月の姫と獣王

えりー

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翌朝

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翌朝目が覚めると何か温かいものに包まれて眠っていた事に気がつきた。
目を開けて見るとヴァンに抱かれて眠っていた。
ヴァンは気持ちよさそうに眠っていた。
秘部が痛くてユーリは動けずにいた。
昨夜は初めて男性と交わった。
初めての時は痛いと聞いていたがあんなに痛いとは思わなかった。
あれが”月の姫”の役割・・・。
王が異形化しない為の生贄ではないか。
内心そう思ったが何故かヴァンを恨むことは出来なかった。
彼も苦しそうだったからだ。
あの行為で少しは苦しみが紛れるらしい。
「ん・・・」
どうやらヴァンは目を覚ましたようだ。
「おはようございます・・・」
ヴァンに抱かれたままそう挨拶をした。
「ああ、おはよう」
ヴァンはユーリを離そうとしない。
「ヴァン様離してください」
「離すと逃げるだろう?」
「逃げません・・・というか逃げられません」
ユーリがそう言うと不思議そうな顔をした。
「何故?」
「・・・秘部が痛くて動けないからです」
真っ赤になりながらユーリは言った。
ヴァンは青くなりユーリに謝った。
「昨夜は手荒なことをしてすまなかった」
「ヴァン様?」
「ああなると自制心が利かなくなるんだ。痛むのか?」
「はい」
(途中で気も失ってしまったし・・・)
あの後どうなったのだろう。
「私が気を失った後はどうなったんですか?」
「ちゃんと人間の姿を保てた」
(良かった・・・あの行為は無駄じゃなかったんだ)
ユーリはほっと胸をなでおろした。
けれど、満月の度にあんなに激しく抱かれては堪らない。
「あの・・・満月の度にあの行為をしなくてはいけないんですか?」
「ああ、”月の姫”の不在が長すぎて体が求めてしまうんだ」
「そ、そうですか・・・あの、次はもっと優しくしてほしいです」
勇気を出してヴァンに言ってみた。
「わかった。次は今回のような事が無いように気を付ける」
「すみません。今まで名乗り出なくて・・・」
ユーリが謝るとヴァンはユーリの頭を撫でながら言った。
「もうその事は良い」
「でも、今まで1人であんなに苦しんでいたんですよね!?」
「ああ、獣の姿になると俺は俺じゃなくなってしまう。体が変化するときの痛みは酷いものだ」
ユーリは少し責任を感じた。
(今まで私がいない間彼は苦しんでいたんだ)
気がつくとユーリはヴァンを抱きしめていた。
「ユーリ、お前は優しいな」
「そんなことありませんよ。普通ですよ」
「俺にはその普通が分からない。ユーリに習うことも多そうだ」
2人は見つめ合い自然と唇を重ねた。
その行動にユーリとヴァンは驚いた。
今のキスはまるで恋人同士がするキスだった。
2人は顔を赤くした。
そこでカチャンっと鍵が開く音が聞こえた。
「2人ともそろそろお時間ですよ」
(見られた!?今の見られたの!?)
「あ、ああ」
2人は服を急いで着て、王の間へ行った。
するとランが待っていた。
「ユーリ様。入浴の準備が出来ています」
行っていいのかわからなかったのでヴァンを見た。
するとヴァンは言った。
「入浴後少し休んでからまたここへ来てくれ」
「はい」
そう言ってユーリはランに付いて行った。
「・・・」
「何か物言いたげだな・・・スイ」
「いいえ、昨夜はお楽しみだったんだなと思っただけです」
「・・・お前、やっぱりさっきのキス見ていたんだな」
「はい。まるで恋人同士みたいでした」
恋人同士・・・ユーリとそうなれればどんなにいいか。
しかしユーリは嫌がるだろう。
昨夜、抱いた時も泣いて嫌がっていた。
恋人にするならユーリのような娘が良い。
あの異形の姿を見ても怯まなかった。
だが、交わるときは怯えていた。
初めての娘を気を失わせるまで抱いてしまった。
その罪悪感は今もある。
だが、ユーリは朝目覚めると怒っている様子も取り乱している様子もなかった。
これは期待していいのだろうか?
ヴァンは本気でユーリが欲しくなった。
体だけではなく心も欲しいと思い始めた。
それは彼女が”月の姫”だからなのかユーリなのだからかはまだヴァンには分らなかった。
ただヴァンは彼女に惹かれ始めている自分を自覚した。
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