たちが笑う 隊員が軍曹へ向いて言う
「守るんですかー?軍曹?」
隊員たちが笑う 軍曹が呆気に取られる 隊員が言う
「おい、こら いくらなんでも 失礼だろ お前ら 軍曹は軍曹でも 防長閣下なんだぞ!?」
隊員たちがハッとして言う
「ああ…」 「そ、そうでした…」
軍曹がハッとして言う
「い、いやぁ!自分は 軍曹である時は!…いや、たとえ防長であろうとも!お前たちと一緒に居る時は かしこまった事はしたくないのであるっ!」
隊員たちが一度顔を見合わせた後楽しそうに笑って言う
「やっぱり 軍曹は俺たちの軍曹だ」 「それを言うなら 俺たちの防長閣下だろ?」 「いや、防長閣下の軍曹だ!」
隊員たちが笑う 軍曹も呆気に取られた後段々と綻び笑う

翌日――

【 車内 】

軍曹が高級車の後部座席に居て外を眺めて考えている

【 回想 】

ハイケルが言う
『では、何故 攻撃をしない?』
『…引き金は 引かないのではなく 引けないのではないか?』
『最初は君の 隊員たちへの思いから 心理的に引くのが遅れているのだと思ったが …その様子では どうやら違う様だな …実戦においては 致命的だ』

【 回想終了 】

軍曹が表情を落として思う
(少佐の仰る通りだ… 戦闘時に銃の引き金を引けないなど… その様な兵士は レギストに… いや、機動隊員として 失格だ…)
軍曹が外を眺めつつ思う
(少佐は俺に レギストに残っても良いと… だが、俺にだって分かっている あれは少佐の… 防長閣下の俺へ対する社交辞令 俺がただの軍曹であったなら きっと少佐は何の迷いも無く 俺を切り捨てるだろう 俺は… 少佐のためにも レギストの皆のためにも レギストを辞めるべき…)
軍曹の脳裏に隊員たちとの記憶が蘇る

【 回想 】

軍曹が言う
『い、いやぁ!自分は 軍曹である時は!…いや、たとえ防長であろうとも!お前らと一緒に居る時は 畏まった事はしたくないのだっ!』
隊員たちが一度顔を見合わせた後楽しそうに笑って言う
『やっぱり 軍曹は俺たちの軍曹だ』 『それを言うなら 俺たちの防長閣下だろ?』 『いや、防長閣下の軍曹だ!』
隊員たちが笑う 軍曹も呆気に取られた後段々と綻び笑う

【 回想終了 】

軍曹が強く目を閉じ俯いて思う
(そうだっ 俺は…っ 軍曹であろうと防長であろうと あいつらと一緒に居たいっ!あいつらと一緒に… 少佐と共に 戦いたいのだっ!なのに!)
軍曹が手を握り締める 車が赤信号で止まる 軍曹が閉じていた目を開き顔を上げ窓の外を見る 窓の外歩道を親子が歩き その後ろに書店が見える 軍曹がハッとして思い出す

【 回想 】

隊員Cが言う
『けど、ラミリツ攻長は 兄貴の長官がどうだろうと 神の刻印を持った悪魔の兵士 攻長なんだろ?むしろ 戒名がどーとかって言うより その攻長閣下の兄貴になった奴が たまたま悪い事をしちまった って事なんじゃねーのかな?』
隊員Bが言う
『あれー?サッちゃんも少佐と同じ様に アールスローン戦記を信じるんだ?2人とも 意外とロマンチックだったんだね~?にひひっ』
軍曹が疑問して隊員Bを見る 隊員Cが頬を染めて言う
『なっ そ、そんなんじゃねーって!』

【 回想終了 】

軍曹が思う
(ラミリツ攻長は 恐らく 御自分が攻長である事を嫌っていた 俺も… 俺も防長などで なければ…っ)
軍曹がハッとして思う
(うん…?そうだ 俺は 何故?…いや、何時から銃が撃てなくなった?以前は… そう 以前は撃てていた なのに急に…っ!?守りの兵士である 防長になってから?)
車が走り始める 軍曹が思い付き 表情を正して言う
「止めてくれ」
高級車が路肩に止まる 執事がドアを開けると 軍曹が降りて言う
「先に戻ってくれ 少し寄りたい所がある」
執事が礼をして言う
「畏まりました どうかお気を付けて」
軍曹が言う
「うむ」
軍曹が歩き去る

軍曹が書店で本を探している 棚を見ていてふと気付き 手を伸ばす

【 公園 】

軍曹がアールスローン戦記を開き ページをめくる

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂 】

隊員Bが食事の手を止めて言う
「んー 今日も軍曹は 防長閣下のご公務かなー?」
隊員Aが食事を食べつつ周囲を見渡し 飲み込んでから言う
「そう言えば居ないな 朝から見て無いや」
隊員Bが言う
「忙しいんだねー …アッちゃんと違って!…にひひっ」
隊員Aが言う
「あー 言ったなぁ?言っとくけど俺はな?今朝は自主的に 通常訓練の1から3を1人でやってたんだぜ?」
隊員Bが言う
「えー?そうなんだ?」
隊員Aが笑んで言う
「へっへ~ん 何と言っても俺は 少佐の期待を受けているからな!?」
隊員Bが笑んで言う
「あ でもー もしかしたら俺も 期待されてるのかも!俺 今朝 少佐に 射撃場使わせてもらっちゃったもんね!」
隊員Aが驚いて叫ぶ
「なぁー!?ひでぇ!バイちゃん!何で俺に声掛けてくれなかったんだよっ!?」
隊員Bが言う
「だって アッちゃん 朝から居ないんだもん 声掛けたくても掛けれ無いじゃん?そっちこそ ちゃんと何処へ行くか 声掛けてから行けよなー?」
隊員Aが悔やんで言う
「あぁ~~っ 起きたらたまたま気分が良くて そのまま 何となく始めちまったんだよっ 声掛けとけば良かったぁ~~っ!」
隊員Bが笑う

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】

ハイケルがノートPCを見ている モニターに隊員たちのプロフィールが映し出されている ハイケルがマウスをクリックすると終了し 目次へ戻る 隊員数と隊長名 副隊長名が表示される ハイケルが反応し 軽く息を吐き 軍曹の名前をクリックする 画面にはアーヴァイン軍曹のプロフィールが現れる ハイケルがPCマウスを操作し画面をスクロールさせ 一通り眺めるとキーボードを軽く操作してエンターを押す 画面が切り替わり 皇居女帝の間の映像に切り替わる 映像には攻長を欠いた映像が映されている ハイケルがしばらく眺めた後 ノートPCの電源を切る

【 公園 】

軍曹がアールスローン戦記の本を閉じる しばらく表紙を眺めた後 顔を上げ立ち去る

【 皇居 通路 】

軍曹が通路を歩居ている 役人が続いていて言う
「もしや 防長閣下まで お越しになられないのではと… 私どもも少々肝を冷やしました」
軍曹が言う
「すまなかった 私用で外へ出ていて遅くなったのだ」
役人が微笑して言う
「左様で御座いましたか とは申されましても 防長閣下は陛下の下へお越し下さいましたので 私どもも とても嬉しく思っております」
軍曹が役人へ振り返り苦笑して言う
「何を言う 少し遅れただけで随分と大げさな そんなに心配であったのか?」
役人が言う
「そちらは 勿論に御座います 我々にとって防長閣下及び攻長閣下は 陛下の次に お慕い致します お方に御座いますので」
軍曹が言う
「陛下の次に…?いや、自分とラミリツ攻長は 陛下をお守りする 守りの兵士と攻撃の兵士 …言ってしまえば ただの兵士である その自分たちを お前たちがその様に慕う必要は あらぬのではなかろうか?」
役人が苦笑して言う
「確かに アールスローン戦記におかれましては そうで御座いますが…」
軍曹が気付いて言う
「ああ すまん その様な おとぎ話の事ではなく 政府と国防軍の代表として と言う意味か」
役人が呆気に取られてから苦笑して言う
「そちらも御座いますが おとぎ話におかれましても 神より与えられた兵士である防長閣下は 我々からすれば 神から人への賜り物 正しく神の巫女たる陛下にも お近いお方に御座いましょうかと?」
軍曹が呆気にとられてから言う
「…なるほど そう言う解釈もあるのだな アールスローンの神より与えられた守りの兵士 防長と アールスローンの… 悪魔より与えられた攻撃の兵士が 攻長 …であったな?」
軍曹が考える 役人が微笑して言う
「はい、例え 悪魔より与えられた兵士であられましても 攻長閣下には 神に与えられた刻印があられます 言い換えれば 神に認められた悪魔の兵士と言う事にもなりましょう?」
軍曹が視線を細めて言う
「神に与えられた刻印…」
役人が微笑んで言う
「はい 私も 失礼ながら新聞書面等で ラミリツ・エーメレス・攻長閣下がお持ちの 神の刻印を確認させて頂きました そうとなりませば例えその攻長閣下の 御兄弟であられましても あちらの方と 攻長閣下は無関係であると」
軍曹が言う
「では もし、ラミリツ攻長に神の刻印が無ければ 彼の兄が行った事を理由に ラミリツ攻長を下ろしたいと …皆は そう考えるのだろうか?」
役人が一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「それは 勿論そうでは御座いませんかと?恐れ多くも かの者は陛下の御命を狙われたのですから 陛下をお慕いする者として このアールスローンに生きるものとして メイリス長官の行った事は 到底許せるものでは御座いません」
軍曹が視線を落として言う
「…そうか」
役人が時計を見てから言う
「防長閣下 宜しければ そろそろ御仕度の方を…?」
軍曹が気付き言う
「うむ そうであった …貴重な意見を感謝する」
役人が呆気に取られてから礼をして言う
「滅相も御座いません 防長閣下」
役人がドアを開ける 軍曹が入り ドアが閉められる

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Bが言う
「通常訓練のいちー 開ー始ー!」
隊員たちが腕立てを開始する ハイケルが隊員たちを見ている 隊員たちが腕立てをしながら言う
「今日も軍曹 通常訓練に居ないな?」
「じゃぁ昨日と同じで 夜になったら来るのか?」
「そうかもな?…にしても やっぱり軍曹の号令じゃないと 気合入らないなー?」
隊員Aが言う
「バイちゃんが言うと 余計だよな?」
隊員Bが言う
「えー?それって どう言う意味ー?アッちゃん?」
隊員Cが言う
「言い方に 覇気がねーって事だよ」
隊員Bが言う
「あー なるほどー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「自分で納得かよっ!?バイちゃん!?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
隊員たちが呆れる ハイケルが隊員たちを見た後 軍曹がいつもやって来る側を見る 視線の先に人影は無い ハイケルが視線を戻し軽く息を吐く

【 国防軍レギスト駐屯地 食堂横休憩所 】

隊員たちがTVの前に集合し談話している 隊員Aが何となく周囲を見渡す 隊員Bが気付いて言う
「アッちゃんどうしたー?さっきっから キョロキョロしてない?」
隊員Aが心配そうに言う
「うん… 何か 軍曹が居ないのが 気になってさ…?」
隊員たちが気付き表情を落とす 隊員が言う
「そういや 昨日はこの時間 もう居たよな?」
隊員が言う
「この時間って言ったって 夜間訓練前に一緒に居たのは5分程度だっただろ?だったら今日は 車両保管所に もう 行ってるんじゃないか?」
隊員Aが言う
「そっか… そうだな?悪ぃ!」
隊員たちが一度苦笑した後 表情を落とす

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】

ハイケルがノートPCを見ていて 時計を見る ハイケルが間を置いてノートPCの電源を切り立ち上がると 出入り口へ向かいつつ言う
「…ふんっ」
ハイケルが部屋を出ようとドアを開ける サイレンが鳴る スピーカーからアナウンスが流れる
『緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』

【 国防軍レギスト駐屯地 武器管理室 】

『繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
隊員たちが言う
「17部隊…って」
隊員たちが顔を見合わせ衝撃を受け言う
「俺たちだ!」
「緊急指令って… まじかよっ!?」
隊員たちが顔を見合わせてから 慌てて用意する

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

バックスが言う
「17時10分 先ほど 警察並びに政府関係者から 我々国防軍へ応援要請がなされた」
アルバート、ハイケル、マイクの前にバックスが立っている ハイケルが反応し言う
「政府関係者…」
バックスが言う
「犯人グループは政府関連施設 複数を占拠 館内に居た社員その他を人質に取り 現在 政府警察へ複数の要求を行っている 政府警察は政府警察機動隊の導入と共に 我々国防軍へ協力を要請した 我々国防軍はこれを受託し 政府関連施設が複数点在するメイス地区一体を管轄する 国防軍メイス駐屯地の 3部隊を向かわせる事にした …だが」
アルバート、ハイケル、マイクが疑問しバックスを見る バックスがハイケルを見て言う
「政府関係者から要請を受けた 総司令官は それら複数の施設の1つ 政府第2省長への作戦へ 国防軍17部隊レギストを 向かわせるよう命じられた」
ハイケルが驚く アルバートとマイクが驚きハイケルを見る バックスが言う
「よって ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「はっ」
バックスがハイケルへ向いて言う
「総司令官からの命令はこうだ 政府第2省長の局長 ランドム・ハウル・エリックを拘束し 彼の持つ 機密データを記録したディスクを奪還せよ …出来るか?」
ハイケルが言う
「はっ 出来ます!」
バックスが言う
「では、ハイケル少佐 この任務へ 国防軍17部隊 及び 国防軍レギスト駐屯地 情報部を使用し 直ちに取り掛かれ」
ハイケルが言う
「了解」
アルバートが呆気に取られたままハイケルを見る ハイケルがマイクへ向いて言う
「マイク少佐 17部隊の作戦へ 実働参加を頼めるか?」
マイクが一瞬驚いた後 気合を入れて言う
「はいっ!もちろん!」
ハイケルが言う
「では作戦を立てる マイク少佐 情報部へ」
マイクが笑んで言う
「了解!」
ハイケルが歩き始める マイクが続こうとして ハッとしてバックスを見る バックスが微笑して言う
「行きたまえ マイク少佐」
マイクが笑み敬礼して言う
「はっ!失礼致します!」
ハイケルがドアを出て行く マイクが走って追いかける アルバートが呆気に取られている バックスがアルバートへ向いて言う
「以上だ」
アルバートがハッとして敬礼して言う
「はっ!」
バックスが部屋を出て行く

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

ハイケルが言う
「政府第2省長の内部構造を 出せ」
マイクがPCを操作しながら言う
「了解!」
モニターに政府第2省長の内部構造が3D表示される ハイケルが考えながら言う
「階数は地下1階及び地上6階… 地上階の出入り口は何箇所だ?」
マイクがPCを操作し モニターの映像を回転させながら言う
「地上階の出入り口は 南側ストリート沿いにメインとなる物が1つ 北側に裏口と 東西に非常口の 計4箇所です」
ハイケルが言う
「上下階へ通じる階段は何箇所ある?」
マイクが言う
「メインにエレベータを3台使用しているので 建物中央エレベータ横にある通常非常用階段の1つだけです 外には無し!」
ハイケルがモニターを見つめる マイクがハイケルを見る ハイケルが言う
「よし、現地へ向かう マイク少佐」
マイクが言う
「はい!」
ハイケルがマイクへ向いて言う
「4箇所の出入り口から突入する作戦を展開させる メインの他に4つの専用無線回線を用意出来るか?」
マイクが言う
「この地域では 他の部隊も作戦を展開しているので 使える回線はメインを含めて4つまでです」
ハイケルが言う
「分かった では メインと3つの回線を個別に担当する情報部員を用意しておけ それから情報部の車両を必要部員と共に向かわせろ 先に行っている」
ハイケルが立ち去る マイクが立ち上がって言う
「了解!」
マイクが情報部員へ向いて言う
「4つの無線回線の処理を!それから」
情報部員たちが呆気に取られた状態からハッとして 各々作業を開始する

【 国防軍レギスト駐屯地 車両保管所 】

隊員たちが武装し緊張しながらトラックに待機している ハイケルがやって来る ドライバー担当の2人の隊員が敬礼する ハイケルが言う
「時間が無い 作戦の説明を移動中に行う 全隊員へ無線イヤホンを装着するよう伝えろ 出動だ」
隊員たちが敬礼し各々のトラック運転席へ向かう ハイケルがトラックへ乗り込む

【 皇居 女帝の間 】

軍曹が盾を構えた状態で横目にラミリツの立ち位置を見る ラミリツが剣を構えて立っているが 視線を落として居る 軍曹が視線を落とし考えていると 女帝の間に13部隊隊員が現れ敬礼して言う
「失礼致しますっ!」
軍曹とラミリツが13部隊員を見る 軍曹が疑問すると13部隊員が軍曹の横に来て耳打ちをする 軍曹が僅かに驚いて小声で言う
「レギストが…っ!?」
13部隊隊員が敬礼して出入り口まで戻り 再び敬礼して言う
「失礼致しましたっ!」
13部隊員が立ち去る 軍曹が正面をむいたまま緊張の面持ちで視線を落とす ラミリツは気を抜いて溜息を吐く

【 車中 】

隊員たちがイヤホンに集中している イヤホンからハイケルの声が聞える
『概要は以上だ よって 我々レギスト機動部隊は 情報部からの無線指示に従い 政府第2省長長官 ランドム・ハウル・エリックを拘束し 彼の持つ 機密データを記録したディスクを奪還 更に 各階の犯人グループを拘束 同時に人質を保護する  …と、言いたい所だが』
隊員たちが疑問する ハイケルの声がイヤホンに届く
『お前たちにとっては 今回が初めてのランクA任務だ よって Sランクの達成評価とされる それらの条件は除外する』
隊員たちが顔を見合わせる ハイケルの声がイヤホンに届く
『今回の任務は ランドム・ハウル・エリックの拘束 及び ディスクの奪還 その2点のみとし 犯人グループの拘束と 人質の保護は可能な限りと限定 任務に支障が出る場合は 犯人グループの射殺 及び 人質への被害も やむなしとする』
隊員たちが驚き緊張する イヤホンにハイケルの声が届く
『続いて 作戦を説明する 我々レギスト機動部隊は政府第2省長一階 4箇所の出入り口から突入する 突入と同時に施設内に居る犯人グループを撃破 人質に当たらないよう 可能な限りの対処を行え 次に 施設に唯一ある 施設内中央エレベータホールの横にある階段へ集結 以降は各班担当の情報部員と逐一連絡を取り 犯人グループと思われる ターゲットの数 及び所在のナビゲーションを参考にそれらを撃破しろ …マイク少佐 聞こえているか?』

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが通信マイクに詰め寄って言う
「はいっ!こちらマイク少佐 聞こえています!」
情報部員たちが真剣にPC操作を行っている 情報部のスピーカーから ハイケルの声が聞える
『準備は何処まで進んでいる?』
マイクが言う
「メイン及び各無線担当の部員の決定と 情報部の車両がそちらへ向かっています 到着までおよそ 8分!」
情報部のスピーカーから ハイケルの声が聞える
『了解、では 到着と共にに 必要数の熱源探知センサーを打ち上げろ』
マイクが言う
「了解!」
情報部のスピーカーから ハイケルの声が聞える
『次に今作戦における 各班メンバーを伝える 尚 最初に名を呼んだ者を その班のリーダーとする』

【 車内 】

イヤホンからハイケルの声が届く
『レギスト機動部隊A班 アラン隊員』
隊員Aが衝撃を受け皆の視線が集まる イヤホンからハイケルの声が届く
『バイスン隊員』
隊員Bが呆気に取られる 隊員Aが隊員Bを見て笑んでガッツポーズを向ける 隊員Bが微笑する イヤホンからハイケルの声が届く
『同じくB班 フレッド隊員 ガルム隊員』
隊員Fと隊員Gが驚き顔を見合わせ喜ぶ イヤホンからハイケルの声が届く
『同じくC班 マシル隊員 ナクス隊員 ヴェイル隊員』
隊員MとN、Vが驚き顔を見合わせる イヤホンからハイケルの声が届く
『…くれぐれも 階段は縦一列で進む様に』
隊員M、N、Vが衝撃を受ける 隊員AとBが噴き出して笑いを堪える 隊員M、N、Vが赤面して隊員AとBへの怒りを抑える 他の隊員たちが疑問する イヤホンからハイケルの声が届く
『以上 3班だ …情報部 各班への専用無線周波数を伝えろ』

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

マイクが言う
「了解!」
マイクが情報部員たちへ視線を向ける 情報部員が頷き言う
「レギスト機動部隊A班 無線周波数45へ 同じくB班 無線周波数46へ 同じくC班 無線周波数47へセットして下さい」
マイクが言う
「ハイケル少佐 メインの周波数は44です」
スピーカーからハイケルの声が届く
『メイン周波数44 了解 全隊員へ告ぐ メイン無線周波数 44をセットしろ 各班隊員はメイン回線に44 サブ回線に各班の周波数をセットしろ』

【 車内 】

ハイケルの声がイヤホンに届く
『各班のメンバーは設定した 到着後は直ちに 各班 施設の出入り口へ向かえ A班は東 B班は南 C班は西へ 共に 班を支援する隊員を連れて行け』
隊員Aが言う
『…支援する隊員?』
隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが言う
『各班メンバーに呼ばれなかった その他の隊員たちから 各班のリーダーが選んで連れて行け 人選は任せる』
隊員たちが衝撃を受けて言う
『えぇえっ!?』
隊員Fが困って言う
『え、選べって言われても…』
ハイケルが言う
『先行部隊には 少数精鋭部隊が好ましい よって 必要最低限の人数にて 意志の疎通が出来る者 仲の良い隊員を優先して選べ』
隊員Bが隊員Cを見て言う
「じゃ サッちゃんは除外~」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「お前っ!」
ハイケルが言う
『バイスン隊員』
隊員Bがビクッとする 隊員Cがニヤリと笑む ハイケルが言う
『お前はサブマシンガンの弾倉を 持てるだけ所持しろ …期待している』
隊員Bが呆気に取られる 隊員たちが驚き隊員Bを見る 隊員Aが呆気に取られた後喜んで言う
「やったな!バイちゃん!」
ハイケルが言う
『その他 各班のメンバーに選ばれた者も 基本装備に追加できる武器防具は 可能な限りを所持しろ 正し 先行部隊はスピードが重視される 忘れるな』
隊員Aと隊員Bが言う
「「了解っ!」」
隊員Fが慌てて言う
「りょ、了解」
隊員NMVが慌てて言う
「「「了解っ!」」」
ハイケルが言う
『尚 各班及び支援メンバーへ指定されなかった者は 後衛部隊と認定 潜入口は4箇所を使用  先行部隊の突入撃破を確認の後に潜入 人質の救護 犯人の拘束 及び退避路の確保を行え 先行部隊が逃した犯人グループが潜伏している可能性もある 十分に気を付けろ』
隊員たちが銃を握り締める ハイケルが言う
『間もなく到着する 人選と最終確認を行え』
隊員たちが言う
「『了解!』」

【 政府第2省長 近辺 】

レギストの車両が到着する 隊員たちが車両を降り 建物周囲へ回り込む

【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】

スピーカーから無線音声が響く
『レギスト機動部隊A班 配置に到着!』 『同じくB班 到着!』 『同じくC班 到着!』
ハイケルの声が届く
『了解、これより レギスト機動部隊 作戦を開始する 突入の合図と共に入り口を爆破 可能であれば突入しろ 無理な突入はせず 進入が難しいと判断された際は メインの無線へ救援を要請しろ …各班 出入り口へ爆薬をセット』
各班リーダーの声が届く
『了解!』
マイクが気付きはっとして言う
「ハイケル少佐!」
ハイケルの声が届く
『どうした マイク少佐』
マイクが言う
「突入箇所は4箇所!突入はそれぞれの班が担当するとの事ですがっ 残りの1班 北の裏口から突入するD班は!?」
ハイケルの声が届く
『D班は存在しない 北の裏口からの突入は 私が受け持つ』
マイクと情報部員たちが驚く ハイケルの声が届く
『私への指示は メインの無線を使用して行え』
マイクが慌てて言う
「りょ、了解!」
ハイケルの声が届く
『突入後の各班への指示を私が伝える 情報部は各班へ ターゲットへのナビゲーションを行え』
情報部員たちが言う
「「「了解!」」」
マイクが一瞬呆気に取られた後 微笑し頷く 各班隊員たちの声が届く
『A班 爆薬のセット 完了しました!』 『同じくB班完了!』 『C班完了!』
ハイケルが言う
『了解』
全ての者が息を飲む

【 政府第2省長 】

ハイケルが言う
「レギスト機動部隊 突入!」
政府第2省長の1箇所に続き 3箇所で同時に爆発が起きる 隊員Aが衝撃を受け振り向いて言う
「バイちゃんっ!フライングしただろっ!?」
隊員Bが隊員Aの後ろでスイッチを片手に言う
「あ、バレた?にひひっ」
隊員Aが視線を進入口へ向けると 大量の銃弾が飛んで来る 隊員Aが慌てて身を引き言う
「こらぁっ!お陰で 犯人たちにマークされちゃったじゃないかっ!どうするんだよっ!?」
隊員Bが苦笑して言う
「ごめーん だって 少佐に…」
メイン無線にハイケルの声が届く
『バイスン隊員 良くやった A班は支援を行う 待機していろ』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?い、いつの間にっ!?」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ」

ハイケルが走りながらサブマシンガンを放ち 次々に犯人グループを倒し突入すると通路前で立ち止まり壁に背を向け 視線を周囲に向ける 各所で銃撃戦の音が聞える ハイケルが一瞬の後 反対側の通路へ飛び 東側の通路へ向けてマシンガンを放ちながら突入する

隊員Aが銃撃の隙を伺っていると 奥から悲鳴が聞える 隊員Aが疑問すると ハイケルの無線が届く
『東側通路を確保した A班 来い!』
隊員Aが言って立ち上がる
「了解!」
隊員AとBが突入する

ハイケルが中央エレベータルームへ向かう B班C班が階段の先を伺いつつ戸惑っている ハイケルが到着し 続いてA班が到着する ハイケルが言う
「マイク少佐!」
無線にマイクの声が届く
『情報部の車両が到着 共に センサー打ち上げ終了!』
ハイケルが言う
「2階 階段付近の ターゲット数を伝えろ!」
情報部員の声が届く
『2階 階段付近のターゲット数は4です!内2名は前衛 残り2名は階段から奥の通路 両脇に待機と思われます!』
ハイケルが階段に近付き上階へサブマシンガンを放ち退避する ハイケルが言う
「了解 2階へ向かう 到着と同時に A班は2階の東へ B班は西へ向かえ」
隊員Aと隊員Fが言う
「「了解っ!」」
ハイケルが言う
「C班は私と共に 3階へ向かう」
隊員Nが言う
「了解っ!」
隊員Bが階段を見上げて言う
「けど… どうやって…?」
ハイケルが言う
「私に続け」
ハイケルが階段へ向かう 隊員たちが慌てて追いかける ハイケルが階段上部へマシンガンを放った後 手榴弾を放り投げる 隊員たちがハッとした瞬間 ハイケルが軽く身を守る 2階で爆発が起きる 隊員たちが思わず防御体勢を取っている ハイケルが走り出して言う
「行くぞっ」
隊員たちが慌てて追いかけて言う
「了解っ!」
ハイケルが2階へ到着すると同時に 東西に隠れていた襲撃犯たちを撃ち倒す A班のイヤホンに無線が入る
『A班 ターゲットへのナビゲーションを行います!』
A班が一瞬はっとした後 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせ頷き合う 向かい側で B班が同様にしている ハイケルが言う
「任せたぞ」
A班とB班がハイケルへ向いて言う
「「了解!」」
A班とB班が東西へ向かう ハイケルが3階へ向けてマシンガンを放ち回避する C班たちが慌ててハイケルの左右後ろに付く ハイケルが言う
「情報部 3階の状況を確認!マイク少佐 他の隊員たちへ指示を頼む」
メイン無線にマイクの声が届く
『了解!既に後衛部隊は1階へ侵入!人質の保護と犯人グループの拘束を行っています!』
情報部員の声が届く
『3階 階段付近のターゲット数は3です!しかし 奥の通路では ターゲットが移動しています!』
ハイケルが3階への威嚇射撃を行いながら言う
「3階フロアの人質の配置 及び全体のターゲットの数はどうなっている」
情報部員の声が届く
『3階フロアの人質と思われる者は複数 全て建物外部へ寄せられている模様 階段奥で移動しているターゲットは2です!』
ハイケルが言う
「C班!3階へ突入と同時に3方向へ構え ターゲットを撃破しろ!行くぞっ」
C班が言う
「「「了解っ!」」」
ハイケルが手榴弾を3階へ投げ 爆発と同時に突っ込む C班が続く

【 皇居 女帝の間 】

軍曹が表情を固くしたまま正面を見据えている 13部隊隊員が現れ敬礼して言う
「失礼致しますっ!」
13部隊員が軍曹の横に来て耳打ちをする 軍曹が表情を険しくしつつ小声で言う
「…分かった 引き続き連絡を頼む」
13部隊隊員が敬礼して出入り口まで戻り 再び敬礼して言う
「了解!失礼致しましたっ!」
13部隊員が立ち去る 軍曹が盾を握り締める ラミリツが僅かに視線を向ける


続く
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